しょこたんの初舞台を兄・小西遼生と母(!?)鈴木裕美がガッチリサポート!「ブラック メリーポピンズ」

インタビュー
舞台
2016.2.12
ブラック メリーポピンズ 撮影=寺坂ジョニー

ブラック メリーポピンズ 撮影=寺坂ジョニー

心理スリラーミュージカル「ブラック メリーポピンズ」が、5月14日(土)から世田谷パブリックシアターにて上演される。本作は韓国で生まれ、2014年に鈴木裕美の演出によって日本で初演された作品だ。1920年代初頭のヨーロッパ。ドイツの著名な心理学者・シュワルツ博士の豪邸で火事が起こり、博士の遺体もろともすべてが燃え尽きた。そこから助け出された博士の4人の養子たち、そして全身に火傷を負いながら子どもたちを助け出した家庭教師のメリー。しかし翌日、メリーは失踪する。子供たちは誰一人その悲惨な出来事を覚えていない。あれから12年…彼らの封印された過去が解き明かされ衝撃の真実が展開される。今回、再演となる本作で、ヒロインのアンナを演じるのは「しょこたん」のニックネームで愛される中川翔子。これが初舞台・初ミュージカルとなる中川は今どのような心境でアンナ役に挑もうとしているのか。
1月某日、中川と、初演に続き最年長の兄・ハンスを演じる小西遼生、そして演出の鈴木裕美に取材を敢行した。


――まずは、初演時を振り返っていただきたいのですが、特に印象に残っていることは?

鈴木:(初演時は)ものすごくお客様が緊張して芝居をご覧になっていたことはよく覚えています。文字どおり“固唾をのむ”という感じで。一方、稽古場は非常に愉快でしたね。それもよく覚えてます(笑)芝居はあんな内容ですけど、初演時は5名の俳優さんたちが“ボケ”で、いや、「自分は“ボケ”ではないと信じている人たち」でしたから。

小西:一路(真輝)さんもね。

鈴木:そう、一路さん“筆頭”にね。稽古場に誰もツッコまない“ボケの死体”が累々と…という状態で。みんながボケ散らかしているんです(笑)私も途中までツッコもうかと思ったんですが、もうめんどくさいからいいいやって思っていたくらい。

小西:(笑)本番中は必死だったのもあるんですが、集中してできる濃密な環境でしたね。出たら出ずっぱりになる芝居だし、作品のテイストも暗いですし。でも、途中明るい子ども時代に戻れる場面もあるから、その緩急があって居心地がよかったです。体力的にも声的にも結構負担がかかる作品だったんですが、あまりそういう意味での記憶はなくて、ただひたすらに汗をかいていたなあ、と。だから作風に反して演じる側としては楽しかったんです。
シリアスな作品って1公演終わるたびにズズンと重く残るんですが、(鈴木)裕美さんが作った最後のシーンに救いがあったんで、どこかすがすがしいものが僕の記憶にあったんです。

ブラック メリーポピンズ 撮影=寺坂ジョニー

ブラック メリーポピンズ 撮影=寺坂ジョニー

――さて、今回再演となり、新たに中川さんが参加することになりました。中川さん、このお話が来たときの率直な感想は?

中川:「えっ…(絶句)!?」でした。ヒットした作品ですし、再演ですし、主要な役の中でアンナだけが変わる…。私自身、結構大人なのに全く初めての世界ですから、ご迷惑をかけてしまったらどうしようと。もともとネガティブモンスターなので。

――むしろ、これが初舞台であることに驚きでしたが、舞台に挑戦しようと思ったきっかけは? Lv.30(=30歳)になったからですか? 

小西:しょこたんがLv.30って言う意味、みんな知ってるんだ!(笑)

中川:私は一人っ子なので、内にこもって積み重ねていた趣味が、気が付いたら外に向けて表現されていて、なおかつそれが幸せなことにお仕事になっていたところがあったんです。
「ブラック メリーポピンズ」の初演をDVDで拝見しました。ミュージカルって明るく楽しく歌って…という印象があったんですが、この作品は、孤独と悲しみを抱き、心に一生消えない傷を負った子どもたちが向きあって生きている姿と、子ども時代に戻ったときにみんな明るく笑いあって幸せをかみしめている…このギャップがおもしろいなって。ただ暗いじゃなくそれと対称的な瞬間があるからこそ、より悲しみが深くなるという繊細な部分が面白くもあり難しくもあり。(舞台に挑戦することは)一瞬一瞬、すべてが経験値になる「学びの時間」になるなと。人間として成長できる場所になると思ったんです。今はすべてを吸収したい、ごくごく飲みたいと脳が言っています。知らないことだらけなので(鈴木)裕美さんにわからないことを全部聞いていこうと思っています。一人っ子なので、兄弟というのもあまり想像がつかなくて…。もし兄弟がいたらこのお仕事もしてなかったかも。だからアンナに共感できる部分もあります。もう裸で飛び込んでいって、ボコボコにされたいです。

中川翔子 撮影=寺坂ジョニー

中川翔子 撮影=寺坂ジョニー

――ボコボコにするご予定はありますか?(笑)

鈴木:特に予定は(笑)

――そんな中川さんの言葉を聞いて、お二人はいかがですか?
 
小西:中川さんが入ることですごく新しい気持ちに、芝居の原動力になると思います。再びゼロから作り上げなければならない。僕は再演という取り組み方は得意ではないんですが、今回は新鮮にできる気がします。

鈴木:初演のときは初演のときの人間関係で「こういうお兄ちゃんがいたらこういう弟ができて…」と関係性で役ができてくると思うのですが、今回はゼロからチャラにして作りたいなと思っています。この作品に限らず「再演だから」と、なぞりだしちゃうと演劇ってアッという間に死んでしまうんです。だから、再演のときはスタッフにも俳優にも「前はこうだった」という言い方は禁止ね、というところから始めます。…どうしても出ちゃうんですけどね。「前はこういう転換で」って。でも、なぞって作ることはしないです。

中川:「前はこうだった、は禁止」と裕美さんがおっしゃってくれたので、飲む胃薬の量が減りそうです(笑)

小西:今日初めてお会いしたんですが、中川さんが入ったことで残り4人がどうリアクションするのかが楽しみで!僕の想像ですが、中川さんは自由に羽ばたくと思いますよ。この芝居は登場人数が少ないので、一人変わることで、みんなの受けがどんどん変わる、最初の一つからすべてが変わると思うんです。そのあとの積み重ね方も全然違うものになると思う。
特に楽しみなのは、他の兄弟(良知真次・上山竜治)がどういう反応をするのか、ですね。二人がすごく変わるんじゃないかな

ブラックメリーポピンズ 撮影=寺坂ジョニー

ブラックメリーポピンズ 撮影=寺坂ジョニー

――中川さんから見た、小西さんのイメージは?

中川:(小西を見つめて)顔、ちいさっっっ!

小西:おまえが言うな!ですよ(笑) 本来の意味のレベルでいうなら3兄弟はLv.8くらいなので(笑)、稽古が始まったらまたいろいろ見えてくると思いますよ。僕はお兄さんとしてアンナを必死に助けていこうとする役柄なので、中川さんだと、より「守ってあげたい妹」というイメージが作りやすいですね。

中川:なんだか妄想ゲームみたいですね。男子が家にいない環境で育ったので、こんなにイケメン兄弟に囲まれるって何かの女子向けゲームみたいです。一回の人生でこんなフィーバーモードがっ…!(笑)

――初演、再演と通して、演出家として、この作品で特に大事にしたい部分は?

鈴木:この作品は、ソ・ユンミさんという才能ある方自身が戯曲を書かれ、曲も書かれているからこそ、美意識が統一されているんです。その筆の勢いはとても大事にしたいですね。初演も今回も。若いエネルギ―にあふれている作品なので。
この作品は、4きょうだいがとても仲が良いことが重要なんです。前回も意識的に仲の良さを作ろうとしていましたが、今回も、今回のチームでしか出せない、仲の良いきょうだいをつくっていきたいと思います。

ブラックメリーポピンズ 撮影=寺坂ジョニー

ブラックメリーポピンズ 撮影=寺坂ジョニー

――なんだか、お母さんみたいですね(笑)

小西:「お母さん」でなく「かあちゃん」ですけど!(笑)

鈴木:もう、すぐどこかに行っちゃうので「はい、そっちに行かない!」」って(笑)
だいたいどこかに行ってしまうのは、竜治なんですけどね。あ、でも良知もそうか。二人ともどっかに行きがち(笑)

小西:兄弟を演じていたときは、なかよしこよしではなく、好きなところもいけすかないところも、それについて特に話し合ったりはしないけど、なんとなくお互いにそれがわかっていて…気が付けば小さい頃から一緒に暮らしてきたような感覚がありました。少人数で、しかも兄弟の役だけど、血はつながってない。不思議と演じるみんなと重なるんです。途中からそのことに気が付いてきて「この感覚を役に活かそう」としていました。

鈴木:みんな、頭がいいんですよ。

中川:やはりコミュニケーションが大切なんですね。脱ぼっち属性…。

中川翔子 撮影=寺坂ジョニー

中川翔子 撮影=寺坂ジョニー

――改めて本作、演出家として、そして出演者としてどんなところを特にお客様にみていただきたいですか?

鈴木:5人しか出ない。そしてほぼステージからハケない。…とにかく俳優を観ていただきたい。俳優が持っているもの全てを使わないとどの役もこなせない分量なんです。よくあれだけ叫んでそのあと歌えるねって思ってましたし。なのでそんな俳優一人ひとりをみていただきたいです。

鈴木裕美 撮影=寺坂ジョニー

鈴木裕美 撮影=寺坂ジョニー

小西:この「ブラック メリーポピンズ」は、韓国ミュージカルから始まって、日本版キャストとスタッフで作り上げた作品。勢いだけでなく深みもあり、日本人なりの解釈もあり最後に話がちゃんと完結する…裕美さん演出は楽しかったし生き生きと役を演じられました。本と演出のおかげ、そして小野寺(修二)さんの振付を始めとする日本版スタッフのおかげだと思っています。
裕美さんは「俳優を見て」とおっしゃいましたが、僕は「総合力」を観てほしい、と思った。初めて自分が乗る舞台を見たときは、「こんな明るくて何もないところでやるのか、まんま演劇じゃん!」って思ったんで。あと、かわいいかわいい妹を観てほしいです。(と、隣の中川を見る)

小西遼生 撮影=寺坂ジョニー

小西遼生 撮影=寺坂ジョニー

中川:作品を観終わったあとのズシンとくる思いは、観る人の人生によって違うと思うんです。逆に前回とこう違うよ、ってところを見せたくて。何もかもが初めてということで、全裸でぶつかっていきます。

中川翔子 撮影=寺坂ジョニー

中川翔子 撮影=寺坂ジョニー

小西・鈴木:それじゃあ「見どころは全裸」って書かれるよ(笑)
 

ブラック メリーポピンズ © cube inc.

ブラック メリーポピンズ © cube inc.


【中川翔子】 スタイリスト:宮崎真純 ヘアメイク:柏瀬みちこ(Rooster)
小西遼生】 スタイリスト:森宗大輔 ヘアメイク:小口あづさ(Nanan)

撮影=
寺坂ジョニー  文=こむらさき

公演情報
心理スリラーミュージカル「ブラック メリーポピンズ」
 
<東京公演>
日時:5月14日(土)~5月29日(日)
会場:世田谷パブリックシアター
一般前売開始:3月5日(土)
 
<兵庫公演>
日時:6月3日(金)~6月5日(日) 
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
一般前売開始:3月12日(土)
 
<福岡公演>
日時:6月9日(木) 
会場:福岡市民会館
一般前売開始:3月26日(土)
 
<名古屋公演>
日時:6月17日(金) 
会場:愛知県芸術劇場 大ホール
一般前売開始:3月19日(土)
 
 公式サイト:http://m-bmp2.com/
 

 

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