MERRY 苦闘の果てに“完全体”となって踏み出した、2月7日『最終階』レポート

レポート
音楽
2016.2.13
MERRY/撮影=中村 卓

MERRY/撮影=中村 卓

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どんなに辛い“過去”であろうと、自分の“現在”の行動次第で人生にとってプラスにすることができる――。わかってはいても実行に移すことは難しいソレを、MERRYは見事に体現してみせた。最新アルバム『NOnsenSe MARkeT』を携え、一昨年末のリリースから、B1、1F、2F、3F、4F……と50本近くのライヴを重ねてきたツアーの“最終階”であり、ベース/テツの完全復活となるステージ。最新シングル「平日の女」のインタビューで彼自身「いらぬ心配してたら良いところいっぱい見逃しちゃいますよ」と語っていた通り、そこには2年の苦闘の果て、着実に強くなった5人の姿があった。

不慮の事故により、テツが頚髄損傷の重傷を負ってから2年あまり。昨年1月の渋谷公会堂ワンマンからライヴに復帰したとはいえ、それはアンコールのみ等のあくまでも部分的な出演に限られていた。しかし、今回のツアー最終日では、遂に初のフル出演を果たすという。期待に胸膨らませてフロアに詰めかけたオーディエンスが手拍子で出迎えるなか、“虚飾世界”“幸福論”と文字が踊るオープニング映像の最後に“浄化せよ!”と大写しになって、まさにナンセンスなムードの中で始まった1曲目は「NOnsenSe MARkeT」。結生(G)のアコースティックギターにガラ(Vo)がヴォーカルを乗せ、哀愁味たっぷりの幕開けから紗幕がロールアップすると、舞台のど真ん中に真っ赤な鳥居。そして、その左側には首にコルセットを嵌めながらも、スタンドに据えられたベースをしっかりと弾くテツの雄姿が! 続く「「東京」」でもベースソロが如何なくフィーチャーされ、テツ帰還の喜びがジワジワと心を満たす。さらに、初期曲「青春ノイローゼ」ではガラが頭にマイクをガンガンぶつけ、健一(G)は持ち前のキレたフレーズと動きで魅了。そうして狂気の嵐が吹き荒れれば吹き荒れるほど、その背後で黙々とベースを弾くテツの長身が映えて、両者のギャップがMERRYらしい不気味なオーラを放っていたのは嬉しい発見だった。2年前とは違う新たな進化を、今のMERRYは確実に遂げている。

MERRY:ガラ(Vo)/撮影=中村 卓

MERRY:ガラ(Vo)/撮影=中村 卓

そのことを確認できたのが、昨今のライヴでは欠かせぬ定番曲となっている「絶望」。「最後の夜だ。メチャメチャにしようぜ!」と叫んだガラを皮切りに、「六本木! 俺たちがMERRYです!」と結生が、次いで「最終階へようこそ!」とネロ(Ds)が観客を煽り立てて“絶望!”コールを繰り出すと、絶望を乗り越えて晴れの舞台に辿り着いた彼らの姿に熱い歓声が湧く。そしてテツの野太いベース音で曲がスタートすると、スイッチの入った健一はステージ上でグルグルと回転し、結生は奔放なオブリガードでエッジ利きまくりの楽曲を彩る。曲終わりのネロによる猛烈なドラムフィルも圧巻。テツ不在の2年、懸命に音で、動きでカバーしてきた他メンバーの明らかな成長に、これもテツの言っていた“良いとこ”の一つなのだと気づかされる。

MERRY:結生(G)/撮影=中村 卓

MERRY:結生(G)/撮影=中村 卓

結果、ミラーボールが煌くテツ作曲の「Zombie Paradise~地獄の舞踏曲~」に、ガラがピンク色のライトを手にして客席と自らを照らす「暗闇にピンク」、歪なギターフレーズが暗黒世界を呼ぶ「青年秘密倶楽部」とMERRY独自のディープな虚飾世界が展開されるにつれ、復活ライヴ云々を抜きにしてライヴに没頭している自分がいた。それは筆者だけではなかったのだろう。久々の披露となる「首吊りロンド」ではタイトルコールだけで、ガラが赤いハットとタンバリンで妖しく迫る「Hide-and-seek」では「最後の夜ですよ。わかってますね、皆さん」と歌うガラに大歓声が沸き上がる。ダメ押しとばかり、ここで披露された「平日の女 -A面-」のエモーションと来たら! MEERYの武器でもある昭和歌謡風のレトロな歌モノであるにもかかわらず、楽器一つひとつの音が狂おしく鳴き、心地よいグルーヴで場内を包み込む。これまたMERRYの進化の証と言って間違いない。だからこそ、ノスタルジックなインストゥルメンタル「Station 07」を挟んで畳みかける人気ライヴチューンのトリッキーな個性が際立つのだ。“万歳!!俺は道化者”というリリックに合わせてオーディエンスが右に左に両腕を突き出す「千代田線デモクラシー」に、ヘドバンと拳が渦巻く「オリエンタルBLサーカス」。そして「Midnight Shangrila」では自らスタンドを持ち上げ、テツがベース台を降りて前方へ! フロアぎりぎりまで迫り出して激烈なソロを放つと、上裸になったガラが奇声にも似た咆哮で、ネロが激烈なドラミングで喜びの声をあげ、演奏し終えて右手を掲げたテツに、客席からは満場の喝采が贈られた。一斉にタオルが振られる「Carnival」から、「みんな狂っちまえばいいんだ!」(ガラ)と「ジャパニーズモダニスト」へ繋ぎ、スモークに巻かれて“GO MAD!”とフロアを揺らしまくる爆発力も見事。極まった一体感の中「ありったけの声を!」(ガラ)と叩きつけられた「梟」の雄大な響きは、“現実はいつも残酷で…”というアウトロの語り通り、苦難と葛藤の中で闘い抜いてきた彼らが得た“力”そのもののように感じられた。

ガラがステッキを振り回す「不均衡キネマ」でグロテスクな世界を描き出し、自虐の末に開き直る「自意識過剰型木偶人間」をブチまけて「T.O.P」へと勇ましく駆け上がるアンコールの展開も、実にMERRYらしいもの。そして「俺は今、幸せです!」とガラが叫んでの「Happy life」が始まったとき、筆者の中で一つの気づきがあった。世界がどうなってもいい。ただ“目の前の人達を幸せにしたいだけ”――これまでのバンドイメージを裏切るポジティヴなメッセージで昨夏、波紋を呼んだシングル曲だが、それは今、目の前にいるオーディエンスにこそ向けられたものと考えれば合点がいく。自分たちを支え、愛する人々の幸せを願うのはバンドにとって当たり前の姿勢であり、その推理が間違っていないことを、去り際に客席へと贈られたガラの投げキスが証明してくれた。

MERRY:健一(G)/撮影=中村 卓

MERRY:健一(G)/撮影=中村 卓

再度のアンコールではアコースティックギターの音色が切ない「Unreachable Voice」に、本編で披露された「-A面-」と同じ歌詞ながら、全く異なる曲とメロディーでウェットな不倫歌をドライに仕上げた実験曲「平日の女 -B面-」を。そして結成初期の衝動がソリッドに突き刺さる「陽の当たらない場所」で、最後にガラが三点倒立のまま足で拍手とMERRYの振り切れた持ち味を発揮した後、3度目のアンコールに「群青」がラストソングとして選ばれたのも、ファンとの絆を示す象徴的な出来事だった。君、羊、春――つまり、ファンとMERRYの青春という意味をその名に掲げたナンバーが、「俺たちと君たちの未来へ向けて、大切な曲を」とガラによりアカペラで歌われると、フロアから間髪入れずに合唱となって返ってくる、その光景の感動的なことと言ったら! さらに、間奏ではステージ前方に出たテツを結生とガラで囲み、そんな彼らに向けて“幸あれ!”の合唱が場内を満たす。“太陽”の光を請う、それはまさしく“祈りの歌”。その想いを刻みつけるようにマイクを頭に打ちつけたガラは、歌い終えるとテツにハグして、記念すべき舞台を完遂できた喜びを爆発させた。

MERRY:テツ(B)/撮影=中村 卓

MERRY:テツ(B)/撮影=中村 卓

「5人で素晴らしいファイナルが迎えられて、本当に嬉しいです。また会いましょう」(ガラ)
「また新しいMERRYの始まりって感じ。MERRYって凄いね! いろんな可能性を感じました」(結生)
「今日は特別なライヴになったと思います」(健一)
「やっぱコレじゃないとね。5人のMERRYが最高です。6人のMERRYが最高です。最終階、どんな景色かなって思ってたけど、ここでしか見られないどんな絶景スポットより素晴らしい景色でした!」(ネロ)

5人で一列に並び、一人ずつ言葉を述べてステージを去ると、最後に残ったのはもちろんテツ。そして彼が感極まりながら告げた言葉が、その場にいる全員の心を震わせた。

「今日、最後までやり切れたことが、俺にとってスゲー自信になりました。まだまだやれるよMERRYは! 最高にカッコいいバンドだから、これからもついてきてね。また会いましょう。これがMERRYです! MERRYでした、ありがとう」

MERRY:ネロ(Dr)/撮影=中村 卓

MERRY:ネロ(Dr)/撮影=中村 卓

MERRYは決して器用なバンドではない。むしろ他のどのバンドより迷い、悩みながら歩いてきた。曲がりくねった道の途中、さらに普通ではあり得ない厳しい試練を受けて、世界を呪いたくなった日もあるだろう。しかし、苦難の先にしかない見えない光は確かにあり、それに手を伸ばすのが不器用なMERRY流の“幸福論”なのではないだろうか。

終演後には、各メンバープロデュースによる5daysライヴ『平日のMERRY』が5月に、夏ツアー『-15- Sheep』が6月から行なわれることをスクリーン上で発表。その最後には“11月7日 15th  Anniversary”の文字も浮かんで、喜びの歓声を沸かせた。5人が揃い、ようやく完全体となったMERRYは今秋、結成15周年を迎える。そこに向け、地に足をつけた第一歩を、この日、彼らは踏み出したのだ。

撮影=中村 卓 文=清水素子

MERRY/撮影=中村 卓

MERRY/撮影=中村 卓


 
セットリスト
MERRY『NOnsenSe MARkeT FINAL -最終階-』
2016.2.7(Sun)EX THEATER ROPPONGI

SE. iNtO the mARkeT
01. NOnsenSe MARkeT
02. 「東京」
03. 青春ノイローゼ
04. 絶望
05. Zombie Paradise ~地獄の舞踏曲~
06. 暗闇にピンク
07. 青年秘密倶楽部
08. 首吊りロンド
09. Hide-and-seek
10. 平日の女 -A面-
-----Statine 07----
11. 千代田線デモクラシー
12. オリエンタルBLサーカス
13. Midnight Shangrila
14. Carnival
15. ジャパニーズモダニスト
16. 梟
ENCORE I
17. 不均衡キネマ
18. 自意識過剰型木偶人間
19. T.O.P
20. Happy life
ENCORE II
21. Unreachable Voice
22. 平日の女 -B面-
23. 陽の当たらない場所
ENCORE I
24. 群青
 
ライヴ情報
『平日のMERRY』
平日のガラ 〜THE ZOMBIE RETURNS 蘇(かえ)って来た野郎ども〜
5/6(金)渋谷duo MUSIC EXCHANGE

平日の結生 〜オーディエンスはカメラマン!?〜
5/9(月)渋谷duo MUSIC EXCHANGE

平日の健一 〜[BURST] again〜
5/16(月)渋谷duo MUSIC EXCHANGE

平日のテツ 〜漆黒仮面密会〜
5/24(火)渋谷duo MUSIC EXCHANGE ※ドレスコード有り

平日のネロ 〜ライブハウスは法廷だ!セットリスト裁判!〜
5/31(火)渋谷duo MUSIC EXCHANGE

『MERRY 2016 Summer Tour「-15- Sheep」
6/10(金)高崎clubFLEEZ (CORE限定)
6/11(土)名古屋SPADE BOX
6/18(土)長野LIVE HOUSE J
6/25(土)秋田LIVESPOT2000
6/26(日)仙台CLUB JUNK BOX
7/2(土)札幌BESSIE HALL
7/3(日)札幌BESSIE HALL
7/7(木)岡山LIVEHOUSE IMAGE
7/9(土)長崎DRUM Be-7
7/10(日)福岡DRUM Be-1
7/15(金)京都磔磔
7/16(土)心斎橋Music Club JANUS
7/18(月・祝)松山サロンキティ
7/27(水)恵比寿LIQUIDROOM
7/28(木)恵比寿LIQUIDROOM

 

 

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