室伏鴻を追悼し、ダンスを未来へ繋ぐイベント開催

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2016.2.17
室伏鴻

室伏鴻

2015年ダンス界に走った衝撃

昨年のダンス界で一番衝撃的なニュースとして注目を集めたのは、おそらく日本を代表する舞踏家・室伏鴻(むろぶしこう)の急逝だったと思う。2015年6月18日、ブラジルのサンパウロなどでの公演を終え、ドイツでのワークショップに向かう途中、乗り継ぎ地のメキシコ市の空港で倒れ、ヘリコプターで病院に搬送されたが、約2時間後に心筋梗塞のため死去した。68歳だった。

室伏は、1947年東京に生まれ、舞踏の始祖・土方巽に師事した舞踏第一世代だった。72年に麿赤兒らと「大駱駝艦」を旗揚げ、女性だけの舞踏集団「アリアドーネの會」のプロデュースを経て、76年舞踏派「背火」を主宰して福井県五太子町(現福井市)に劇場「北龍峡」を開いた。78年にはパリで上演した『最期の楽園』が1カ月のロングランとなり、これが「BUTOH」を世界に広めるきっかけとなった。2003年からは、舞踏を次世代の若手ダンサーに引き継ぐユニット「Ko&Edge」でも活動。06年にはベネチア・ビエンナーレで全身に銀塗りした『クイック・シルバー』を発表。10年にはジンガロのバルタバスとのコラボレーション『ケンタウロスとアニマル』が欧州で話題となった。

幼少期に神奈川県の湘南で見た水死体や、成人後に出羽三山で見たミイラなどに触発されて、死と再生をテーマとした身体表現に取り組んだ。衰えぬバイタリティとは対照的に、パフォーマンスではストイックに研ぎ澄まされた肉体をさらした。それはまるで、草創期から流れる舞踏の原理主義を体現しているようでもあり、あるいはそうした歴史や背景とは隔絶した場所においても「BUTOH」が一つのアートフォームとして評価される、一目見たら忘れないほどの強烈な印象を与えた。そして、同時に「身体とは?」「舞踏とは?」「ダンスとは?」という思考を観客にも迫るような、絶対的な存在感を示していた。

室伏鴻

室伏鴻


室伏鴻を追悼・追想しつつ寿ぐ5日間

そんな惜しまれつつも逝った室伏鴻を追悼する企画イベント『<外>の千夜一夜 Vol.2』が、2月18日~2月22日横浜赤レンガ倉庫1号館で開催される。故人の影響力の大きさを象徴するように、トークセッション、ディスカッション、シンポジウム、映像上映、パフォーマンス等の多彩なプログラムを5日間にわたって実施する盛りだくさんな内容だ。

まず、在りし日の室伏を偲ぶ映像が特別に公開される。芥正彦との共演で2013年に撮り下ろされた「アルトー二人 – Special remix version-」(2/18)、1980年代にパリを中心に活動していた頃の映像を含むパフォーマンスのダイジェスト「Ko / Wandering Body 80s」(2/19)、70年代に福井県・北龍峡での貴重な稽古風景や旗上げ公演「虚無僧」キャバレーショー等の映像のダイジェスト版「Ko / Wandering Body 70s」(2/20)、2000年代のイタリア・レッチェでの公演映像等のダイジェスト「Ko / Wandering Body 2000s」(2/21)、さらにコロンビア共同制作のドキュメンタリー「Mercure Sea」(2/22)を上映する。

パフォーマンスとしては、2/19にKo&Edgeの代表作『DEAD1』と女性ダンサーも含む群舞『墓場で踊られる熱狂的なダンス』を公演。2/20・21には、公私にわたり室伏鴻と親交の深かった2人——音楽家・文筆家の大谷能生とダンス批評家で「吾妻橋ダンスクロッシング」のオーガナイザーである桜井圭介——がキュレーションを担当する「赤レンガダンスクロッシング for Ko Murobushi」の公演がある。こちらは川口隆夫、大橋可也、岩渕貞太、吉田隆一&吉田アミ、呑むズ(美川俊治、HIKO,大谷能生)、伊東篤宏、捩子ぴじん、安野太郎、志賀理江子、core of bells、飴屋法水、岡田利規、山川冬樹、JUBEら、錚々たる面々が出演する贅沢な企画だ。室伏鴻が、ステージ上において一貫して追求していたであろう「ダンスを外へひらく」というコンセプトを受け継ぎながら、舞踏の外へ、ダンスの外へ、アートの外へ、という視点でプログラムを組んだという。桜井圭介は、今回の企画について、以下のようにコメントを発表している。

「室伏さんには吾妻橋ダンスクロッシングにも度々参加していただき、Edgeの『DEAD 1』も吾妻橋で初演されました。そうしたこともあり、今回は室伏鴻に捧げるダンスクロッシングです。室伏さんが「俺にかこつけてデタラメ放題やりやがって」と苦笑(激怒?)してもらえるようなプログラムを心がけました。」(吾妻橋ダンスクロッシング 桜井圭介)


さらに、トークやカンファレンスも充実している。鴻英良×高嶺格「芸術と公共」(2/18)、鴻英良×片山正夫「芸術と公共」(2/19)、西谷修×細川周平「室伏鴻 パリの時代」(2/19)、宇野邦一×鈴木創士「室伏鴻の身体の思考をめぐって」(2/20)、木村覚×島貫泰介「未来のダンスを開発するための「連結」方法―「ダンスを作るためのプラットフォーム」BONUSについて―」(2/21)、そして、2/22にはインターナショナルな視野から外国人研究者が参集するカンファレンス「鴻 漂泊する肉体」も開催される。

生前の室伏は、以下のような言葉も残している。

領土は領土自体を超えるものを解き放つ
われわれはたえずこの「瞬間」に引き戻される
生まれ故郷は<外>にあるのだ

舞踏を世界に知らしめ、ダンスを外へ開き活躍した室伏鴻。不世出のアーティストを追悼・追想しつつ、その業績を未来に繋げ寿ぐ、貴重な5日間となる。

イベント情報
室伏鴻追悼企画『<外>の千夜一夜 vol.2』
■日時:2016年2月18日(木)~22日(月)
■場所:横浜赤レンガ倉庫1号館(045-211-1515)

■プログラム:
●2月18日(木)
12:45―13:45[映像]
「アルトー二人 Special remix version」
出演:芥正彦/室伏鴻
振付・演出:室伏鴻
撮影・編集・構成:鈴木章浩
※2013年『〈外〉の千夜一夜』において上演された「アルトー二人」のために撮り下ろされた映像を鈴木章浩が編集・構成。
料金:入場無料
15:00 ~17:00[Talk Session]
「芸術と公共」
出演:鴻英良×高嶺格
料金:前売500円/当日800円
17:30―19:00[Free Session](3Fホワイエ)
※Free session 出演ダンサーにつきましては公式HPにて発表いたします。
料金:入場無料

●2月19日(金)
13:00 ~13:45[映像]
「Ko / Wandering Body 80s」
※1980年代 パリを中心に活動していた頃の映像を含むパフォーマンスダイジェスト版
料金:入場無料
15:00~17:00[Talk Session]
「芸術と公共」
出演:鴻英良×片山正夫
料金:前売500円/当日800円
19:00~20:00[公演]
「DEAD1」+「墓場で踊られる熱狂的なダンス」
振付・演出:室伏鴻
出演(「DEAD1」):林貞之/目黒大路/鈴木ユキオ
出演(「墓場で踊られる熱狂的なダンス」):中村蓉/堀菜穂/関かおり/岩渕貞太/山田有浩
料金:前売2500円/当日2800円
20:15―21:45[Talk Session]
「室伏鴻 パリの時代」
出演:西谷修×細川周平
料金:前売500円(当日800円)

●2月20日(土)
13:00~13:45[映像](3F ホワイエ)
「Ko / Wandering Body 70s」
※70年代 北龍峡での貴重な稽古風景、旗上げ公演「虚無僧」キャバレーショー等の映像のダイジェスト版
料金:入場無料
14:00~15:30[Talk Session]
「室伏鴻の身体の思考をめぐって」
出演:宇野邦一×鈴木創士
料金:前売500円/当日800円
15:30~18:30[公演]
「赤レンガダンスクロッシング for Ko Murobushi」
出演:川口隆夫と大橋可也と岩渕貞太と吉田隆一&吉田アミ/呑むズ(美川俊治、HIKO、大谷能生)× 伊東篤宏(※20日のみ)/スガダイロー×ucnv×パードン木村 (※20日のみ)/捩子ぴじん×安野太郎×志賀理江子/岡田利規/core of bells/飴屋法水
キュレーション:桜井圭介&大谷能生
料金:前売3800円/当日4000円
※「赤レンガダンスクロッシング」学割(3200円)あり(数に限りあり)

●2月21日(日)
11:00 ~11:45[映像](3F ホワイエ)
「Ko / Wandering Body 2000s」
※イタリア・レッチェでの公演映像等、2000年代の公演のダイジェスト映像
料金:入場無料
13:15~14:45[Talk Session]
「未来のダンスを開発するための「連結」方法―「ダンスを作るためのプラットフォーム」BONUSについて―」
出演:木村覚×島貫泰介
料金:前売500円/当日800円
17:00~20:00[公演]
「赤レンガダンスクロッシング for Ko Murobushi」
出演:川口隆夫と大橋可也と岩渕貞太と吉田隆一&吉田アミ/空間現代×ucnv(※21日のみ)/捩子ぴじん×安野太郎×志賀理江子/山川冬樹×JUBE×大谷能生(※21日のみ)/岡田利規/core of bells/飴屋法水
キュレーション:桜井圭介&大谷能生
料金:前売3800円/当日4000円
※「赤レンガダンスクロッシング」学割(3200円)あり(数に限りあり)

●2月22日(月)
11:00 ~11:45[映像]
「Mercure Sea」(コロンビア共同制作ドキュメンタリー)
料金:入場無料
12:30~16:15[International Conference : Murobushi Studies Vol.1]
[ラウンドテーブル]
出演:ホナタン・カウディロ(イベロアメリカナ大学哲学科博士課程)/カティア・チェントンツェ(早稲田大学非常勤講師)/バジル・ドガニス(映画監督)/レア・ボリジ(ダンサー・コリオグラファー)/越智雄磨(早稲田大学演劇博物館助手)/伊藤愉(大阪大学日本学術振興会特別研究員)/バタリタ(ダンサー・コリオグラファー)/他
15:00~15:50
[講演]
『<外>の室伏鴻』
出演:石井達朗
[映像]
「encounters within〈仮〉」
企画・製作:バジル・ドガニス
料金:前売500円/当日800円
16:15 ~17:15[Free Session]
※Free session 出演ダンサーにつきましては公式HPにて発表いたします。
料金:入場無料
[Closing Party]
 

■問合せ:k_kunst_watanabe@yahoo.co.jp
携帯 080-5538-6407(渡辺)
■主催:Ko&Edge/k-kunst
■共催:横浜赤レンガ倉庫1号館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
■助成:公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団、公益財団法人セゾン文化財団
■協力:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団) 
■キュレーション:桜井圭介/大谷能生/石井達朗/鴻英良/森下隆/中原蒼二
www.ko-murobushi.com/outside-2015/
※また「吾妻橋ダンスクロッシング」ツイッター公式アカウント AZUMABASHIDX にて随時告知中。 
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