Awesome City ClubがシンリズムとAPOGEEを迎えた、グッドミュージックに浸る一夜

レポート
音楽
2016.3.25
Awesome City Club

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Awesome Talks -Vol.03 2015.3.17 SHIBUYA CLUB QUATTRO

Awesome City Clubの自主企画イベント『Awesome Talks』の第3回が、3月17日、渋谷CLUB QUATTROで開催された。いま、熱く注目されているバンドたちを目撃する機会とあって、開演前から大勢のオーディエンスが詰めかけたこのイベント。来場者を楽しませるべく、出演バンドをイメージしたグラフィック映像の投影や、メンバーゆかりのクリエイターからも様々なアイテムを募ったというフリーマーケット&展示もなされており、「ライヴを観るぞ!」という前のめりな熱というよりは、洒落たギャラリーや気の利いた雑貨店にふと立ち寄ってみた時のような、どこかそわそわとした楽しさと、出会いへの予感が高まる。

Awesome City Club

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シンリズム

開演時刻を迎え、まずステージに現れたのはシンガーソングライターのシンリズム。バンド編成で現れた彼の1曲めは「手のなる方へ」だ。フォーキーな質感のギターを基調としつつ、各楽器のコンビネーションが芳醇な広がりを見せるサウンドは、キャリアあるAORグループのスタンダード・ナンバーと言われても納得してしまいそうなほど。2曲めの「放人主義」も、ミディアムながらも洒脱なハネ感があり、どこかCloudberry Jamあたりのスウェディッシュ・ポップの遺伝子も感じさせた。

バンドメンバーと笑顔で目配せを交わしながら、音楽への愛をストレートに歌った「Music Life」まで4曲、時間にすれば25分ほどのライヴだったが、それぞれの楽曲に異なる物語があり、連作オムニバス映画を観た後のような満足感があった。この春に高校を卒業し、進学に合わせて神戸から上京するというシンリズム、末恐ろしい才能である。

APOGEE

続いてのアクトは、Awesome City Clubのメンバーがフェイバリットに挙げるバンド、APOGEEだ。

ステージ登場そうそうに機材に不具合が発生するも、取り乱すこともなく永野亮(Vocal,Guitar)が「これは喋れってことか(笑)。『Awesome Talks』だもんね。今日は本当に呼んでくれてありがとう!」とフォロー。そのまま、「あ、いける?」と1曲目の「OUT OF BLUE」が始まるや、一瞬で会場の空気が変わった。レゲエやダブの血も色濃いディープなグルーヴと、きらめく電子音がフロアを満たし、オーディエンスも身体を揺らし始める。そのまま、硬質なドラミングの上で永野がスキャット的歌唱を披露しつつ踊り狂った「Tonight」や「Twilight Arrow」など、セットリストが進行するにつれ、楽曲の余韻と音のレイヤーが折り重なり、ある種のトランス状態にズブズブと引きずり込まれていくような感覚だ。

 新曲である「RAINDROPS」と「Higer Deeper」も披露し、新旧の楽曲を織り交ぜたメニューでフロアを深い陶酔感で満たして、彼らはステージから去って行った。

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転換中の鹿野淳氏によるDJプレイも聴きどころであった。「僕らが旅に出る理由」や「ルーキー」、capsuleと吉幾三、ダフトパンクのマッシュアップなど、ジャンルも年代も超えた奔放なプレイに、フロアのテンションは高まりっぱなしだ。

そして、いよいよイベントホストであるAwesome City Clubの登場である。「『Awesome Talks』へようこそ!」というatagi(Vocal,Guitar)の言葉とともにオープニングナンバーの「Lesson」のイントロが奏でられ、ついでatagiのシルキーなファルセットが響き渡るや、待ってましたとばかりに大歓声が上がった。しっとりと歌を聞かせた後は、「It's So Fine」でatagiとPORIN(Vocal,Synthesizer)、マツザカタクミ(Bass,Synthesizer,Rap)が揃いのゴキゲンなステップを踏み、会場は多幸感に溢れたダンスフロアに変貌していく。

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「4月のマーチ」では、PORINがハンドマイクを手にステージの前方へ。シンセを奏でるミュージシャン然とした佇まいから一変し、まるで地面から数センチ浮いているんじゃないかとすら思える華やかで小悪魔的、可憐なパフォーマンスで観客を魅了。緩急自在のプレイを見せるユキエ(Drums)のジョイフルなマーチングドラムといい、PORINを引き立てるように一歩下がり演奏に没頭するメンバーといい、楽曲ごとに変幻自在のフォーメーションを見せるのも、Awesome City Clubというバンドの大きな魅力だ。

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モリシー(Guitar,Synthesizer)が奏でる鍵盤のメロディがノスタルジックなオレンジの照明の中で広がった「僕らはここでお別れさ」で一時会場をクールダウンさせ、5曲めの「WAHAHA」へと。ここではマツザカタクミがキレのいいラップを聴かせ、atagi、PORINへとボーカルをリレーしていく。ピコピコと跳ね回るストレンジでキュートなエレクトロ・サウンドと相まって、見渡せば誰もが笑顔を浮かべている。

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今回のライヴで初披露された新曲の歌謡曲的アプローチといい、ラグジュアリーなストリングスが心地いい「アウトサイダー」といい、似たような曲はひとつもない。とはいえ、あり余る音楽的素養にまかせて奇をてらったりするのではなく、グッド・ミュージックであるという軸がしっかり通っているからこそ、彼らは強烈な支持を集めているのだろう。

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80'sニューウェイヴの匂いを感じる新曲「Vampire」から、盛大なコール&レスポンスが起こったオリエンタル・ポップ「涙の上海ナイト」のラストへと、次々に景色が変わっていくさまはまるで魔法のよう。ゲストに迎えた2組のパフォーマンスやステージ外の見せ方も含め、「好きなようにやらせてもらっています」と笑顔で語りつつも、新世代の旗手としてのビジョンと在り方をしっかりと刻んだ、素晴らしいイベントだった。


レポート・文=矢野裕也

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セットリスト
Awesome Talks -Vol.03 2015.3.17 SHIBUYA CLUB QUATTRO
 
1. Lesson
2. It's So Fine
3. 4月のマーチ
4. 僕らはここでお別れさ
5. WAHAHA
6. 新曲
7. アウトサイダー
8. Lullaby for TOKYO CITY
[ENCORE]
9. Vampire
10. 涙の上海ナイト
 

 

ツアー情報
『Awesome Talks -One Man Show 2016-』

6月25日(土) 大阪・心斎橋JANUS
OPEN 17:30/START 18:00    
[問]GREENS 06-6882-1224(平日11:00~19:00)
6月26日(日) 愛知・伏見JAMMIN
OPEN 17:30/START 18:00
[問]JAIL HOUSE    052-936-6041(平日11:00~19:00)
7月3日(日) 福岡・Drum Be-1
OPEN 17:30/START 18:00    
[問]BEA 092-712-4221(月~金 11:00~18:00 第2・第4土曜日 11:00~15:00)
7月8日(金) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
OPEN 18:00/START 19:00    
[問]HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999(平日12:00~18:00)

ワンマンライブ先行受付情報はツアー特設サイトもご覧ください。
http://www.accspecial.com/tour2016/

 
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