男性声楽オペラユニット・La Dill登場!サンデー・ブランチ・クラシックレポート
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奇跡の4オクターブ!男性声楽オペラユニットLa Dill登場
第19回“サンデー・ブランチ・クラシック”2016.3.20ライブレポート
春の気配が近づく三連休の中日となった3月20日(日)。カフェには、ゆっくりと休日を満喫するお客様の姿が。この日の「サンデー・ブランチ・クラシック」に登場してくれたのは、La Dill(ラ・ディル)。世界最大級の声楽団体である二期会から選抜された彌勒(みろく)忠史、坂下忠弘、金山京介、岩田健志による男性声楽オペラユニットが、4オクターブの奇跡のハーモニーで日曜日の午後を包み込んだ。
燕尾服を身にまとい、颯爽と現れたLa Dillの4人。まずは、1曲目にヴェルディ作曲 歌劇≪椿姫≫第一幕より『乾杯の歌』を披露してくれた。この曲は、オペラの中でコーラスとともに男性ソリストと女性ソリストが掛け合いを聴かせる楽曲。男性4人のグループだが、女性パートはカウンターテナーの彌勒が担当し、メンバーが一節ずつ歌い回していく。彌勒の高く澄んだ声と、金山のテノール、坂下と岩田のバリトンが混ざり合い、大迫力の『乾杯の歌』となった。
La Dill (撮影=寺坂ジョニー)
「みなさん、本日はようこそおいでくださいました!」と挨拶する彌勒の声は、普通の低い男性の声なので、分かってはいながらも驚いた。カウンターテナーは、声帯を短く使い声を出すのだという。彌勒は声の出し方を弦楽器に例え、コントラバスでも弦を短く使うことでヴァイオリンの音域まで出せるように、人間の声も声帯の使い方で同じようなことができるのだと説明してくれた。
続いて、「そろそろ桜が咲く季節になってまいりましたね」と歌ってくれたのは、滝廉太郎作曲『花』。日本の心を歌うメロディに、4色の声が次々に花を咲かせていく。La Dillとともに演奏活動を行う吉田貴至のピアノが、小川の流れのように寄り添い、春の訪れを告げるあたたかな空気がカフェに満ちていった。
La Dill (撮影=寺坂ジョニー)
2曲を歌い終えると、MCを代わった坂下が、「次の曲は、私たちのファーストアルバムより2曲続けてお届けしたいと思います」と紹介。尾崎亜美がLa Dillのために書き下ろしたオリジナルナンバー『匂い立つ風』と『SOUND OF MUSIC』(映画『サウンドオブミュージック』より)を聴かせてくれた。
La Dill (撮影=寺坂ジョニー)
『匂い立つ風』は、ユニゾンから広がるハーモニーで、耳を傾けているだけで心が浄化されるような気持ちにさせてくれる。ハーブの名である“ディル”の名にふさわしい癒しを体現するような、La Dillそのものとも言える曲だ。映画でおなじみの『SOUND OF MUSIC』も、尾崎が訳詞と編曲を担当。4人の声が日本語の良さを心の深いところまで届けてくれるようだった。
La Dill (撮影=寺坂ジョニー)
「次にお送りいたしますのは『マイ・ウェイ』。この曲は、たくさんの方がカバーしていて、世界で2番目にカバーされた回数の多い曲です」と岩田が紹介すると、他のメンバーから「え、そうなの?!」「知らなかった!」と驚きの声が。何で調べたの?と問われると「Wikipediaです(笑)」とのこと。(ちなみに、カバー回数No.1はビートルズの『イエスタディ』だそうだ)
La Dill (撮影=寺坂ジョニー)
そんな楽しいMCを混ぜつつ、早いものであっという間に最後の曲になってしまった。金山が笑顔で「拍手を頂いたら、4等分します!」と宣言するなか、プッチーニ作曲 歌劇≪トゥーランドット≫より『誰も寝てはならぬ』を高らかに歌い上げ、喝采を浴びた。盛り上がりきった会場からは、4等分しても収まりきらない拍手のアンコール!再びステージに姿を現した4人は、大迫力の『Time To Say Goodye 』で、熱い声援に応えてくれた。
La Dill サイン会の模様 (撮影=寺坂ジョニー)
La Dill サイン会の模様 (撮影=寺坂ジョニー)
出演を終えたLa Dillに感想を聞いてみると、皆一様に「緊張しないでリラックスして歌えた」と、普段のコンサートホールとは違う雰囲気を感じながら歌うことができたと口にした。目の前にする聴き手がリラックスしていると、それは演じ手にも伝播するようだ。
そんななか、カウンターテナーの彌勒は、この場所に特別な思い入れがあるという。「高校生の頃に、このビルでジャズ・ミュージシャンの渡辺貞夫がプロデュースするライブがあって。『ナベサダさんの演奏が聴きたい!』と思って足を運んだら、その日はご出演されない日だったんです。そうしたら、その事情を聞いたナベサダさんが、後日ご自身の出演日にご招待してくださったんですよね」と振り返る彌勒。「同じ場所に、自分が音楽家になって立てたことに感動です」と感慨深げだった。
La Dill インタビューの模様 (撮影=寺坂ジョニー)
La Dillは、2016年でメジャーデビュー2周年を迎える。4月16日(土)には、「2nd Greeting Tour in ホテルグリーンプラザ 2016-17」が軽井沢公演を皮切りに、2017年2月まで予定されている。また、今回のツアーには初の試みとして、4人のメンバーそれぞれのソロ・ライブ『La Dill a la carte !!』も行われる。これまで、ピアノ伴奏としてLa Dillと活動をともにしてきた吉田は、La Dillの魅力について「なんといっても優しい声。穏やかで、柔らかくて。老若男女問わず、癒しを与えてくれるところが、一番の魅力だと思います」と語る。2周年を迎え、ますます円熟するLa Dillの魅力を存分に堪能して頂きたい。
今後、La Dillとしてやってみたいことを聞くと「全国ツアーやれたらいいですよ」「ドラマの主題歌やってみたい…」「映画もいいよね!」「全部やりたい!」などなど、いろいろ飛び出し、今後の活動にさらに夢が広がった。
最後に、「我々、またこちらに戻ってきたいなと思っておりますので、皆様もサンデー・ブランチ・クラシックにどんどん足を運んで、音楽を楽しんで頂けたらなと思います。またお目にかかりましょう!」とメッセージをくれた4人。再登場する日を楽しみに、この日の記憶を心に留めておきたい。
La Dill (撮影=寺坂ジョニー)
日曜日の昼下がりを彩る「サンデー・ブランチ・クラシック」を、これからもお楽しみに!
撮影=寺坂ジョニー 文=友成礼子
世界最大級の声楽家団体(プロの声楽家2600名在籍)二期会から選抜された若手実力派オペラ歌手4名による男声オペラユニット。
シンガーソングライター・尾崎亜美のプロデュースにより クラシック声楽のオペラとJ-POPの世界を融合させた新たなる世界観を持つアルバム「匂い立つ風」を2014年日本クラウンからリリース。
カウンターテナー(ソプラノの音域を男性が歌う)からバリトンまで4オクターブの奇跡のハーモニーを奏でる世界でも類を見ない男声オペラユニット。
彌勒忠史(カウンターテナー)Tadashi Miroku
千葉大学大学院修了。東京藝術大学卒業。イタリア国内外劇場でオペラ、 演奏会に出演。放送大学、学習院生涯学習センター講師。
在日本フェッラーラ・ルネッサンス文化大使。NHKラジオ「まいにちイタリア語」講師。
著作「イタリア貴族養成講座」(集英社)、CD「古楽仕立てのカンツォーネ」等。
平成24年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。二期会会員
坂下忠弘(バリトン)Tadahiro Sakashita
桐朋学園大学及び同大学研究科、二期会オペラ研修所マスタークラス修了。
中田喜直記念コンクール大賞(第一位)及び中田喜直賞受賞。
オペラ、コンサート、シューマン「詩人の恋」リサイタル等で活躍。
フランス・ニース国際音楽アカデミーのディプロムを取得。シャネルピグマリオンデイズ
コンサート2012アーティスト。二期会会員
金山京介(テノール)Kyosuke Kanayama
国立音楽大学音楽学部演奏学科声楽専修及びオペラソリストコースを経て東京藝術大学大学院修士課程(オペラ)修了。
藝大オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』フェランド、藝大「メサイア」、「第九」モーツァルト「レクイエム」などのソリストを務める。
2015年7月東京二期会・リンツ州立劇場との共同制作『魔笛』に出演。二期会会員
岩田健志(バリトン)Iwata Takeshi
桐朋学園大学卒業。同研究科修了。二期会オペラ研修所マスタークラス修了。
ニューウェーブ・オペラ劇場『子どもと魔法』で二期会デビュー。
『カルメン』『電話』『ラ・ボエーム』マルチェッロなど活躍を続け、14年東京二期会・ドイツ・フランクフルト歌劇場との提携公演『ドン・カルロ』でも存在感を示した。二期会会員
松田理奈(ヴァイオリン) & 中野公揮(作曲家、ピアニスト)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE:500円
4月24日(日)
前川ひろみ(ヴォーカル)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE:500円
公式サイト:http://livingroomcafe.jp/