Wけんじ企画 山内ケンジ×山内健司にインタビュー【動画あり】

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2016.4.17
左:山内ケンジ、右:山内健司

左:山内ケンジ、右:山内健司


城山羊の会山内ケンジ(本名・山内健司)さんと、青年団山内健司さん。 同姓同名の2人が満を持しての初タッグ、その名も「Wけんじ企画」が、4月下旬よりこまばアゴラ劇場で『ザ・レジスタンス、抵抗』を上演する。 2人のアフタートーク日は即完売。 その後、トーク追加日や、追加公演が決定するほど。 そんな注目公演の生みの親・2人の山内健司に、SPICEが独占取材をおこなった。

― まずは、2人の「山内健司」さんが、お互いを意識し始めたきっかけを教えてください。

山内ケンジ(以下、ケンジ): 青年団は、まだ僕がCMの仕事しかやってない頃に 『ソウル市民』(1993年) を観たのが初めてなんですが、その前にチラシを見て「同姓同名の人がいる」って。うちの母親には「アンタ、何してんの?!」「仕事しながら舞台やってるんじゃないの?」と言われていました(笑)。

山内健司(以下、健司): 僕は「UFO仮面ヤキソバン」(1993~1995年)のCMで、「巨匠、あらわる!」って、雑誌やメディアにものすごい出ているのを見て「あ~同姓同名だ」って。

― 「(青年団の山内健司さんとは別人の)」と書かれていたからではないんですね。

健司: いやいやいや、CM界の巨匠に「(青年団の山内健司さんとは別人の)」って書かれてビックリしました、恐縮でした。あれは第1回目(2004年 山内健司の演劇『葡萄と密会』)からですか?

ケンジ: 1回目からです。最初はシャレで書いていたんだけど、続けていくうちに、広告業界からもっと演劇界へ行きたい、片手間でやっているつもりはないんだよ、という意思表示なところもありました。

山内ケンジ

山内ケンジ

― 今回ついに、ケンジさんが書いたものを健司さんが身体化する、という夢の合体ですが、ケンジさんのほうから、この企画を出したと聞いています。

ケンジ: そうです。僕がおととし、青年団のメールに「こういう企画があるんですけど、どうですか?」って。

健司: しかも平田オリザへの直メールじゃなくて、青年団ホームページの「お問い合わせ」フォームから……(笑)。「え、こっから来たよ?! 」ってもう、制作がざわざわと。

ケンジ: それで僕とオリザさんと制作さんと……山内さん抜きで打ち合わせさせていただきました(笑)。

健司: 青年団にはいろんなプロデュース公演のやり方があって、どういう形にしようかってことを話したと思うんです。いろんな折半の仕方があって、作・演出だけを外部から呼んだり、例えば本広克行さんが来たりとか。

ケンジ: そうそうそう、最初のメールですでに、「本広企画みたいな感じで」って書きました。

― 設定としては「52歳の山内健司さんがインポテンツになり、バイアグラなどを試し“抵抗”する。でもそれは同時に今の社会に対する“抵抗”にも見えてくる」ということです。

ケンジ: 「インポテンツの話」っていうのはそんなに珍しくなくて。ある程度の年齢の人の話になると、どうしてもそういう話になる。

健司: どうしても(笑)。

ケンジ: でも、それをただ描くだけではなく、そういうことを関係ない人たちにも興味深く観ていただけるだろうか、ということを考えています。

― もう台本は仕上がっていますか?

ケンジ: まだまだですね(笑)。けれど、当然オリザさんとはテイストが違うので、みんなの違う面を引き出したいな、と。今回、青年団の人たちしか出演しないんです。今年の青年団は、宮沢章夫さん(遊園地再生事業団+こまばアゴラ劇場『ワークインプログレス・子どもたちは未来のように笑う』)や、矢内原美邦さん(ミクニヤナイハラプロジェクト『東京ノート』)とのコラボシリーズがあって、どちらも誰か自分のよく知っている俳優さんを必ず混ぜて、プラス青年団、という形だった。そういう話もありましたが、どうせやるなら全員青年団でやりたい。そして、青年団は群像劇もひとつの特徴だから、そういう形式や条件を同じにして、違うものにしたいな、と思っています。

― 稽古が始まってみて、ケンジさんは演出をどのように進めていますか?

ケンジ: 演出、してないですよ(笑)。稽古に顔出してないですもん。まだ書いているので。

― では、どなたかテイストを決める係がいるのですか?

健司: 僕はその…俳優だけで創る現場で、誰かが演出的にふるまうっていうのは、なんかちょっと苦手で。遊べない感じがするし、見張られているみたいでイヤじゃないですか。でもケンジさんが、「みなさんで創ってください」って言ってくれるんで。じゃあ僕らはどういうふうにして創るのかな、ということを考えると、俳優は演出家とだけ仕事しているわけじゃなくて、同じように相手役と仕事しているわけです。だからとにかく「しゃべろうよ」と。何考えているかしゃべろうよ、うまくしゃべれるように頑張ろうよ、と、できるだけフラットな雰囲気でやっております。そこに2日に1回くらいケンジさんがいらして、細かいノート(ダメ出し)を残して去っていく、という感じでしょうか。

山内健司

山内健司

ケンジ: 僕は書きあがってからちゃんと言い始める。ただそれが初日の数日前だったりするので、「え、今言うの?!」と思われることは、よくあるんですけどね。

健司: でも俳優陣、実はそういうの慣れてますからね。

― 平田オリザさんとの明確な違いは?

健司: テキストにつきますよね。面白い!城山羊の会を外から観ていたのと違いますね。ふわっと、表面張力があふれる感じのプルプルッとしたエロさもあるし、あふれてからのドバドバいくエロさもあるし、そういうものがビッシリ敷き詰められていて。登山に例えると、フリークライミングの難しい課題をドサッと渡された感じでね。「ああ、いつも城山羊の会の役者はこういうの登ってたんだ。これは確かに、役者はみんなやりたがるよな」と。平田との違いは、びっしりさ加減と、エロさ加減と、「あ、これは役者が夢中になりそうだ」というところですね。

ケンジ: 青年団の場合、再演が多い。初演の時は山内さんや創立メンバーを想定して書いていたと思うんです。ところが、次の代からは既に役があるものを演る、ということが多いと思うんですよ。今回は稽古を見ながら、完全にその役者を想定して書いている。

― 自分たちのために書かれた、完全な新作、ということですね。しかも、「あの人面白いな」「あの人こういうことするんだ」ということで台本が変わってしまう緊張感がある。

ケンジ: だから彼らも、自分がやることが台本になる、「まさに、今!」っていう実感が違うんじゃないですかね。

― ケンジさんには、芝居の全体像はすでに見えているのでしょうか。

ケンジ: 書いていて近いな、と思うのは、映画 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 です。ブロードウェイの劇場が舞台のほとんどで、一人の男にたえずカメラがついていく。ときどき男以外の視点に行くんだけど、また男の主観に戻る。主人公の男、というのがハッキリいる。城山羊の会は「主人公が誰」ってハッキリわからないところがあるんです。だからこれだけ誰かが中心になっている、っていうのは初めてかもしれないですね。

健司: 僕からすれば、次から次へと刺客が……第11の刺客まで飛んでくるような。

左:山内健司、右:山内ケンジ

左:山内健司、右:山内ケンジ

― みんなが健司さんを痛めつけにくる。

健司: どんどん削られています……。

― それは楽しみです! ところで、この先も「Wけんじ企画」をやりましょう、という話はあるのですか?

ケンジ: ありません。

― (笑)

ケンジ: ただ、青年団の人たちとは一緒にやっていくだろうなと思います。オーディションを、去年の2月に大々的にやったので、若手までたくさん知ることができた。今後、城山羊の会に出てもらうこともあるだろうし、青年団でもまたこういう企画の可能性はあるんじゃないでしょうか。

左:山内健司、右:山内ケンジ

左:山内健司、右:山内ケンジ

― 『ザ・レジスタンス、抵抗』というタイトルについて。

健司: 今回、アンリ・ルソー(フランスの画家)の『豹に襲われる黒人』っていう、影のような人が虎に襲われている絵がモチーフなんですが、「いやいやいや、ちょっと待って、生きてるぞ!」と、そういう“抵抗”の声はあげなければなっ、と思います。絵を見てね、ボーッと、考えるんですよ。アンリ・ルソーって、100年以上前の人で、原爆とか、パッと人間が消されちゃう時代でもないのにそういう視点を持っていて、それに似たものを感じています。意味がない、と言われることに対して「ちょっと待って」と“抵抗”したい気持ちが……ああッ、これ以上はネタバレができないー!!

ケンジ: 僕は最近、2本目の映画を監督して公開したんですが、演劇とはだいぶ違う世界なので、商業映画、メジャーを意識せざるをえない。全然メジャーなものにはできてないんですけど、じゃ、メジャーをやりたいのか?といえば、やっぱり自分のやりたいことと、たくさんの人が観る、いわゆる商業主義とのギャップがある。もちろん完全に閉じちゃうのは良くない。でも自分が商業主義の中に入っていくと、やりたいことができなくなる。人生の残り時間は少ないので、これからも、自分のやりたいことをやらないといけない。その意地が、“抵抗”ってことになると思います。

健司: 映画は商業主義への目配りも考えるんでしょうが、そういう意味では、今回、ケンジさんのやりたいことが容赦なく来るだろうなと思っていました。私の事務所が何か言ってくるってことも絶対にないですし。

― NGはないぞ!ってことですね(笑)。

ケンジ: (笑)そんなすごいことはしないですよ。おだやか。全然おだやか。ただ、「いつもの青年団とは、ほんのちょっと違うよ」っていうことくらい(笑)。

このあと、Wけんじさんからメッセージをいただきました。 Wけんじ、というからには、もちろん…?! この先は、動画でお楽しみください↓↓↓

(取材・文=ヨコウチ会長、 写真=大野要介・安藤光夫)
 
公演情報
Wけんじ企画
『ザ・レジスタンス、抵抗』


■日程:2016年4月28日(木)~ 5月11日(水)
■会場:こまばアゴラ劇場
■作・演出:山内ケンジ(城山羊の会)
■出演:山内健司 永井秀樹 川隅奈保子 端田新菜 大竹 直 鄭 亜美 折原アキラ 前原瑞樹
坂倉奈津子 石川彰子 串尾一輝 朝比奈竜生 (以上、青年団)
■公式サイト:http://www.seinendan.org/play/2016/01/4892
※アフタートークのスケジュールは公式サイトで確認を。

 
プロフィール
山内ケンジ
1958年東京生まれ。電通映画社(現・電通テック)を経てCMディレクターとして活躍。CMディレクター時の名義は、山内健司。2004年から突然、演劇の作・ 演出を開始。城山羊の会主宰。2014年、『効率の優先』で第58回岸田國士戯曲賞最終候補に。2015年、『トロワグロ』で第59回岸田國士戯曲賞を受賞。また、演劇活動から生まれた映画『ミツコ感覚』(2011年)、『友だちのパパが好き』(2015年)も発表している。
 
山内健司
1963年大阪生まれ。1984年国際基督教大学在学中に劇団青年団に参加、90年代にはじまる「現代口語演劇」の創成に大きく関わる。代表作『東京ノート』はこれまでに15カ国24都市で上演される。フランス、韓国との国際共同制作に多数参加。演劇を劇場の中だけのものとしない多彩な活動を展開。ワークショップなども積極的に行っている。平成22年度文化庁文化交流使として全編仏語一人芝居をヨーロッパ各地の小学校で単身上演。
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