【blur映画公開記念】アルバム「ザ・マジック・ウィップ」収録曲全曲解説+インタビュー特集 第1弾

インタビュー
音楽
2016.4.27

昨年4月にリリースされたブラーの最新アルバム「ザ・マジック・ウィップ」。この作品の香港での制作過程からハイドパークまでを迫ったドキュメンタリー映画『ブラー:ニュー・ワールド・タワーズ』の日本公開が決定したのは既報の通り。
映画公開を記念して、メンバー4人によるアルバム収録曲全曲解説を、オフィシャルインタビューと共にお届けしようと思う。

香港でのスタジオセッション中、特に思い出深い出来事とは?

映画の中にもふんだんに使われている、香港のスタジオでの作業の様子。
中でもメンバーが気ままにセッションするシーンは、グレアムの脱退を乗り越えリユニオンした過程を知るファンにとってはこみ上げるものがある。劇中では、まさかのアノ曲のカバーまで…!
デーモンは、スタジオでのセッション中で思い出深い出来事として、下記のように答えている。

デーモン:
俺達には考える時間がなかった。というのも、アイデアがたくさんあって、『よし、今度はこれをやってみよう』って感じで、満足できるサウンドでいい感じのエネルギーがあるものができたら、すぐに『よし、もうひとつ、次はこれをやろう』って感じだったから、じっくり考える暇がなかったんだよね。
次々とやっていって、最後に聴き直すこともしなかったと思う。とにかく途方もない量の音源ができていたから。
最後の日は、こんなコンディションの悪い、蒸し暑い小さな部屋から出られるのが嬉しくて、とにかく早く出ようって感じだったと思う。だから、うん、5日間くらいで十分だね。特に居心地がいいとは言えないスタジオで、ほかと比べてうまくできないことがあったり、電圧が違うから雑音や揺れがあったりすると……いや、西洋のモデルと東洋のモデルの間でキャリブレーションはいらないか、特にこのスタジオでは。

そんなわけで、そういうテンションが今作のサウンドを生み出したんだと思うよ。確実にね。

【アルバム全曲解説】1.ロンサム・ストリート

グレアム:
“ロンサム・ストリート”は、かなり……過去50年のイギリスのポップ・ミュージックから吸い取ったものがたくさんあるんだ。そう、この曲には歩く速度に似てるところがあるというか、その、ギター・リフがね、リフが特徴的で、生意気な感じのヴォーカルがあって、すごくふてぶてしいんだけど、ちょっと奇妙な感じになるところも出てきて、そういうパーツが僕は聴いてて一番楽しいんだよね。

アレックス:
まさに2015年に香港でやったブラーってサウンドだよね!
これはどこからともなく、自然に生まれた曲で、どうやってできたのかよくわからないんだ……このバンドで最初の曲を書いたときと同じだった。みんなで一緒に部屋にいて、お互いよりもデカい音を出そうとがんばってるうちにできたっていう。


【アルバム全曲解説】2.ニュー・ワールド・タワーズ

アレックス:
“ニュー・ワールド・タワーズ”。この曲を聴くと必ず連れ戻されるんだ。あのエスカレーターとか、フラッシュライト、摩訶不思議なメニュー、完全な別世界にいる感覚とか、そういうものにね。
ほら、香港ってパラレル・ワールドみたいで、俺達と同じものが何でもあるんだけど、みんなどこか違ってるっていう。そして無限のエネルギーと、拡大する地平線、成長と繁栄があるところなんだ。

デイヴ:
デーモンの代わりに説明するのは嫌だから、曲の内容については話したくないけど、“ニュー・ワールド・タワーズ”は僕が今作の中でも特に気に入ってる曲で……ニュー・ワールド・タワーズっていうのは、僕達が毎日見ていたホテルの隣にあった高層ビルの集まりなんだ。
香港にいたときの記憶のイメージを描いた曲のひとつで、これは――今作にはそういうのが多いけど――すごくメランコリックな感じがする。デーモンが本当に美しく捉えたと思う感覚があって、それはツアー中に経験した孤独感なんだけど、それって考えてみるとおかしなことだよね。だってツアー中は常に人に囲まれてる状態で、ひとりきりになれる時間なんて本当はすごく貴重なはずなんだから。ツアーのときは、僕達ミュージシャンが10~12人と、クルーが20人と、ツアー・マネージャーとマネージメントの人達もいて、本当に四六時中人に囲まれることになるんだ。それから数千人、1万人、ときには何十万人もの人達の前でライヴをやるわけで、だから孤独を感じるなんておかしな話なんだけど、家族から離れて、慣れ親しんだものから離れて、毎日違うホテルの部屋で目を覚ます生活にはリアルなメランコリーがあるもので。それは楽しいことでもあって、同時にわびしいことでもあるっていう。自分が根無し草になった気分で、落ち着かないから……これはそういうことを歌った曲なんだ。

僕の説明は歌詞で使われてる言葉より多かったかもしれない。デーモンがいかに賢く言葉を使っているか、それでわかるよね。とにかくそのすべてが、本当にうまく捉えられてると思う。僕はこの曲を聴くとそのすべての感覚を思い出すんだ。

作品情報
ブラー:ニュー・ワールド・タワーズ


出演:デーモン・アルバーン/グレアム・コクソン/アレックス・ジェームス/デイヴ・ロウントゥリー
監督:サム・レンチ 撮影:ブレット・ターンブル、バド・ガリモア 編集:ハミッシュ・リヨン/ベン・ウェイン
ライト-ピアース/レグ・レンチ 製作:ニーヴ・バーン/レジーヌ・モイレット/ビル・ロード
2015年/イギリス/カラー/93分/原題:BLUR: NEW WORLD TOWERS
配給:松竹メディア事業部 宣伝:ビーズインターナショナル
協力:S-O-C-K-S INC./フレッドペリー/British Music in Japan/ワーナーミュージック・ジャパン
(c)Blink TV 2015 
blur-movie.jp

 

作品情報
Blur / ブラー
The Magic Whip / ザ・マジック・ウィップ


発売日:2015年04月29日
価格:¥2,457(本体)+税 / 規格番号:WPCR-16444
収録曲:
1. Lonesome Street / ロンサム・ストリート
2. New World Towers / ニュー・ワールド・タワーズ
3. Go Out / ゴー・アウト
4. Ice Cream Man / アイスクリーム・マン
5. Thought I Was A Spaceman / ソート・アイ・ワズ・ア・スペースマン
6. I Broadcast / アイ・ブロードキャスト
7. My Terracotta Heart / マイ・テラコッタ・ハート
8. There are Too Many of Us / ゼア・アー・トゥー・メニー・オブ・アス
9. Ghost Ship / ゴースト・シップ
10. Phyongyang / ピョンヤン
11. Ong Ong / オン・オン
12. Mirror Ball / ミラー・ボール
13. Y'All Doomed / ヤオール・ドゥームド (*日本盤ボーナス・トラック)
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