福原彰美(ピアノ) 「感謝」をテーマに、ピアノの魅力を届けたい

2016.5.13
インタビュー
クラシック

福原彰美

 2009年から毎年定期的にリサイタルを開催しているピアニストの福原彰美。今年活動拠点を日本に移し、5月のリサイタルが新たな一歩となる。

 大阪出身。14歳のデビュー・リサイタルがライヴCD化されるなど早くからキャリアをスタートさせ、中学を卒業してすぐ、単身でサンフランシスコに渡った。
「最初は音楽高校に留学するつもりでしたが、すぐに大学の先生に師事した方がよいと勧められ、一般高校に通いながらサンフランシスコ音楽院のマック・マックレイ先生に師事しました」

 サンフランシスコ音楽院を卒業後、ニューヨークのジュリアード音楽院修士課程へ。名チェリストのクリスティーヌ・ワレフスカと出会い共演を重ねるなどして活動し、米国で約15年を過ごした。
「アメリカで学んだのは、自分の音を見つけること。さまざまな文化が混在して個性を主張する人が多い国なので、自分を周囲と比べるのではなく、自分の課題は自分で解決するしかないと痛感しました。自分の音に集中する環境にいられたと思います」

 リサイタルでは、バッハのカンタータからの編曲に始まり、シューマン(リスト編)の「献呈」、ブラームス「4つの小品 op.119」、ショパン「バラード」「スケルツォ」などを弾く。テーマは“感謝”だ。恩師たちに、家族や友人に。
「今回はまずこのテーマがあって、それに合った選曲を考えるうちにバッハに行き着きました。ケンプとエゴン・ペトリの編曲を1曲ずつ。譜面はシンプルですが、ピアノ曲として成立させるためにはタッチやペダルを奥深く考えなければなりません。それを楽しみながら弾いています。歌曲からの編曲の『献呈』も含め、いろんな要望に応えてくれるピアノという楽器の魅力が出ればいいなと思っています」

 ブラームスは最晩年の曲であることから、どちらかといえば、セピア色の寂しいイメージを持っていたそうだ。
「でも、実はすごく作り込まれたスコアで、読めば読むほど寂しくなんかないんです(笑)。ものすごい力を感じて、いま夢中になっている作品です。ショパンは、彼自身が書いた教則本についての書籍などを読んで、もう一度やり直す気持ちで取り組んでいます。ずっとピアノを弾いていると、気づかないうちに自分の癖で弾いていた部分がたくさんあるんですね。ショパンのタッチがどれほど多様で、どれぐらい大胆に表現していたのか、想像し直しているところです」

 感情の赴くままに弾かれるのとはまた違った、対象への主知的なアプローチ。
どんなショパンになるのか大いに楽しみだ。

取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)


福原彰美 ピアノリサイタル vol.8
5/25(水)19:00
すみだトリフォニーホール(小)
問合せ:ムジカキアラ03-6431-8186
http://www.musicachiara.com