指揮者生活51年目の秋山和慶に注目!
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『ところで、きょう指揮したのは?──秋山和慶回想録』(秋山和慶+冨沢佐一著)
大ヴェテラン、大活躍の夏
2014年に指揮者生活50年を迎え、今年2月にはその記念演奏会を行いまた同月初の回想録となる著作「ところで、きょう指揮したのは?」を出版し、4月には彼がこよなく愛する鉄道をプログラム全曲に絡めたコンサートで聴衆を魅了し、そして6月には「第23回渡邉暁雄音楽基金 特別賞」を受賞し、……と指揮者として51年目となることし、次々とおお仕事を成し遂げている秋山和慶。特に昨年からの活躍は、長年の盟友小澤征爾にも負けない存在感を示している。そしてこの8月上旬には、彼は縁の深いオーケストラとともにいくつかの注目すべき演奏会を指揮する。
まずは現在音楽監督を務める広島交響楽団との「平和の夕べ」コンサートが5日(水)に広島で、そして11日(火)に東京で開催される。演奏される曲目はベートーヴェンの劇付随音楽「エグモント」の序曲、そしてマルタ・アルゲリッチがソリストのピアノ協奏曲第一番、メインにはヒンデミットの交響曲「世界の調和」がおかれる。なお、このコンサートの
またその日程の間となる8月9日(日)には、川崎市のミューザ川崎シンフォニーホールでの音楽祭「フェスタサマーミューザ2015」の最終公演、「東京交響楽団 フィナーレコンサート」に出演する。秋山と東京交響楽団は秋山23歳でのデビュー以来長年のつきあいで、現在も桂冠指揮者として共演を重ねている。このコンサートで秋山&東響、そしてソリストほかの音楽家たちが演奏するのは、「復活」と称されるマーラーの交響曲第二番。
あまり知られているとは言えないヒンデミットの交響曲と、マーラーの独唱、合唱付きの人気作と、この対照的なふたつの交響曲を並べられると、ついこの時期に続けて演奏することの意味をつい探ってしまいたくなるものだ。
ヒンデミットの「世界の調和」は中世の天文学者ヨハネス・ケプラーの生涯を題材としたオペラで、今回演奏される交響曲はそのオペラから改作されたオーケストラのみで演奏される。さて、星々の運行の調和を圧倒的な輝かしさで描き出して終わるこの交響曲を、「Music for Peace ~音楽で平和を~」をキャッチコピーに掲げる広島交響楽団で演奏することの意味とは。
そして死を克服した生への讃歌を大編成で歌い上げるマーラーを、気心の知れた東京交響楽団とともに、8月9日に「戦後70年、未来への祈り」と明確にテーマを示したコンサートで演奏するその理由は。
もちろん、秋山自身はその意図を言葉では語ったりはしないだろう、いつものように、著作のタイトルのように「今日指揮したのは」誰かなど気にせず、聴き手が音楽そのものを受け取ってくれるよう最善をつくすことだろう。
だが、広島交響楽団との演奏会の冒頭に置かれる戯曲「エグモント」の物語は、主人公が自由のために戦い志のために命をかける物語であることまでを踏まえて考えるならば、これらのコンサートに通底する想いが伺えるようにも思うところだが、それは勘ぐりがすぎるだろうか。ともあれ、この夏の秋山和慶からは目が離せない。大きな演奏会が続く8月を前にいま、そう強く感じている。
日時:2015年8月5日(広島)/8月11日(東京)
会場:広島文化学園HBGホール/サントリーホール 大ホール
出演者:秋山和慶(指揮)マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)広島交響楽団(管弦楽)