THE ROB CARLTONがラグビーの芝居に挑む
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THE ROB CARLTON 11F『COACHES OF OVAL』宣伝チラシ
新作が数倍楽しめる! 作・演出の村角太洋が解説するラグビーの予備知識。
昨年上演した『CREATIVE DIRECTOR』が「関西Best Act」で2015年度下半期のベスト1作品に選ばれるなど、今関西で最も勢いがある若手劇団と言ってもいい「THE ROB CARLTON」(ロブ・カールトン/以下RC)。「ホテルのおもてなしとラグビーの精神性」が劇団コンセプトであることは、以前掲載したインタビューでも述べていたが、次回作『COACHES OF OVAL』は、まさにラグビーそのものを題材にしたシチュエーション・コメディになるという。が! 果たして我々は、ラグビーについてどこまで知っているのか? 2015年W杯での日本代表チームの大健闘で一躍注目が集まったとはいえ、一般的には野球やサッカーほどその試合内容やルールは知られてないのではないか? 筆者のように、何人で試合をするのかさえ知らないような人間が観ても大丈夫なものなのか? というわけで、RCの作・演出家で筋金入りのラグビーマニアである村角太洋a.k.a.ボブ・マーサムに、「ここを押さえておけば楽しめる!」というポイントを…まずは「ラグビーは15人でプレイします」というレベルのところから教えてもらった。
村角太洋a.k.a.ボブ・マーサム [撮影:吉永美和子]
(1)ラグビーの試合中、コーチはグラウンドには入れない!
『COACHES…』の舞台となるのは、ラグビーの国際試合の会場に設けられた2つのコーチボックス。両チームのコーチたちが試合中に一喜一憂する様を、前半40分+ハーフタイム10分程度+後半40分のリアルタイムでガッツリ見せる作品になるという。ここで最初の豆知識となるのが、ラグビーではヘッドコーチを始めとするコーチたちは、試合中に直接指揮が取れないどころか、グラウンドにすら立ち入れないということ! 采配はチームのキャプテン(前回W杯日本代表ならリーチ・マイケル。五郎丸は副キャプテン)が担い、コーチが指示できるのは選手交代のみ。選手と直接言葉を交わせるのも、ハーフタイムに限られているという厳密さだ。「昔は選手がケガをしない限り交代はできなかったんですが、今は戦略的な交代が可能になりました。今回はこれが話の軸になります」(村角)。
そんな状況だから、当然コーチの思惑通りにチームが動かないこともある。再び前回のW杯を例に出すと、伝説の日本×南ア戦で日本代表のヘッドコーチは引き分け策を考えていたが、キャプテンは勝ちに行く体制でチームを動かした。結果としてそれが歴史的な勝利を呼び込んだわけだが、このようにコーチの予想を超えた方向に試合が動くケースがままあるのが、ラグビーの面白さの一つだそう。「もしそれで負けても、コーチは選手を責めないのがラグビーの精神であり美学。ベンチから直接試合を動かすことができる、野球やサッカーの監督とは立場が違いますね。選手やチームを育て、試合は彼らに任せるというのが、ラグビーのコーチの役割なんです」(村角)
(2)試合で点数が入るパターンは4つ!(実質的には3つ)
ラグビーの基本中の基本は「相手インゴールまでボールを運ぶか、H型のゴールにボールを入れたら点が入る」(村角)ということ。これも様々なパターンがあり、まず最もメジャーなのがゴールに直接ボールを持っていく「トライ」。実はこれ、5点も点数が入るのだ。トライが決まるとさらにゴールキックの権利も与えられ、成功すると2点がプラスされる。また敵方に反則行為があった場合もゴールキックが認められ、決まった場合は3点が入る。実は得点パターンで一番多いのがこのペナルティゴールで、上手いキッカーがいるチームだと「面白いように点が入る」(村角)そうだ。もう一つ「パスで直接前方にボールを飛ばしてはいけない」というルールの隙間を突いた得点方法で、地面にワンバウンドしたボールをゴールに蹴り入れる「ドロップゴール」もある。これも3点が入るが「1試合で1回見られるかどうかというぐらいにレア。決まったら観客席がすごく盛り上がります」(村角)というほど、高度な技だそうだ。
ちなみに反則などの中断後、試合を再開する時に行われる「スクラム」は、ラグビーの名物のように思われているけど、意外にも最近は減少傾向にあるそうだ。「スムーズに試合が展開ができるよう、近年ルール改正があったので。スクラムをするとどうしても試合が停滞するのもありますし、単純に(スクラムとなる)ペナルティを減らす努力が行われているためでもあると思います」(村角)。これらのルールは、今回の芝居を楽しむには特に知らなくても差し障りはないかもしれないけど、上演中は音声でしか様子をうかがい知ることができないという、リアルタイムの試合の経過を想像する一助にはなるだろう。
前回公演『CREATIVE DIRECTOR』 [写真:Toru Imanishi]
(3)最近のラグビーはスピード&ハイテク重視!
今回の物語は、世界トップクラスのベテランコーチ(隈本晃俊)と、台頭著しい若手のコーチ(村角ダイチ)の、世代の違うコーチ同士の戦いとなる。そして先ほどのスクラムの話でもわかる通り、ラグビーの戦い方のスタイルも、時代とともにいろいろ変化しているそうだ。まずラグビー選手というと、それこそRCメンバーの満腹満のようにどっしりとした大柄の人というイメージがあるが、近年はスピードが重視され、小柄で機敏な選手も重宝されているそう。つまりは単純な力勝負ではなく、いかに選手を素早く動かし、スピーディーに試合を運ぶかという戦略がメジャーになっており、そのため情報収集や分析を担当する「アナリスト」の役割が大きくなっているという。かなり進んだチームだと、選手のユニフォームにGPSが取り付けられ、一人ひとりの走った距離やボールを持った回数を把握した上で、試合中に動画を解析して選手交代のタイミングを考えるという、文字通りのIT革命が起こっているそうだ。「ID野球ならぬ、ITラグビーですね。アナリストは今回の話でも重要な存在になりますが、ITに頼りきったゆえの弊害も描かれます」(村角)
(4)…でも結局は、ラグビーを知らなくても楽しめるコメディのはず!
以上、ボブの解説にそってラグビーの基礎知識的な話を繰り広げたけど、結局本作で描きたいのはラグビーの試合そのものではなく、ラグビーを媒介にして繰り広げられるおかしな人間模様だとか。「2つのチームが戦っているうちに、戦略に惑わされてお互いがグチャグチャになっていく様をコミカルに見せるという、ラグビーに限らずどんな戦いの場でも起こり得る“戦略”の話です。ラグビーは紳士のスポーツと言われますが、紳士には自分たちなりの美学や規律がある。それが独自すぎて、奇妙な方向に行く姿を笑っていただけたらと思います。むしろ“ラグビーはよくわからないけど、楽しかったね”ぐらいに思っていただけるのが理想です」(村角)。とはいえ「ラグビーを広めるのが自分たちの使命」と宣言するRCだけに、むしろこれをきっかけにラグビーに興味を持てるような内容に仕上げてくるはずなので、まずは「ラグビーってどんな世界かな?」と覗きこむような気持ちで行ってみよう。そして肝心のラグビー関係者からは、すでに大きな注目を集めているということなので、最後に村角から関係者へのメッセージを添えておこう。「本物のコーチが見たら“こんなのありえない!”の嵐かもしれません(笑)。フィクションとしてご了承ください」。
■場所:HEP HALL
■料金:一般=前売3,000円 当日3,500円 学生=2,000円(前売・当日共)
※
■作・演出:村角太洋
■出演:THE ROB CARLTON(村角ダイチ/満腹満/ボブ・マーサム)、萬谷真之(劇団ヴィジュアル系バンド)、伊勢村圭太、古藤望(マゴノテ)、隈本晃俊(未来探偵社)
■公式サイト:http://www.rob-carlton.jp/nextstage.html