商店街バンド 決してDVD化はされないだろう約3時間弱に及んだ音楽“コント”ライヴをレポート

レポート
音楽
2016.6.14
商店街バンド/撮影=砂流恵介

商店街バンド/撮影=砂流恵介

画像を全て表示(6件)

五輪の次はご臨終!音楽葬だヨ!全員集合!2016 5月渋谷公演
2016.5.30(MON)duo MUSIC EXCHANGE

商店街バンドについて、言葉で説明するのは難しい。

関西出身の方であれば、出囃子の発祥である上方落語や生のバンド演奏がついた吉本新喜劇といえばピンとくるかもしれない。しかし、それでは笑いに偏りすぎている気がする。どちらかといえば、演奏力の高さに定評があったクレージーキャッツ、ザ・ドリフターズ、ビジーフォーと連なるコミックバンドの系譜の正統な継承者と言った方が近い。ただ、凄腕ミュージシャンが歌や演奏でボケて、数々の受賞暦を誇る本物の漫才師がツッコむという編成は今までになかった。音楽とお笑い、それぞれのプロフェッシュナルが結合しているという点に新しさを感じるし、カラオケなどは使わず、バンドの生音だけに徹していることも特徴の一つだろう。

商店街バンド/撮影=砂流恵介

商店街バンド/撮影=砂流恵介

商店街バンドは、元JUDY AND MARYのギタリストであるTAKUYAとお笑いコンビのアメリカザリガニが結成した、音楽ライヴとコントを融合したコメディーユニットである。現時点でのメンバー構成は、リーダーのTAKUYA、MCでボーカルも務めるアメザリに、元J.A.M.のドラマーである五十嵐公太、レベッカや筋少に在籍していたギタリストの友森昭一、ROBO+Sにも参加していたプロデューサーでキーボーディストのnishi-ken、紅一点のベーシスト、伊藤千明という7名。もともとはTAKUYAが2007年のソロライヴにアメザリを招き、寸劇を始めたことがきっかけで、当初はTAKUYAのバースデイライヴの企画として誕生したバンドであった。しかし、2014年の2月に開催した単独ライヴ以降、公演を重ねるごとに動員が増加。ついに、彼らのホームであったshibuya eggmanでは観客が収まりきらなくなり、舞台をShibuya duo MUSIC EXCHANGEに移すまでになった。

余談ではあるが、このライヴハウスのブッキングから、地方公演のホテルや移動の手配、ステージ上に飾られている提灯のスポンサー集めなど、全てをリーダーのTAKUYAが自ら行っているインディペンデントな手弁当の体制であることも触れておきたい。

商店街バンド/撮影=砂流恵介

商店街バンド/撮影=砂流恵介

では、実際のライヴではどんなことが行われているのか。彼らのライヴは、「市長と秘書編」など、様々なテーマが設けれている。これは、コントのネタのタイトルだと捉えてもらっていい。2016年5月30日にShibuya duo MUSIC EXCHANGEで開催されたライヴは、「五輪の次はご臨終!音楽葬だヨ!全員集合!」編のフルバージョンと呼ばれる、いわばファイナル公演であった。アメザリ柳原の父親である“てつごろう”さんのお葬式という設定で、まず、葬儀を取り仕切る司会のアメザリ平井から、「生前のてつごろうさんと仲の良かった商店街の人たちで結成された」と王商店街バンドのメンバーが紹介される喪主の挨拶の途中で、バンドが「Go Go Heaven」を演奏し始め、お線香のCMでおなじみの「青雲のうた」では、もったないくらい美しい5声によるハーモニーを響かせる。さらに、「We Will Rock You」や「Born in the U.S.A.」、「お祭りマンボ」から、「明日のジョー」「ルパン三世のテーマ」「キン肉マン Go Fight」「妖怪人間ベム」とアニメ主題歌が続き、タケちゃんマン〜ホタテマン〜懺悔室〜シュガーベイブの「DOWNTOWN」と、「俺たちひょうきん族」のナンバーをメドレーで演奏……と、アラフォーの観客にとっては、子供時代の土曜の夜が一気にフラッシュバッする構成となっていた。

商店街バンド/撮影=砂流恵介

商店街バンド/撮影=砂流恵介

さらに、弔辞と表したゲストコーナーでは、クイズ王の古川洋平による「三途の川横断ウルトラクイズ」に続いて、柳原の腹違いの八つ子の兄弟等設定の8人組ボーカルグループのSOLIDEMOが登場。「Girlfriend」や「Landscape」と言ったオリジナル楽曲に加え、ドラゴンボールの主題歌「CHA-LA HEAD CHA-LA」から、チャラいと評判のリーダー・シュネル(この日はシュネルごろう)が、「B’zの稲葉さんがどんぐりころころを歌ったら」というネタで爆笑を誘う。3組目のゲストであるモノマネ芸人のペレ草田は、布袋寅泰「スリル」やBOØWY「Dream’」のカバーに加え、様々な布袋ネタを披露。アメザリに「これ、あいつが楽しいだけやん。最高のバンドを背負って」と言われていたが、ギターのTAKUYAと友森はそれぞれ氷室京介と布袋寅泰のツアーギタリストを務めた経験もある。まさに最高の本物の音であるのだから、嬉しくないはずがないだろう。

そして、平井が「そろそろお別れの時間が近づいてまりました」と語りだすと同時に、「蝋人形の館」を歌い上げ、「お焼香」を経て、閉式の言葉へ。ディープ・パープル「Burn」で出棺を見送り、柳原の「オヤジー! ……もう、ええわ!」で本編は終了する。

商店街バンド/撮影=砂流恵介

商店街バンド/撮影=砂流恵介

アンコールではTAKUYAが「約1年間続けてきたお葬式編、どうだったでしょうか? 皆さんのおかげでやっと成仏できたと思います。次から新しいネタをやりますので、これからもよろしくお願いします」とあいさつし、ラストライヴを見に行った氷室京介の「Welcome to the twilight」(楽曲はBOØWY)をメロウに聴かせ、最後に唯一のオリジナル曲である「商店街バンドのテーマ」をパフォーマンスし、約3時間弱に及んだ音楽“コント”ライヴの幕は閉じた。

替え歌やきわどいネタも多い彼らのライヴは決してDVD化はされないだろうし、動画サイトにも上がることないだろう。商店街バンドは、音楽もお笑いも、自分自身が生で参加してみないとわからない、リアルな体験の素晴らしさ、楽しさを再確認させてくれる。一体、実際にはどんなライヴをやっているのかが気になるという方は、ぜひ、7月25日(月)にShibuya duo MUSIC EXCHANGEで開催される新ネタのフルバージョンに足を運び、自分の目と耳で確認してほしい。

撮影=砂流恵介 レポート・文=永堀アツオ

商店街バンド/撮影=砂流恵介

商店街バンド/撮影=砂流恵介

ライヴ情報
6月19日(日)O-Crest『YATSUI FESTIVAL! 2016』
7月25日(月)Shibuya duo MUSIC EXCHANGE

 

 

シェア / 保存先を選択