EGOIST そこに存在する「楪いのり」と「chelly」の息遣い 『甲鉄城のカバネリ』 畠中祐 千本木彩花も出演
撮影=関口佳代
EGOIST Greeting Tour 2016 : side-B 2016.6.18(SAT) Zepp Tokyo
EGOISTが6月18日にZepp Tokyoにてワンマンライブ『EGOIST Greeting Tour 2016 : side-B』を開催した。ryo(supercell)がプロデュースを手掛ける架空のアーティストであるEGOISTの世界観を体験しようと、会場には超満員となる2700人の観客が詰めかけた。生身の人間と3DCG(アニメーション)、音楽と最新テクノロジーが融合した“新感覚のライブ”に、終始、サイリウムを振り、声をあげ、飛び跳ねていた観客は、大げさではなく、熱狂と呼ぶにふさわしいほどの盛り上がりを見せた。
撮影=関口佳代
“新感覚のライブ”とはどういうものなのか。そもそも、「EGOIST」とは、アニメ『ギルティクラウン』に登場するウェブアーティスト名であった。「EGOIST」のヴォーカルである“楪いのり”(ゆずりは・いのり)の歌唱キャストとして選ばれたのが、女性ヴォーカリストの“chelly”。通常であればこの作品内で完結するプロジェクトであるが、アニメ終了後も活動を継続し、人気アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』や『甲鉄城のカバネリ』の主題歌を務めている。この時点でも、他に類を見ないアーティストであることは間違いないが、さらにワン&オンリーな存在たらしめているのは、精力的なライブ活動とそのステージングである。
撮影=関口佳代
ライブのステージ上には左/中央/右と3面のスクリーンが設置されている。中央には、“楪いのり”の全身の姿が、左右には表情の寄りが映し出される。『ギルティクラウン』から『PSYCHO-PASS サイコパス』、『甲鉄城のカバネリ』と楽曲に合わせて一瞬で衣装が変わったり、星の瞬きとともに一瞬で姿が消えたりする。ここまでであれば、初音ミクやミス・モノクロームのライブを想像すれば良いのだが、「EGOIST」の場合は、スクリーンの後ろに特殊なスーツを身につけた、生身の人間であるヴォーカル “chelly”がいる。生歌はもちろんの事、モーションキャプチャーによって、“楪いのり”と“chelly”は全く同じ動きができるのだ。
撮影=関口佳代
しかも、“楪いのり”の映像は3Dであるため、オープニングナンバーのガーリィーハウス「Extra terrestrial Biological Entities」では、“楪いのり”の頭上や背後が映し出され、さらにテンポを上げたDM POP「好きと言われた日」では、<1秒/2秒/3秒>というフレーズに合わせて、手を上げて、指を1つ、2つ、3つと指し示す動きもあり、ゴシックバラード「Door」では、指の動きとシンクロした光の演出もあった。
撮影=関口佳代
録画投影ではない、完全な生ライブであるため、当然ながら MCもある。最初のMCで、“楪いのり”=“chelly”が「皆さんお元気でしたか?」と語りかけると、客席からは「おかえり!」の声が上がり、彼女は「ただいま」と返した。なんでもないシーンのように感じるかもしれないが、目に見えているCGによるキャラクターとこんな会話ができるのは、EGOISTのライブならではの楽しみだろう。さらに、この日は、MCの途中で“chelly”が「お水を飲もうかな」とつぶやき、スクリーンの後ろで水を飲むと、スクリーン上の“楪いのり”もコップを手にし、水を飲んでいた。動きだけでなく、物体までリアルタイムで再現してシンクロさせる技術に、会場からは「オォ〜」というどよめきの声が上がっていた。
撮影=関口佳代
また、5月に開催された前回の「side-A」では、『甲鉄城のカバネリ』のED主題歌を歌っているAimerがゲストで登場したが、今回の「side-B」には、『甲鉄城のカバネリ』の声優で、生駒役の畠中祐、無名役の千本木彩花がサプライズで登場した。3人でのトークに続いて、アニメの名シーンを振り返り、「名シーンを生アフレコしていただけませんか?」というchellyのお願いに答え、彼女が選んだ3つの名シーンを生アフレコで熱演。さらに「KABANERI OF THE IRON FORETRESS」のイントロには、畠中、千本木に加えて、chellyも<お前は人か? カバネか?>というセリフで参加し、歌と絵に続く、新たな才能を披露した。
『甲鉄城のカバネリ』 生駒役の畠中祐 撮影=関口佳代
『甲鉄城のカバネリ』無名役の千本木彩花 撮影=関口佳代
撮影=関口佳代
EGOISTのライブがこれほど盛り上がるのは、“楪いのり”のキャラクター性や最新の映像技術もさることながら、やはり、“chelly”のヴォーカル力によるところが大きいだろう。ハウス、テクノ、ロックなど多彩なジャンルを飲み込んだryoによる楽曲は、本人もインタビューでよく語っているように、難しい曲が多い。だが、彼女は、楽曲やアニメ作品の雰囲気に沿った声色を自由自在に操りながら、アップテンポからスロウバラードまでを実に見事に歌いこなしている。
撮影=関口佳代
ピアノとヴォ−カルのみで構成された「Ghost of a smile」では、歌声のみでスケール感を広げていき、やアカペラで始まるハードなロックナンバー「It’s all about you」や「The Everlasting Guilty Crown」では観客に熱量がダイレクトに伝わり、まるでパンクバンドのライブのような盛り上がりを見せ、1曲の中で複雑な展開を見せる「名前のない怪物」では、ウィスパーからストロング、ハイノートのロングトーンからフェイクまで、幅広いレンジと表現力を見せてくれた。また、「手遅れ」での大合唱や、観客によるコーラスにchellyが主メロをのせていく「1.4.2」など、会場中が一体となれる楽曲が多いことも特徴の1つだろう。
撮影=関口佳代
アンコールでは、抽選会に加えて、ファンキーなダンスポップ「Love Struck」やオーディエンスのコールで盛り上がった「キミソラキセキ」など、4曲をパフォーマンス。ツアーTシャツとショートパンツ姿に着替え、髪をポニーテールにまとめで歌い、踊る“楪いのり”に前方からスポットライトが当たると、後ろのスクリーンには、彼女の“影”まで写っていた。さらに「キミソラキセキ」では、抜けのいい歌声で観客を感動させ、「さよなら」と手を振って、ステージを後にした。最後まで驚かされっぱなしであったが、映像、音響、照明、楽曲、歌と、すべての技術はきっと、これからも1公演ごとに、まだまだ進化していくはずだ。
撮影=関口佳代 レポート・文=永堀アツオ
01.Extra terrestrial Biological Entities
02.好きと言われた日
03.Door
04.Departure~あなたにおくるアイの歌~
05.Ghost of a smile
06.カナデナル
07.Fallen
08.リローデッド
09.KABANERI OF THE IRON FORTRESS
10.It’s All About You
11.手遅れ
12.elbadaernU
13.1.4.2
14.名前のない怪物
15.The Everlasting Guilty Crown
16.All Alone With You
<ENCORE>
EN1 LoveStruck
EN2.雨、キミを連れて
EN3.Lovely Icecream Princess Sweetie
EN4.キミソラキセキ