結成仕立ての ザ・フレッシュメン がクラシカルに展開するフォークソングの魅力とは

レポート
クラシック
2016.8.2
ザ・フレッシュメン (撮影=荒川 潤)

ザ・フレッシュメン (撮影=荒川 潤)

画像を全て表示(7件)

5月にデビューしたばかりのピアノ・トリオ、ザ・フレッシュメン 「フォークソングを足掛かりに音楽の世界を広げたい」 第31回“サンデー・ブランチ・クラシック”6.19ライブレポート

日曜日の午後には、様々なアプローチでクラシックの楽しみ方を提案する『サンデー・ブランチ・クラシック』が渋谷のカフェで行われる。6月19日の公演には、ザ・フレッシュメンが登場した。ザ・フレッシュメンは、秋津瑞貴(チェロ)、伊勢久大(ヴァイオリン)、青木智哉(ピアノ)から成るピアノ・トリオで、5月20日にデビューしたばかり。このメンバーで演奏をするのはCDデビュー日以来という、まさに“フレッシュ”な音色を聴かせてくれた。

秋津瑞貴(チェロ) (撮影=荒川 潤)

秋津瑞貴(チェロ) (撮影=荒川 潤)

伊勢久大(ヴァイオリン) (撮影=荒川 潤)

伊勢久大(ヴァイオリン) (撮影=荒川 潤)

青木智哉(ピアノ) (撮影=荒川 潤)

青木智哉(ピアノ) (撮影=荒川 潤)

クラシックに乗せフォークソングの名曲を蘇らせることをコンセプトとしているザ・フレッシュメン。この日のプログラムにも、懐かしく耳馴染みのよいラインナップが揃っていた。1曲目に演奏されたのは、デビューCDの1曲目も飾っている「いちご白書をもう一度」(作詞:荒井由実/作曲:荒井由実)。ばんばひろふみが率いたフォーク・バンド バンバンの楽曲であり、作曲者の松任谷由実自身をはじめ、数多くのアーティストにカバーされている名曲が、クラシカルアレンジされ新たな表情を見せた。

曲を終え、マイクを取った秋津は「今日はこんなにたくさん集まってくださると思わなかったのでとても嬉しいです」と笑顔で会場を見渡し「クラシックの演奏会って、ちょっと敷居が高いなと思われがちですよね。僕らは、皆さんがご存じであろう楽曲を交えてお送りしますので、そこから音楽の楽しみ方を広げていってもらえたらいいな、と思っています」とユニットコンセプトに込めた想いを語った。

続いては、宮崎駿が監督を務めた映画『風立ちぬ』の主題歌にもなっていた「ひこうき雲」(作詞:荒井由実/作曲:荒井由実)。ノスタルジックな旋律の上で、歌詞の変わりに伊勢のヴァイオリンが歌いあげる。3曲目には、トワ・エ・モワの「誰もいない海」(作詞:山口洋子/作曲:内藤法美)がしっとりと披露された。どちらも、歌詞はなくとも曲の持つ風景を脳裏に思い起こさせるようだった。

ザ・フレッシュメン (撮影=荒川 潤)

ザ・フレッシュメン (撮影=荒川 潤)

次に紹介されたのは、5月20日に発売された彼らのCD『Folk Once More』の最後を飾る「あの素晴らしい愛をもう一度」(作詞:北山修/作曲:加藤和彦)。レコーディング当時を「テンポが走らないように、ブレないようにと、ちょっと硬くなってしまっていたんですね」と振り返った秋津は、レコーディング後に“もっとグルーヴを感じて、ノリを感じていいんだよ”と声をかけてもらいハッとしたと語り、「その言葉を頂いて改めて3人で演奏してみたら、本当に楽しくて」とその時の心境を明かした。生演奏も「ノリノリで演奏したいと思います!」という言葉通り、この日限りのグルーヴ感をたっぷり効かせ、心躍る瞬間をもたらしてくれた。

最後は『サンデー・ブランチ・クラシック』ということで、メンデルスゾーン作曲「ピアノ三重奏」第1番 第1楽章で演奏は締めくくられた。次々に飛び出す超絶技巧に、青木の指が繊細なタッチで鍵盤の上を駆け巡る。秋津のチェロが深く響き、伊勢のヴァイオリンが大胆にメロディを紡ぐ。生み出される調和は、3人の真骨頂だ。

30分はあっという間で「もっと聴きたい」という観客の期待に、3人はモンティ作曲「チャルダッシュ」で応える。このほか、第2部では「この広い野原いっぱい」(作詞:小薗江圭子/作曲:森山良子)、「岬めぐり」(作詞:山上路夫/作曲:山本厚太郎)なども演奏された。

インタビュー中の様子 (撮影=荒川 潤)

インタビュー中の様子 (撮影=荒川 潤)

終演後のインタビューで、ザ・フレッシュメンについて秋津は「これまでもいろんな方とトリオの演奏をしてきたんですけど、男3人のこのザ・フレッシュメンはすごく気楽です。遊んでいるのか合わせをしているのかわからない、そんな感じで(笑)。とても居心地のいいトリオですね」とその感触を語る。

結成は、フォークソングをテーマとしたピアノ・トリオの結成の話が秋津の元に舞い込んだ際に、「一緒に演奏をしていて楽しいと思える人と組みたいと思って、二人に声をかけた」というのがきっかけだったという。

ザ・フレッシュメンとして「これからもっと、いろんなところで演奏する機会があるといいなって。フォークソングを足掛かりに、クラシックはもちろん、ポップスやロックも取り入れながら様々な曲をお届けすることで、皆さんの音楽の世界を広げられたらと思ってます」と秋津は話す。さらにその上で「パフォーマンスとして、もっと自分たちが向上していくために、いろいろと研究していきたいです」と未来を見据えていた。

最後に「演奏を聴いてくださり、ありがとうございました。今後もいろんな活動をしていきたいと思っていますので、気に入って頂けたら、また足を運んで頂けたら、すごく嬉しいです」(青木)、「フォークソングとクラシックの魅力を、フレッシュ感たっぷりにお届けしていきたいと思っております。応援よろしくお願いいたします!」(伊勢)、「僕らはまだまだスタートしたばかりで、これからもっと楽しいグループになっていくので、どうぞよろしくお願いいたします」(秋津)と今後に向け、それぞれに感謝と意気込みを語ってくれた。

ザ・フレッシュメン (撮影=荒川 潤)

ザ・フレッシュメン (撮影=荒川 潤)

クラシックへの入り口は、いろんなところにひょっこりと現れ、皆さんを待っている。『サンデー・ブランチ・クラシック』も、きっとその一つなのだ。日曜日の午後はその入り口をちょっと覗きにきてほしい。次回もお楽しみに。

プロフィール
ザ・フレッシュメン(The FRESHMEN)
2016年に秋津瑞貴(チェロ)、伊勢久大(ヴァイオリン)、青木智哉(ピアノ)が結成したピアノ・トリオ。同年にデビュー・アルバム『Folk Once More』をリリース。

秋津瑞貴(チェロ)
麻布学園在学中、13歳よりチェロを始める。桐朋学園大学音楽学部を卒業。桐朋学園大学院大学を修了。2015年第25回日本クラシック音楽コンクール一般部門第2位(1位なし)。ソロ、室内楽、レコーディングなど多岐に渡り活動中。

伊勢久大(ヴァイオリン)
宮城県出身、5歳よりヴァイオリンを始める。常磐木学園高等学校音楽科特待生を経て桐朋学園大学音楽学部を卒業、ゲームオーケストラJAGMOを始め、多数のオーケストラ、室内楽活動を行っている。

青木智哉(ピアノ)
千葉県出身。4歳からピアノを始める。東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業。同大学院器楽専攻鍵盤楽器研究領域修了。第12回日本演奏家コンクール特別賞。第11回東京音楽大学コンクール入選。2013年、宮城県での東日本大震災メモリアルイベントに出演して以来、東京だけでなく被災地での演奏も数多く行う。
 

 

サンデーブランチクラシック情報
7月24日(日)
鈴木 雅美(ソプラノ)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:eplus LIVING ROOM CAFE&DINING
MUSIC CHARGE:500円

公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html​
シェア / 保存先を選択