生田斗真、神山智洋、いのうえひでのりが劇団☆新感線『Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~』大阪記者会見

レポート
舞台
2016.7.8

「初めて演劇に触れるお客様に“演劇って面白いなと思ってもらうのが僕の使命」(生田)

生田斗真が10年ぶりに劇団☆新感線の舞台に、しかもビジュアル系バンドメンバーの吸血鬼という濃ゆ過ぎるキャラを演じるというので、すでに大きな話題となっている『Vamp Bamboo Burn~ヴァン! バン! バーン!~』。その大阪公演に向けて、座長&演出のいのうえひでのり、主演の生田斗真、共演の神山智洋(ジャニーズWEST)の記者会見が行われた。大阪公演は、大阪の音楽の殿堂的な劇場[フェスティバルホール]初進出というのも大きなトピック。この辺りのことも含め、東京の会見では触れられなかった話題もたくさん出てきた、その会見の模様をたっぷりとお届け。


■斗真はトゥー・マッチ感がすごくあるので、普通じゃない役の方がいい(いのうえ)

──今回の作品の見どころを教えていただけますか?

いのうえ 10年前に「斗真で吸血鬼モノをやりたい」と思った所からスタートしてるんです。平安時代に吸血鬼になった男が、愛しいかぐや姫…これは宮藤君なりに『竹取物語』を物語の中に織り込んだみたいなんで。それで1000年の時を経て、彼女の生まれ変わりを追いかけるために、(現代で)ビジュアル系バンドのヴォーカリストになっているという。(クエンティン・)タランティーノとか(ロバート・)ロドリゲスみたいな、いわゆるグラインドハウス映画のテイストがある音楽劇ですね。新感線は生バンドが入る芝居を「Rシリーズ」と呼んでますが、それのデラックス版「新感線RX」ということで、そういうお話を生バンドに乗せてやると。だから見せ場としては、ビジュアル系バンドのライブシーンもありますし、いつものような活劇もありますし、やっぱり宮藤君の本なのでハチャメチャな設定で、かなり笑えるものになっていると。楽しい芝居になると思います。

──生田さんは10年ぶりの新感線出演ということで、今のお気持ちはいかがでしょう?

生田 『Cat in the Red Boots』という僕の初主演の舞台で、新感線の皆さんと共に過ごせてすごく嬉しかったですし、またこうやって呼んでいただけてすごく光栄です。10年経っているので、本当に久しぶりに帰ってきた…帰って来れたという気持ちもすごくあるんですけども、10年という時間は短いようでやっぱり長い。僕自身も、いのうえさん始め新感線の皆さんも、たくさんの経験がきっとあったことでしょうから、半ば新しく挑むというか、新たな気持ちでしっかりと務めていきたいなと思います。

──神山さん、新感線初出演の意気込みをお願いいたします。

神山 お話をいただいた時「まさか僕が!」と思ったんです。「こんな大きい舞台に出させていただけるのか」というありがたい気持ちもあり、「自分にできるかな?」っていう不安もあったんですけど、やるからにはちゃんとできる所までやって、さらにその上まで行きたいなあと思ってます。先輩方にどんどん食らいついていって、少しでもたくさんのことを吸収して、今後も演技のお仕事をさせていただける時にちゃんと生かせるよう、人としても一回りでも二回りでも大きくなれたらなと。とにかく今は必死に食らいつこう、当たって砕けろ…ま、砕けちゃダメなんですけど(笑)、粘りながらもしっかり当たっていきたいなって思ってます。

──10年前から構想があったということですが、そこからどういう経緯で実現に至ったのでしょうか?

いのうえ 『Cat…』で一緒にやって、その後に(生田に向かって)『(花ざかりの君たちへ)イケメン☆パラダイス』だっけ?
生田 はい、そうです。
いのうえ 当時は3、4年後ぐらいにやるつもりで「おい、次は吸血鬼モノをお前でやるぜ」みたいなことを斗真に話したんですね。でもそのすぐ後にあのドラマで大ブレイクして、映像の方に引っ張りだこになって、なかなかスケジュールが取れなくなったんです。で、何年か調整をかけて、やっとこのタイミングで具体化すると。だから構想自体はね、ずいぶん前からあったんですよ。ただ斗真みたいな男が吸血鬼の役で、平安時代から(かぐや姫の)生まれ変わりを探しているという設定だと、ちょっと安っぽい少女漫画とかライトノベルのようなニュアンスにもなりかねないじゃないですか? だからそこを宮藤君にお願いしてひとひねりというか、なかなか一筋縄ではいかない物語にしてもらって。本を読んだ所でこれは成功というか、行けるんじゃないかという気はすごくしています。

──生田さんのどういう所を見て、吸血鬼役がいいと思われたんですか?

いのうえ やはり(顔を示して)濃いい(笑)。
生田 濃いいって(笑)。
いのうえ なかなか日本人離れというか、この濃いい顔を生かせるのは何だ? みたいなので。宮藤君も言ってましたけど、トゥー・マッチ感がすごくあるので(一同笑)、普通のハンサムな男とかそんなんじゃない方がいい。だから吸血鬼とか、ビジュアル系のバンドとか、行き過ぎた設定の方が面白いと思ったのね。それは一番最初に決めてました。

リラックスした雰囲気で質問に答えるいのうえひでのり [撮影]吉永美和子

リラックスした雰囲気で質問に答えるいのうえひでのり [撮影]吉永美和子

■宮藤さんの本は、若干僕の悪口っぽいことをはさんでくるのが楽しみ(生田)

──生田さんは歌を歌われるということで、自信のほどはいかがですか?

生田 今必死に練習をしています。すごく僕も音楽が好きで、いのうえさんなんかにカッコいいバンドをたくさん教えてもらって育ってきたので。新感線の舞台で生バンドで歌えるというのはすごく楽しみですし、なかなか機会がないことですので、一公演一公演楽しみたいなとは思ってます。

──過去にもCDをリリースされてますが、この際本格的にCDを出したいというお気持ちはないですか?

生田 うーん…何かあの本当に、こういう“役”をまとって歌えるっていうのはすごくいいなと思っていて。なかなか“生田斗真”として歌を歌うのは、ちょっと歳も歳で(笑)気恥ずかしい所があるんですけど、ここまで振り切った設定をいただけるとやりやすいなあとは思います。今後のことはあまり考えてません。

──ビジュアル系バンドのイメージはどのように作っていらっしゃいますか?

生田 いのうえさんからオーダーされたビジュアル系っぽい歌い方を研究したり、ライブ映像を見たりCDの音源を聴いたりとかしてますね。ちょっと…何というのかな、声が裏返っているような独特の歌いまわしとか、ヘナヘナした動き方とかを(笑)研究したりしています。

──生田さんは今回の物語やキャラクターについて、どのように思われましたか?

生田 宮藤さんとお仕事する時はいつもそうなんですけども「あ、こういう風に僕のことを見ていてくださったんだなあ」っていうか、若干悪口っぽいことをはさんでくる感じがあって(笑)。トゥー・マッチということであるとか…。
いのうえ 暑苦しいとかね(一同笑)。
生田 そういう愛のある宮藤さんの悪口がいつも楽しみなんですが、今回の脚本でもいっぱい入ってます。宮藤さん独特の、たくさんたくさん笑わせておいてお客さんが油断した隙に、泣かせるギアにガッ! と変わっていく感じというのは、この作品にも反映されてますし。「あ、最後こんな風に終わるんだ」っていうような驚きもたくさんあります。

──神山さんの役柄は?

神山 斗真君が演じる藤志櫻の家来です。僕はどっちかっていうと好青年と言いますか、すごく爽やかなんですけど、ちょっと痛い感じの子ですね。何か鼻に付くというか、見てたらイラッとする感じの男の子です。何か天然なんかな? 悪気もなく普通にしゃべってるけど、その言葉やったりふるまいやったりが、すごく周りの人をイライラさせるっていう役柄ですかね。
いのうえ 家来なんだけど、ちょっとライバル関係でもある。宮藤君の本なんで、まあ普通じゃない(意味ありげに笑う)。

──劇中では何曲ぐらいありますか?

いのうえ それ言わない方がいいんじゃない?(笑)でもそこはね、がっちり…「打倒X!」ぐらいの気持ちで(一同笑)。激しい曲もありますし、リリカルなものも。バンド自体が、吸血鬼のバンドっていう設定ですから、そこもできるだけドラマティックに盛り上げようかなあと思います。

「俺だけ撮ってもしょーがねえじゃん!」と笑いながらウェブ媒体用の撮影に応じるいのうえひでのりの図。 [撮影]吉永美和子

「俺だけ撮ってもしょーがねえじゃん!」と笑いながらウェブ媒体用の撮影に応じるいのうえひでのりの図。 [撮影]吉永美和子

■フェスティバルホールは「俺…ここに立つんか?」と圧倒されました(神山)

──宮藤さんと新感線は、どの辺りで相性が良いと思われますか?

いのうえ (座付作家の)中島(かずき)君が書く新感線の王道に対して、宮藤君は必ず違う切り口で入ってくるので、そこがやっぱ面白いですよね。彼は新感線の舞台に二回出てますし…一つは(大人計画との合同公演の)「大人の新感線」ですけど。だから座付作家ではないけども、うちの劇団員のことも割とよくわかってるんです。もちろん斗真とかのことも映像の仕事でよく知ってるし、そういう意味では妙なカンパニー感があります、今回。やっぱり、宮藤君じゃないと書けない劇団の芝居になってると思いますよ。初めて(新感線に)書く人には書けない、劇団員への役の振り方とかね。もうゲラゲラ笑える。この間読み合わせしたけど、本当に面白くて「よくぞ書いてくれた」と思いました。まあ、(宮藤)本人が一番笑ってましたけどね。

──新感線初のフェスティバルホール公演ですが、ここで芝居をすることに対して、皆さんは今どのように感じていらっしゃいますか?

いのうえ 新しくなる前(注:同ホールは2008年に一度閉鎖し、2013年にリニューアルオープンしている)ですけど、僕が初めてフェスティバルホールで見たのがジューダス・プリーストで、それを思うとやはり感慨深いものが…「あのジューダス・プリーストの!」って(笑)。今回の芝居は音モノなんで、そういう意味だと割と相性はいいんじゃないかと。ただやっぱ、普通はお芝居の小屋じゃないとは思います。今回みたいな特殊な作品だと、何とか切り込めるかなっていう感じはありますけどね。
生田 僕は新しくなる前のホールには立たせていただいたことがあるんですけれど、とにかく傾斜ですか? お客さんが自分の上にいるんじゃないかっていうぐらい(客席の)傾斜があったというのが、すごく記憶に残っていて。やっぱりコンサートホール…ジューダスがやるぐらいの所ですから(笑)、かなり音は良くて。それはこの演目には合ってるんじゃないかなあと思いますし、彼らに負けない歌声を届けたいと思います。
神山 僕も新しくなってからは、初めて立ちます。この間、一度共演させていただいたマルシアさんがそこで舞台をやってらっしゃったので観に行ったんですけど「でかっ!!」って思いましたね、とにかく。「俺…ここに立つんか?」っていう感じで観てたんですけど、ちょっと圧倒されました、大きさに。

──それでは最後に、お客様にメッセージをお願いいたします

いのうえ 新感線としても、なかなかこういうタイプのものはめったにやれるものじゃないですし、この間の『乱鶯(みだれうぐいす)』が割と切ないお芝居だったので。今回は切ない所も出てきたりはするんですけど、すごくスカッとするというか、観てて楽しい派手な作品になるので。ある意味新感線らしい、だけど僕らとしてはちょっと異色な気持ちでやる芝居です。新感線らしいものを期待している人も、新感線をずっと見慣れてる人も、割と新鮮な感じですごく楽しめる作品になると思います。
生田 この『Vamp…』で初めて演劇に触れるような若いお客様も来てくださると思うんですけども、そういう皆さんが「あ、また舞台観たいな」「演劇って面白いな」と思ってもらえるように、しっかりやっていきたい。それが僕の使命だと思って、一生懸命やりたいと思います。
神山 今回初参加させていただく中で、こんな素晴らしい作品に関わらせていただけるのは、本当にありがたいことやと思ってるので。この作品の中の一つのスパイスとか、エッセンスになれればいいかなって思ってます。

公演情報
2016年劇団☆新感線夏秋興行 SHINKANSEN☆RX
『Vamp Bamboo Burn~ヴァン! バン! バーン!~』

 
■日時・会場:
《プレビュー長野公演》
2016年8月5日(金)~7日(日) サントミューゼ
※予定枚数終了
《東京公演》
2016年8月17日(水)~9月18日(日) 赤坂ACTシアター
※予定枚数終了
《富山公演》
2016年10月7日(金)~9日(日) オーバード・ホール
発売:7月9日(土)
《大阪公演》
2016年10月19日(水)~31日(月) フェスティバルホール
発売:8月7日(日)

 
■作:宮藤官九郎
■演出:いのうえひでのり
■出演:生田斗真、小池栄子、中村倫也、神山智洋(ジャニーズWEST)、橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと、篠井英介、ほか
■公式サイト:http://www.v-b-b.jp/

 
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