エンタメの今に切り込む新企画【ザ・プロデューサーズ】第五回・中川悠介氏

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ザ・プロデューサーズ/第5回 中川悠介氏

ザ・プロデューサーズ/第5回 中川悠介氏

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編集長として”エンタメ総合メディア”として様々なジャンルの情報を発信していく中で、どうしても話を聞きたい人たちがいた。それは”エンタメを動かしている人たち”だ。それは、例えばプロデューサーという立場であったり、事務所の代表、マネージャー、作家、エンタメを提供する協会の理事、クリエイターなどなど。すべてのエンタメには”仕掛け人”がおり、様々な突出した才能を持つアーティストやクリエイターを世に広め、認知させ、楽しませ、そしてシーンを作ってきた人たちが確実に存在する。SPICEでも日々紹介しているようなミュージシャンや役者やアスリートなどが世に知られ、躍動するその裏側で、全く別の種類の才能でもってシーンを支える人たちに焦点をあてた企画。

それが「The Producers(ザ・プロデューサーズ)」だ。編集長秤谷が、今話を聞きたい人にとにかく聞きたいことを聴きまくるインタビュー。そして現在のシーンを、裏側を聞き出す企画。

この企画もいよいよ五回目となる今回は、音楽のみならずカルチャーを造りだしているといっても過言ではない、きゃりーぱみゅぱみゅ等のアーティストやモデルなども数多く手掛ける、仕掛け人という言葉がぴったりな、ASOBISYSTEM株式会社代表取締役中川悠介氏に直撃した。

 

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――元々美容師ナイトをずっと手がけられていましたが、美容師ナイトをやろうと思ったきっかけはなんだったんですか?

ちょうど月曜日のクラブが空いていたんです。週末はいつも埋まっていて貸してもらえなかったのですが、月曜日は貸してくれて、そこに美容師や色々な友達を集めてイベントをやっていました。

――イベントに色んな人が集まるようになってきて、それがアソビシステムという会社の発想の元になっているのでしょうか?

そうですね。当時でいえば、そこに集まる人を中心に色々な事をしたいという発想です。だから面白いことは別にやらなくてもいいんです。メディアの人達からは、よく面白いことをやっていますよねと言われますが、うちの会社は面白いことをやりたいのではなく、そこに色々な人達が集まり、それを創出する意味みたいなものが物事には絶対必要だと思ってるんです。自分達にしかできない事を作っていかなければいけなくて、それは別に音楽じゃなくてもいいかなと思っています。

――何かを創り出す場所が、なぜ原宿だったのでしょうか?

当時、渋谷がギャルを中心に色々なものが生まれていたと思うのですが、“創り込む”ことと“創り出す”ことは違うと思っていて、人が創り込む街が当時の渋谷でした。原宿は、色々な事を自由に創り出している街、という捉え方をしていました。

ザ・プロデューサーズ/第5回 中川悠介氏

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――ご自身が原宿をホームグラウンドをされていたんですか?

そうですね。当時よく来ていました。美容師ナイトもそうですけど、学生のファッションショーやイベントがあり、みんな集まっていました。毎週末来てスタッフを探したり、イベントの参加者を募集したりしていました。

――大学に行きながらイベントとかをどんどん発信するようになりましたが、どこかに就職しようとは思わなかったんですか?

何社かは受けました。有名どころを受けようと思い、ルイ・ヴィトンと吉本興業を受け、エイベックスも資料だけ貰った気がします。説明会が行きやすかったので友達と行ったのだと思います。書類を出しただけで、本格的には動きませんでした。

――起業しようと?

そうですね。でも起業という言葉ほど重たくないですけど、自分たちで何かしたいなと思っていました。

――アソビシステムという社名は、楽しいことに人を巻き込んでいこうという想いからネーミングしたんですか?

そうですね、高校の時に友達とイベントをやる集団みたいなものを作った時に「アソベシステム」にしたのですが、でも語呂が悪いから、会社を作るなら「アソビシステム」にしようと思いました。

――設立が 2007年です。最初はスタッフ何人でスタートされたんですか?

3人だったと思います。今いる社員の1/3は昔一緒にイベントをやっていた仲間です。もしかしたらやりたい事は変わってる人もいるかもしれませんが、元美容師の子もいますし、本来は美容師になりたかったと思いますが、途中でイベントを一緒にやったりしているうちに仕掛ける方に興味が出てきたり…。

――アソビシステムというと、まずはきゃりーぱみゅぱみゅさんの名前が出てきますが、きゃりーさんを見た時に、まずどこに中川さんがピンときたのでしょうか。

SNSが面白かったんですよね。でもマジメ、みたいな。時間を守るし、レスも早いし。今時の子ってSNSだと雰囲気がいいけど、実際会ってみると全然違う子も多いのですが、彼女のそのマジメさみたいな部分がすごくいいなと思いました。

――SNSはどういうふうに捉えていらっしゃいましたか?

発信していくメディアじゃないですか。こういうフォーマットで、こういう役でこう喋って欲しいというのとはまた違うじゃないですか。だから本当の意味で、その人自身で発信できる場所という事がすごく大きいなと思っていて。台本も無いし、ルールもないし、こういう風にやって欲しいというものがない。それってすごく重要だなと思っていて。それでその発信ができるきゃりーは、情報発信能力が高くて、可能性があるのかなってすごく思いました。

――当時からSNSで写真がすごく見られていて、写真の撮り方、見せ方ひとつとっても上手かったですよね。意外だったのが全く音楽のイメージがなかったきゃりーさんと、中田ヤスタカさんとをドッキングさせたのが面白いなと思ったのですが。

音楽の匂いがするしないって、音楽業界の人しかわからないじゃないですか。その判断で言えば評論家とかライターがいいって思えば売れるかと言ったら全然そんなことなく、それと同じ発想で、そのこだわりとかルールみたいなものは別に僕にはなかったのでやりました。日本では、ファッションアイコン+音楽って、すごく弱いじゃないですか。ファッション業界も音楽業界も、それぞれの業界の中だけで商売になるなので、その中の生き物になっちゃうじゃないですか。それがよくないんじゃないかなと思いますね。

――合う合わないを判断する感覚って、その業界にいる人だけの先入観みたいなものですよね。

僕らも当時ネットで、自分達がやっていることに対して「すごい勢いですね!」とか「生き急いでませんか?」というような事をよく言われていましたが、そう言われても、経験がありませんでしたし、自分たちの速度でやっていくだけだったので、そういう意識はなかったですね。

――ジャンルによってもファッションの強度ってちょっと違いますよね。

そうですね。バンドもファッションと密になっていたり、繋がる部分で強いじゃないですか。だからそういう面でいうと、繋がり方の接点、接着点が変わってきているのかなと思っていて。僕にとって当時魅力的だったバンドは、みんなバンドの人もデザイナーをやっていたり、お店をやっていたりして、そこに行くプロセスも大事だなと思っていました。場所に行くというのがファーストステップじゃないですか。なぜかというと、ライブに行った時にそのTシャツを着てる人がいて、「なんだろう?あのオシャレなの」というところから始まっていくのだと思うんです。今はそれがSNSを使ってという感じでしょうか。

――きゃりーさんはファッションアイコンであり、音楽でも今までにはないものを作り、全てが斬新でした。

そうですね。だから音楽性もちゃんと考えなければいけないですし、アイコンを作りたかったんですよね。当時原宿のアイコンっていなかったので。

ザ・プロデューサーズ/第5回 中川悠介氏

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――アイコンを作るということは、カルチャーも含めて作りたかったんですか?

そうですね。さっきも言いましたがそれぞれの業界の中だけで完結して、音楽の良い悪いの判断とか、全部決まっているじゃないですか。そうではなくて、ライフスタイルが大切なんじゃないかなと思っていて。それに紐づく音楽とファッションと衣食住、という考え方の方が、今っぽいのかなと思っています。昔は「余計な事に手を出しすぎるなよ」という文化だったじゃないですか。一つのことに集中するという。そうじゃなくて、自分たちに分からないことは、横に展開していった方がいいんじゃないかと考えていて。そのバランスですね。もちろん出し過ぎちゃいけないんですけど。

――それこそバンドだったら、カルチャーを作るのが当たり前というか、セオリーがあったと思うのですが、他のポップスにはそこがなかったから、きゃりーさんはそこを構築してくれたというイメージがあります。

音楽はバブルがはじけて終わったのではなく、ずっとバブルが続いていたのだと思います。100万枚が当たり前の時代でした。それって今でいうと、コンビニでおにぎりを買うのと同じように、CDを買うことが人々にとっては当たり前の行為でした。

――そうですね。

でもスマホが登場して、音楽が聴けるようになったりすると、やっぱり色々変わってくるじゃないですか。音楽業界は不況ですかってよく聞かれますが、全然不況だと思っていなくて、やり方が変わってきただけでエンタテイメント自体もそうだと思うんですよね。今の色々なハードルを考えると、昔と比べて売れなくなるのは当たり前じゃないですか。貨幣価値も変わったと思いますし、土地の値段もそうじゃないですか。そういうものが変わっていくのは当たり前だと思っています。

――セオリーにはまりすぎてしまっている。

成功体験ってすごくいいことであり、でも自分を成長させる上で、一番のウィークポイントになると思っています。

――いい意味でアンダーグラウンドな匂いがしつつ、総合的なカルチャーアプローチが強力です。バンドでもなくロックでもなく、きゃりーさんというポップスターを作ったというのが凄いですよね。

もちろん彼女中心という体ですけど、全体のカルチャー感をすごく大切にしていましたし、本にしてもCDにしても今までにはないアプローチをしてきました。どの業界も最初はやはり新しい人達に対して、異物感があるじゃないですか。そこが変わっていかないといけないと思うんですけどね。

――なるほど。

結局CDも本もラジオも、絶対なくならないと思うんですよね。必要な人に向けての発信の仕方がその人のライフスタイルに合わせたものに移っていくというような、専門チャンネルの時代でいいんじゃないかなと思っていて。バンド好きだったらここを見ればその情報が全部わかるという感じになれば、変わってくるじゃないですか。

――きゃりーさんは音楽レコード業界の中でもすごく“意志”を感じるレーベル、ワーナーミュージックの「unBORDE」の所属ですが、ワーナーミュージックを選んだ理由は何だったんですか??

「unBORDE」のレーベルヘッドの鈴木竜馬さんという方がいるのですが、変にジャンル意識がないのがいいなと思いました。「unBORDE」もひとつのカルチャーじゃないですか。RIP SLYME、神聖かまってちゃんがいて、tofubeats、ゲスの極み乙女。もいて、そしてきゃりーもいるという。なんか統一感があるんです。それってわからない人にはわからないけど、わかる人にはわかるじゃないですか。

――ブランドという言い方が適切かどうかわかりませんが、アソビシステムで作るものってかっこいいいよね、面白いよねというのが浸透してきています。

会社はブランドだしカルチャ−だと思ってるんですよね。やっぱり自分たちがいいと思っているもの、発信するものに自信を持っていかなければいけないし、そこに紐づくブランドだと思っていて。なので、僕自身もインタビューなどにもできるだけオープンに出て行って、きちんと主張した方がいいなと思っています。

――アソビシステムは一つのメディアでもありますよね。

自分達のオウンドメディアだと思っています。

――ブランドの基本になるものというのは、個性の集まりってことなんでしょうか?

そうですね、人の集まりだと思いますね。

――中川さんが一緒に何かやりたいな、作りたいなろうと思う人のポイントってあるんですか?

それはもうないですね。それがさっき言った成功体験のマイナス部分だと思っていて、どうしても似た人に寄っちゃうじゃないですか人間って。例えば二人で飲みに行こうって言ったら、どうしても行きやすい人と行っちゃうじゃないですか。それと一緒で共通のものを求めるのって良くないなと思っていて。だから感覚ですね。

――色々な方向から色々な情報が入ってくる中で、どうやっていつもフラットな状態をキープしていられるのでしょうか?

何をするにしてもふわふわしている状態というか、レールを作りながら進んでいくイメージなんですよね。ゴールを決めると、ただそこに向かって行くだけじゃないですか。でも方向性って変わってもいいと思っていて、あちこち寄り道してもいいし、ストレートに行ってもいいし、自分達でその速度ややり方を決めたいとすごく思っていて。

――なるほど。

「ノミの法則」というのがあって、ノミにカップ被せるとその高さにまで飛べるようになるけど、カップを取ってもしばらくはその高さまでしか飛べないんですよ。でももう少し高さのあるカップを被せると、その高さまで飛べるっていう。結局その器を決めちゃうと、行動範囲が狭まっちゃうじゃないですか。

――自分でゴールを決めてはいけないと。

それはすごくマイナスなことだと思っていて、ゴールを決めないことが重要だと思っています。あとは色々な人の話を聞いたり本読んだりして、影響を受けるかもしれませんが、それで成功するかといえば全くそんなことはないなと。よく「成功の秘訣50」といった啓発本があるじゃないですか。ああいうのって、なにをもって言っているんだろうって思うし、その人にとっては成功だとしても、別の人にとってはそうじゃない。そこの感覚はすごく重要だなと思っています。評論家があまり好きじゃないのもそういう理由ですね。

――それぞれ幸せの在り方が違いますよね。

その人の判断での評論ではいいと思うんですけど、それが全体の評価に繋がるのはちょっと違うのかなと思います。

――その考え方は昔からですか?

昔から決めつけられるのはあまり好きじゃなかったですね。

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