SHISHAMOがみせた様々な表情と新曲たち 日比谷野音2Daysをレポート
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
SHISHAMO NO YAON!!! 2016 【夜空編】【青空編】
2016.7.16〜17 日比谷野外大音楽堂
夜空編
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
昨年に続き二度目になるSHISHAMOの日比谷野音。今年は2デイズで、1日目は「夜空編」と銘打って18時開演、2日目は「青空編」で14時30分開演、という企画ライブとして行われた。
曇ってはいるが雨を逃れた日比谷野音、定刻の18時きっかりにBGM(Theピーズのファーストアルバム。ってなぜアルバム名を書かないのかというと、2枚同時発売だったのです)がブツッと止まり、SEが流れる──というおなじみの光景の中メンバー3人が登場、軽やかなグルーヴの新曲を1曲目に持ってきてスタート。ゆえにオーディエンス、ちょっと様子見な空気になるが、続く「中庭の少女たち」で一気に空気がほどけ、次の「バンドマン」ではいつものSHISHAMOのライブの温度になる……いや、日比谷野音という場のマジックも加わっているせいか、早くもいつもより高い感じになる。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
ステージ後方の『SHISHAMO NO YAON!!!』と書かれたバックドロップを指して「去年の使い回しなんです」「使い回しって言い方よくないよね」などとセルフツッコミしたり、「友達と来たの? 家族と来たの?」と客席に問いかけてお父さんと来たという小さな女の子の声に喜んだり、ベース・松岡彩が「夏の夜なのでゾッとする話、ということでクモの話」をしたりするMCをはさみつつ、「量産型彼氏」「手のひらの宇宙」「深夜のラジオ」「恋愛休暇」「ともだち」と聴かせ、踊らせ、染み渡らせていく。中盤、日が暮れてまっ暗になったあたりでの「熱帯夜」では、ミラーボールの光が日比谷野音をぐるぐると照らした。
「旅がえり」「休日」を経ての「あの子のバラード」「昼夜逆転」の2曲は、宮崎朝子がギターを置いて着座でキーボードを弾きながら歌い、松岡彩も座ってベースを弾く──というスタイルでプレイ。SHISHAMOがライブでこういうことをやるの、初めてではと思うが、いずれの曲もとても自然に響く。オーディエンスのステージに向ける集中力が上がっていくさまが目に見えるような気がする。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
恒例MC、「吉川美冴貴の本当にあった○○な話」をはさんで(高校の時の親友に裏切り行為に遭ったと思い連絡を絶ち、今年1月4日の日本武道館が決まった時連絡しようか迷ったが結局しなかった、でも来てくれた、理由は卒業時のスケッチというか寄せ書きみたいなやつに自分が「武道館でライブやる時は絶対来いよ」と書いたから──と、こうして要約して文字にしてしまうと味気ないが、めちゃいい話だと思いました、この場できいた時は)、2曲目の新曲を披露。Aメロまでつっ走ってBメロでちょっと抑えてサビでどーんといくコード&メロディ、ブリッジの設け方や間奏でリズム半分になるリズム、そして後半で一瞬歌とギターだけになる展開などなど、もうSHISHAMO王道でSHISHAMOど真ん中な、聴いた瞬間に新たなライブ・アンセムになることがわかるような曲。しかも「恋に落ちる音が聞こえたら」というタイトルで、「僕に彼女ができたんだ」のリバース版みたいな歌。つまり、恋が実った瞬間、相手が自分に対して恋に落ちた瞬間を、女の子側から歌う爆発ハッピー・ソング。「うわ、これキラーチューンだ」と即座に察したオーディエンス、すごい勢いで食いつく。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
そこからはSHISHAMO最初期のライブ・アンセム「僕に彼女ができたんだ」からラウドな「僕、実は」へ流れ、松岡彩の曲説明&オーディエンスみんなで「♪ぐるぐるぐるぐる」の練習をした上で「タオル」へ突入。このライブでもっともアガる曲がCDには入っていない、「グッズのタオルのおまけ」としてしか流通されていないという事実が、なんというか、今のバンドだなあと思います、生で聴くたびに。そこから「君と夏フェス」を経て、「みんなのうた」で本編シメ。4〜5月に回ったホールツアーでも見られた気持ちの良い構成だ。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
そしてアンコールは、宮崎朝子がひとりで出てきてアコギ弾き語りで歌い始める。なんだっけこの曲、思い出せない、とりあえず歌詞をメモしよう……と走り書きし始めてまもなく気づいた。思い出せないんじゃない。新曲だこれ。3月にニューアルバム出たばかりなのに、その4ヵ月後のライブでもう新曲3曲ってなんだこれ。しかも。宮崎朝子の書く曲って、物語や主人公を設定して作家的に描いた曲が9、これは自分の心情や感情が入っちゃってるんじゃないかと思わせる曲が1、ぐらいの割合だと僕は思っているのだが、それで言うと1の方に相当するのでは? というような歌詞だ。って、どういう歌詞かというと、「あなた」と別離しようという意志、そして子供である己と別離しようという意志を歌った、美しい切実さに満ちた歌だ。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
どうもこう、「別れ」や「失恋」や「終わり」を描いた歌だと、「宮崎朝子、これ自分の気持ちを書いてるんじゃないか」と思う傾向があるようです、私。初期の「第3ボタン」もそうだし、最新アルバム『SHISHAMO 3』の「旅がえり」もそうだし。実際はどうか知りませんが。というか、知らないくせにそういうふうに思い込むのは、宮崎朝子に失礼な気がしないでもないですが。とにかくそんな歌詞が、流麗で美しいメロディにのっかっていく。
この曲をオーディエンスにじっくり味あわせたあとのMCで、この曲が、9月7日にリリースするニューシングル「夏の恋人」であることが明かされた。それから、秋に全国ツアーを行うこと、東京は行程の頭に1日・シメに2日のZepp3日間であることも明かしてから、「生きるガール」に突入。ガチッと場をアゲたと思ったら、前述の9:1で言うと1の方(くどいが、私がそう思っているだけです。実際はどうなのか知りません)の初期の名曲であり、でもライブではあんまり披露されないレア曲でもある「第3ボタン」を歌う。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
ラストは「恋する」でカラフルな特効テープが発射され、多幸感に包まれて終了。宮崎朝子、生声で客席に向かって感謝の意を伝えてステージを去り、クロージングSEでTheピーズの「東の窓」が響いた。ライブ前はTheピーズ初期の曲、ライブ後は復活後の曲、っていうのは何かこだわりがあるんだろうか、SHISHAMO的には。と、Theピーズファンとしてはいつも気になります。それから、前述の、14曲目にやった新曲「恋に落ちる音が聞こえたら」は、「夏の恋人」のカップリング曲だそうです。1曲目にやった曲は入らない模様です。いつどこに入るのかは不明です。
そして、明日は「青空編」で14:30開演、なので、18時間後には始まります。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
青空編
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
SHISHAMO日比谷野音2デイズ『SHISHAMO NO YAON!!!』の2日目は、1日目の「夜空編」に続き「青空編」、14時30分開演というちょっと特殊なライブ。青空とはいかず曇り空だが雨が降ってないだけ御の字、という天気の下、入場すると、昨日までとセットが変わっている。大元は一緒だが、昨日まで鉄骨むきだしだった照明タワーやドラム台などがウッド調でオーガニックな感じになっている。
で、客席中央のスペースに、人工芝が貼られた小さなステージがしつらえられている。あ、ここでアコースティック・コーナーやるのか、4~5月のツアーの時みたいに中盤にやるのかな、それともアンコールの時かな、とか思っていたところ。なんと、オープニングがそれでした。昨日は定刻だったが今日はちょっと押してから、いつものようにBGMのTheピーズのファーストがブツッと止まり、SEが流れた、と思ったら、客席後方から歩いてメンバー3人が登場、その人工芝ステージに上がる。いきなりの展開にオーディエンスどよめくどよめく。で、「あっ」と気づいた感じで、みんな一斉に座る。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
宮崎朝子はアコースティック・ギターを持ち、吉川美冴貴はカホンの上に座り、松岡彩はベースではなく……なんていうんでしたっけあれ、ちっちゃくて鍵盤数が少ない鉄琴に向き合い、横にピアニカやタンバリンやシェイカーを置いた状態。で、宮崎朝子が腕を上げてSEを止め、3人のハモりからスタート、「花」が1曲目。続けて「君との事」まで一気に歌っていく。3人をぐるりとお客さんが囲む、しかもすぐそこにいるわけで、宮崎朝子、「距離が近い!」とか「ケツ見られてる!」(すぐ後ろにお客さんがいるので)とか言いながら3曲目「行きたくない」に入るが、ここで軽いトラブル発生。
松岡彩、演奏しながら何度もしかめっ面したり「はっ!」てびっくりしたりしてる、なんだろう、と思ったら、どうやら3人の間をカナブンかなんかのでかい虫がビュンビュン飛んでいて、それにびびっている様子。それでもなんとか演奏を続けていたが、サビにさしかかったあたりでひときわ激しく飛んだらしく「ひっ!!」という顔になり、そのタイミングで鉄琴を叩く手のリズムがカーンと前のめりに崩れたりする。というような状況の中だが、4曲目、「がたんごとん」に入る頃には太陽が出始め、曲が終わるとそれに入れ替わるようにセミの声が響く。ナチュラルなSEのよう。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
ここで宮崎朝子、松岡彩に「おまえ、びびりすぎなんだよ」とひとこと。松岡彩、「だって、こんな大きいのが朝ちゃんに止まってた」と抗弁。歌ってる最中に、胸元あたりに思いっきり止まっていたようです、虫。宮崎朝子「(演奏を)間違えたくせに」、松岡彩「虫がここ、通ったから……」。 宮崎朝子のSキャラ、昨日はまったく出なかったが、2日目はこんな感じでちょいちょい出ていた。という光景を見ると「ああ、SHISHAMOだなあ」と、もはやちょっと安心するのはなぜでしょう。
5曲目は、アコースティック・セットでは初披露となる「君とゲレンデ」。松岡彩の吹くピアニカの音が、宮崎朝子の歌と入れ替わりで響く。曲が終わると3人は三方に一礼、客席を通って本来のステージに上がる。4~5月のツアーの時のアコースティック・コーナーもよかったが、それ以上にスペシャル感に満ちた時間だった。いいもん観た! しかも近いし! という、「お得感いただきました」みたいなムードに前半で満たされた日比谷野音だった。なお、ピアニカは、松岡彩曰く「幼稚園の時のやつ」だそうです。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
ここからはいつものバンドセット。宮崎朝子、「改めまして、SHISHAMOです」とあいさつ、昨日は本編最後にプレイした「みんなのうた」でスタート、いきなりミラーボールが回ったりして一気に空気が華やぐ。次の「量産型彼氏」では宮崎朝子のギターソロに続いて吉川美冴貴がドラムソロをキメ、松岡彩のベースソロから「デートプラン」に突入──と、歌とともに各自のプレイをしっかりと聴かせる前半。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
昨日も来た人に手を挙げてもらったり、手を挙げた人に昨日の感想を(S気味に)きいたり、ペットボトルのフタが開けられなくてローディーに開けてもらう松岡彩を(やはりS気味に)いじったりする宮崎朝子のMCをはさんで、「推定移動距離」、そしてアコギに持ち替えて「笑顔のとなり」へ──と、昨日はやっていない曲を3曲続ける。そして、昨日もやった「熱帯夜」。ただ、昨日もやったが、そしてこの季節だからよけい良いというのもあって、この曲、何度聴いてもヤバい。主人公の女の子が頭に血がのぼっておかしくなっちゃってる感じとか、男の子の方もシンクロしちゃってる感じとか、でもこれが永遠ではなくてすぐ終わってしまうことを察している感じとか、つくづくすごいソングライターだなあと思う。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
続いて、松岡彩のMCコーナー。「やっちゃった!」みたいな失敗をすることが自分も吉川美冴貴もあるが、宮崎朝子はそんなふうに失敗したり慌てたりすることがない、隙のない感じの女性だと思っていた。でも、新しいアーティスト写真を、宮崎朝子が子供の頃に通っていたプールで撮った時、彼女がはしゃいでプールでハデにコケた、そんなところ初めて見た──という話をして、オーディエンスの共感を集める。ただしみんな「コケた」方じゃなくて「普段は隙のない女性」の方に共感していたような気が、しないでもありません。そして、最近ライブでやっていなかったけど、自分がとても好きな曲であることを告げて、「彼女の日曜日」を披露、オーディエンスを喜ばせる。で、タイトル未定の新曲へと続くのだが……。
すみません、私、ここまでしか観れませんでした。ライブレポの先約が入っていて、そちらに移動せざるを得なかったのです。そんな奴に書かせるな。と、メンバーも、ファンのみなさんも思うことでしょう。私も思います。クレームは、「それでもいいからとにかくあんた書いてくれ」と指名してきたSHISHAMOマネージャーまでお願いします。
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
とにかく、後ろ髪を引かれるとはまさにこのこと、と思いながら日比谷野音をあとにしました。で、のちに「彼女の日曜日」からあとのセットリストを見て、アンコールが前日と同じだったことを知って、ちょっと安心しました。唯一「ごめんね、恋心」を観逃したのは残念ですが、5月8日の神奈川県民ホールで聴けたし、よしとします。
とにかく、やっぱり、アコースティック・セットのインパクト、かなりだったので。というかあれ、中盤とかアンコールじゃなくてほんとによかった。
撮影=岡田貴之 レポート・文=兵庫慎司
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
2016.7.16〜17 日比谷野外大音楽堂
夜空編
2. 中庭の少女たち
3. バンドマン
4. 量産型彼氏
5. 手のひらの宇宙
6. 深夜のラジオ
7. 恋愛休暇
8. ともだち
9. 熱帯夜
10. 旅がえり
11. 休日
12. あの子のバラード
13. 昼夜逆転
14. 恋に落ちる音が聞こえたら(新曲)
15. 僕に彼女ができたんだ
16. 僕、実は
17. タオル
18. 君と夏フェス
19. みんなのうた
[ENCORE]
20. 夏の恋人(新曲)
21. 生きるガール
22. 第3ボタン
23. 恋する
2. 君との事
3. 行きたくない
4. がたんごとん
5. 君とゲレンデ
6. みんなのうた
7. 量産型彼氏
8. デートプラン
9. 推定移動距離
10. 笑顔のとなり
11. 熱帯夜
12. 彼女の日曜日
13. タイトル未定(新曲)
14. 中庭の少女たち
15. 恋に落ちる音が聞こえたら(新曲)
16. ごめんね、恋心
17. 僕に彼女ができたんだ
18. 僕、実は
19. タオル
20. 君と夏フェス
アンコール
21. 夏の恋人(新曲)
22. 第3ボタン
23. きみと話せないのは
24. 恋する
問い合わせ:ディスクガレージ 050-5533-0888
11.20(日) 札幌 Zepp Sapporo OPEN 16:00 / START 17:00
問い合わせ:WESS 011-614-9999
11.23(水・祝) 仙台 PIT OPEN 16:00 / START 17:00
問い合わせ:GIP 022-222-9999
11.26(土) 愛知 Zepp Nagoya OPEN 16:00 / START 17:00
問い合わせ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
11.27(日) 愛知 Zepp Nagoya OPEN 15:00 / START 16:00
問い合わせ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
11.29(火) 熊本 B.9 V1 OPEN 18:30 / START 19:00
問い合わせ:キョードー西日本 092-714-0159
11.30(水) 福岡 DRUM LOGOS OPEN 18:30 / START 19:00
問い合わせ:キョードー西日本 092-714-0159
12.03(土) 大阪 Zepp Namba OPEN 16:00 / START 17:00
問い合わせ:GREENS 06-6882-1224
12.04(日) 大阪 Zepp Namba OPEN 15:00 / START 16:00
問い合わせ:GREENS 06-6882-1224
12.06(火) 高松 festhalle OPEN 18:30 / START 19:00
問い合わせ:DUKE高松 087-822-2520
12.08(木) 広島 CLUB QUATTRO OPEN 18:30 / START 19:00
問い合わせ:夢番地 広島 082-249-3571
・12.10(土) 東京 Zepp Tokyo OPEN 16:00 / START 17:00
問い合わせ:ディスクガレージ 050-5533-0888
・12.11(日) 東京 Zepp Tokyo OPEN 15:00 / START 16:00
問い合わせ:ディスクガレージ 050-5533-0888
※3歳以上必要
一般発売日:10.02(日) AM10:00 〜
2016年9月7日リリース
SHISHAMO「夏の恋人」