江本純子が小豆島の造船所跡地で佐久間麻由と野外劇~大部のできごと『とうちゃんとしょうちゃんの猫文学』

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2016.7.30
佐久間麻由   江本純子

佐久間麻由 江本純子


2000年代に毛皮族の主宰として疾風怒濤の活躍を繰り広げた劇作家・演出家・俳優の江本純子。彼女が、8月10日から3日間、瀬戸内海は播磨灘に浮かぶ小豆島 (しょうどしま)で、女優の佐久間麻由と共に二人芝居をおこなう。会場となるのは、島の北西部に位置する大部(おおべ)地区の砂子造船所跡。そのプロジェクト名ないしはユニット名を「大部のできごと」といい、上演する作品名は『とうちゃんとしょうちゃんの猫文学』という。台本と演出(作・演出)は江本純子、劇をする人(出演)は佐久間麻由・江本純子。

佐久間麻由   江本純子

佐久間麻由 江本純子

「大部のできごと」からの声明によると、今回の企画は、上演場所を探すところからスタートした。それも既成の劇場ではないところ。時の流れや人の息吹、あるいは自然との共生感といった何らかの特別な「力」の備わった特別な場所を徹底的に求めた結果、辿り着いたのが大部の造船所跡地だった。決め手はトタンの美しさだったという。

そこでは「何も建てない」「何も持ち込まない」「手ぶらで行う」“生きている”ような野外演劇が上演されるという。それでいて、“場所を使った巨大インスタレーションアート”としても楽しめるものとのことだ。

上演作品『とうちゃんとしょうちゃんの猫文学』は、「宇宙の片隅にいる」「宇宙を感じる」というロマンを実感させる物語。少々のファンタジーと笑いと音楽を散りばめた、人と風景の協奏するシュールレアリスティックなドラマが展開する。

佐久間麻由   江本純子

佐久間麻由 江本純子

従来のスタイルを大きく方向転換して、今回のような演劇作品を創作することについて、江本は次のようなコメントを寄せている。

なぜ野外へ  江本純子

2000年代「毛皮族」で、闇雲にお金を使ってエンターテイメント作品を作り、お客さんはいっぱい来たけど、赤字もいっぱい出しました。その頃は外側の「スタイル」を作ることにすごくお金をかけていたと思います。あるとき、それがただの「偽物」を作っている感覚になり、「作り物」自体を作ることに嫌悪する時もありました。わざわざお金を使って、劇場で上演するために作られる美術セットがただの張りぼてにしか見えなくなってしまったのです。それは自分をよく見せるためにブランド品を買って身につける行為と少し似ています、わたしにとって、それは精神の乏しさを隠すためのものでした。私は精神の乏しさも隠さずに露呈していくことにしたのです。それで、自然のもの、作為なくその場にただあるもの、何もいじられてないもの、という天然素材に注目す るようになりました。

それで見えてきたのは、世の中は人工物だらけ。たとえば食べ物も、人工物がほとんど。そもそも人工物とは、生活に合理性や効率を求めたために生まれたものです。企業は商品を効率よく売るために、人工的な商品を世の中に氾濫させてきました。化学調味料だらけの醤油、薬品漬けされた梅干し。「梅干しは体にいい」 と言われたって、企業が効率のために作った梅干しは体にはとても有害なものです。でも有害という部分はごまかしている。売ることが第一だから。 誰かの利益や効率の目的のせいで、人は食べなくていいものをわざわざ食べるために、体や精神を壊してまで働くことがある。人間生活における、そういうむちゃくちゃな部分、どうにかしないといけません。すでにシステムが確立された劇場ではない場所や、野外上演を行うのは、非効率の中で作らなくてはいけないと思ったからです。 非効率の世界では、本当に必要なものだけが見えてくるはず。

小豆島観光に関しては、http://shodoshima.or.jp/ を参照のこと。

なお、今秋には江本純子初監督作品の映画『過激派オペラ』の上映も控えている。

公演情報
大部のできごと
上演する野外演劇:『とうちゃんとしょうちゃんの猫文学』

■台本と演出:江本純子
■劇をする人:佐久間麻由   江本純子
■日時:2016年8月10日(水)、11日(木・祝)、12日(金)全日 18:30開演
・受付は17:50より、開場は18:00より開始。
・雨天決行。荒天の場合は中止。
・上演時間は60分を予定。
■場所:大部 砂子造船所跡 香川県小豆郡土庄町大部甲1919-1
■入場料:(前売・当日共通/税込) 一般:2500円    島民割引:2000円 学生割引:1000円 シニア割引(60歳以上):2000円 小学生以下:無料
※全席自由席。当日、受付順。
※割引予約者は、当日受付にて身分証明になるものを提示のこと。
取り扱い:ホームページ http://oobenodekigoto.wix.com/2016  TEL.080-4403-2212
■協力:大部地区協議会/ 瀬戸内観光汽船/ 小豆島カメラ / 食べ処唄い処 和 / ピチチ5/ままごと / マッ シュ  / MeiPAM(メイパム)/大塚一歩
■宿泊所提供:山本秀勝
■島の世話人:平野公子
■写真:坊野美絵
■宣伝美術:twominutewarning
■制作:植田良子 川田有希(シアター・デザイン・カンパニー) 
■制作協力:斎藤 努
■企画とプロデュース:佐久間麻由 江本純子
■問い合わせ大部のできごと 電話  080-4403-2212   /  メール  oobenodekigoto@gmail.com

佐久間麻由   Mayu Sakuma
1985年2月21日生まれ。神奈川県出身。
16歳の時にスカウトされ、芸能事務所ワタナベエンターテイメントに所属。 音楽番組や情報番組のMC等を経験した後、オーディションで受かったTVドラマへの出演を機に、芝居と出逢う。その後、フリーランスの俳優として商業映画や自主制作映画に出演するようになり、2007年頃、知人に紹介された演劇ワークショップへの参加を機会に本格的に演劇活動を始めるに至る。
演劇活動においては、クリエイターに自らコンタクトをとり、積極的に作品作りに参加してきた。多様な作品との出会いを経て、ここ数年は俳優という役割だけではなく、作品創作そのものに興味を持っている。現在、共に創作を行いたいクリエイター達との作品上演の実現に向けて、企画・制作者としての活動をスタートした。その第一弾が2016年2月に行った「二月のできごと」。映像作品や演劇作品の枠にとらわれない、“自由なもの作り”に拘り、それを行える「場」を作っていきたいと考えている。
【主な出演作】
映画「エクステ」(監督 園子温)/名前のない女たち」(監督 佐藤寿保)/「ロマンス」(監督 タナダユキ)/「劇場霊」(監督 中田秀夫)/「日本で一番悪い奴ら」(監督 白石和彌)
舞台 FICTION 『ディンドンガー』/ ベッド&メイキングス『墓場、女子高生』/ ハイバイ『て』/庭劇団ペニノ「ちいさなブリミロの大きな冒険」/財団、江本純子『人生2ねんせい』/贅沢貧乏『ハワイ ユー』

江本純子 Junko Emoto
1978年12月22日生。千葉県出身。
2000年、21歳の時に劇団「毛皮族」を旗揚げ。2000年代、毛皮族は祝祭 的な演劇作品の数々を上演し、演劇界で一躍した存在となった。現在は 2009年からの製作名義「財団、江本純子」にて新作の上演を行っている。
2006年、処女小説『股間』を発表。09年『セクシードライバー』、10年『小さな恋のエロジー』が岸田國士戯曲賞最終候補作となる。12年、フランス・パリ日本文化会館より招聘され、毛皮族作品『女と報酬(Le fric et les femmes)』を同劇場にて上演する。08年~13年、セゾン・ジュニア フェローとしてセゾン文化財団からの助成を受ける。2016年には初監督した長編映画『過激派オペラ』が公開される。 商業での作品発表も定期的に行っているが、自身がプロデュースする演劇活 動においては「劇場」で劇を行うことや既存の演劇手法のあらゆることに疑問を提起しながらの創作を行っている。近年は、劇場ではない「場所」と 俳優ではない「人」とのゼロからの演劇創作を楽しみ、過度な装飾や作られたセリフ、物語を排除したミニマルな演劇表現を追求している。
【近年の主な作品】
舞台『ライチ☆光クラブ』紀伊國屋ホール/乃木坂46『16人のプリンシパル deux』 赤坂ACTシアター /あうるすぽっと+毛皮族共同製作『じゃじゃ馬ならし』/ 『幕末太陽傳』本多劇場 / 財団、江本純子「売るものがある性」アトリエヘリコプター/二月のできごと「黒い三人のこども」
【主な出演作】
舞台  シアターコクーン+大人計画『ふくすけ』/東京芸術劇場『自作自演 飴屋法水×江本純子』/日本・シンガポール・インドネシア国際共同制作『三代目、りちゃあど』 東京芸術劇場 他
映画 『恋の門』/『歓喜の歌』/『東京タワー オカンとボクと時々、オトン』
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