イケテツ版「浦島太郎」で楽しい夏の思い出を~『TARO URASHIMA』ゲネプロレポート~

レポート
舞台
2016.8.12
『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)


なぜ漁師なのに亀を獲らずに助けるの? なぜ乙姫は老人になる罠をプレゼントするの? なぜ「開けるな」と言われた玉手箱を開けてしまうの? 昔話「浦島太郎」に潜む謎の数々に、猫のホテルの看板役者を経て近年は脚本家としても活躍する池田鉄洋が挑む、ミュージカル『TARO URASHIMA』が8月11日に開幕する。演出は第三舞台出身でミュージカルも多く手掛ける板垣恭一、そして音楽には、読売演劇大賞2016年上半期ベスト5にも選ばれた『Color of Life』でミュージカル界に確かな爪痕を残した伊藤靖浩という強力な布陣。初日を控えた10日、明治座で行われた公開ゲネプロを観劇した。

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

運の悪い浦島太郎とネガティブな乙姫

何をやっても裏目に出るツイてない男、浦島太郎に扮するのは木村了。端正な顔立ちでありながら三枚目的な役どころも得意とする彼に、イケメンなのにモテない少々残念な今回の主人公はまさに適役と言える。持ち前のコメディセンスで軽やかに、しなやかに太郎を演じ、観客を味方につけた。そんな太郎と恋に落ちる乙姫は、イケテツ版では「生まれてサーセン(スイマセン)」が口癖の卑屈なお姫様。清楚で天真爛漫なイメージのある上原多香子が演じるからこそのギャップが面白く、こちらもまた適役だ。

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

太郎の友人ムサシ(崎本大海)ら市井の人々、地上の国を治める帝(和泉元彌)とその側近(大堀こういちら)、海の国の王(坂元健児)とその家族(とよた真帆、滝口幸広ら)や召使い(斉藤暁)、そして海の国の中でも差別的な扱いを受けている深海の生物たち(原田優一、舘形比呂一、辻本祐樹)。主役カップルのほかにも様々な立場のキャラクターが登場し、複雑に絡み合うスケールの大きな物語だが、肩肘張らずに観ていても展開を見失うことはない。それは、明快な脚本とサービス精神旺盛な演出、分かりやすい衣裳もさることながら、やはりキャスト一人ひとりの個性が際立っているからだろう。

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

狂言師であることを生かした役作りで笑いと喝采を集めた和泉、ミュージカルスターらしい振る舞いと歌唱力で圧倒した坂元と原田、ダンスの名手ならではの身のこなしとオーラで魅了した舘形…。幅広いジャンルから集まった役者陣がそれぞれに自分の持ち場を守り、“謎”が解明するラストへと舞台を華やかに導いた。

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

「最高にバカバカしくて可愛らしい作品」

ゲネプロに先立って行われた囲み取材には、木村、上原、斉藤、崎本、和泉、とよたの6人が出席。木村は開口一番、「最高にバカバカしくて、最高に可愛らしい作品が出来上がった」と自信を覗かせた。会見は終始、6人が互いにツッコミ合う和やかな雰囲気で、「稽古場のムードメーカーは?」との質問に木村が「みんながムードメーカーで…まとまりに欠ける(笑)」と答え、一同が爆笑するひと幕も。

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

『TARO URASHIMA』(撮影:岩間 辰徳)

会見のままの和気あいあいとした関係性の中で作られた舞台であることが最も伝わってきたのは、ミュージカルのあとに上演された第二部の『浦島太郎トリビュートコンサート』だった。2050年、『TARO URASHIMA』が伝説のミュージカルとして語り継がれている未来という設定のもと、キャストが無礼講とばかりに楽しげに歌い踊るショータイム。第一部と二部を合わせると4時間を超える長丁場だが、キャスト主催の祭りに参加するような気持ちで劇場を訪れたら、楽しい夏の思い出ができそうな公演だ。

(撮影:岩間 辰徳)

(撮影:岩間 辰徳)

(撮影:岩間 辰徳)

(撮影:岩間 辰徳)

(撮影:岩間 辰徳)

(撮影:岩間 辰徳)

(撮影:岩間 辰徳)

(撮影:岩間 辰徳)

(取材・文:町田麻子 撮影:岩間辰徳)

公演情報
『TARO URASHIMA』​
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■日時:2016年8月11日(木・祝)~15日(月)
■会場:明治座

■脚本:池田鉄洋
■演出:板垣恭一
■音楽:伊藤靖浩

■出演:
浦島太郎=木村了
乙姫=上原多香子
カメ=斉藤暁
ムサシ=崎本大海
甲太子=滝口幸広
ダイオウグソクムシ参謀= 辻本祐樹
深海王子=原田優一
アンコー=土屋シオン
ヒラメン=碕理人
丙姫=森田涼花
クロダ氏/アイ鯛=竹内寿
ダテ氏/キスシ鯛=中村太郎
ウエスギ氏/ツメタクシ鯛=月岡弘一
カワイ氏/チョーネク鯛=桝井賢斗
タケダ氏/ウバイ鯛=香山佳祐
シタスギ氏/ヘン鯛=塩川渉
海豚妃/ムサシの彼女=角島美緒
貴族ヒダリ麻呂=二瓶拓也
コバンザ=高木稟
貴族ミギ麻呂=大堀こういち
タカアシガ二将軍=舘形比呂一
竜王=坂元健児
帝=和泉元彌(特別出演)
鯱妃=とよた真帆

【第二部】
鯛や平目の舞踊りショー
司会:三上真史

■公式サイト:http://www.meijiza.co.jp/info/2016_08_urashima/special-special/​

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