女優・知英が豪華キャストと共に名作ミュージカルに初挑戦! 『スウィート・チャリティ』製作発表レポート
2016年9月23日から天王州劇場にて上演される、ブロードウェイミュージカル『スウィート・チャリティ』。1966年にブロードウェイで初演され、大ヒットしたシャーリー・マクレーン主演の映画でも知られる本作は、日本でも6度目の上演となる。ミュージカルファンならずとも、一度は耳にしたことがある名曲が数々登場する、とびきりハッピーなミュージカルだ。
舞台はNYのダンスホール。そこでホステスとして働く、お人好しで男運がない、いつも失敗ばかりしているけれど、「いつかは幸せになれる!」と前向きに生きているヒロインが、大スターや紳士的な会計士との出会いを通して、成長していく姿を描くストーリーだ。
ヒロインのチャリティ役に挑戦するのは、本作がミュージカル初出演となる元KARAの知英(Jiyoung)。KARA脱退後も、女優としてドラマ『民王』などで活躍中の知英を中心に、実力派のミュージカル俳優たちが集結する本作の制作発表が、2016年8月7日に都内某所で行われた。プロデューサーの松田誠氏の司会で登場したのは、知英、平方元基、岡幸二郎、上島雪夫(上演台本・演出・振り付け担当)、玉麻尚一(音楽担当)の5名である。
会場内は、今回の全員のビジュアル撮影を担当したというカメラマン、レスリー・キー氏の写真も並べられ、華を添えていた。以下、その会見の模様をレポートする。
——演出を担当する上島さん、ミュージカル「スウィート・チャリティ」の魅力について教えてください。
上島:僕の先輩で同じ演出&振付のジャンルで活躍している人に宮本亜門さんという、ちょっと賑やかな人がいるんですが、彼とは実は同じダンススタジオの出身なんです。お互いにダンサーから振付師になって、演出家になった経歴を持っています。このスタイルを最初に確立したボブ・フォッシーという方が作ったのが、このミュージカル『スウィート・チャリティ』なんです。僕も亜門さんも『シカゴ』『キャバレー』など、そうそうたる作品を作ってきた彼の背中を追いかけて現在に至るので、今回この作品に携わることができて本当に幸せです。
そして今回は、日本のミュージカル界でトップクラスの歌い手とダンサーも集めていますので、ブロードウェイの舞台に引けをとらない『スウィート・チャリティ』になるのではないかと、僕自身もワクワクしています。
——知英さんは、今回がミュージカル初挑戦ということですが、意気込みを教えてください。
知英:女優になってミュージカルに出演するのは小さな頃からの夢だったので、とても嬉しいです。この間、歌稽古が始まったのですが、実はほかの出演者の皆さんよりちょっと早く台本を手に入れました(笑)。イントネーションを確認しなければいけないし、ミュージカルは始まってしまったらTVや映画と違ってやり直しがきかないので、毎日『スウィート・チャリティ』の映画を見つつ、自分はどういう風にチャリティを演じるかを研究しています。
チャリテイは、とっても可愛らしくてポジティブな女性なんです。ポジティブな感じと「キャー」ってなっちゃうお茶目な感じは自分にも似ている部分があると思うので、上島さんや先輩方に色々教えていただきつつ頑張りたいです。
上島:この作品は、チャリティに始まり、チャリティに終わるんですよ。この間少し本読みをしてみたら、チャリティは一回舞台に出てきたらずっと出づっぱりだということに気がついたんですが「大変だけど絶対頑張る!」って負けず嫌いな顔で言ってる知英ちゃんが、チャリティそのものだなと思いました。舞台に立っているのが、チャリティなのか知英ちゃんなのか、どっちかわからないくらいな感じで活かせたら面白いのではないかと思っています。これから彼女を生き生きと、歌って踊らせるのが楽しみでしょうがないです。
——チャリティが恋をする男性役の岡さんと平方さんは、いかがですか。
岡:実は僕、このお話をいただいたときに別の役だと思っていたんです。まさか真面目な会計士の役がまわってくるとは(笑)。新しいタイプの役に挑戦させていただけることと、知英さんという素晴らしい方と共演させていただけることに素直に喜んでいます。私が演じるオスカーという役は、唯一「スウィート・チャリティ」という言葉を発して「スウィート・チャリティ」という歌も歌わせていただく役でもあるんです。そんな重要な役割もこなしつつ、古い作品を現代にも合うように蘇らせていく点にもやり甲斐を感じています。知英さんは今回、本当にずっと出づっぱりの役なので大変だと思うのですが、これが初ミュージカルだということなのでミュージカルが嫌いにならないように(笑)、サポートしながら楽しい舞台にしていきたいと思っています。
平方:先日、楽曲を聴かせていただいたんですけれど、とてもポップなのにどこか懐かしいような心を揺さぶられる音楽がたくさん鳴っていたので、その世界観の中に入れることをとても楽しみにしています。僕の役は、チャリティをスウィートな女の子にするための試練その1っていう男なんですけど、世界的に有名な映画スターの役なんです。今日は、(ファッションが)岡さんにスゴく負けているので(笑)、本番までに岡さんのきらめきに負けないように頑張っていかないとと思っています。本番までに勉強して参りますので、僕の成長の程も楽しみにしていてください。
——音楽担当の玉麻さんが考える、この作品の魅力はどうでしょうか。
玉麻:僕はもう30年くらいミュージカルの仕事ばかりをやっているんですが、昔と比べるとミュージカルがだいぶ世の中に浸透してきたことを実感しています。人によっては、まだ苦手だという人もいるかもしれませんが多分この作品は、若い世代からミュージカル世代まで、どの世代の人にも楽しんでいただけるのではないかと思っています。1960年代のミュージカルというのは、一番ミュージカルが変わろうとしていた頃で、それまでにあった『ウェストサイド・ストーリー』や『サウンド・オブ・ミュージック』などのクラッシックな作品と比べると『スウィート・チャリティ』は、ポップな音楽が多いので若い世代の人達にも親近感が湧く音楽にしたいなと思っています。普段ミュージカルを観ない人にも、是非観ていただきたいですね。
——ミュージカルの現場の先輩である岡さん、平方さんから、初舞台の知英さんへのアドバイスは何かありますか。
岡:アドバイスですか? 楽しむことが一番だと思うんですよね。舞台の上に立っている人間が楽しまないと、客席のお客様には楽しんでいただけないんじゃないかな。知英さんも僕達もとにかく楽しむことが大事! そうするとお客様も楽しんでくださるんじゃないかと思います。では、もう1人の先輩、どうぞ(笑)。
平方:先輩ではないと思うんですが……。きっと稽古中に、いっぱい悩んで緊張もすると思います。僕が普段やっているのは舞台に立つ時に何も考えないことですね。ココロを裸にして飛び込んでしまえば、後はカラダに叩き込まれているものが自然に出てくるはず。知英さんは素晴らしい能力を兼ね備えている気がするので、何も心配しなくて大丈夫だと思いますよ。逆に後でアドバイスください(笑)。
——上島さんと玉麻さんが、今回力を入れたいポイントはどのあたりでしょうか。
上島:この作品の舞台は、1960年~70年代の一番面白いと言われていた頃のニューヨークです。42番街の歌の中で、“ギャングとエリートがすれ違う街” なんて歌詞もありますけれど、そういう下町で一生懸命生きているパワフルな人達の話なんです。それが今生きている女の子たちとも、どこか重なる部分があるんじゃないかと僕は思っているんですよね。
物語の設定はニューヨークだけど、これは渋谷や新宿で起きている物語としてもいいんじゃないかと思っていますので、確実に現代を生きている人達と何か重なる、共感できる形で作っていきたいというのはあります。歌や踊りに関しても、海外で生まれた歌や踊りをするという感覚ではなく、僕らの歌と僕らの踊りを僕らならではの新しい作品として作っていけば良いんじゃないかと、色々試作を練っているところです。
玉麻:昔のブロードウェイ・ミュージカルは、ほぼオーケストラで演奏されているんですが、日本は劇場の事情もあって足りない楽器はシンセサイザーで代用することが多いんです。が、今回はシンセは使わず、生の楽器の良さで勝負したいなと思っています。そうすることで、この作品の良さがより引き立つし、このメンバーにしか歌えない歌の良さも引き出せると思うので、そこにも注目してもらいたいです。
——最後に知英さんから抱負をお願いします。
知英:体力には自信があるのでそこは心配していないのですが、すごく緊張するタイプなので不安で倒れるんじゃないかなと、ちょっと怖いところもあります(笑)。でも、こんなに早く舞台に出させていただけるとは思わなかったので、本当に夢のようです。不安もありますし、やらなきゃいけないこともたくさんありますが、ミュージカルはお客さんとキャッチボールできるのがとても楽しいとお聞きしたのでライブとは違う、お芝居を通してファンの方と交流できることを、今から楽しみにしています。
平方:不安なことを“不安”と言えるところがすごく素直でいいですよね。お芝居しながらも、色んなことを話し合えそうでいいなって僕は思っています。
岡:平方さんと僕は、同郷なのに初共演ですし、知英さんというミュージカル初出演の方がいらっしゃることで、新鮮な気持ちになれると思っています。すごく楽しみです。
知英:先輩たちに色々と教えていただきながら、死ぬ気で頑張ります(笑)。死ぬ気で歌って、踊って、頑張ります!
撮影=岩間辰徳
日時:2016年9月23日~10月2日
会場:天王州劇場
作曲:サイ・コールマン
作詞:ドロシー・フィールズ
原案:ボブ・フォッシー
音楽監督:玉麻尚一
<出演者>
知英、平方元基、坂元健児、黒須洋壬、原田薫、ジェニファー、岡幸二郎 他