おっちゃん&ミンジュの怪しいK-Pop喫茶[第14話] 蝶々の接吻 ~『TAEYEON, Butterfly Kiss』

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2016.8.13
TAEYEON, Butterfly Kiss

TAEYEON, Butterfly Kiss


客「ティファニーのソロとゆえば、実はワシ最近テヨンちゃんのソロコンサートを観て来たんや」
ミンジュ「おっ、いきなり前回の続きかっ?(珍しー)」
おっちゃん「ワシも観たで、そのコンサート」
ミンジュ「ええっ!?」
客「いつの回を?」
おっちゃん「ソウルの2日目や」
客「ワシと一緒やん。ほな、ワシとマスターは同じ会場におったとゆうことか?」
おっちゃん「いや、ワシはそん時、最新カフェ事情を視察するために日本におった」
客「最新カフェ事情?」
おっちゃん「うむ。いま日本では新しい発想のカフェがじゃんじゃん生まれておる。小鳥カフェやフクロウカフェのような癒し系のものから、鉄ヲタやアニメヲタ、アイドルヲタ向けのサブカルカフェ、寺カフェやゲンロンカフェなど哲学的なカフェ、ハンモックカフェや足湯カフェなどリラクゼーション寄りのカフェ、ニットカフェやハンダ付けカフェなど自作派カフェなど、無限のアイデアによって斬新なカフェが百花繚乱、それが現在の日本なのじゃ」
客「ぴゃー、すごいねぇ」
ミンジュ「ほなおっちゃんも新しいカフェを始めようって思うとるの?」
おっちゃん「ご名答。視察の結果、実に斬新なカフェを思いついた」
客「マジで? どんなん?」
おっちゃん「ウェイトレスが全員下着を穿いてないノーパン喫…」
ミンジュ「バブル時代か!(バシーン!) 斬新どころか古すぎや!」
おっちゃん「そやけど、テレビでは桐谷美玲が1980とかゆって踊ってるし、今の世の中はバブル回帰ムード。一周回ってノーパン喫茶が斬新てことになるんやないかと」
ミンジュ「なるか、アホ」
客「たとえそおなっても、結局、官僚の汚職の温床になりそうやな(笑)」
ミンジュ「そうやで、すぐ目をつけられるって。昔みたいに風営法がユルユルの時代やないっての」
おっちゃん「あかんかー(がっくり) せめて東京だけでも小池百合子新知事がノーパン喫茶認めてくれへんかなぁ」
ミンジュ「取り締まり厳しくなることはあっても、その逆は絶対ないわ。そんなつまらんこと学びにわざわざ日本まで行くなよな」
客「てか、日本におってなんでテヨンちゃんのコンサート観ることができたんや?」
おっちゃん「テヨンちゃん?」
客「日本でテヨンちゃんのコンサート観たゆうとったやないか。認知症か?」
おっちゃん「ああ、思い出した。ワシが観たのはライブビューイングや」
客「ライブビューイング?」
おっちゃん「日本で行われているライブ観覧の新形態でな、例えば人気ロックバンドのコンサートや話題の演劇など、行きたいけど入手が困難だったり、大都市でしか興業しないために地方在住の人間には敷居が高かったりした公演を、映画館などの施設に生中継することで全国多くの場所で観ることができ、しかも代も比較的安価に済むとゆう画期的システムや」
客「つまり、猪木VSアリ戦を自宅で観戦するような…」
おっちゃん「そおそお、そうゆう利便性が売りなのよ」
ミンジュ「(呆)とことん昭和な会話やなぁ」
おっちゃん「んなわけで7月10日には日本国内44か所の施設でテヨンのコンサートが観られた。熊本の映画館が地震で一時閉館してなかったら恐らく45か所になったろう。観客数は数万に達したと思われる」
ミンジュ「すげー。うらやましー」
客「そやけど、テヨンちゃんのコンサートて、これで2回目やろ? 前回はライブビューイング中継なかったのに、なんで今回はそんな派手な興業になったんや?」
おっちゃん「前回のはコンサートゆうたかてSMの常設小屋『SMTOWN THEATRE』を使った、収容人数700人くらいのライブに近い公演やった」
客「そやったっけ?」
おっちゃん「SMは去年からこの韓国初の可変型会場を使って『The Agit』ちゅうコンサートブランドを立ち上げたんやけど、テヨンの最初のコンサート『テヨンのとても特別な日』はこの『The Agit』ブランドのものやったんや」
客「固有名詞だらけでさっぱりわかりまへんが」
おっちゃん「そやからSMが持ってるライブ会場でSMのアーティストがやるコンサートのシリーズが『The Agit』って名前で、テヨンのライブには『テヨンのとても特別な日』ちゅうサブタイトルがついとったんよ」

『テヨンのとても特別な日』

『テヨンのとても特別な日』

客「…つまり?」
ミンジュ「例えばAKB劇場でのAKB公演で“秋の大感謝祭”シリーズのチームBの回が『ただいま恋愛中』てタイトルが付くとか、そんな感じやない?」
客「うーん…宝塚大劇場で星組が公演してて、その演目が『桜華に舞え!』ってゆうんなら判らんでもないけど」
ミンジュ「ほんならそれでええわ(めんどくさ)」
おっちゃん「それに対して、今回のコンサートはソウルは蚕室のオリンピックホールで収容人数も4300人と大増量や。釜山の会場KBSホールも3000人くらい入るらしくて、二都市合わせて4日間開催された。場所もスケールも本格的なコンサートと呼ぶにふさわしいものとなった」
客「確かにステージ広くて、ダンサーいっぱい出てきて豪華やったな」
ミンジュ「へー。だんだん観たくなってきたわ」
客「そら素晴らしかったで~」
ミンジュ「たぶん少女グループ在籍中のアイドルによるソロコンサートとしては前代未聞の規模やろうね。そもそもグループのメンバーがソロでコンサートすること自体が異例やけど」
おっちゃん「うむ。もともとこの『TAEYEON, Butterfly Kiss』ちゅうコンサートは今年の4月23日~24日に行われることが決まっておったんやけど、“公演の完成度を高めるため”ちゅう理由で7月に延期された。実際はティファニーのソロデビューや他のアーティストとの兼ね合いでやむを得ずってところやろうけど、それだけに気合の入った内容になっておった。なにしろ1stコンサートの17~8曲に対して、今回は22~3曲も歌う大盤振る舞い」
客「そやったなぁ。いっぱい歌うてた」
おっちゃん「しかもそのほとんどが彼女のオリジナル曲なんやから、ソロ歌手としてもどれだけ活躍してきたかよお判るっちゅうもんや」
ミンジュ「しえ~」
おっちゃん「去年ソロデビューしてから(第5話参照)、テヨンは急ピッチでソロ活動を推し進めてきた。いま思えば、それらの活動はみなコンサートに向けての準備やったのかもしれん。開催時期がずれたことと相まって、非常に充実したソロコンサートやった」
ミンジュ「テヨンねえさん、今年ソロでそんなに歌ってたっけ?」
おっちゃん「山ほど歌うてるんよ。まずは今年の2月にはSMが立ち上げたデジタル音源公開チャネル『STATION』の第1弾として『RAIN』をリリースし…」
客「待て待てーい。さっきはライブのブランドゆうのが出てきたけど、今度は音源チャンネルやて?」
おっちゃん「そやねん。SMは昨今イ・スマン代表が提唱するCT(文化技術)の名のもとに革新的な文化事業を精力的に展開しとる。スターカフェ、グッズショップ、アーティスト体験スタジオ、SMTOWN THEATREなどアトラクション施設が詰まった6階建てビル『SMTOWNコエックスアティウム』や、そのSMTOWN THEATREで展開するコンサートシリーズ『The Agit』、ネットを使ったデジタル音源公開チャネル『STATION』などこれまで市場にない概念のメディアが多く、SMファンも容易に消化できんほどや。で、今ゆうた『STATION』ちゅうのは、インターネット上で1年間毎週1曲ずつデジタルシングルを世に送り出すちゅうプロジェクトや」
客「なんで音楽配信チャネルの名前が『STATION』なんやろ?」
ミンジュ「そおゆうたらそおやね? SMとテレ朝が提携でもしたんかな?」
おっちゃん「知らんがな。ともかく、その第1弾に選ばれたのがテヨンて訳や。彼女は“絶対に失敗しない歌手”と呼ばれておるし、どれほど会社に信頼されてるかよおわかるやろ。在籍末期にはJYPネーションにも呼ばれなくなったどこぞの歌手とはえらい違いや」
ミンジュ「やかましーわ!」 ←間違いなくコケる歌手
おっちゃん「その時テヨンが歌ったのが『RAIN』で、デビュー曲『I』に続く、ソロ第2弾にもなっとる」

『RAIN』

客「あ、これもコンサートで歌うてた」
おっちゃん「自身の人生を力強く歌い上げた『I』と違うて、これはちょっとジャズっぽいアンニュイな雰囲気で、ボーカルの伸びより響きを生かした曲作りになっとる。さらにミネラルウォーターのCMに出演しては『済州島の青い夜』ゆう曲をヒットさせ…」

『済州島の青い夜』

ミンジュ「あら、可愛い歌」
おっちゃん「素朴なメロディによく合う、最近のテヨンじゃ珍しい10代の頃みたいな素直な歌い方やけど、これはこれで大いに魅力的やと思う。CMゆうたらもう一曲…」
ミンジュ「まだ歌うてるの?(呆)」
おっちゃん「そやから山ほどゆうたやないか。スマホゲームの『剣と魔法 for Kakao』のCMソングとして、なんとBoAの往年のヒット曲『アトランティスの少女』をカヴァー。めっちゃ話題になった」

『アトランティスの少女』(30秒CM版)

おっちゃん「もっとちゃんと聴きたいゆう要望が大きかったので、『アトランティスの少女』はその後音源が公開され、今ではフルバージョンが手に入る」
ミンジュ「BoAに憧れて歌手になる夢を抱いた全州の少女が、またひとつ夢をかなえた訳やねぇ。すごーい」
おっちゃん「まさに。ちゅうても今ではBoAに引けを取らない実力と人気を誇るテヨンのこと、きちんと彼女なりに消化して歌うておるのがさすがや。BoAのオリジナル版と比べてみると、その差は鮮やか」

BoA『アトランティスの少女』

客「なるほど。味わいが全然違う」
おっちゃん「BoA版では3分20秒辺りの長く伸びる“기억(記憶)”て部分が聴かせどころなんやけど、もちろんテヨン版でもそこは十分意識した歌い方になっておる。ぜひ音源を手に入れて聴き比べていただきたい」
客「はーい」
おっちゃん「さらに6月下旬にはセカンドソロアルバムをリリース。これは完全にコンサートに照準を合わせた発売やな」
ミンジュ「そやね」
おっちゃん「テヨンの正式なカムバックゆうことで注目度はハナから高かったし、たちまち各音源配信サイトで1位を総なめしたのはさすがやった。先行公開曲『Starlight』と正規活動曲『Why』は、当たり前みたいに音楽番組で1位を獲ったし」
客「そやったな。コンサートの途中で『Why』が1位になったゆうニュースが飛び込んできて、テヨンめっちゃ喜んでたわ」

『Starlight』

『Why』

おっちゃん「このアルバムは1作目とがらりと変わって、クールでファンキーなノリ。『I』とも『RAIN』ともまた違うテヨンの魅力を引き出しとるな。タイトル曲『Why』は歌って踊るEDMで、彼女が少女時代のメンバーやということを再確認させられた」
客「テヨンちゃんて、ダンスも下手じゃないよね」
おっちゃん「そやねん。手足が長くないから見栄えはしないけど、リズム感がええんで意外に上手い、て以前ティファニーがゆうとった」
ミンジュ「まぁ15年近く稽古してきてる訳やからね」
おっちゃん「前回ティファニーとジェシカのアルバムを若干ディスったところもあったけど、テヨンのアルバムにそおゆう欠点はない。どの曲もテヨンの実力に合わせて凝ったサウンド構成になってるけど、とても素晴らしい出来や」
客「名曲ぞろいってこと?」
おっちゃん「そおともゆえるし、その逆ともゆえる。名曲を生み出すのはスコアを書いた者の力だけやない。歌手の力も大いに関係してくる。曲の意図するところを理解し、それに合わせた歌い方や感情移入ができるのが優れた歌手の条件や。ワシはこのアルバムを聴いて、松谷祐子を思い出したわ」
ミンジュ「誰やねん、それ?」
おっちゃん「知らんか? 名曲『ラムのラブソング』を歌うてた人やけど、この人のアルバムが素晴らしい出来で“これぞ真のシンガー”と絶賛されたのを覚えとる」
ミンジュ「聞いたこともない。どおせまた昭和の歌手やろ」
おっちゃん「うむ。1984年のアルバムやな。最近このLPをヤフオクで競り落としたばかりや」
ミンジュ「石器時代やないかっ!」

松谷祐子『うる星やつらSONGBOOK』

松谷祐子『うる星やつらSONGBOOK』

おっちゃん「テヨンはソロだとバラードとか感性的な歌ばかり歌って来てるんで、抒情的歌手やと思われがちやけど、実はそうやなくて、歌の求めるところに実に幅広く対応出来る万能の歌手なんや。ダンスまで出来るんやから、ほぼ無敵やな」
客「あと色白で美人やで」
おっちゃん「そおそお。“美貌と実力を兼ね備えた韓国最初の歌謡歌手”と、BoAやイ・ヒョリが聞いたら怒り狂いそうな記事を見かけたことあるわ。とにかく『TAEYEON, Butterfly Kiss』はいろんなジャンルの歌が盛り込まれ、万能歌手テヨンの魅力を余すところなく感じられる素晴らしいステージやった」

【『TAEYEON, Butterfly Kiss』セットリスト(2016年7月9~10日)

【VTR】
1. Up & Down
2. Good Thing
3. Fashion
4. Night
5. Rain
6. ふたご座
[MC]
7. 먼저 말해줘 ( Farewell )
【VTR】(『記憶を集める時間 』ロックバンドNellのカヴァー)
8. もしも
9. 聞こえますか
10. I Love You
[MC]
11. 済州島の青い夜
12. アトランティスの少女VTR】(『 Uptown Funk 』 Mark Ronsonのカヴァー)
13. Why
14. Hans on Me
15. Starlight ( Feat. Dean )
[MC]
D ( Half Moon ) …テヨンは退場、Deanのソロ
【VTR】
16. 秘密
[MC]
17. Pray(テヨンの作詞作曲)
18. I

アンコール
19. Twinkle
20. ストレス
21. Gee(シャシャシャ Ver.)
【VTR】
22. U R

記念撮影(ソーシーッ!)

ミンジュ「おおーっ、これはゴージャス」
おっちゃん「あえて『Why』での活動を1週間に限定して、このコンサートに集中しただけあって、完成度の高い公演やった」
客「10人くらいダンサーがおって、テヨンの両脇でくるくるポールダンス始めた時は“いらんわっ”って思うたけど、すぐ気にならんよおなった」
おっちゃん「結局テヨンしか見ないよってな」
客「そやねん。それくらいテヨンちゃんのパフォーマンスには目を奪われたで」
おっちゃん「セトリを見てもらうとわかるけど、最初はニューアルバム中心に歌い、その後代表作のバラード、話題のCMソング、また新しいアルバムの曲と来て、最後の方はTTSや少女時代の曲も含めた定番ソングで一気に決める…ちゅう構成。まさに王道。テヨンを乗せて会場を1周するトロッコや、彼女を地上数メートルに押し上げるエレベーター、姿が見えなくなるくらいの花吹雪など装置や効果も『テヨンのとても特別な日』とは比べ物にならんくらい金がかかっておった」
客「演奏は生バンドやったね」
おっちゃん「少女時代は生バンドで歌うことがないから、その差別化はすごくよかったね。それにキーボードのにいちゃんがめっちゃうまいねん」
客「顔は(ピー)やったけどな」
ミンジュ「へー」
おっちゃん「あと繋ぎのVTRもなかなか凝ってた。オープニングの映像はテヨンの美しさに鳥肌が立ったわ」
客「ファッションモデルみたいやったもんなぁ。あとトークではホンマに機嫌よさそうやったね」
おっちゃん「2日目はティファニー、スヨン、ユナが来てたし、さっきゆうたように途中で“『Why』が人気歌謡で1位”ちゅう速報も入った。嬉しそうにいろいろしゃべったせいで、前日2時間のステージがこの日は2時間半に及んだ。まぁ長い分にはこっちは嬉しいけどな」
ミンジュ「そんなに伸びてもライブビューイングはちゃんと中継すんの?」
おっちゃん「したともさ。コンサート終わってから客が帰る前にテヨンがまた舞台上に現れて、バンドメンバーやダンサー、観客全員と記念写真を撮るくだりまでちゃんと中継した。なかなかえらい」
客「記念撮影の掛け声が“チーズ”や“キムチー”やなく“ソーシー(少女時代)”やったのには笑うたけどな」
おっちゃん「彼女らしくてええではないか。その後8月に行われた釜山のコンサートも成功裡に終わったそうやけど、計4日間にわたるコンサートは、単純にひとつの公演の成功とゆうよりソロ歌手テヨンの今後を示唆しておるような気がする」
ミンジュ「また難しいこと言いだしたで」
おっちゃん「難しくないわ。ただ少女時代がこの先どおなるか判らんけど…みんな女優になったりタレントになったりするかもしれんけど、テヨンはどんな形でも歌手であり続けるやろうし、成功し続けるやろうと言うことや」
客「そおなの?」
おっちゃん「演技には興味ないゆうてたから、引退せん限りは歌手続けるやろ。ワシとしては結婚して子供が生まれても歌は続けて欲しい」
客「そやな。そんでまたコンサートがあったら必ず行くわ、ワシ」
おっちゃん「そうやとも。次はいつや?」
ミンジュ「それは知らんけど、ウチが出るミュージカルなら来月の…」
おっちゃん/客「いらん!(きっぱり)」
ミンジュ「はやっ!(泣)」

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