ピアニスト・岩崎洵奈が観客とともに決めるその日限りのスペシャルなプログラム

レポート
クラシック
2016.9.20
岩崎洵奈(ピアノ)

岩崎洵奈(ピアノ)

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岩崎洵奈が『サンデー・ブランチ・クラシック』に再登場! 第37回“サンデー・ブランチ・クラシック” 7.31ライブレポート

夏真っ盛りの日曜日の午後、eplus LIVING ROOM CAFE&DINNINGには涼やかなクラシックの音色が響く。7月最後の『サンデー・ブランチ・クラシック』には、2月にもこの会場で音色を奏でてくれたピアニスト・岩崎洵奈が再登場した。ステージと客席が近いというカフェの特性を楽しみながら、観客と一体となった“この日限りのプログラム”を聞かせてくれた。

ターコイズブルーのドレス姿で登場した岩崎に客席からは、「素敵ね……」という声が漏れ聞こえた。岩崎は笑顔で会場を見渡すと、ピアノに向かい呼吸を整える。この日の1曲目に選んだのは、リスト作曲「ハンガリー狂詩曲」第13番 イ短調だ。ゆったりとした前半とテンポアップした後半のメリハリが特徴的な曲であるが、リストならではの音数の多さに、鍵盤の上を駆け回る指先から目が離せない。

岩崎洵奈(ピアノ)

岩崎洵奈(ピアノ)

演奏を終えると、マイクを手に取った岩崎は「暑い中、こんなにたくさんの方にお集まり頂きありがとうございます。30分という短い時間ではありますが、ご自宅にいるような感じでくつろぎながら、お楽しみ頂けたらと思います」と挨拶をする。そして、「それぞれのお顔がよーく見えます」と嬉しそうにお客様を見渡しながら、「せっかくなので、皆様ともう少しお近づきになりたいと思います」と、とある提案がされた。

岩崎がふっと取り出したのは布袋。その袋の中から小さな木片を取り出して見せた。「これが何だか見えますか?」2月の岩崎のライブに訪れた人はお分かりだろう。それは、カットされたピアノの鍵盤だった。そこにはそれぞれに1曲ずつ、曲名が書かれていた。

岩崎洵奈(ピアノ)

岩崎洵奈(ピアノ)

「3名の方に、このくじでプログラムを決めて頂きたいと思います。どなたか、くじ引きをしてくださる方いらっしゃいますか?」と岩崎が呼びかけると、驚きの声とともに、カフェのあちこちで手が挙がった。まず、最初に選ばれた女性のお客様が引いたのは、ショパン作曲「ノクターン」第2番。続いて、一生懸命手を挙げていた小さなお子さんがショパン作曲「エチュードOp.10-5 “黒鍵”」を、最後に前方席の女性のお客様が、ベートーヴェン作曲ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」第3楽章を引き当てた。

岩崎洵奈(ピアノ)

岩崎洵奈(ピアノ)

くじに使用されたピアノの鍵盤は、それぞれくじ引きに参加したお客様にプレゼントされ、岩崎は「素晴らしいプログラムを選んで下さりありがとうございます」と客席に拍手を贈った。偶然が生み出した、この日だけのプログラム。不思議なもので、同じ曲でもプログラムの位置によって、印象が変わったり、聴き手として受け取り方が変わったりする。“生きた音楽”を体験する、ライブの楽しみの一つだろう。

演奏を終えた岩崎は、「弾いていて、とても楽しかったです」と客席に一礼したあと、「最後は、ショパンの人生をあらわしたような、すごく魅力的な曲をお送りします」と紹介したショパン作曲「バラード」第1番で本編を締めくくった。熱のこもった演奏に、会場からは鳴りやまない拍手が贈られる。

再びステージに舞い戻った岩崎は「このカフェの雰囲気は、アメリカのブルックリンの雰囲気にとても近い気がしているのでこの曲を……」と、アメリカ・ブルックリン出身の作曲家、ガーシュインの「ファッシネイティング・リズム(魅惑のリズム)」でアンコールに応えた。この他、第2部ではドビュッシー作曲『アラベスク』第1番、ショパン作曲『バラード』第4番 へ短調などが演奏された。

岩崎洵奈(ピアノ)

岩崎洵奈(ピアノ)

約半年ぶりのカフェでのライブを終えた岩崎は、「ほっとするし、とても心地よかったです。私自身もそう感じながら演奏していましたが、終演後お客様からも同じように感じられているお声が聴けました。(心が)通じ合えているような感じがして、嬉しかったです」と顔をほころばせた。

前回は、「愛」をテーマにしたプログラムだったが、今回は、「落ち着ける空間だからこそ楽しんで頂ける、このカフェに合うものを、という気持ちで選曲しました」と、また違ったアプローチで臨んだことを明かしてくれた。

インタビューの様子

インタビューの様子

また、くじで決定するプログラムに関しては、「お客様と一緒に決めていくことで、皆さんの緊張を解きほぐせるプログラムにしたいなと思っているんです。何が選ばれるのかは本当に分からないので、私もドキドキするんですが(笑)」と、岩崎自身も偶然の産物を楽しんでいる様子。毎回、ピアノの鍵盤を使ったくじは、引いたお客様にプレゼントしており、「処分するピアノの鍵盤を加工して頂いていて、1台分あるんです(笑)。こういう形で、ピアノを身近に感じて頂けたら」と語っていた。

最後に、「たくさんのお客様と触れ合うことができてとても楽しかったですし、暑い中、足をお運び頂けてとても嬉しかったです。ぜひまた、この空間で音楽と触れ合ってください」とメッセージをくれた岩崎だったが、このあとも、全国各地そして海外でのコンサートやリサイタルが控えている。詳細は、公式HPにてご確認頂きたい。また、『サンデー・ブランチ・クラシック』にも、再び10月に登場予定だ。岩崎の奏でる思いのこもった演奏を楽しみに待ちたい。

岩崎洵奈(ピアノ)

岩崎洵奈(ピアノ)

『サンデー・ブランチ・クラシック』、次回もお楽しみに!

プロフィール
岩崎洵奈(ピアノ)

東京藝術大学器楽科ピアノ専攻卒業。ウィーン国立音楽大学ピアノ科にてヤン・イラチェック氏に師事。室内楽、伴奏法をマインハルト・プリンツ氏に師事。数々の国際コンクールに入賞し、2010年第16回ショパン国際ピアノコンクール(ワルシャワ)においてディプロマ賞受賞、審査終了後、審査員のマルタ・アルゲリッチ氏より賞賛を受ける。2011年トレロドネス国際音楽フォーラムフェスティバル(マドリード)に招待されショパンのピアノ協奏曲1番を演奏。2011年11月には、岡崎市コロネットにてザ・プレミアムトーク~世界一流のマエストロ ウラディミール・アシュケナージ氏を迎えて~に出演、賞賛を受ける。また、仙台フィルハーモニー管弦楽団、NHK交響楽団のメンバーと室内楽で共演。平成21年度文化庁新進芸術家海外研修生。これまでに、オーストリア(ウィーン、ザルツブルク)、スペイン(マドリード、バルセロナ、バレンシア)、ポーランド(ワルシャワ)、ベルギー(アントワープ)、ドイツ(フランクフルト)でのリサイタルに出演。2012年度、CHANEL Pygmalion Daysアーティストに選出。2013年、2月、NHK-FM「リサイタル ノヴァ」に出演。これまでに三ツ橋敬子指揮セントラル愛知交響楽団定期演奏会、名古屋フィルハーモニー管弦楽団、現田茂夫指揮神奈川フィルハーモニー管弦楽団等と共演。2015年9月には、東京文化会館で開催された第515回日本モーツァルト協会例会演奏会にて、ヴァイオリニストのセルゲイ・マーロフ氏と共演、「音楽の友」誌にて、絶賛される。2013年4月より、ベーゼンドルファージャパンにて、インペリアルピアノレッスン講師。2015年日本アコースティックレコーズより、デビューCD「J First」をリリース。これまでに藤井博子、笠間春子、青柳晋、田部京子、フェルナンド・プチョール、海老彰子、アキレス・デレ=ヴィーニェの各氏に師事。

 

サンデーブランチクラシック情報
9月25日(日)
小林美恵/ヴァイオリン & 中野 翔太/ピアノ
13:00~13:45
MUSIC CHARGE: 500円
 
10月9日(日)
ディミトリー・コルチャック/テノール
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500
 
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