松田理奈が初の試みに挑戦! カフェに響いたヴァイオリン二大コンチェルト

レポート
クラシック
2016.9.13
松田理奈(ヴァイオリン)、斎藤 龍(ピアノ) 撮影=鈴木久美子

松田理奈(ヴァイオリン)、斎藤 龍(ピアノ) 撮影=鈴木久美子

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ヴァイオリンとピアノのせめぎあいに割れんばかりの拍手 第38回“サンデー・ブランチ・クラシック” 8.7ライブレポート

いつものように『サンデー・ブランチ・クラシック』を控えるeplus LIVING ROOM CAFE&DININGは、普段とちょっと違う雰囲気に包まれていた。このライブは、飲食をしながらゆったりと音楽を楽しんでもらおうというコンセプトで行われているが、この日限りは皆一様に食事や飲み物をライブの前に早めに済ませ、静かに開演を待っていた。一同が、待ち望んでいたのは、『サンデー・ブランチ・クラシック』4度目の登場となるヴァイオリニストの松田理奈と、ピアニストの斎藤 龍の二人だった。

松田理奈(ヴァイオリン)、斎藤 龍(ピアノ) 撮影=鈴木久美子

松田理奈(ヴァイオリン)、斎藤 龍(ピアノ) 撮影=鈴木久美子

松田自身が「こんな企画をOKしてくれるところは他にないのでは……」と語っていたが、なんとこの日のライブは30分丸々“コンチェルト”というプログラム。コンチェルトと言えば、オーケストラをバックにソリストがせめぎ合う形で演奏されるものだが、それをヴァイオリンとピアノだけでやり遂げるというのだ。このスタイルは、コンクールなどでは見られる形式だが、あまり演奏会などで披露されることはない。それ故に、大変貴重な機会となった。

斎藤 龍(ピアノ) 撮影=鈴木久美子

斎藤 龍(ピアノ) 撮影=鈴木久美子

登場するなり、二度握手を交わす松田と斎藤。これは、通常ならコンサートマスター、指揮者とソリストが握手をするものだが、今回はどちらも斎藤が担うという意味が込められていたという(お気づきになっただろうか?)。

松田が選んだ楽曲は、第1部はメンデルスゾーン作曲「ヴァイオリン協奏曲」ホ短調 作品64。そして、第2部ではチャイコフスキー作曲「ヴァイオリン協奏曲」ニ長調 作品35が演奏された。どちらも代表的なヴァイオリン協奏曲として、愛され続ける名曲だ。演奏が始まると、観客たちは一音も聞き逃すまいというように、固唾を飲んでステージを見つめる。その求心力たるや、まるでここがカフェであることをまったく忘れさせてしまうほどだった。

斎藤 龍(ピアノ)、松田理奈(ヴァイオリン) 撮影=鈴木久美子

斎藤 龍(ピアノ)、松田理奈(ヴァイオリン) 撮影=鈴木久美子

通常、ピアノとヴァイオリンが演奏する場合は前奏などを省略することが多い。しかし、二人はすべてやりきった。本番2回を、全力で演奏しきった二人には、特大のブラボー!の声と割れんばかりの長い拍手が贈られた。

終演後、松田は「すごく勉強になりました」と噛みしめるように口にしていた。ピアノとコンチェルトを演奏することには、昔から憧れていたのだと言う。「私の大好きなライブレコードで、ダヴィッド・オイストラフがヴァイオリンとピアノでチャイコフスキーを演奏しているものがあるんです。そのオイストラフの演奏に憧れて、いつかこういう風に弾いてみたいという思いがあったんです」と今回の挑戦を思い立った心情を明かした。

インタビューに答える松田理奈 撮影=鈴木久美子

インタビューに答える松田理奈 撮影=鈴木久美子

斎藤 龍(ピアノ) 撮影=鈴木久美子

斎藤 龍(ピアノ) 撮影=鈴木久美子

ピアノの斎藤は、「僕としては、オーケストラではなくピアノだからこそできることを目指してやってみました。より身近にソリストに寄り添っていって、即興的な要素と室内楽としての要素を両立できればいいなと思ったんです。オーケストラ100人分の演奏を再現するのは難しいですけど、気持ちはそれを目指しました」と語った。

2曲をそれぞれ自己評価すると、「メンデルスゾーンはかなりソナタ的に弾けたんですが、チャイコフスキーはちょっと難しかったという印象です」と松田。ピアノと二人だけの演奏を経験することで、「指揮者の方の重要性や、オーケストラと演奏する時の音の幅などを改めて感じました」と、新たに見えたものがあった様子だった。

サイン会の様子 撮影=鈴木久美子

サイン会の様子 撮影=鈴木久美子

と言うのも、松田は10月31日(月)に東京芸術劇場にて、ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団との共演が控えている。このコンサートでも、メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」が演奏される予定だ。「もし、今日のピアノとの演奏を聴いて、いいメロディがあったなと思ってくださったら、オーケストラとのコンチェルトも聴いて頂けたら、と思います。オーケストラとの演奏は、また違った魅力あるものですので」と、新たな音楽との出会いのきっかけになることを願っていた。

最後に、訪れた観客に対し、斎藤は「カフェで気軽に聞くには、ちょっと重たかったかもしれないですが(笑)、通常との違いを味わって楽しんで頂けていたらいいなと思います」と語りかけ、松田は「ホールで聴くような『ブラボー!』をくださりありがとうございました。新しいカフェライブの形を感じさせて頂きました。また、オリジナル版をホールで聴いて頂けると嬉しいです」とメッセージをくれた。

松田理奈(ヴァイオリン) 撮影=鈴木久美子

松田理奈(ヴァイオリン) 撮影=鈴木久美子

これまでにないカフェライブの可能性を感じさせてくれた松田と斎藤に、改めて称賛を贈りつつ、また新たな挑戦に期待したい。『サンデー・ブランチ・クラシック』今後の取り組みも、お楽しみに!

プロフィール
松田 理奈(まつだ りな)
神奈川県横浜市出身。3歳よりスズキ・メソードにてヴァイオリンを始める。1989年、桐朋子供のための音楽教室入室。東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校卒業後、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースにて研鑽を積み、2006年ドイツ・ニュルンベルク音楽大学に編入。2007年、同大学を首席にて卒業。2010年、同大学院を首席にて卒業。日本とドイツでコンサート活動する傍ら、ニュルンベルク音楽大学にて教授アシスタントを勤めた。
これまでに、小林庸男、田中みちる、田中裕、村上直子、小栗まち絵、堀正文、元ウィーン・フィルハーモニー管弦楽 団コンサートマスターのダニエル・ゲーデの各氏に師事する。2006年11月にビクターエンタテインメント㈱よりデビューアルバム『Dolce Lina~モーツァルト2つのヴァイオリン・ソナタ他』をリリース。2008年9月、ピアノ界の巨匠パーヴェル・ギリロフとベルリンにて録音したセカンドアルバム『CARMEN』をリリース。2008年、ドイツ・バイエルン放送にてクライスラーのバイオリン協奏曲を収録、放送された。2010年7月、紀尾井ホールにてピアニスト清水和音氏とのリサイタルをライブ収録した『Ravel/Live』をリリース。11月にはイザイの無伴奏バイオリンソナタを全曲収録した『YSAYE』をリリースし「レコード芸術」誌上にて特選盤に選ばれた。

斎藤 龍(さいとう りゅう)
東京藝術大学、大学院修士課程修了。チューリッヒ芸術大学大学院コンサートディプロムKonzert Diplomを最優秀で修了し、同大学大学院ソリストディプロムSolisten Diplom修了。 第16回国際ブラームスコンクール第3位及び審査員特別賞をはじめ受賞多数。友愛ドイツ歌曲コンクール最優秀共演者賞。これまでに神奈川フィルハーモニー管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団をはじめ、国内外のオーケストラと共演し、首都圏やドイツ、スイス等でのリサイタル、また芸大ピアノシリーズ、アフィニス夏の音楽祭などソロ、室内楽で国内外の様々なコンサートに出演している。2011年から13年にかけて、ベートーヴェン・ピアノソナタ全曲プロジェクトを挙行。2014年には日本ベートーヴェンクライス主催コンサート"迫昭嘉「第九」を弾く"に於いて師である迫昭嘉と共演。室内楽奏者としての活動も近年多く、積極的に活動をしている。ピアノを深谷直仁、杉浦日出男、平尾はるな、加藤美緒子、加藤一郎、小林仁、迫昭嘉、Hans-Jurg Strubの各氏に、合奏及び室内楽を北川暁子、渡辺健二、辛島輝治、漆原啓子、Konrad Richter、Urlich Koellaの各氏に師事。演奏活動の傍ら、2010年より2015年まで東京藝術大学、2015年より沖縄県立芸術大学非常勤講師として後進の指導にあたる。2013年、「Ryu Plays Schumann, C.Schumann, Brahms」(FLCP21023)をリリース。(レコード芸術準特選盤)。
 

 

サンデーブランチクラシック情報
9月18日(日)
青木美樹/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

9月25日(日)
小林美恵/ヴァイオリン & 中野 翔太/ピアノ
13:00~13:45
MUSIC CHARGE: 500円
 
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