ONE OK ROCK・Takaや野田洋次郎ら多くの才能を惹きつけるシンガー・Aimerとは 傑作4th『daydream』を通して迫る
Aimer
覚醒、と言ってもいいかもしれない。
シンガー・Aimerが、ニューアルバム『daydream』でみせる様々な表情と感情、そして多彩なコラボレーションをも乗りこなすほどに強烈な個を感じさせる、唯一性の高いその歌声。それらはどれも、元より彼女が持っていたものではある。だが、文中にも登場するONE OK ROCK・TakaやRADWIMPS・野田洋次郎をはじめとする、錚々たる顔ぶれとのコラボを経たことで、その精度と輝度は何まわりも何まわりも増しているようだ。
この作品を経て、より広くたくさんの耳に届いていくであろう歌声の持ち主・Aimerに、一大傑作の制作過程と作り終えた感想、そして出発点であるアニメへの想いや歌うことへの意識といった根っこの部分にいたるまで、じっくりと訊いた。
――9月21日にニューアルバム『daydream』がリリースされるわけですが、そのお話の前にまずは先日テレビに出られたりといった活動の変化について、どのような心境だったのでしょうか。
今まで通りの世界観を大事にしていきたいって気持ちは変わりないんですけど、去年、『DAWN』――夜明けというタイトルをリリースしてから、自分の中でひとつの夜が終わったような認識というか、イメージはずっとあって。その夜が明けて以降、どういう風に歌っていこうかな?っていうことをずっと考えていたんですけど、そのタイミングで、もともと計画していたわけではなく、偶然いろんなキッカケや応援に恵まれて、たくさんの方と音楽の中で一緒に作業できるっていう機会ができたんです。番組に出演させていただいたことも、その一つとして自分では思っていて。新しい扉をまた開けみよう。そんな想いで今回テレビ出演させていただきました。
――夜明けという印象は確かにありますね。第二章というか、Aimerの新しい世界観。それに今回は本当にコラボレーションの数がものすごくて、全曲コラボレーションですし、曲提供や一緒にやっているアーティストの皆さんがAimerさんに惚れ込んだことで今回のアルバムができていると思うんです。それぞれの方の印象や制作風景なんかもお聞かせ願えれば、と思っているんですけども……例えば、Taka(ONE OK ROCK)さんとか。
Takaさんは今回のコラボレーションの、最初のきっかけだったんです。曲も今回一番多くて、5曲を書いていただたんですが、スタジオに入って、スタジオにあるキーボードとかギターをいじったり、弾き語りながらその場でひとつずつ作っていって。
――『daydream』を一通り聴かせていただいて、例えばTakaさんの曲でいうと、ONE OK ROCKとの決定的な違いとして、Takaさんが自分の声で表現するのではなく、Takaさんの曲でありながらAimerさん用になっていますよね。Aimerさんの声に合わせたという風でもあり、自分でできない表現をAimerさんの声を得ることで実現しているような印象を受けたんですが、そのあたりも意見を出し合いながら?
確かに、曲については「どういう曲をやろう」って結構話しました。私は今までの自分のイメージに囚われることなく、良い意味でいろんな方向性を試したいと思っていたので、彼がONE OK ROCKでやっているような曲調とか雰囲気の音楽性にもチャレンジしてみたいっていうことは彼には伝えていて。彼も彼で、それはもちろんだけど、自分がAimerに曲を書くとしたらこういうのも歌ってほしい、という希望もあって。そんな感じで、お互いに出し合いながら、激しいONE OK ROCKっぽい曲もあれば、わりと静かでバラードのような曲もあって、お互いがAimerに歌わせたい曲を話し合っていった結果、これだけのものができた、という感じですね。
――そしてRADWIMPSの野田(洋次郎)さんが作った「蝶々結び」はシングルカットされていますが、こちらの楽曲、MVも印象的です。ある種のストーリー性を感じるMVに仕上がっていました。
もともと私は岩井俊二監督が大好きで、岩井さんの映画や作品を観させていただいてたんです。なので今回、MVを岩井さんに撮っていただけるって聞いたときに、本当に嬉しくて、ひとつ夢がかなったような気持でした。MVには、洋次郎さんと一緒に私も出演させていただいたということもあって、出来上がったものを見たときに感極まってしまう位、ほんとに好きで。赤ちゃんとか、子供とか、いろんな視点から蝶々結びを結んでいく、という視点から描かれていて、今まで自分のMVで、こんなに誰かの笑顔を見て、こんなに泣ける映像は無かったし、それに合う曲も歌ったことがなかったので、そういう涙が歌ってて流れるんだな、ということが印象的でした。
――こちらの制作風景はどうでしたか?
この「蝶々結び」はもともと洋次郎さんが前々から温めていた曲で。今回、Takaさん経由で洋次郎さんと知り合って、歌ってほしいという風に言っていただけたんです。印象的だったこととしては、ハナレグミさんや、以前からドラムを叩いてくださっているあらきゆうこさんとか、自分が好きなミュージシャンの方々と、一緒にレコーディングしながらラフに歌ったりっていうところからはじめて、全部録り終えるまで濃密に、何回も皆と息を合わせながら歌うっていうことができたので、今まで以上にライブ感というか、そのときの息遣いや感情まで自然と歌にこもったのかな、と思います。
――なるほど。今作はその「蝶々結び」をはじめ、全13曲収録されていますが、曲の並びについてや、聴きどころに関してもお訊きしたいです。
うーん……難しいですね。やっぱりアルバムとして作った以上、曲順はやっぱり大事に作ったので、順番通りに聴いていただいてその感想もいただけたら嬉しいなっていう想いはもちろんありますし、自分にとってはそれぞれ一曲一曲、音楽を楽しみながらそれぞれのアーティストの方と作ったので、声の重なり方とか、「ここにこういうハモりが入ってるんだ」とか、細かいところまでじっくり聴いてほしいな、と。あと、今回はTakaさんの曲だったりは英詞の曲も結構あるので、そういう部分も楽しんでもらえたらいいなと思います。
――確かにAimerさんは日本語を綺麗に歌われるせいか、英詞の印象はあまり無かったかもしれませんね。
ありがとうございます。英語で歌うのは難しいので、今回はひとつの大きなチャレンジとして自分の中にあったんです。最後の「Stars in the rain」とかも。英語の発音や響きにこだわったので、そういった部分も楽しんでいただけたらな、と。
――新たな一面が感じられそうです。話題は変わるのですが、今回『夏目友人帖』の曲も担当されることが決まりましたよね。Aimerさんの楽曲はこれまでも『甲鉄城のカバネリ』のエンディングだったり、『機動戦士ガンダムUC』、『残響のテロル』など、アニメとの親和性がありました。アニメーションに楽曲を提供することに関してはどんな想いがありますか。
そうですね。それこそ「六等星の夜」(アニメ『No.6』エンデイングテーマ)から、アニメーション作品のテーマやエンディング、オープニングの曲を歌わせていただいてきて、作品に寄り添った歌として気に入ってくださったりとか、そこから出会えたファンの方もたくさんいるので、そういう出会いをこれからも大事にしていきたいな、と思っています。それに私自身、アニメーション、日本のアニメーションはすごいものだと思っているので、そこに対する敬意をちゃんと持って音楽を、こういう音楽もあるんだっていうことを誰かに教えてあげれればいいなって思うと同時に、繋げるというか、音楽にもっと興味を持ってもらえる入口になれたらいいな、と思っています。
――作品との親和性がすごく高い歌を歌われているので、それこそ繋ぐっていう感覚をすごく感じます。きっとそれが他のアーティストさんにも波及して、活動が繋がっていっている。その核にあるのはやはり歌だと思うんですが、Aimerさんにとって「歌う」ことはどういう行為なのでしょうか?
歌うというのはどういうこと……すごく難しい質問ですが、こうやって生まれてきてこういう声を持って……アクシデントもあってこういう声になったんですけど、やっぱり最初に歌い始めた頃はそんなに、声に対する気持ちも今ほど……なんていうのかな。そんなにこだわる気持ちも無くて。それは今のほうが強くなっているんですけど、こうやって「声が良い」と言ってくれる人がいたり、自分の曲を聴いて「悲しい夜も救われている」っていう人がたくさんいるんだなって思うと、ひとつの使命というか、そのくらいこの声は大事にしなきゃいけないし、自分が一番いい状態でこの声の魅力を出してあげる歌を歌わないといけないんだな、という気持ちはすごく持っています。
――パーソナル部分をもう少し。先ほど岩井俊二監督が好きというお話もでましたが、自分の感性が揺さぶられるもの、好きなものは他にどんなものがあるのでしょうか?
好きなもの……インスピレーション……映画とか本は好きで、時間がある時に観たり読んだりします。わりと結構厭世的な考え方が好きで、結局最後に生きるとか死ぬとか、そういう生死の問題を扱ったものによく触れてますね。
――それを自分の作品に反映する、っていうことはあるんですか? 生と死というか。人の生を歌ったりする曲が多いとは思うんですけど。
そうですね、自分の歌詞も、自分で書くときは一つの物事に対して必ず、悲しい部分とうれしい部分が一緒になるように、そういう両極性を大事に書きたいな、と思っています。歌うときは……そうですね、なんだろう? 自分のそういうペシミスティックというか、どうしても声に勝手に出るのかな?っていう部分はありますね。
――なるほど。そして『daydream』リリース後にはホールツアーも控えています、今までのAimerさんのツアーよりも長く、埼玉から始まって、全国をまわって東京に帰ってくるという日程ですが、アルバムを引っ提げてのツアー、どういうツアーにしたいですか?
今回、初めてのホールツアーということもあって、会場も、最後の国際フォーラムは音響が好きでずっとやりたかった場所ですし、今まで行けなかったところや初めてワンマンライブをする土地もいっばいあるので、歌うのが今まで以上に楽しみだなって、まずは思っています。やっぱりこれだけ色々な方と一緒に今回のアルバムを作ることができたし、自分にとっても今年デビューして5周年というひとつの節目なので、そこでのひとつの完成系を歌で見せられればいいな、という感じです。
――11会場ありますから、体力づくりなんかも必要となってきそうですね。
そうですね。体力はもちろんなんですけど、やっぱり気持ちをいつもリラックスしながら引き締めていきたいな、って思っていて。自分の声との付き合い方とか向き合い方も、この5年間で大分つかめてきたんですけど、このホールツアーもしっかり乗り切ることで自信にしたいと思っていますし、来てくれる方を信じて、最後まで歌いたいなと思います。
――日々ケアしたりとか、気を付けていることってありますか?
あります。吸入器は毎日持っていますし、鼻うがいしたりとか。鼻が原因で喉が悪くなっちゃうことがあるので。声帯が傷つくことは前より少なくなっているんですけど、発声方法にも気を使っていて、バランスを大事に全部乗り切れたらいいなと思います。
――ツアーを観に来る方に向けても一言あればお願いします。
ツアーに関しては、初めてのホールツアーで、今まで行ったことのない場所にも歌いに行くので、新たにお会いできる方、今からすごく楽しみにしてます。アルバムのリリースがツアーの初日なんですけど、是非、そのアルバムを聴いていただいて。より楽しめるところもあるだろうし、ひとつまた新しい歌を、完成した歌をお届けしたいと思っています。
――ツアーで人前で歌うことで真に完成する歌が、ひょっとしたらあるかもしれませんもんね。
そうですね。このツアーを終えたときにまた歌がどんどん変わっていると思うので、それも楽しみです。
――最後に。今作のコラボレーション経験を経て、今度はAimerさん側から「もっとこんなことしたい!」とか、「こういう人とコラボしてみたい!」という想いは生まれていますか。
ご一緒したい方は、正直、まだまただくさんいらっしゃるですけど、それを言ってしまうと叶わない気がして、内緒にしておきますね(笑)。
――じゃあ、いつかそれが叶ったときに、「実はこの人とずっと一緒にやりたかったんです」という言葉が聞けるのかもしれないですね。
そうですね。それが言えるように頑張ります。
取材・文=加東岳史 構成=風間大洋
2016年9月21日(水)
『daydream』
初回生産限定盤A(CD+Blu-ray)SECL1983- 4/ 4,600円(税込)
初回生産限定盤B(CD+DVD) SECL1985-6 / 3,600円(税込)
通常盤(CD only) SECL1987 / 3,000円(税込)
参加アーティスト:Taka(ONE OK ROCK)、chelly(EGOIST)、澤野弘之、 内澤崇仁(androp)、阿部真央、野田洋次郎(RADWIMPS)、ハナレグミ、スキマスイッチ、TK(凛として時雨)
※収録曲順
収録内容:
【CD】
M01「insane dream」※Taka(ONE OK ROCK)楽曲提供・プロデュース
M02「ninelie」with chelly(EGOIST)※澤野弘之 楽曲提供・プロデュース
M03「twoface」※内澤崇仁(androp)楽曲提供・ プロデュース
M04「Higher Ground」※Taka(ONE OK ROCK)楽曲提供
M05「for ロンリー」with 阿部真央
M06「蝶々結び」※野田洋次郎(RADWIMPS)楽曲提供・ プロデュース/ギター&コーラス:ハナレグミ
M07「カタオモイ」※内澤崇仁(androp)楽曲提供・ プロデュース
M08「Hƶ(ルビ:ヘルツ)」※スキマスイッチ楽曲提供・ プロデュース
M09「声色」※TK(凛として時雨)楽曲提供・プロデュース
M10「closer」※Taka(ONE OK ROCK)楽曲提供・プロデュース
M11「Falling Alone」※Taka(ONE OK ROCK)楽曲提供・プロデュース
M12「us」※TK(凛として時雨)楽曲提供・プロデュース
M13「Stars in the rain」※Taka(ONE OK ROCK)楽曲提供
【Blu-ray/DVD】
MUSIC VIDEO
Aimer Live Tour“DAWN” ※Blu-rayのみ収録
BONUS TRACK「甲鉄城のカバネリ」SPECIAL ENDING MOVIE
※全公演SOLD OUT
2016/09/24(土) 広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
2016/09/25(日) 兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
2016/10/02(日) 新潟県 新潟市民芸術文化会館・劇場
2016/10/08(土) 福岡県 福岡国際会議場メインホール
2016/10/10(月・祝) 宮城県 仙台・電力ホール
2016/10/16(日) 北海道 札幌・道新ホール
2016/10/28(金) 大阪府 オリックス劇場
2016/10/30(日) 愛知県 日本特殊陶業市民会館(名古屋市民会館)
2016/11/06(日) 東京都 東京国際フォーラム ホールA