「真田風雲録」、真田ゆかりの街にて上演!
新劇場「サントミューゼ」が演劇を初自主制作
長野県がすごいことになってきた。松本に俳優・演出家の串田和美を芸術監督を置いた「まつもと市民芸術館」があるが、来年春に開館する長野市芸術館は、作曲家・ピアニストの久石譲を芸術監督に迎えたホールだ。芸術監督を立てた公共施設が二つもある県というのは、全国を見渡してもかなり珍しいのではないか。そして昨年、ひと足先に開館したのが、上田市交流文化芸術センター、通称サントミューゼだ。北九州芸術劇場で館長兼チーフプロデューサーを務めるなどいくつものホールをオープンさせてきた津村卓氏が、ホールと美術館を兼ね備えた複合施設の館長に就任した。松本・上田・長野、この3館はすべて、創造発信事業をひとつの柱としているのもまた画期的と言える。
さて、サントミューゼでは、すでに演劇では、蜷川幸雄演出の『ジュリアス・シーザー』、小川絵梨子演出の『ユビュ王』(まつもと市民芸術館制作)を上演している。そして、今度は初めての自主制作、レジデント・カンパニー事業として、福田善之脚本『真田風雲録』を、南河内万歳一座・内藤裕敬の演出で上演する。津村館長とは、扇町ミュージアムスクエア時代から親交のある南河内万歳一座のメンバーに加え、ビッコロ劇団、空晴、PM/飛ぶ教室など関西から演劇人が上田市に馳せ参じ、地元からも高校、大学、社会人の市民キャストが参加。7月から大阪のメンバーたちによる稽古が開始され、8月からは20日もの間、上田に滞在して市民を交えた稽古を行っているのだ。
中村錦之助、渡辺美佐子の出演で映画化された『真田風雲録』は、真田十勇士の大坂の陣での活躍を描いた傑作青春群像劇だ。内藤は過去にピッコロ劇団でこの作品を演出しているが、機会があれば再度チャレンジしたいとの意向があったという。それが真田家のおひざ元、上田市になったのはなんともドラマティックだ。そして、その公演実現が引き寄せたかのように、折しも、2016年のNHK大河ドラマとして『真田丸』(脚本は三谷幸喜)の放映も決まった。これまで全国有数のロケ支援などで映画では盛り上がりを見せていた上田市だったが、今、乗りに乗っている。
1614年、大坂の人が勃発。智将・真田幸村とともに劣勢の豊臣方として参戦する真田十勇士。豊臣秀頼・淀君母子に寄り添う大坂城執権・大野修理やその父・道犬らと意見を衝突させながらも、活躍の場を求めて必死に戦う彼らだったが・・・。
劇場に稽古をのぞきに行っある日、なんと脚本の福田善之氏、母袋創一上田市長までが見学に訪れていた。そんな大物二人の視線もなんのその、群衆の熱が一体となって、重厚でありながらも強烈な物語に収まらず、生き生きとした登場人物たちが現代の上田市を駆け巡っているかのように。