中川晃教 デビュー15周年ライブで魅せた熱いステージ「ここにくるまでいろいろありました」
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中川晃教
中川晃教 15th Anniversary Live I Sing ~Crystal~
2016.9.18(SUN)東京国際フォーラム ホールC
9月18日、東京国際フォーラム・ホールCにて行なわれた『中川晃教15th Anniversary Live I Sing 〜Crystal〜』。シンガーソングライター・中川晃教の原点ともいえるバンドスタイルのステージは、デビュー15周年の節目にふさわしく、“アッキーそのもの”がダイレクトに詰め込まれた熱い熱いライブとなった。
オープニングナンバーのイントロが流れ出す。客席に充満する、静かだが確実に熱い期待と興奮。そこへ中川の歌声が発せられた瞬間、「この時間を大切にしたい」というオーディエンスの声にならない気持ちの高まりが一気に涌き上がった! 魔法の時間の始まりだ。
ステージ上にはギター、ベース、ドラム、そしてキーボードの4人のバックバンド。その中心に赤いスーツを身に纏った中川が、すっくと立っている。彼らを彩るのはソリッドで艶めいたライティングのみ。シンプルな空間の中、すでに戦闘モードに入っている中川は「今日の客席はどんなカンジ?」とオーディエンスをうかがうように、歌声の軌跡をたどりながら丁寧にじっくりと、そして着々と煽るようにグルーヴを増していく。そのグルーヴが心地よい。
「僕から逃げることはできない。全員を連れて行きますよ!」のMCでスタートしたのは、早くも前半のクライマックス、10曲ノンストップのメドレーだった。ジャジーな「善も悪もピースフル革命」で始まり、スパニッシュな「マタドール」ほか、ドラマティックなナンバーが次々に繰り出される。
ミュージカルの舞台などとは違い、何の役も背負わずにただひとりの中川晃教として歌に対峙するそのボーカルは、なんともヒップでエモーショナル。力強いシャウト、ロマンチックなロングトーン、アレンジが効いたフェイク……と、感情の赴くままに自在に操られる歌声は、思わず普段のミュージカルの舞台を重ねて「これが生で響いてきているのか!」と、自分の耳を疑いたくなるほどに“完璧”だ。
気づけば場内はオールスタンディングになっていた。メドレーラスト、コール&レスポンスからの「White Shiny Street」にたどり着く頃には、すっかり会場がひとつになっていた。そして、鳴り止まない声援と拍手。まだライブの中盤なのに! 確かに全員、連れて行かれてしまった。
クールダウンは「春」。宮城県出身の中川が東日本大震災後に記した、静けさと優しさを湛えたナンバーだ。「デビューから15年。ここにくるまでいろいろありました。33歳になりました。なんにもわからなかった18歳の男の子が東北から出てきて大人になりました(笑)。そんな僕がピアノと向き合ってできた曲です」という「フタツ、ヒトツ Futa-tu,Hito-tu」は、非常にラフな空気の楽曲だった。グングンと上がり続けるテンションの歌声も魅力だが、こんな、リビングでリラックスしながら歌っているような温かいボーカルも愛おしい。
続いて「この曲があったから僕は今ここにいます」と奏で出したのは、デビュー曲の「I WILL GET YOUR KISS」。J-POPのどの枠組みにも収まらない、この唯一無二の個性を持ったデビューナンバーが世の中に流れたときは、まさに衝撃だった。10代ならではの清々しさをまとった当時のパフォーマンスも忘れ難いが、15年の時を経た弾き語りの表現力は震えるほどに進化していた。
ピアノは身体の一部のように、歌声はこのホールを突き抜けて夜の都会へと溢れ出してしまえ!と願うほど、すべての人に聴いて欲しい輝きと情熱に満ちあふれている。こんなにも音楽を愛し、愛されている。中川が若くして見出され、人々の前で生きていくのは当然だ。東北から出てきてくれて、本当によかった。
大いなる余韻に浸りつつ、ここからラストに向かってもうワンピークを迎える。 「そして、僕は魚になる」、「音楽が消えることのないDANCE FLOOR」ほか、10年振りにリリースされたスタジオ・アルバムからのナンバーなどでオールスタンディング再び、だ。
最後は、感謝の気持ちを込めて「ユーアー ザ スーパースター」を披露。観客にとってのスーパースターが、この希有な才能と表現力で魅了し続けてくれる中川晃教なら、中川にとってのスーパースターは、いつも近くで応援し続けてくれる客席のファンだ。そんなやさしさを感じさせてくれる、思いやりあふれるセレクトのラストナンバーだった。
こんなにたっぷり、こんなにホットに中川の歌声に包まれていたのに、まだまだ聴きたいアンコールにオーディエンスの声は鳴りやまない。アンコールに応えてバンドが再びステージに戻ってくると、聴こえてきたのは……「Can’t Take My Eyes Off You」! その歌声が数々の厳しいコードをクリアし、見事、中川が主人公のフランキー・ヴァリ役を射止めたミュージカル『ジャージー・ボーイズ』を代表する一曲、邦題「君の瞳に恋してる」だ。
客電がつき、客席通路から登場した中川が360度を観客に囲まれて歌うその姿は、このライブのアンコールでありながら、舞台で繰り広げられた物語のワンシーンにも重なるようで、まさに夢の光景。でもこれはミュージカルの世界ではなく現実だ。満面の笑顔で手を振り、場内をゆっくり廻りながら歌うその表情は、なにひとつ飾ることのない“音楽少年”そのもので、シンガーソングライターとしての原点にしっかりと着地している中川晃教がそこに立っていた。
その後ステージに上がり「歌の素晴らしさを知った、生涯忘れられないナンバーです」と弾き語りで披露した「Greatest Love of All」は、あのホイットニー・ヒューストンが生涯で一番大切にしていた歌であり、大きな愛について歌われている一曲である。このパフォーマンスも、とにかく「凄い」としか言いようがない。上限なくワンフレーズごとにすべてが高まるものだから、中川は歌えば歌うほどに、生きる情熱をチャージし続けているんだな、と勝手に納得してしまう。
息を呑み、ひたすらにその歌声を全身で受け止める観客の感動が、歌声の放つパワーと融合して大きなオーラとなっていく。そしてこの日、本当のラストナンバー「Miracle of love」を披露する。再び鳴り止まない賞賛の拍手の中、ゆっくりとお辞儀をし、大きな投げKISSでサヨウナラ。魔法の時間が締めくくられた。
もう15年、まだ15年。これからも中川はその開いた精神で、枠にとらわれることなく自分の信じるエンターテインメントの世界を泳ぎ続けることだろう。そしてその原点が“シンガーソングライター・中川晃教”であることは、実はとても重要なことなのではないかと思う。音楽と生き続ける“アッキー”の、まだ見ぬ未来も楽しみだ。
2016.9.18(SUN)東京国際フォーラム ホールC
01. カンランセキ
02. 止まらない一秒
03. TO BE IS TO DO
04. 善も悪もピースフル革命
05. We Will Let You Go
06. BRAND
07. マタドール
08. Catch Fire
09. Stay
10. LISTEN
11. KING&QUEEN
12. 焦らずに進めばいい
13. White Shiny Street
14. 春
15. フタツ、ヒトツ Futa-tu,-Hito-tu
16. I WILL GET YOUR KISS
17. I Have Nothing
18. そして、僕は魚になる
19. JUST CALL MY NAME
20. WHAT ARE YOU AFRAID OF
21. 音楽が消えることないDANCE FLOOR
22. China Girl
23. ユーアーザスーパースター
[ENCORE]
24. Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)
25. Greatest Love of All
26. Miracle of Love
■兵庫
日程:2016年11月3日(木・祝)~11月6日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■東京
日程:2016年11月11日(金)~11月27日(日)
会場:天王洲 銀河劇場
訳詞・上演台本:森雪之丞
演出:上村聡史
音楽監督:島健
出演:中川晃教/平野綾/橋本さとし/濱田めぐみ
■東京
日程:2017年1月8日(日)~1月29日(日)
会場:日生劇場
■大阪
日程:2017年2月2日(木)~2月5日(日)
会場:梅田芸術劇場 メインホール
■福岡
日程:2017年2月10日(金)~2月12日(日)
会場:キャナルシティ劇場
■愛知
日程:2017年2月17日(金)~2月18日(土)
会場:愛知県芸術劇場大ホール
音楽:イ・ソンジュン
脚本・歌詞:ワン・ヨンボム
潤色/演出:板垣恭一
<出演>
中川晃教/柿澤勇人(Wキャスト)
加藤和樹/小西遼生(Wキャスト)
音月桂
鈴木壮麻
相島一之
濱田めぐみ
他