1万1000人と"いつものように"泣き笑い BLUE ENCOUNTがBLUE ENCOUNTとしてやり遂げた初武道館

レポート
音楽
2016.10.15
BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

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LIVER'S 武道館 2016.10.9 日本武道館

3~6月には全国32公演の対バンツアー、6~7月には、田邊俊一(Vo/Gt)、江口雄也(Gt)、高村佳秀(Dr)の地元・熊本を含む全国4都市でのワンマンツアー、9月には大阪城野音での壮行会ライブ――という道のりを経て、10月8日、満を持しての武道館ワンマン。スタンド2階席後方の立ち見スペースまでビッシリと人が詰まり、超満員状態の会場内。多くの人が開演を今か今かと待っているところにVTRが放映された。

その映像は、2013年12月の東京・TSUTAYA O-WEST公演での模様からスタート。キャパシティ600人のライブハウスに集まったファンの姿越しに、1万数千人の観衆を見たという当時の田邊が「絶対武道館でワンマンやります!」と宣言をするシーンを機に、バンドの歴史を辿っていく。映像が終わると、暗転。真っ青な照明がステージを照らすなか、4人が登場し、まず、スポットライトを浴びた田邊がアカペラで歌い始めた。そして「準備できてる? 武道館でBLUE ENCOUT、始めます!」と語りかけ、「DAY×DAY」をスタート。結論から言うと、この1曲目から4人がステージを去るその時まで、どこをとってもブルエンらしい武道館だった。

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

「みんなの夢が詰まった場所、ライブハウス武道館へようこそ!」と先人の名台詞を引用し、客席を埋め尽くすオーディエンスへ手を振っては「スゲー! お手手がスゲーよ!」と興奮を露わにするメンバーたち。そのまま、江口のタッピングと辻村勇太(Ba)のスラップが交互に繰り出された「声」、田邊の歌声がスコーンと突き抜ける「Survivor」、文字通りオーディエンスが跳ねまくった「JUMP」、フロント3人が背面弾きを披露した「ONE」――とアッパーチューンを連投していく。もはやはち切れそうなほどの会場のテンションをさらに押し上げつつ、バンドサウンドをしっかりと支えてみせる高村のビートが頼もしい。

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

ここまで読んでいただいた方にはもしかしたら「それって普段のブルエンのライブとどこが違うの?」と感じた人もいるかもしれないが、その通りである。しかしそれがかえって良かったというか、だからこそこの日は紛れもなく“ブルエンの武道館ワンマン”になったのだと思う。例えば、酸素が薄いと言いながらも「ライブハウスと同じくらいみんなの楽しそうな顔が見られて嬉しい」と4人が笑っていたこと。客席から上がる声を拾ってはたわいもないやりとりをしていたこと。演奏からそのまま一息つくタイミングがないもんだから、MC中も相変わらず息が上がっていること。ライブでの注意事項をしっかり伝えていくこと。全身全霊、感情だだ漏れな演奏面はもちろんだが、そういうちょっとした場面での彼らもいつもと変わらず、だからこそ、“結局自分たちがやることはいつだって同じなんだ”というバンドの強い意志が読み取れた。武道館はその独特な雰囲気から「魔物が棲んでいる」と言われることも多いし、さすがに本人たちも緊張していたとは思うが、田邊がボソッと「何だろう、いつもよりめちゃくちゃ居心地が良い」と呟いていたことも印象に残っている。

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

とはいえ、火炎が噴き上がったり、レーザー光線がギュンギュン行き交っていたり、大会場ならではの特効も演奏に華を添えていたし、もちろん武道館らしいスペシャルな場面もたくさんあった。まず、高校2年生の時に誤って江口のギターを壊してしまい、「武道館に立てるようになったら返すよ」と約束したという田邊が、ステージ上で有言実行を果たすサプライズ。続けて、田邊曰く「これも夢だった」という「YOU」「はじまり」でのストリングスとの共演(ドラマティックなアレンジによって歌の説得力や深みも増していて、これがまた素晴らしかった)。さらにツアーで恒例だった高村のDJコーナ“タカムラップ”がアリーナ特設ステージで披露されたあとは、昂揚感に任せてか、この日客席にいたTVドラマ『THE LAST COP』スタッフ陣にその場で番組出演を交渉。OKサインをいただいたところで同ドラマの主題歌「LAST HERO」へ突入する、という一幕もあった。

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

また、他アーティストのライブDVDを観たり、YouTubeで“武道館 ライブ”と検索をしてきたという田邊は「ベタなことはやり尽くす!」と宣言し、オーディエンスにウェーブを求めたり、「アリーナ!」「スタンド!」と客席に呼びかけたりしながら嬉しそうにしていた。「武道館は通過点」と公言し、あえてこの会場を特別視しないアーティストも多い昨今、素直に浮かれてまくっている彼らのテンションはどうしても憎めない。

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

前々日にMr.Childrenの武道館ワンマンを観てきたという田邊。先述のように武道館らしい演出を実現していくなかで、オーディエンスからいつものようにイジられては「桜井(和寿)さんだったらそうはしないでしょ?」と自虐気味に投げかけ、他メンバーから「カリスマ性が足りない」なんてツッコまれる場面もあった。途中のMCでは自ら「カッコつけやしねえ! クソみたいな人間がここに立ってるだけだ」と言っていたが、いくら画になるようなことをしようとしてもどこかカッコつかないのがブルエンであり、YouTubeで予習してきたとか言わなくても良いようなことまで言ってしまうのがブルエンであり、楽しくてしょうがないときは顔をしわくちゃにしながら笑いあい、こぼれる涙は堪えずに垂れ流すのがブルエンである。ステージ上のバンド本人がそんな調子だから聴き手側もまっさらな感情を曝け出せるわけで、だからこそ会場内は終始泣き笑いに満ちていたのだろう。

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

本編ラストを飾ったのは、このバンドがずっと歌い続けてきた<世界のどこを探そうともあなたの代わりは存在しない>というメッセージを陽性の2ビートに乗せる「だいじょうぶ」。そして、「お前らと俺らはBLUE ENCOUNTです。よろしく!」という言葉に続けた「もっと光を」。「泣き虫だって言われてもいい。お前らと見た夢の先で泣けるならそれでいい」と田邊は涙でグシャグシャになりながら語っていたが、その想いはこの場に集った11000人共通のものに違いない。泣いたあとだし、さっきまでに比べたら声なんてもうガラガラだけど、それよりも大切なものがこの2曲には確かに宿っていた。良いところも悪いところも全部ひっくるめて、ブルエンにしかできない武道館だった。

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

「紛れもなく俺らはお前のその手に救われました。だから最後、この曲でお前を救ってみせる」と、アンコールラストに演奏された「HANDS」。それがいつになく逞しく聴こえたのは、冒頭に書いたように、ツアーを経ての武道館だったことが大きいと思う。特に、半ば逃げるようにして上京してきたというバンドの誤魔化せない過去と、偶然起きてしまった震災が重なり、重大な意味を帯びた地元・熊本でのワンマンは、改めて自分たちがバンドをやる意味を突き詰めるキッカケとなったのではないだろうか。約半年の旅路を経て一回りも二回りも成長した4人の音楽が、BLUE ENCOUNTというバンドを、そして彼らと共に生きる聴き手一人ひとりのことを、真正面から肯定してみせたのだった。

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

今回のライブが現時点での集大成ではあるが、まるで次の一手を提示するかのように、この日はニューアルバムのリリース&ツアーを発表。披露された新曲も、テンポや音数をあえて抑えた温かみのある曲で、確かに今までのどの曲にも似ていないものだった。『THE END』という意味深なアルバムタイトルも気になるところだが、メンバーいわく「大事なスタートの1枚になると思ってそう名づけた。そのときになったらちゃんと話す」とのこと。続報を楽しみに待っていたい。


取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=浜野カズシ

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

BLUE ENCOUNT 撮影=浜野カズシ

セットリスト
LIVER'S 武道館 2016.10.9 日本武道館

1.DAY×DAY
2.HALO
3.MEMENTO
4.声
5.Survivor
6.アンバランス
7.JUMP
8.HEEEY!
9.ONE
10.ANSWER
11.YOU
12.はじまり
13.LAST HERO(新曲)
14.JUST AWAKE
15.THANKS
16.LIVER
17.ロストジンクス
18.だいじょうぶ
19.もっと光を
[ENCORE]
20.新曲
21.NEVER ENDING STORY
22.HANDS

 

リリース情報
シングル「LAST HERO」
11月23日(水)発売
 
■初回生産限定盤(CD+DVD)
●価格:1,759円(税抜)
●品番:KSCL-2797~2798
●特典DVD内容:7月10日に熊本B.9 V1で行われた「TOUR2016 THANKS 〜 とっとってっていっとったのになんでとっとらんかったとっていっとっと。熊本ワンマンてや?そりゃよかばい!〜」のLIVE映像を収録
 
■通常盤(CD)
●価格:926円(税抜)
●品番:KSCL-2799
2ndアルバム『THE END』
2017年新春リリース

 

ツアー情報
2017年ワンマンツアー

2017年3月12日 (日)香川:高松Festhalle
2017年3月20日 (月)千葉:幕張メッセ国際展示場
2017年4月2日 (日)北海道:Zepp Sapporo
2017年4月8日 (土)宮城:仙台PIT
2017年4月9日 (日)新潟:LOTS
2017年4月15日 (土)大阪:Zepp Osaka Bayside
2017年4月16日 (日)広島:BLUE LIVE
2017年4月26日 (水) & 27日(木)名古屋:Zepp Nagoya
2017年5月7日 (日)福岡:福岡国際センター

料金】
スタンディング:4300円(税込・ドリンク代別)
2F指定席:4800円(税込・ドリンク代別)
※幕張メッセ公演 スタンディング・ブロック指定 4800円(税込)
※福岡公演 アリーナ立見・スタンド指定 4800円(税込)

 

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