「素直なまま背伸びをするよ」 LAMP IN TERRENが東京公演でみせた"歌うバンド"としての純度と強度
LAMP IN TERREN 撮影=山川哲矢
LAMP IN TERREN ONE MAN LIVE 2016「GREEN CARAVAN TOUR」 2016.10.15 恵比寿LIQUIDROOM
6月からスタートした『GREEN CARAVAN TOUR』のセミファイナルの会場となったのは、自己最大キャパとなる恵比寿LIQUIDROOM。ステージのバックドロップではなく、階段を上がったところに今回のツアーのフラッグが掲出されているのが、この旅への入り口のようだ。場内もキャラバンが野営でもしているかのように鳥や虫の声のSEが流れ、ライブへの高揚感とともに気持ちが澄み渡っていく。
LAMP IN TERREN 撮影=山川哲矢
彼らの地元・長崎でのファイナルを残しているので曲順などの詳述は避けるが、LAMP IN TERRENが今夏、ツアーの間に夏フェスや対バンなども経験しながら自分たちらしさを改めてしっかり認識したことが、一音一音、演奏、そしてライブ運びやMCにも溢れる2時間であった。アッパーに盛り上げるより、メンバー全員で一つの歌を“歌う”ような大きなグルーヴを持った、近年のバンドシーンでは貴重になった、基本に歌とギターがある楽曲そのものの誠実で清廉な輝き。この日も言葉を発する時間さえ惜しいかのように、特に前半は曲の世界に没頭し、曲間すらも一つのライブの流れを重視して、有機的にアレンジで繋いでいく姿勢に、音楽そのものの力、曲が自ずと形成してくれる共感、そして何よりそれを実現するための演奏に対する集中力を見た思いだ。
LAMP IN TERREN 撮影=山川哲矢
恐らく初見のオーディエンスでもその場で歌詞の一節一節までしみ込むような松本大(Vo/G)の歌の明瞭さと力強さを存分に知ることになる、定番曲「林檎の理」。広範なロックミュージックのオーソドックスな良さを吸収した大屋真太郎(G)と、松本によって言葉のように紡がれるギター2本の詩情が雨音のようにリリカルに響き、ベースの中原健仁もメロディアスに彩りを添える「雨中のきらめき」など、まさにバンド全員が楽曲を“歌う”ことで生まれるダイナミズムだ。
LAMP IN TERREN 撮影=山川哲矢
そして会場限定リリース盤に収録されている「heartbeat」は、今夏の『ROCK IN JAPAN FES.』で初披露されて以降、ライブで磨きがかかってきた1曲。丹念にメロディを積み重ねて、エモーションを内燃させていく松本のヴォーカルも、それを駆動させる演奏も確かなもので、フロアにいるファン全員がバンドが放つ鼓動を自分のものとして内側にしっかり抱きしめることができたんじゃないか?そんなダイレクトな体感があった。テレンの楽曲のほとんどがそうだけれど、彼らが意識せずともそこには自然と日本語ロックの強さも優しさも存在していることを再認識した。
LAMP IN TERREN 撮影=山川哲矢
この会場限定盤には「heartbeat」のほかにもう1曲、この日ロードショー公開された映画『何者』で、主演を務める菅田将暉が劇中に登場するバンドで歌う曲として提供した「pellucid」も収録されている。松本がフロアに向かって限定盤を買ってくれたファンを確認すると、おそらく8割以上の手が挙がり、メンバー全員から笑顔がこぼれる場面も。そして淡々と踏みしめるようなビートと展開がいかにもテレンらしい同曲を披露した。思ってもないことが口をついて出てしまうこともあるけれど、<素直なまま背伸びをするよ>というフレーズが聴き取れたとき、映画の主題と今のバンドのいる場所がシンクロした大いなる果実なんだな、とその必然に少し鳥肌が立った。
LAMP IN TERREN 撮影=山川哲矢
また、スキルフルな川口大喜(Dr)が牽引するリズムの展開が、サビに向けて出口を求めるように緊張を高めていく1stシングル「innocence」。張り詰めた演奏もエンディングのバッサリと切り落とすような息の合い方もこの日のライブの白眉だった。
LAMP IN TERREN 撮影=山川哲矢
この日、松本は以前クアトロで行ったワンマンライブとは景色が違って見えると話した。「最初は人前でライブをやるっていうことがよくわかってなかった。でも今は僕らの曲を聴いてくれてありがとうと思うし、離したくない僕らでいたい」と、現在のメンバー全員で足並みを揃えてから1年の、ここに至るまでの気持ちの変化が伺える意思表明をしていた。
LAMP IN TERREN 撮影=山川哲矢
松本自身から生まれた言葉やメロディが、他者=メンバーとともに鳴らすことで命を持った曲になり、そのことを楽しんできた彼ら。だからこそLAMP IN TERRENは純度の高さをそのまま広げることができるのだ。これまでで最高に楽しいと全員が笑顔になりながら、だからこそこの日のライブはこれまでの節目なのだと、松本はライブ中に何度か自分に言い聞かせるように話していた。そして、11月から始まる次回のツアーはこの日とは全く違う選曲になること、そして新曲もたっぷり披露するという発言もあった。受け取る人達の顔や気持ちが見えないままでは進めない、多分そんなバンドなのだろう。だからこそ、ライブで「キャラバン」の歌詞にあるように“魔法のような唄”へのビビッドな反応と共振を実感した今、LAMP IN TERRENはファンという旅の一団と未来を共にすることを選んだ。敢えて言おう、若き正統派ギターロック・バンドはトレンドとか狭義のシーンを超えていくだろうと。
取材・文=石角友香 撮影=山川哲矢
LAMP IN TERREN 撮影=山川哲矢
10月23日(日) [長 崎]長崎 DRUM Be-7 問:キョードー西日本 092-714-0159
:前売り¥3,000- (税込・ドリンク代別途)
一般発売中
LAMP IN TERREN 「TOUR “11” L.A.P」
11月1日(火)熊本DRUM B.9 V2 w/SAKANAMON
11月2日(水)福岡DRUM SON w/SAKANAMON
11月4日(金)京都磔磔 w/ヒトリエ
11月5日(土)神戸太陽と虎 w/ヒトリエ
11月6日(日)高松DIME w/Ivy to Fraudulent Game
11月8日(火)金沢vanvanV4 w/SHE’S
11月9日(水)新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE w/SHE’S
11月10日(木)宇都宮Heaven’s Rock w/SHE’S
11月11日(金)秋田club SWINDLE w/cinema staff
11月12日(土)福島club SONIC iwaki w/cinema staff
11月19日(土)赤坂BLITZ <ワンマン>
:前売り¥2,800- / 赤坂公演のみ前売り¥3,000- (いずれも税込・ドリンク代別途)
:一般発売中 / 赤坂公演のみ10/8(土)AM10:00一般発売
ライブ会場限定販売中
「heartbeat」
M1:heartbeat
M2:pellucid (10/15全国公開映画『何者』劇中挿入歌提供楽曲)