韓国版『イン・ザ・ハイツ』横浜公演開幕! ヤン・ドングンとf(x)ルナが会見
『イン・ザ・ハイツ』ヤン・ドングンとルナ(f(x))
韓国版『イン・ザ・ハイツ』横浜公演が、2016年10月16日(日)にKAAT神奈川芸術劇場で幕を開けた。初日に先駆けて、ウスナビ役:ヤン・ドングン、ニーナ役:ルナ(f(x))の会見がおこなわれた。
『イン・ザ・ハイツ』は、ニューヨークの、ドミニカ系移民が多く暮らす地区ワシントンハイツを舞台に、移民たちがエネルギッシュに生きていく姿を、ラップ、ヒップホップ、ストリートダンス、ラテンミュージックなどを取り入れながら、パワフルに描いた画期的なミュージカルだ。今年(2016年)トニー賞を総なめにした『ハミルトン』を生んだリン=マニュエル・ミランダが2008年にブロードウエイで発表し、トニー賞で最優秀作品賞はじめ4部門を受賞するなど一世を風靡した。これを韓国最大手芸能事務所S.M.Entertainmentの関連会社が韓国版として製作した。そのプロダクションが、8月に東京に初来日、さらに横浜でも上演を開始した。
そんな韓国版『イン・ザ・ハイツ』は、鬼才イ・ジナ演出による、言葉に寄り添う楽曲と、大音量のダンスシーンのメリハリが話題を呼んだ。今回のKAAT神奈川芸術劇場での上演は、新しい来日キャストに、ラッパーであり俳優のヤン・ドングン、そしてK-POPからソンギュ(INFINITE)という実力派を迎えてのカムバック公演だ。主役ウスナビを演じるヤン・ドングンは、「“ワシントン・ハイツの街灯”というウスナビの綽名のとおり」と共演者も讃える決定打的なキャスト。NHK BSプレミアムで放映中の『三銃士』にホ・スンポ(ポルトス)役で出演していることでもおなじみだ。
会見に舞台衣装で登場したヤン・ドングンとルナ(f(x))。『イン・ザ・ハイツ』という作品の魅力について問われると、ルナは「本当に多くのジャンルの音楽が入っていて、それが一つに調和しているのはスゴイこと。ラップもちゃんと歌詞が聴こえるように心がけられ、演技としてこなされています。私の演じるニーナはドラマチックでポップ調の歌が多いけれど、それがパワフルに溶け込んで、最高の作品に仕上がっていると思います」、ヤン・ドングンは「最近、韓国の大衆ミュージカルは、派手なステージ、残忍で刺激的な物語が人気です。『イン・ザ・ハイツ』にはそういった要素はないけれど、愛すべき街の人々がいて、そこにいる皆が夢を見ている。軽快な歌、肯定的なエネルギーで、温かさを感じられる作品になっています」と答えた。
今回主役ウスナビを演じるのは4人。その中でドングン=ウスナビのアピール・ポイントは何かと尋ねられたヤン・ドングンは「SHINeeのKeyは日本でも知られているアイドルなのでお客さんが来ると思いますが(笑)。僕を観に来てくれる方々に言いたいのは、キャラクターのアプローチの仕方がそれぞれの演者で違うということです。一つのキャラを皆で作るのではなく、演出家が各自に合った演出をつけ、セリフも全て違います。深みのあるウスナビを観たい方は、僕を観に来てくれるといいと思います!」と自信を覗かせると、隣のルナも「オー!」と満面の笑みで拍手。
一方、Wキャストとなるニーナ役を演じることについてルナは「ニーナは自分の年齢に合っていて、無理をして役を作る必要はないと感じています。私は歌手なので、歌唱法がミュージカルの方とは違う特徴を生かしていると思います」と、もう一人のキャストとの違いを説明した。
イ・ジナの演出は厳しいのでは? という問いには、ヤン・ドングン「とてもカリスマがある演出家だと聞いているが、なぜか厳しいと思ったことは一度もない。自分で歌詞を翻訳し、歌詞を作っていく作業に加え、韓国語でラップもしなくてはというストレスを感じていた時も、『気楽にやりなさい』と言ってくれた。洋服も自分に合うように、例えばこの(履いている)ハーフパンツも稽古場で着ていて靴も自前ですが、『それでそのまま出たらいいじゃない!』と舞台に送ってくれた。本当に良い演出家だと思っています」。
ルナは「実は、私の大学の先生でもあり、ずっとお世話になっています。大学ではとても厳しかったけれど、社会に出て会ったら俳優として認めてくれて、とても感動しました。私が上手くできるように動機付けをしてくれるし、足りない部分を埋めてくれる。例えば『ここでレッスンを受けるといいよ』など、俳優として成長できるように、その道を教えてくれます。私にとっては母か姉といった風な、演出家以上の存在です」
自身のナンバーでのお気に入りは? の質問に対して、ルナ「『Sunrise』です。第二幕の最初に歌うのですが、この作品を演りたいと思ったのはこの曲があったから。難しい曲ですが、歌いながら嬉しい気持ちです」。ヤン・ドングン「最後の『Finale』という曲です。好きな歌詞があって、『僕が立っているこの場所が、僕が生きるべき場所だ』。俳優を長くやっていると、辞めたい、外国に行きたいという倦怠期が来ることがある。でもステージに立ってこの歌詞を歌うと、『このステージこそ、僕が生きていくべき場所だ』と感激し、この部分からエネルギーを受ける。人生の大きな価値を歌っていると思います」。
出自がミュージカル畑ではない2人にとって、ミュージカルの面白さとは? ルナ「歌手には演技がないので、演技・歌・ダンス、全てできることが魅力。人生でやりたかったこと、上手くなりたいことが全部詰まっている。つらいこともあるけれど、多様なジャンルを学べる機会を大事にしています」。ヤン・ドングン「僕はいい歌を上手に歌おうとは考えていない。振付が多く、音楽もとても速く、動き回って汗もすごくかいているので、実は『楽しい』というよりも『死にそう』と思いながら演じています(笑)」
『イン・ザ・ハイツ』という作品で伝えたいことについて、ルナは「最後の『Finale』という曲の歌詞をいつも心に刻みながら歌っています。『(実際に歌ってみせて)♪新しい日が昇る』。目が覚めて、また新しい日が来たと感謝している人はどれくらいいるんだろうかと考えました。自分も俳優として歌手としてつらい時もあるが、この物語にもつらさに勝たなければならない人はたくさんいる。だけど皆、つらくとも希望は必ず持っていて、そこが好きです。最後は、ウスナビから希望が感じられ、喜びが花開くフィナーレとなります。観客の皆さんに感じてほしいのは、周りの人に感謝して、ポジティブに生きれば幸せになれるということ。明日も太陽が昇る、と希望を持ってほしいと思います」と、思い入れたっぷりに作品との出会いを感謝する気持ちを語った。隣で目を閉じ、うなずきながら聞いていたヤン・ドングンは「これ以上ない、いいメッセージだ」と拍手。それを聞いたルナも照れながらさらに笑みがこぼれ、終始笑顔のたえない会見となった。
横浜の印象を尋ねられた2人。ルナは「とても色とりどりで美しい街だと聞いていました。8月の公演を行った渋谷は派手で賑やかだったけれど、横浜は心休まる場所です」と、リラックスして舞台にのぞめる魅力を強調。ヤン・ドングンは「一番印象的なのは、目の前が港になっていること。このミュージカルは移民を扱った作品です。海外公演(日本)で、目の前に港があることで、よりいっそう感情移入できると思う」と語った。
『イン・ザ・ハイツ』韓国公演より ヤン・ドングン
『イン・ザ・ハイツ』東京公演より ルナ(f(x))(撮影:宮川舞子)
筆者は8月に東京公演を二度観ているが、この横浜公演は舞台と客席の距離がさらに縮まり、迫り来るパフォーマンスに圧倒された。特にK-POPとヒップホップの良いところをかけあわせたようなダンサーたちの群舞は、間奏部分さえも見逃せない。(特に第一幕『96,000』と第二幕『Carnaval del Barrio』は圧巻!)
キャストが変わると印象もガラリと変わることもあるが、ヤン・ドングンの言うように、これは移民の話。舞台はドミニカ人コミュニティで、スペイン語が飛び交う。筆者がNYでのオリジナル上演を観た際にはスペイン語のアナウンスで始まった。一方、元町・中華街駅から劇場までの間にも多様な言語が飛び交い、この作品のスピリットにピッタリな異国情緒あふれる街だとあらためて感じることができた。横浜にできた彼らのホーム、ワシントンハイツへようこそ! ここにまた新たな『イン・ザ・ハイツ』が誕生した。
なお、バックステージツアーやキャストとの写真撮影ができるスペシャルシート、アフタートークショーやハイタッチ会といったイベントDAYも用意されている(詳細は公式サイト参照)。
韓国版『イン・ザ・ハイツ』はKAAT神奈川芸術劇場で11月4日(金)まで上演される。
(取材・文:ヨコウチ会長 会見写真撮影:安藤光夫)
■原案・作詞・作曲:リン=マニュエル・ミランダ
■演出・韓国語歌詞:イ・ジナ
■音楽監督:ウォン・ミソル
■振付:チェ・ヒョンウォン、キム・ジェドク
■キャスト:
ウスナビ役:ヤン・ドングン/チョン・ウォニョン/ドンウ(INFINITE)/Key(SHINee)
ベニ―役:キム・ヒョンジュン(Double S 301)/ソンギュ(INFINITE)
ヴァネッサ役:オ・ソヨン/J-Min
ニーナ役:チェ・スジン/ルナ(f(x)) 他
■料金:S席 16,000円 A席 11,000円 スペシャルシート 25,000円 (全席指定・税込)
■一般発売開始:2016年10月10日(月・祝)10:00~
■公式HP:http://musical-intheheights2016.jp/
■主催:S.M.Culture & Contents/Quaras