日本版妄想が膨らむスゴすぎるミュージカル動画

2015.8.18
コラム
動画
舞台

ミュージカル『ハミルトン』公式サイトより

『レミゼ』ファン、『ハイツ』ファン必見!46丁目の《対決》

『イン・ザ・ハイツ』のリン=マニュエル・ミランダ脚本・音楽・主演による新作で、オフでの爆発的ヒットを経て、瞬く間にオン・ブロードウェイ進出を果たしたミュージカル『ハミルトン』。8月6日の開幕以降、オンでも連日大入り満員を記録中のこの超話題作の公式ツイッターに、『~ハイツ』ファン、『レ・ミゼラブル』ファン、そして全ミュージカルファン必見のスゴすぎる動画が投稿された。

 

何がどうスゴすぎるかというと、まずこの《対決》(『レ・ミゼラブル』で主人公ジャン・バルジャンと彼を追う刑事ジャベールが歌うナンバーです、念のため)でジャベールを演じているのが、リン=マニュエル・ミランダだという点である。ミランダといえば、ミュージカルスターを夢見ていたが自分の歌唱力では演じられる役がなく、ならば自分が主演できる作品を自分で作ってしまおうと『~ハイツ』を書いた、と公言している人物だ。その彼が、わけても高い歌唱力の必要なジャベールを歌う姿なんてそうそう見られるものではないし、彼が歌うとジャベールですらヒップホップ調になっちゃうことが分かるのもまた面白い。

次にスゴいのは、そのミランダ・ジャベールに相対しているのが、アンダースタディとはいえ本物の現役バルジャン、カイル・ジャン=バティストである点だ。ブロードウェイ史上初の黒人バルジャンであり、かつ史上最年少(弱冠21歳!)でもある彼の登板について、人種差別的な意味合いではなく、単純に役の設定とかけ離れている点を心配していた『レミゼ』ファンは少なくないことだろう。そんななかでこの動画は、彼がそうした違和感を差し引いてもなお観たくなる、文句なしの声と歌唱力を備えた逸材であることを見せつける形となった。

だが何よりスゴいのは、そんな二人の《対決》が実現したのが何らかの公的イベントの場ではなく、『ハミルトン』のボックスオフィス前だったという点だ。『ハミルトン』のは来年1月公演分までほぼ完売で、早く観たければ当日券の抽選販売に懸けるしかないのが現状だ。当選確率が非常に低いことを承知の上で詰めかけた人々を少しでも楽しまそうと、ミランダ自ら隣の劇場に出演中のバティストに声をかけ、二人して私服のままアカペラで披露したのがこのパフォーマンスというわけだ。もしも東京で当日券に並んでいる時にこんな粋な計らいがあったら……。想像すると、一層胸が熱くなる動画である。

イベント情報
ミュージカル『Hamilton』

日時:ロングラン上演中(は2016年6月4日公演分まで発売中)
会場:リチャード・ロジャース劇場(ニューヨーク)
ミュージカル『Les Miserables』

日時:ロングラン上演中(は2016年1月3日公演分まで発売中)
会場:インペリアル劇場(ニューヨーク)