“王道”と“キャラクター” アニメにも通じる『スター・トレック BEYOND』の魅力 #野水映画 “俺たちスーパーウォッチメン”第十三回

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2016.11.2
  (C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

『スター・トレック』シリーズといえば、数々の映画、テレビシリーズが製作され、熱いファンも多く存在するSF超大作。その最新作である『スター・トレック BEYOND』が現在公開中だ。

宇宙のまだ見ぬ領域への探査任務に就いて3年目。キャプテン・カーク率いるエンタープライズ号は、未知の星に不時着した探査船の救出任務にあたることになる。そんな中カークは、このミッションを最後に、ある決断を下すことを胸に秘めていた。しかしミッションの途中で、エンタープライズ号は異星人・クラールの指揮する無数の攻撃機に襲われ大破、制御不能に陥ってしまう。クルーたちは脱出ポッドで艦を離れたものの、見知らぬ惑星で散り散りになってしまう。果たしてクラールの目的とは? エンタープライズ号はどうなってしまうのか。

 

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『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(16)の監督J・J・エイブラムスが手がけ、スターとトレックの間に“・(中黒)”が入った『スター・トレック』シリーズは、2009年からスタートした。その三作目にあたるのが『スター・トレック BEYOND』である。誕生50周年を迎えた『スタートレック』シリーズには、さかのぼれば数えきれないほどの作品があるので、手を出せずじまいになっている方も多いのではないだろうか? かくいう私も、ひと月ほど前まではその一人だった。だが心配することはない! 『スター・トレック』シリーズは、リ・イマジネーション作品と呼ばれる、まったく新しいストーリーで描かれているので、旧作を観ていなくても充分その世界を堪能できるはず。一作目を観れば、きっと二作目の『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(13)が観たくなり、あっという間に『BEYOND』にたどり着くだろう。私も、大好きなサイモン・ペッグがメインキャラクターの一人・スコッティを演じているのをきっかけに観始め、今やどっぷりこの世界にハマってしまった。

 

“王道”と“キャラクター”が作り出す面白さ

 

左から、カーク(クリス・パイン)、スポック(ザカリ―・クイント) (C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

左から、カーク(クリス・パイン)、スポック(ザカリ―・クイント) (C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 

私が思う『スター・トレック』の魅力は、まず“王道である”というところだ。わかりやすく骨太なSF・スペースオペラでありながら、コメディ要素もあり、友情や絆が描かれるアツい展開も兼ね備えている。そして、もう一つの魅力は、思い入れを強く持ちやすい、個性豊かなキャラクターたちが登場するところ。この二つがクロスすることで、漫画やアニメにも通ずるハマりやすい作品に仕上がっている。主人公のキャプテン・カークはタフではあるが、ものすごく喧嘩が強いわけでも頭が切れるわけでもない。独りで戦う強い主人公もカッコいいが、仲間と手を取り合える“王道”な主人公が私は大好きだ! そしてそれを支えるのが、バルカン人と地球人のハーフ・スポック。二人はぶつかりながらも次第に認め合っていき、二作目の『スター・トレック イントゥ・ダークネス』に至る頃には欠かせないバディとなった。ここは女子に刺さる一番のポイントではないだろうか。切れ者で感情を表に出さないスポックは、ルールを守らないカークにイライラツンツンしっぱなしだが、徐々にデレ成分が増え、感情を隠せなくなっていく。まさに“王道”ツンデレ。カークはカークでそんなスポックに信頼を置き、『BEYOND』では、「お前がいないとダメだ」とまで言うほど。さすがBLブームの走りといわれる『スタートレック』。距離の近い二人のやり取りに、(私のように腐った)女子はドキドキしてしまうこと請け合いだ!

 

描かれる絆の深さと『BEYOND』が示すもの

 

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ボーンズ役カール・アーバン (C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

ボーンズ役カール・アーバン (C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 

カークやスポック以外の個性豊かなクルーたちの見せ場も盛りだくさん。未知の惑星で、二人一組でバラバラになったクルーたちの掛け合いにスポットが当たるため、各々のキャラクター性が今まで以上に際立つ。前二作でハマったファンにはうれしい展開だ。中でも注目すべきは、スポックと巻き込まれ型の医療部長・ボーンズのコンビ。ドラマシリーズでも名物だったという、ボーンズがスポックをからかったり、「お前はいつもそうだ!」とツッコむ場面も見ることができる。そして、私の愛するペッグ演じるエンジニアのスコッティだけは、脱出ポッドで逃げた後で一人きりになってしまう(!)。スコッティは技術は凄いが、口が達者なくせにヘタレでお間抜けさんなので、観ていた私が「あー!スコッティが!!可哀想、早く助けてあげてー!」となったのは言うまでもない……。そんなピンチに颯爽と現れるのは、今回のゲストキャラクターである謎の美女・ジェイラだ。演じるソフィア・ブテラは『キングスマン』(15)で義足の殺し屋を演じ注目を集めた女優。本作でもその華麗な足技は健在だ。

 

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エンタープライズ号を飛び出すことで、クルーたちは絆の深さを再確認する。だがしかし、その絆は弱点となり、クラールに突かれてしまうのだ。クラールは、あらゆる人種が住む巨大宇宙ステーション・ヨークタウンを攻撃しようとする。皆が手を取り平和に暮らす世界は理想にすぎず、戦争を繰り返すことこそが真理だと信じているのだ。彼が掲げるイデオロギーに、クルーたちは「手を取り合うことが大事なんだ」と主張する。一度は弱みとなったその絆で、ピンチをBEYOND(超えて)していく展開に、胸が熱くなること間違いなしだ。

カークは宇宙での長いミッションに自分の進むべき方向を見失い、スポックはバルカン人としての使命を考え始める。『BEYOND』は前二作と違い、どこかアンニュイな雰囲気で進んでいく。旅の終わりを予感させるようなストーリーは、どこに帰結するのか。ドラマシリーズでスポックを演じ、本シリーズでも老スポック(スポック・プライム)を演じたレナード・ニモイが昨年亡くなり、今年六月に不慮の事故でチェコフ役のアントン・イェルチンが亡くなってしまったことは、『スタートレック』ファンにさらなる切なさをもたらしたことだろう。悲しみもBEYONDして、彼らへの想いとエンタープライズ号クルーの絆を、ぜひ劇場で感じてほしい。

『スター・トレック BEYOND』は公開中。

作品情報
映画『スター・トレック BEYOND』
 


製作: 
J.J.エイブラムス 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(監督)『スター・トレック』(監督)『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(監督)
監督:
ジャスティン・リン 『ワイルド・スピード MAX』『ワイルド・スピードMEGA MAX』『ワイルド・スピード EURO MISSION』
脚本:
サイモン・ペッグ(共同脚本)『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』(脚本)『宇宙人ポール』(脚本)
出演:
クリス・パイン (カーク)『スター・トレック』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』 『エージェント・ライアン』
ザカリー・クイント (スポック)『スター・トレック』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』
ゾーイ・サルダナ (ウフーラ)『スター・トレック』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』『アバター』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
サイモン・ペッグ (スコッティ)『スター・トレック』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』
カール・アーバン (ボーンズ)『スター・トレック』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』『リディック:ギャラクシー・バトル』
アントン・イェルチン (チェコフ)『スター・トレック』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』 『ターミネーター4』
ジョン・チョー (スールー)『スター・トレック』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』 『トータル・リコール』
イドリス・エルバ 【新キャスト】『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』『マイティ・ソー』『プロメテウス』『パシフィック・リム』
ソフィア・ブテラ 【新キャスト】『キングスマン』
ジョー・タスリム 【新キャスト】『ワイルド・スピード EURO MISSION』

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公式サイト: http://startrek-beyond.jp/
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