おっちゃん&ミンジュの怪しいK-Pop喫茶[第15話] PPAPスタイルソング

コラム
音楽
2016.11.8
PPAP

PPAP

Twice 『CHEER UP』

ミンジュ「(ぽち…くりくり)ほえー、Twiceの『CHEER UP』のMVがYoutubeでの再生回数9000万回突破したんやって」
客「すごいやんけ。少女時代の『Gee』より速い記録ちゃう?」
おっちゃん「うむ。『Gee』が再生回数1億回超えたのは公開して3年10か月後、『I GOT A BOY』はそれより速くて1年半で1億回を達成しとるな。それに対し『CHEER UP』は公開半年でもう9000万回超えや」
ミンジュ「すげー(生き字引みたいなジジィやな)」
客「実際Twice、毎日テレビで見るもんな」
おっちゃん「『セーラー服大戦』の時点で将来を予測してみたけど、結局最近の少女アイドルグループはGFriendとTwiceの2強時代になりつつあるようやな」
客「GFriendはいきなりパッと売れたけど、Twiceはいつの間にかじわっと売れて来た印象やね」
おっちゃん「そやな。振り向けばパトレーゼ、みたいな」
客「(かくん)古い、古いなぁ」
ミンジュ「それにしても、同じ事務所からデビューして、なぜTwiceは売れまくり、ウチはさっぱりやったのか? 謎だ」
客「…(いや、明白やと思うけど)」
ミンジュ「ウチのMVなんて、丸1年たってまだ30万回やもんなぁ。あーあ、どうすればYoutubeで受けて話題になれるもんやら」
おっちゃん「自分の歌には中毒性がないから無理や」
ミンジュ「中毒性?」
おっちゃん「そうや。Twiceの『CHEER UP』には日本人のサナの独特の歌い方“シャーシャーシャー”に代表される中毒的なパートがいくつかある。そこに大衆はハマる訳や」
客「うんうん。ワシはツゥイちゃんの“ミーヤーネ”っていうところがハマりポイントやな」
ミンジュ「ウチの歌にはその要素がないと?」
おっちゃん「ないない。顔だけは中毒起こしそうやけどな」
客「わははは」
ミンジュ「(うきー)コロス!」
おっちゃん「中毒性の高いMVと言えば、今話題の『PPAP』なんてその代表やろうな」
客「PPAP?」
おっちゃん「知らんのかい? 日本製のナンセンスビデオやけど、世界中で爆発的に受けてるんやで」

ピコ太郎『PPAP(Pen-Pineapple-Apple-Pen Official)』

客「わー、なんやこれ?」
ミンジュ「あ、見たことあるわ。ジャスティン・ビーバーが“ウケルー”ゆうたんで、一気に人気に火がついたやつでしょ?」
客「ぴゃー、公開2ヶ月で再生回数7000万回やて」
おっちゃん「すごいやろ。ただしジャスティンが“お気に入り動画”に登録したんは、公式やなくて、誰かが非公式にアップしたものや。そっちは公開1か月半で再生回数1億回を超えとる」
ミンジュ「げぇ」
客「えらい勢いやなぁ」
おっちゃん「ワシが初めてPPAPを知ったのは、ワシの好きなマレーシアの歌手ジョイス・チューちゃんがこれを踊ってたからやけど、あんまりくだらないんで最初はマレーシアの芸人のギャグかと思うた」

Joyce Chu(四葉草)版 『PPAP』

客「確かにくだらん。しかし可愛い」
おっちゃん「そやねん。それに呼応するように、世界中の美少女がこのナンセンスな歌を歌い踊ってはその動画をアップしだした。Twiceのツゥイとチェヨン、トロット歌手のホン・ジニョンなどもアップしてるで」
ミンジュ「美少女に限定すんなよ」
おっちゃん「こういった関連動画まで含めると、PPAP全体で再生回数10億回以上ともいわれとる。とにかく、今このPPAPが世界中を席巻しておるのは確かや」
客「ちゅうても、いったい何がおもろいのかようわからん動画やのー」
ミンジュ「それは確かに」
おっちゃん「ギャグとしては単純な言葉遊びで、意味のないものやな」
ミンジュ「ルイス・キャロル的な?」
客「そこまで高尚なもんやないやろ」
おっちゃん「誰でも知ってる簡単な単語のPenとAppleを組み合わせてアッポーペンを作り、次にPenとPineappleでパイナッポーペンを作る。さらにそれを組み合わせると誰もがアッポーパイナッポーペンになると思うんやけど、並び順に“ペンパイナッポーアッポーペン”と言うところが肝なんやな」
ミンジュ「解説されるとますますおもろくないわ」
客「なぜジャスティンに受けたんやろ?」
ミンジュ「西洋人的感覚なんやない? アジア人には理解できん」
客「そやけどこの動画作ったんはアジア人やで」
ミンジュ「あーそうかぁ」
おっちゃん「ワシが思うに、ひとつには意味がないから受けたんやなかろうか」
ミンジュ「はぁ?」
おっちゃん「意味がない分、純粋に変な生き物、変な音や動きとして見てるのかも」
客「オオグチボヤやチンアナゴを見るような?」
おっちゃん「うむ」
ミンジュ「どっちかってゆうたらハダカデバネズミみたいやけどな」
おっちゃん「なんでもええけど、意味よりは妙なダンスや耳につくサウンドが中毒性をもたらしてるんやと思う。そやから国境を越えて世界中で受けてるんやないか?」
ミンジュ「子どもも簡単に真似できるよね」
客「なるほど。リズム芸みたいなもんやな」
おっちゃん「実は『PPAP』がバカ受けしたんで、早くも第二弾が発表されておる。『ネオ・サングラス』ゆうんやけど、こっちはさっぱり受けてない」

ピコ太郎『NEO SUNGLASSES(ネオ・サングラス)』

ミンジュ「急にポップになったね」
おっちゃん「その分あっさりしてしまって中毒性が薄れたんやないかと思う」
ミンジュ「これは子どもが真似しないギャグやな」
おっちゃん「典型的な一発屋の行動と言えよう(笑)」
客「で、結局、ピコ太郎って何者なん?」
おっちゃん「公式には千葉出身のストリートミュージシャンで53歳ちゅう設定の人や」
客「設定てなんやねん?」
おっちゃん「まぁ正体はお笑い芸人なんやけど、その辺あまり突っ込まず、設定に乗ってあげるのがPPAPの楽しみ方のようや」
ミンジュ「真面目な顔して踊るのも楽しみ方のひとつなんやね」
おっちゃん「そうそう。ホンマは“くだらねー”と思っていても、そのくだらなさに乗っかることが大切なんや」
ミンジュ「なんか『江南スタイル』みたいやなぁ」
おっちゃん「まさにそう。PPAPは第二の『江南スタイル』と呼ばれておるのじゃ」
客「ほえー」
おっちゃん「『江南スタイル』の場合はYoutubeにアップされたMVをケイティ・ペリーやマルーン5が話題にしたことから人気に火が付いた訳やが、『PPAP』はジャスティンで、そのあたりの事情も共通しとる」
ミンジュ「なるほど」

PSY『江南スタイル』

ミンジュ「再生回数26億回やて(驚愕)」
客「いまだに世界一らしいな」
ミンジュ「それにしても、改めてみるとくだらない歌やねぇ」
おっちゃん「そのくだらなさがええんよ。加えて変なダンスに耳に残るサウンド」
客「『PPAP』と一緒やね」
おっちゃん「その通り。PSY自身もこの曲が自分にとってベストな曲とは思うてないし、いい曲やから受けたとも思うてないゆうてた」
ミンジュ「観る人もこれが名作とは思うてないやろね」
おっちゃん「くだらないと思うのに、ついつい観ちゃう、それこそ中毒性の高い証拠や。PSYにはもっと完成度の高い歌もあるんやけど、そっちはさっぱり受けてないし」
ミンジュ「例えば?」
おっちゃん「ワシが好きなのはこの曲かな」

PSY『RIGHT NOW』

おっちゃん「曲としてはこっちの方がずっとまともやろ?」
客「PSYが悪ふざけするところと紙屑が舞うところは一緒やけどな」
ミンジュ「撮影の規模としては、こっちがずっとお金かかってるんちゃう?」
おっちゃん「うむ。そやけど、そういうとこは西洋人には評価されへんのや。ハリウッド映画には逆立ちしたって敵わない訳やし。やっぱり東洋人が変な音で変なダンスを踊ってる様が可笑しいんやろう」
ミンジュ「でも西洋に限らず世界中で受けたんやないの?」
おっちゃん「それはある程度話題になれば、誰かて一回は観てみよう思うやろ。観さえすれば数字に反映される訳やから、もうおもろいと思うか思わへんかは関係ない。2016年におけるインターネット人口が35億人やから、再生回数26億回ちゅうても意外に現実的な数字かもしれん」
客「なるほど」
ミンジュ「『江南スタイル』は日本では例外的に受けなかったんでしょ?」
おっちゃん「そうみたいやな。たぶん日本人にとっては西洋人が感じるような異質感がなかったんやろ。それにお笑いレベルの高い国やから、“それくらいじゃ笑えへんで”と思うたのかも」
客「それに対するアンサーが『PPAP』なのかなー」
おっちゃん「そうとも言えるわな。いずれにしても中毒性を生み出すのは、異質感、洗練され過ぎてないこと、耳に残る音であること、真似しやすいこと、この辺りの要素が重要な気がする」
ミンジュ「『スキヤキソング』なんかもまさにそうやもんね」
おっちゃん「『アナック』とかな」
客「古い、古いなぁ」
おっちゃん「少女時代の『Gee』もまさにこの要素にぴったりハマるヒット曲やね」

少女時代『Gee』

おっちゃん「妙な中華風のイントロが異質感を生み、E-Tribe独特の下敷きをベコンベコンさせるような低音が安っぽい。決して洗練されてはおらんのやけど、妙に耳に残る」
客「“パボ!”とか“GeeGeeGee”とか、ハマるフレーズもあるね」
ミンジュ「これ以降フックソングがブームになったもんなぁ」
おっちゃん「そして軽快で思わず真似したくなる。非常に中毒性の高い歌や」
客「確かにー。少女時代が可愛いからって理由だけで売れた訳やないんやな」
ミンジュ「洗練され過ぎてない方がいいって言うけど、クラシックの名曲には中毒性がないってこと?」
おっちゃん「そんなことはないで。ベートヴェンの『運命』とかチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番とか、一旦脳みそに張り付いたらずっと繰り返し鳴ってる音楽もあるし。やっぱキャッチーなのが大事なのかも」
客「ワシはシューベルトの『ます』やな」
ミンジュ「それは変わってる」
おっちゃん「『怒り新党』の観すぎちゃうか?」
客「放っとけ」
おっちゃん「ただ、低俗ちゅうかすっきりしない要素があった方が印象に残りやすいのは確かみたいで、1953年に発表されたSFの名作『分解された男』(アルフレッド・べスター著)には、テレパシー能力者に考えを読まれないため中毒性の高い歌を覚えて、それで頭に中をいっぱいにしてしまう男っちゅうのが出てくるが、その歌がまたくだらないんや」
ミンジュ「またマニアックなネタを(呆)」
おっちゃん「その歌詞ちゅうのは“Eight, sir; seven, sir; Six, sir; five, sir; Four, sir; three, sir; Two, sir; one! Tenser, said the Tensor. Tenser, said the Tensor. Tension, apprehension, And dissension have begun.”と言うもので、これもフックソングの構造になっとる」
客「ホンマや!」
おっちゃん「60年以上前から中毒性をもたらす要因てのは考えられとったんやな。ただし、それがわかったからゆうて、誰にでも中毒ソングを作れる訳やないのが難しいところや」
ミンジュ「ヒット曲の要素を並べてもヒットするとは限らないもんね」
おっちゃん「うむ。実際この『Tenser-Song』に曲をつけて歌ってる人がおるんやけど、全然中毒しそうにない」
客「わははっ」
おっちゃん「Youtubeに上がっとるから後で聞いてみたらええがな」
ミンジュ「いや、わざわざ聞く気はない」
おっちゃん「こうやって見てみると、『PPAP』や『江南スタイル』や『スキヤキソング』は流行るべくして流行った訳やなく、タマタマ注目を浴びた結果持ち前の中毒性を発揮してヒットしたちゅうのが正解のようやと思う」
客「売れた本人がびっくりしとる訳やからね」
おっちゃん「狙って売ることは難しいけど、狙って売れなくするのは簡単やで」
客「え、どないすんの?」
おっちゃん「ミンジュに歌わせればええんや(笑)」
客「わははは」
ミンジュ「…(絶対コロス!)」


おまけ…PSYの『Right Now』には童顔巨乳女優ソウが出演したバージョンもあって、私はこっちの方がお気に入り。

PSY『Right How(Seo Woo Ver.)』

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