ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団 いま最も熱いコンビで聴くロマン派と現代の傑作

2016.11.20
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クラシック


 7月のノット&東響のブルックナー8番は、筆者にとってちょっとしたセンセーションだった。整った軽めのサウンドというイメージをひっくり返し、ノットは東響から重厚なブルックナー・サウンドを引き出した。オーケストラもノットの緻密な解釈を献身的に音にした。緊張感あふれる名演だった。

 いま最も熱い両者、12月定期もぜひ聴いておきたい。最初にワーグナー《トリスタンとイゾルデ》第1幕への前奏曲。バンベルク響を率いルツェルンで上演した《リング》や昨年の東響との《パルジファル》抜粋など、ノットはワーグナーも積極的に取り上げている。この音楽史上の重要作でも筋の通った解釈を見せてくれるのではないか(全曲上演にもぜひチャレンジしてほしい!)。後半はシューマンの交響曲第2番。一見野暮ったいところもあるが、アプローチによっては驚くほどの効果をあげる曲だから、知性派ノットの面目躍如を期待。

 間に置かれるのは、フランス現代音楽の大家デュティーユのチェロ協奏曲「遙かなる遠い国へ」。世界のトップチェリストたちが次々に取り上げている作品で、今回はヴィルトゥオジティにも定評があるヨハネス・モーザーが登場。デュティーユは2013年に亡くなったが、今年生誕100年を迎える。フランス人らしく緻密で繊細な管弦楽法に特徴がある。

 ノットは以前、フランスの現代音楽集団アンサンブル・アンテルコンタンポランを率いるなど、現代ものにも滅法強い。今回は《トリスタン》前奏曲とデュティーユを連続して演奏するというが、どんなアイディアが隠れているのか、ワクワクさせられる。

文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2016年11月号から)


ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団
第647回 定期演奏会 12/3(土)18:00 サントリーホール
第58回 川崎定期演奏会 12/4(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONY センター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp