音楽から創り出したのは居場所 綾野ましろが恵比寿LIQUIDROOMで感謝の気持ちを届けた激動の2時間
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綾野ましろ
綾野ましろ One-man Live 2016 WHITE PLACE 2016.11.3(木・祝)恵比寿LIQUIDROOM
北海道で誕生した雪の歌姫・綾野ましろが東京の地で歌声を奏でた。彼女は白い衣装とショートヘアがトレードマークの女性シンガーとして、アニメ音楽をはじめJ-POPなど、幅広いジャンルで活動している。活躍の場は、ロサンゼルス/シンガポール/ドイツで開催されたJ-POPカルチャーフェスなど、日本だけにとどまらず世界各国で自身の歌声を轟かせてきた。そんな彼女が、10月からワンマンライブツアーを開催し、大阪/東京/北海道の3都市で歌声を披露する。世界からも注目されている綾野ましろの歌とは一体どれほどのものなのか。今回は恵比寿LIQUIDROOMで開かれた東京公演の模様をレポートする。
オールスタンディングのフロアは、彼女のライブを楽しみに待つファンで埋め尽くされていた。開演アナウンスが流れ、会場の照明が落とされると、フロアは白いサイリウムで染まる。登場SEの「white arise」が流れ、徐々にオーディエンスの熱量が上がっていくのを感じた。まるで主役が登場すれば、いつでも全力疾走で駆け抜けることができるとスタンバイしているかのようだ。その期待に応えるかのように、待ちこがれていた人物がステージに姿を現した。白の衣装を身にまとった綾野ましろが登場し、オープニングナンバー「shinkiro」を歌い、観客の鼓膜を揺らす。歌声に込められた彼女の想いを一身に受け止めるかのような錯覚が起きた。
そのまま「focus light」「tinity wings」「刹那クロニクル」と序盤からフルスロットルで加速していく。両手を広げて歌う様子は、まるで雪の中で歌う妖精のようだった。けれども、彼女の響かせる美声はとても熱い。「いくぞ!」とフロアにシャウトし、オーディエンスをあおってヒートアップさせた。ステージからフロアに向かって人差し指をさし、ロックアーティストのごとくキレのある歌声で場内を震えさせる。休憩を挟まずに、4曲連続で歌い上げる彼女に驚きを隠せなかった。
MCに入ると、とても愛くるしい一面を見せて、観客のテンションを上げる綾野ましろ。その中でも、彼女は「恵比寿LIQUIDROOMはスタンディングで密集しているので、思いやりを持ってライブを楽しんでください!」とオーディエンスを気遣う。ケガなど危ない思いをしないように呼びかけ、観客を気にかける場面を見ると彼女の優しさが伺えた。
綾野ましろ
その後、ライブパートへ進み「misty way」「re:rain」「labradorite」「vanilla sky」と次々とキラーチューンを放つ。綾野の歌声はとても不思議さであふれていた。歌っている最中、微笑む彼女の笑顔に、こちらも自然と笑みが浮かぶ。ステージでのパフォーマンス、肌で感じる透き通った声音、視・聴・触覚で体感する演出に、様々な角度で楽しむことができた。何より、“みんなと一緒に楽しみたい”気持ちを前面にアピールする彼女の姿に魅了してしまう。
綾野ましろのライブのテーマは“居場所”。自分の音楽を通じて居場所を創ることを目標にする彼女だが、今回のライブはそれが如実に表現されていた。ステージからトークをしていても距離を感じることはない。彼女のライブ会場は、私たちにとって居心地の良い空間になっていた。
綾野ましろ
後半になると「Delusion」「Lotus Pain」「憧憬」「RAY OF LIGHT」と爽快なアッパーチューンで観客をときめかせる。特にオーディエンス全員で歌詞のワンフレーズをシンガロングする景色は圧巻だった。その中でも注目してほしい点が、今回のセットリストの歌詞についてだ。全18曲のセットリストには、ある共通するキーワードが存在する。それは“キミ”だ。自分のライブへ参加してくれた人たちに向ける想いを、歌詞を通じて伝えた。ライブパフォーマンスだけでなく、言葉にして表現する彼女だからこそ、盛り上がる演出を生み出せたのではないだろうか。
そのままラストスパートへ進展すると、場内の熱気は頂点に達する。「スパイラルガーデン」「infinity beyond」を繰り出し、一気にトップスピードで走り抜けた。さらにラストナンバーの「ideal white」へ突入すると、会場の熱狂ぶりに思わず驚嘆する。ステージで歌う綾野の勢いに倣い、オーディエンス全員の一糸乱れぬコールに一体感を感じた。まさに、会場に集まる観客の“居場所”が目の前で創り上げられる。最後は、彼女の一声で全員がジャンプし、ライブを締めくくった。
しかし、高まる興奮をおさえきれないファンたちの掛け声が会場を埋めつくす。オーディエンスの希望を叶えるべく、綾野が再びステージに戻ってきた。ラストナンバーの熱量を持たせつつ、玉置成実カバーソング「Believe」を歌う。そこから一転、自身のラジオ番組『綾野ましろのマシマシ!』テーマソング「marionnette」では、オーディエンスに問いかけるような仕草でステージの左右を行き来した。アンコールで歌う彼女の表情は、感謝を伝えたいという気持ちであふれている。そして、彼女が最後に選んだ1曲は「春想の街」だった。ポップなメロディーにありったけの想いを込めて奏でる光景はとても清々しい。歌い終わった綾野は「ライブができる時間や音楽を作って多くの人に届けたいという想いを大切にしたいと思っています。一人でも多くの人と居場所を創っていきたいと思います」と今後の意気込みを語って、ライブに幕を下ろした。
綾野ましろのライブはオーディエンスのためにある。彼女の歌を聞くと、気持ちの高まりと共に、目の前にいる相手への優しさが感じられた。音楽に対するまっすぐな気持ちと、相手に対する思いやりのパフォーマンスが印象的だ。これからも誰かのために歌を届けて、多くの人に彼女のことを知ってほしい。綾野ましろの歌声が、誰かの心のよりどころとなって、「またここに来たい!」と思うような居場所になってほしい。
撮影=高田真希子 レポート・文=野島亮佑
M1. shinkiro
M2. focus light
M3. tiniy wings
M4. 刹那クロニクル
M5. misty way
M6. re:rain
M7. labradorite
M8. vanilla sky
M9. Delusion
M10. Lotus Pain
M11. 憧憬
M12. RAY OF LIGHT
M13. スパイラルガーデン
M14. infinity beyond
M15. ideal white
<Encore>
EN1. Believe
EN2. marionette
EN3. 春想の街
1st ALBUM「WHITE PLACE」
◆初回生産限定盤A:CD+BD+別冊ブックレット 4,000円(+税)/ 品番:BVCL-748~9
◆初回生産限定盤B:CD+DVD+別冊ブックレット 3,800円(+税)/ 品番:BVCL-750~1
◆通常盤:CDのみ 3,000円(+税)/ 品番:BVCL-752