日本のエンタメを海外の一線へ送り込み続ける男『エンタメの今に切り込む新企画【ザ・プロデューサーズ】第十五回・原田悦志氏』

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ザ・プロデューサーズ/第15回原田悦志氏

ザ・プロデューサーズ/第15回原田悦志氏

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編集長として”エンタメ総合メディア”として様々なジャンルの情報を発信していく中で、どうしても話を聞きたい人たちがいた。それは”エンタメを動かしている人たち”だ。それは、例えばプロデューサーという立場であったり、事務所の代表、マネージャー、作家、エンタメを提供する協会の理事、クリエイターなどなど。すべてのエンタメには”仕掛け人”がおり、様々な突出した才能を持つアーティストやクリエイターを世に広め、認知させ、楽しませ、そしてシーンを作ってきた人たちが確実に存在する。SPICEでも日々紹介しているようなミュージシャンや役者やアスリートなどが世に知られ、躍動するその裏側で、全く別の種類の才能でもってシーンを支える人たちに焦点をあてた企画。

それが「The Producers(ザ・プロデューサーズ)」だ。編集長秤谷が、今話を聞きたい人にとにかく聞きたいことを聴きまくるインタビュー。そして現在のシーンを、裏側を聞き出す企画。

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海外への日本のアーティストの進出が増えている昨今、その背中を押す男がいる。多くのアーティストの背中を押し、道を開き、日本の良質なコンテンツを海外へとレコメンドし続ける、原田悦志氏へと話をきくことができた。

ザ・プロデューサーズ/第15回原田悦志氏

ザ・プロデューサーズ/第15回原田悦志氏

――「J-MELO」がスタートした2005年は、まだレコード会社も事務所も、海外マーケットに目が向いていなかった時代ですよね?

海外でアニメブームが始まる前だったので、「これは誰が観るの?日系人?」という感じでしたね。「海外プロモーションの必要はないよ」と言われて、ミュージック・ビデオも貸してもらえない状態でした。それでも、企画趣旨と協力のお願いの手紙を書き、全レコード会社に送りました。でも最初の半年間位は視聴者からもリアクションが全くありませんでしたね。

――そんな中、どうしてスタートに踏み切ったのですか?

当時、国際放送では独自の音楽コンテンツがなく、上司が「これから音楽はキラーコンテンツになるかもしれないから、お前やってみろ」と言われたんです。ただスタッフは僕一人で、予算もない、人もいない状況でした。何より日本の音楽を30分の中で毎週伝えるのは大変だと思いましたね。ランキングという手も考えましたが、それだと音楽のほんの一部しか見せることができないので、垂直的な構造ではなくて水平的な構造を思いつき、ノンジャンルでオールジャパンにしようと。ただ当時はそういう番組がなかったので、レコード会社やマネージメントサイドからも番組趣旨をなかなか理解してもらえなかったわけです。

――少ない賛同者の映像だけで、コンテンツを制作していたと。

当時まだWEBはテレビが対立するものだと思われていて、WEBサイトで呼びかけることもできませんでした。でも僕はWEBとテレビは対立するものではなく、補完し合うものだと思っていたので他の「NHKワールド」の番組に先駆けて、まずWEBを充実させました。

――WEBが補完し合う関係に?

世界中の視聴者の声を吸い上げなければいけないという番組の特性もあったからです。日本の音楽番組で、リクエストを下さいと言えばある程度は集まります。でも海外はもっとその意図を明確にしなければいけないんです。英語は主語があって述語があって目的語があって、誰がいつ何をするという時制もあって。「今なの? 未来なの? 」をはっきりさせなければ、きちんと伝わらないんです。だから、WEBを使うことで、それを明確化させる必要があった。そこで上司に直訴して立ち上げました。

――「J-MELO」がスタートした時に、これから海外マーケットに本格的に目を向けていく時代になるのかなと思った記憶があります。

日本の音楽には、世界中の音楽の要素が入っています。僕は雅楽からヒップホップまで、世界の流行音楽がぎゅっとつまっているのが、日本の音楽だと思ってます。ただ一番欠落しているのは、海外のファンの視点です。

――海外ファンの視点ですか?

これまでは、ほぼ100%日本人のために作ってきましたよね。だから海外のファンがどうやって接触してくれるのかとか、どうやって音楽を聴いて、所有してくれているとか、全く考えていないんです。

――その中で、アニメが人気になったのは何故ですか?

日本のアニメがなぜ海外で一部の根強いファンに支えられているかというと、日本の業者が海外に出ていく気がない一方で、現地の人たちが自分たちで市場を作ってしまったからです。それは勝手にコピーして、字幕をつけてという違法行為による「市場」でした。決して好ましいことではなかったけど、それである程度の“ビッグニッチ”と言われている市場ができて、アニメが海外に出ることができたんです。

――日本からの仕掛けではなかったのですね

そして、アニメに付随しているアニソンも同じくどんどん世界に広がっていった。だから、アニソンが人気といっても全然ポジティブではなく、日本の音楽がアニソンしか聴けない状況だということなんです。それはいまだにそうで、YouTubeで視聴できない曲がたくさんあるし、Spotifyでも半分位しか聴けなかったりする。要は接触も所有もできない。

――アニメを介してでしか、日本の音楽が届いていないと。

アニソンでアーティストを知って、それをきっかけにそのアーティストの他の曲をチェックしたりしているのが現状です。L’Arc-en-Cielだってそうです。世界中の視聴者に「世界で一番人気のアニソンバンドは?」というアンケートを取ったところ、答えはL’Arc-en-Cielでした。全然本人たちはアニソンバンドと思っていないし、日本人も思っていないですよね。

――日本でのイメージと離れていますね。

2006年が、アニメが日本で一番作られた年です。2008年にそのピークがアニソンに及び、海外のファンはそこで初めて日本の音楽に触れる人が多かった。そしてその頃はアニメのキャラクターもものすごく豊富で、だからみんなそれを真似したがって、僕が2010年に「JAPAN EXPO」に行った時も、「ONE PIECE」「NARUTO」をはじめとするアニメのキャラクターのコスプレイヤーがたくさんいました。でもキャラの切れ目が縁の切れ目じゃないですけど、もし真似をしたいキャラクターがいなくなれば、日本のアニメへの接触が相対的に減ってきます。当然アニソンへの接触も減って、僕は体感的には日本のポップカルチャー全体に対する熱が、一時よりは冷めている気がしています。

――番組でもその影響が?

視聴者調査をやっていると、アンケートに答えてくれる視聴者の層がだんだん上がってきていて、調査を始めた2010年は10代の人が多かったのに、今は20代が多いです。絶対数はたぶん増えていると思いますが、比率としては段々年齢層が上がっています。つまり、新規のファンが減っているということです。

――世界中の若者とコミュニケーションを取るJ-MELOから感じる、日本の文化の広がりにおけるリアルとは?

レイヤーが2つあると思います。1つは日本のファン、もう1つは普通の音楽ファン。これはポップカルチャー全体に言えます。海外で日本カルチャーのイベントをやれば何万人も集客できます。でもそれは例えば代々木公園で「タイフェス」や「ベトナムフェス」をやれば2日間か3日間で5万人、10万人は来るのと同じです。よく日本のアニメが世界を席巻とか、日本の“カワイイ”は世界の共通語とか言われていますが、確かに一部の人にはそうかもしれませんが、現象としてはほんの一部なんです。

――「クールジャパン」という言葉が一人歩きしている感じがします。

大げさではなく、本当に現象の一部ですね。コミケにも10万人以上集まることもありますが、でも自分の周りに実際に行ったという人が、どれほどいるかのかということです。

――少なくとも私の周りは決して多いとはいえませんね。

ただ、そういうものが好きな人が“点在”しているというのは、全てにおいて同じです。音楽は共有するものから、1人1ジャンル的に私有するものになっている気がします。だから同じ志向の人同士が集まる場はあるんです。かつて音楽番組がたくさんあった頃、次の日「あの曲聴いた?」って共通の話題で盛り上がっていました。だけど、今は共有する音楽番組もほとんどありません。

――そういうヒット曲もないですもんね。

だから唯一共有できたのがアニソンだったんです。「あのアニメ観た?あの曲いいね」って。アニメが減ったら共有できるものが世界中で減ります。そうなるとどういう現象が起こるかというと、日本と同じで1人1ジャンル、このロックバンドがいい、このヒップホップがいいという状況になります。好きな人は好きな人で集まるんだけど、一部の盛り上がりにしかならない。だから、1つ目のレイヤーである日本のファンも、昔みたいに一枚岩というか、みんな集まるぞという感じではなくなっている。もちろん、多様化するというのはいいことだと思いますが、“勢い”が弱くなってる気がします。

――「J-MELO」は、日本での視聴者も多いですが、基本は海外視聴者の目線で作っているということですよね。

もちろんです。ただ日本の視聴者には力を貸して欲しいと思っています。僕は今、慶應大学の講師をやっていることもあって、大学や高校に出向いて生徒達に「好きなアーティストとその理由は?」「世界に薦めたい日本のアーティストは?」という質問をしています。

ザ・プロデューサーズ/第15回原田悦志氏

ザ・プロデューサーズ/第15回原田悦志氏

――それはなぜですか?

さっきのレイヤーの話でいうと、今の学生は音楽がすごく好きというレイヤーの人が昔に比べて減っています。だけど、作り手はあまり音楽を聴かない層を捕まえないといけないと思うんです。音楽業界の人って、音楽ファンの事しか考えてない。音楽ファン以外の人達に、何で音楽聴かないの?どうすれば聴こうと思うの?あなたたちは誰が好き?とか、そういうことを聞いていかないと、市場は国内でも広がらないと思います。

――だから、学生達に問いかけると。

一般の学生に話を聞くと、ものすごく勉強になります。僕は大学で教えながら、逆に学生に教えてもらっているんです。例えば、「どうすれば世界でもっと日本の音楽が受け入れられるようになる?」と聞くと、日本の学生も、海外の学生も言っていることは大体同じで、熱烈なファンをできるだけたくさん囲い込んで、そういう人達から広げていこうと考えている人が多い。

――音楽ファンの外側の人達を巻き込んでいかないと、マーケットが広がらないという事ですよね。

世界に広げるためには2つ方法があって、1つはやっぱり日本らしさを活かすことです。そしてもう1つは、みんなが口ずさめる曲を作ること。「PPAP」は完全に後者ですよね。あの曲は世界中の普通の人たちも巻き込んだもので、別に日本製ということの特質は何もないです。

――確かに、日本語で歌っているわけでもありませんよね。

日本らしさで突き進むのであれば、1つ目のレイヤー、つまり日本ファンからどんどん広げていくべきです。BABYMETALも宇多田ヒカルも日本語で歌っています。だから言語の問題ではないんですね。しかし2つ目のレイヤー、つまり日本ファン以外を狙うのであれば、例えばONE OK ROCKやVAMPSみたいに、英語で真正面から挑む。その両輪がないと上手く作用しないと思います。

――原田さんに海外進出の方法論をアドバイスして欲しいというアーティストも多いのでは?

来ますね。正直に「ちょっとキツいと思う」と言う事もありますし、「韓国や台湾だったらいけるかもしれない」とか、そういうアドバイスをすることもあります。the GazettEには「大丈夫だから」と背中を押しました。

――the GazettEは音が完全に洋楽ですよね。

彼らはすごいです。もっと評価されていいと思う。今まで番組へのリクエスト数で、年間で1位を獲ったのは3組のロックバンドしかいないのですが、the GazettE、L’Arc-en-Ciel、SCANDALだけです。

――SCANDALは東南アジアだけでなく、ヨーロッパツアーも成功させていますね。

彼女たちも背中を押しました、上手くいくからって。ガールズバンドそのものが珍しいという事もありますが、最近の海外でウケている女性アーティストのひとつの傾向として、アイドル的要素がまずあって、それプラスαがある人が、日本語で歌っても人気なんです。SCANDALもそうだし、BABYMETAL、宇多田ヒカルも、ある意味そうですよね。初音ミク、きゃりーぱみゅぱみゅも人気です。それとみんな声にビブラートをかけない、高中域のボーカル。それに加え日本語の響きというのが、フランス人やドイツ人に聞くとなんかエレガントに聴こえるらしく、これって日本人にはわからない感覚ですよね?

――わからないですよね。

もしかしたら女性の中高域の声と、ちゃんとした音楽性が重なると、世界の人に心地よく聴こえるのかもしれません。日本語について言えば、視聴者に調査したところ、日本語に興味がある人の半分は、その意味を知りたい、もう半分は、意味はどうでもいい、翻訳は必要ないという結果が出ました。だから日本語ってもしかしたらサウンドという観点では、突破する武器になるのかもしれないですよね。もう1つは先ほども出ましたが、正面から英語で行こうとしている潔さがカッコいい、ONE OK ROCKのようなタイプですよね。

――まず英語の発音が素晴らしいという武器がありますよね。

VAMPS、ONE OK ROCK、MAN WITH A MISSIONらは真正面から行っています。ロックのメインストリームに正面から挑むというのはとても大切です。Crossfaith、coldrainもそうです。彼らは海外のフェスにも出ていて、すごいと思います。それぐらい覚悟決めて行かないと難しいと思うし、逆にいうとそれぐらい覚悟を決めると、道が少しずつでも拓けていくかもしれない。

――日本人でも音楽、バンドを始めるときになんの躊躇もなく英語で歌う人も増えていますよね。

そうなってくると日本である必要はないですよね。

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