『村上隆のスーパーフラット現代陶芸考』が2017年春に開催 奈良美智らの作品を通じて「芸術とはなにか」を考える

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2017.1.5
村上隆 Photo by Mikiya Takimoto

村上隆 Photo by Mikiya Takimoto

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十和田市現代美術館では、2017 年3 月11 日(土)~5 月28 日(日)にかけて、『村上隆のスーパーフラット現代陶芸考』が開催される。

アーティストとしてだけでなく、コレクター、キュレーター、ギャラリストとしての顔を持つ村上隆。村上が近年とくに興味を持っているのが、日本の現代陶芸だ。村上は、陶芸をコレクションするだけでなく、現代陶芸のショップOz Zingaroを持ち、海外のアートシーンにも紹介を試みてきたことでも知られている。

Photo by Chika Okazumi

Photo by Chika Okazumi

本展では、村上コレクションから、青木亮、安藤雅信、村田森、小嶋亜創らの現代陶芸作家の作品、また、奈良美智、小出ナオキ、青島千穂、大谷工作室、ガブリエル・オロスコ、ローズマリー・トロッケル、クララ・クリスタローヴァらの現代美術作家による陶芸作品など、28作家、約300 点を展示する。

上田勇児《壺》2015 直径25×28.5×口径11cm

上田勇児《壺》2015 直径25×28.5×口径11cm

 大谷工作室《寝る子》2016 40×36×33cm

大谷工作室《寝る子》2016 40×36×33cm

熊谷幸治《土偶・ダルマ》2010 17×20.5×21cm

熊谷幸治《土偶・ダルマ》2010 17×20.5×21cm

クララ・クリスタローヴァ《犬と、眠る》2010 48×16×24cm ⓒKlara Kristalova, Courtesy of Galerie Perrotin

クララ・クリスタローヴァ《犬と、眠る》2010 48×16×24cm ⓒKlara Kristalova, Courtesy of Galerie Perrotin

利休にはじまる茶の湯、柳宗悦を中心とした民藝運動、デパート陶芸からクラフトフェアまで、多様に展開する陶芸の世界から、日本の価値と美のありようを汲み上げる村上の頭の中の陶芸史を初公開。陶芸の文脈を再考しつつ「芸術とはなにか」に迫る、村上隆キュレーションによる美術館初の陶芸展となる。

小嶋亜創《大壺》2014 直径34×52.5×口径21cm

小嶋亜創《大壺》2014 直径34×52.5×口径21cm

奈良美智《舌出しの子》2010 28×37×28cm ©Yoshitomo Nara

奈良美智《舌出しの子》2010 28×37×28cm ©Yoshitomo Nara

浜名一憲《壺》2015 直径39×35×口径14.5cm

浜名一憲《壺》2015 直径39×35×口径14.5cm

村木雄児《飴釉破れ壺》2016 直径36×31×口径16cm

村木雄児《飴釉破れ壺》2016 直径36×31×口径16cm

村田森《破れ壺》2013 90×65×48cm

村田森《破れ壺》2013 90×65×48cm

 

また本展の開催に際して、村上から下記のメッセージも到着した。

開催にあたって メッセージ:村上隆
現代陶芸に興味を持ち始めて、10 年以上の月日が経ちます。現代陶芸と同時に骨董も購入しながら、作家の特性やお店の特性を学び、かつ自分自身の嗜好性、問題意識も検証してきました。

購入し始めて5 年ぐらいしたあたりで自分でもお店をやってみたくなって、東京・中野でOz Zingaro という小さな陶芸、骨董のお店を開きました。継続的に展覧会をやっているわけではなく、自分が興味を持った作家さんの展覧会を、年間3 本から4 本だけやっています。Kaikai Kiki 本社がある元麻布のギャラリーでも、陶芸の展覧会を年に1 本開催しており、そこでは小野哲平、村田森、小嶋亜創などを扱ってきました。2016 年には大谷工作室を展示し、2017 年には尾形アツシさんを展示する予定です。

現代陶芸と付き合うなかでいろいろ感じてきて、最近のテーマは何かというと「越境」です。国にある固有の価値観を超えたり、ジャンルを超えたり、既存の価値観を超えてゆこうとすることに興味があります。

利休が日本に茶陶を伝播させた時、朝鮮から輸入したものを日本の茶器に仕立てていき、 新しい価値、様式を産み出したり、柳宗悦が民藝運動によって、無名の陶工の作為的ではないモノへの当時のモノの見方を転倒させたり、そういった日本国内での「越境」もありつつ、柿右衛門などがオランダを輸出先とし、日本人の価値観と外国の人間の嗜好の融合をして「越境」していったりと、歴史を振り返ると幾つかの変節点がありました。

今、日本の陶芸の世界はどうなっているのか?

近過去を振り返ると、戦前から戦中、戦後においては、北大路魯山人、加藤唐九郎、荒川豊蔵、八木一夫らの現代陶芸作家、民藝、そして骨董が入り乱れての文化発展がありましたが、それらは1980 年代後半のバブル経済の勃興と1990年代の崩壊によって、一旦消失しました。この戦前からの陶芸の世界観は大きなムーブメントでしたが、しかし、どれをとっても海を越えていくことはなく、日本国内での価値観一辺倒で、その中で縛られていたと言っても過言ではありません。

バブル経済崩壊後は、作家、お店ともにマーケットの異常な高騰に反省し、価格を極限まで抑えるようになり、ユーザーベースの価格帯や使いやすさの考えられた形状などが、10 年あまりの間にポピュラリティーを持ちました。1990 年から2010 年ぐらいまでの20 年間でその文化は大きな花を開き、2010 年以降はお隣の中国や台湾などへの輸出にも繋がってきています。

戦後の陶芸の世界は、アニメ・マンガと同じく、日本の国内で、質量、流通の形式、全てが熟成してきており、かつ煮詰まって来ているようにも思えます。まさに今、陶芸の世界は、アニメ・マンガと同じように、国外へ羽ばたく方向性の模索が始まった過渡期だと思います。

そういう陶芸の世界の変節点の裂け目を、現代美術家、村上の目、思考を通して、独特すぎる形で紹介したいと思います。今回チョイスするのは、僕が画商やコレクターとしての立場から、深いコミュニケーションを果たした作家さんたちです。海を渡っていく陶芸、もしくは日本の陶芸の引力圏内に残って更に深度を深めようとする陶芸。そういった変節点にある陶芸作品の未来の発展形を妄想してもらいたいと思います。


2016年12月 村上隆

 

イベント情報
村上隆のスーパーフラット現代陶芸考

会 期:2017 年3 月11 日(土)~5 月28 日(日)
開館時間:9:00−17:00(入場は閉館の30 分前まで)
休 館 日:月曜日(祝日の場合はその翌日)
ただし、4 月24 日(月)、5 月1 日(月)は開館。
会場:十和田市現代美術館
観 覧 料: 企画展+常設展セット券1000 円。企画展の個別料金は一般600 円。団体(20 名以上)100 円引。高校生以下無料。
主催:十和田市現代美術館
特別協力:Kaikai Kiki Co.Ltd.
後援:東奥日報社、デーリー東北新聞社、青森放送、青森テレビ、青森朝日放送、十和田市教育委員会
会場構成:磯見俊裕(トランスフォーマー)

関連イベント
オープニング・トーク
日時:3 月11 日(土) 10:30 – 16:30(予定)
司会進行:村上隆
*詳細は後日発表
会場:十和田市現代美術館市民活動スペース
料金:無料 *事前予約優先、要企画展

ワークショップ「大谷工作室の工作教室」
日時:4 月15 日(土)、16 日(日)
内容:出品作家の大谷工作室が講師となり、粘土や陶の造形を楽しむ教室。(内容は後日発表)
会場:市民交流プラザ【トワーレ】
料金:未定(材料費等)*要事前予約

スペシャル・トーク
日時:5 月13 日(土) 11:00 – 17:00(予定)
司会進行:村上隆
*詳細は後日発表
会場:十和田市民文化センター(予定)
料金:未定 *事前予約優先

学芸員によるギャラリートークツアー
日時:3 月25 日(土)、26 日(日)、4 月8日(土)、9日(日)
13:30 – 15:00
会場:十和田市現代美術館企画展示室〜十和田市商店街
料金:無料 *要企画展

*上記の他にも、会期中にイベントを予定しています。詳細は後日発表します。
*日時、ゲスト、内容等は変更となる場合があります。最新情報は随時ホームページでご確認ください。
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