「女子から女へ」「白じゃなくなって良かったこと」――赤い公園、キラーフレーズ連発の奔放トーク

インタビュー
音楽
2017.2.14
赤い公園・津野米咲、佐藤千明 撮影=西槇太一

赤い公園・津野米咲、佐藤千明 撮影=西槇太一

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今、赤い公園に何が起きているのか? これまで白一色だった衣装が、一気にカラフルに大変身。“にーしーろーでシングル出します!!”と銘打って、2月、4月、6月の連続リリースも大発表。しかもその第一弾曲「闇夜に提灯」は、バンドにとって初のドラマ主題歌。何もかもが新しい、絶賛進化中の赤い公園の現在と未来について、津野米咲(G)と佐藤千明(Vo)がゆるく楽しく語ってくれる。

――ツイッターをフォローさせてもらってるんですけどね。見ていると、4人は常に一緒にいる感じで、相変わらず仲のいいバンドだなあと。

佐藤:最近よく集まるね。オフでも会ってるもんね。

津野:オフにわざわざ集まって、飲んでる。酒が好きなんですよね。酒があるところに集まる。

佐藤:昨日もオフだったんですけど、ドラムの歌川と一緒にスタジオに入ってました。

津野:でも毎回会うたびに、(オフなのに)何やってんだろう?とは思う。

佐藤:あれ、私のオフは……って(笑)。

――そこで音楽の話、するんですか。

津野:結構するよね? 音楽好きの大学生がしゃべってるみたいな感じですけど。「あの人のあの曲、よかったよね」とか。あと、基本的に、自分たちの曲をほめちぎるという。

佐藤:「あれはいい曲だったよね~」って。デモが短いスパンで送られてくるので、会うたびにそのデモの話ができるんです。昨日も2曲送られてきて。

津野:作ってましたね。淋しいから、デモでも送ってかまってほしかった。

――どんな動機なんだ(笑)。曲作りの動機が「かまってほしかった」。

佐藤:つなげるからね。

津野:音楽はね。そういうことにしとこうか(笑)。

赤い公園・津野米咲 撮影=西槇太一

赤い公園津野米咲 撮影=西槇太一

――ちなみに「闇夜に提灯」は、どんな形のデモを送ったんですか。

津野:「闇夜に提灯」は、歌がない段階でタネみたいなものができて。歌がなかったから、デモは送ってないんですよ。しかもこれ、打ち込みじゃなくてスタジオで録ったんです。自分でドラムを叩いたりもするんだけど、あまりに速いテンポで作り始めちゃったから叩けなくて、歌川に叩いてもらってデモを作って。その時は歌ができてなかったんですけど、そのあとにみんなで曲作り合宿に行った時に歌詞を書いて、みんなでアレンジし直して、出来上がって、それを蔦谷(好位置/プロデューサー)さんに渡して……という感じでした。

――この曲は、ドラマ『レンタルの恋』主題歌の依頼があって、書き下ろしたもの?

津野:そうなんです。だからまず音のイメージを作って、歌詞がはまらなかったら作り直そう、みたいな感じだったんですけど。でもうまくはまりそうだったので、合宿所の隣のカフェみたいなところで、ずっと書いてましたね。

――ドラマ側から、何かリクエストはあったんですか。速いとか、明るいとか。

津野:“かっこいい感じで”という要望はありました。脚本をいただいて、むむむむって考えて、パッとひらめいて。

――あのドラマ、何ていうのか、独特じゃないですか。ラブストーリーで、七変化で、コメディで、謎の要素もあって……みたいな。

津野:ドラマが始まってから、見てて思ったのは、(主演の)剛力彩芽ちゃんがなんでも願いをかなえてくれて、とにかく可愛い。可愛ければ可愛いほど、話がちょっと怖いんですよ。そういうところが、赤い公園にも通じるところがあるのかな?と。やんちゃしてればしてるほど、明るければ明るいほど、怖い、みたいな感じかなと思いました。相性がいいのかもしれないって、こっちが言っていいのかわからないけど。

――いいと思います。映像ともばっちり合ってます。

佐藤:リズムと言葉のはまりが、すごくいいですよね。でも最初、<提灯 マイ・レディー>のところ、NG来るかな?とか、みんな言ってたんです。

津野:面白すぎるかなと(笑)。

佐藤:でもそこ、すごい好きだったから。そのまま歌えてよかった。<大暗中 want you>とかも、わかりやすく韻を踏むのが初めてだったから、歌ってて楽しかったです。

赤い公園・佐藤千明 撮影=西槇太一

赤い公園・佐藤千明 撮影=西槇太一

――言葉を選ぶ時には、そういうキャッチーさを意識して。

津野:それがキャッチーにつながるかは、全然わかってなかったんですけどね。メロディの区切り方として、小節の終わりをまたいでるメロディだから、そういう時はいつもメロディの節のままに、またいで言葉を使うことが今までは多かったんです。今回は、小節の区切りに忠実に言葉を書いてみました。遊び心だったんですけど。

――これは歌いたくなりますよ。

津野:うれしい。歌ってほしいんで。

佐藤:ただね、これは息継ぎを頑張らないと。

津野:そうだね。“want you”のところを歌ってくれる人をみつけないと。

佐藤赤い公園史上、一番息継ぎが難しかった曲です。

津野:最初はもうちょっと、テンポが遅かったんですよ。その時は息が吸えてたんですけど、「もっと上げて行こうぜ~」とか言った結果、“want you”を、お客さんに歌ってもらわないといけなくなった(笑)。なれの果ての、コール&レスポンスが生まれました。

――まったく意図していなかったと。

佐藤:でもうれしい。今まで、コール&レスポンスがなかったから。

津野:作ろうと思っても作れなかったからね。これぐらいがいいのかもね。だからもう、太字で。みんな“want you”を歌ってください。さもなくば千明が苦しい。

――太字にしました(笑)。それとこの曲の、そこはかとないお祭り感、和風感覚みたいなものは、一体どこから?

津野:日本人アゲは、意識しました。提灯なんで。現代の祭りというよりも、昔の――“おまつりさわぎ”という言葉があったりとか。とにかくお祭りというものは、ちょうどよく楽しいものではないというのが、自分の中ではあるので。もっとイッちゃってる、そういうイメージです。自分の都合をよそに、囃し立ててくるとか、そういうものに翻弄されている感じが出せたらいいなと思ったので。それはフェスというよりは、祭りだろうと。

――そこ大事ですね。で、歌詞のテーマとしては、それが恋愛だという。

津野:恋愛です。そんな世の中で、祭りのような世の中で、たった一人の人を見つけるということなので。タイトルで言うと、祭りのようなごみごみとした状態が、闇夜ということなんです。

――なるほど。そんな中に、ぽっと灯る提灯のような人を。

津野:探しているという。

――むちゃくちゃロマンチックですよ。

津野:ロマンチックですね。乙女ソングです。

赤い公園・津野米咲、佐藤千明 撮影=西槇太一

赤い公園津野米咲、佐藤千明 撮影=西槇太一

――そこも太字にしてみます。イケイケソングのようで、とってもロマンチックなのが、この曲のキモだと思います。千明さん、ドラマの感想は。

佐藤:いやぁもう、剛力彩芽ちゃんが可愛すぎて。ああいう謎がある子って、気になっちゃいますよね。ギャグなんだけど、秘めてるものがあるみたいな、ああいう女の子は永遠に追いかけちゃいますね。つかめない感じが、曲と通ずるところもあるし。レンタルしたい。……6万円はちょっと高いけど。

津野:ほかのレンタル彼女の、10倍なんだもんね。

佐藤:恋愛の勉強にもなりますよね。なるほどね~、こうやって男性を立てればいいんだって。

津野:レミちゃん(役名)が教えてくれる。「好きなものを好きと言って、何がいけないの?」だっけ? “それ言いてえ~”と思った。

佐藤:焼肉のたれ、飲まなきゃと思った。

――(笑)。見てない人には全然わからない。

佐藤:レミちゃん、いいんですよ。恋愛のお手本として見てます。

――ドラマを見て、赤い公園を知る人もいるでしょうし。良い入り口ですよ。

津野:知っていただけると、何よりです。

――で、そんな人がカップリング「放蕩」を聴いてビックリするという。こっちは相当にへヴィなロック・チューンになってます。

津野:この曲はですね、けっこう昔に作っていた曲なんですけど、大々的にアレンジを変えて、いつか何かに収録したいと思って、あたためていた曲です。今になって、楽器隊も歌もできることが増えていって、みんなでアイディアを出し合って詰めていったという、バンド感の強い楽曲になってます。歌詞の世界では、男性から女性へ歌いかける形になってますけど、どっちもあるだろうなと。女子が男子に対して、“放蕩してばっかね、あんた”と思うこともあるだろうし、どっちでもいいんですけど。しょうがないですよね、好きなんだから……という歌です。

――そんな君が可愛い、とか言っちゃってますからね。

津野:もう駄目だ。許しちゃってるんだもん。

佐藤:ほれたもん負けやな。

津野:最後に“僕を好きにして”って言っちゃうからね。自分を大切にしなよ!って思う。

赤い公園・津野米咲 撮影=西槇太一

赤い公園津野米咲 撮影=西槇太一

――自分で書いた詞に自分で突っ込む(笑)。いいと思います。

佐藤:振り回されたいんだろうね。

津野:これもちょっと和風な。お祭りというより、文豪が縁側で遠くを見ているイメージです。自分の好きな女に対して、つらつらと文章を書き連ねていってるような。文豪、言いそうじゃない? 「君が可愛い」とか。

佐藤:え~、言ってほしくな~い。……ぶんごうって何だ?

津野:小説家。

――何だと思ったの。

佐藤:えらいお侍さん?

津野:うはははは。全然世界観違うわ!

佐藤:犬連れて。西郷隆盛。

津野:西郷ね。文豪じゃなくて。

――“ごう”だけじゃん!(笑)

津野:あれだよ、太宰治的な。この曲は、自分なりの太宰感を出してみました。でもこんな恋をしている人が、今たくさんいると思います。これも、れっきとしたラブソング。

――僕、赤い公園は、いつもラブソングだと思って聴いてますよ。字面は違っても、感情はラブソング。

津野:年々ですね。昔はもうちょっと字面が違って、ラブソングっぽくなさすぎたのか。

佐藤:そうだね。ラブの懐が深い感じだった、昔は。恋愛というより、人間愛みたいな。今はもうちょっと、寄り添うというか。

津野:アルバムで言うと、去年3枚目を出して、4枚目のタームに入ってるんですよ。そうなってから、自分の中の“女”を解放しようと思っていて。

佐藤:いいことやね。

――それは聞き捨てならないフレーズですよ。もっと詳しく。

津野:過去作を並べてみて、“もっと女臭のするものが作りたい”と。よく言えば乙女、悪く言えば女臭。そういうものを作っていきたいと思っていて。普段は自分の中に、あんまりモードというものはないんですけど、今は“女を解き放つ”をテーマに、前作を出したあたりから過ごしてます。だからきっと、「闇夜に提灯」も書けたんだと思います。

――ああ~、なるほど。

津野:ここからたぶん、どんどん女が爆発していくんだと思います。

佐藤:楽しみ。

津野:もうね、女子じゃないんですよね。我々は。ちょうどさ、女子と女が半々で、女が6割を占めてきたみたいな感じじゃない? 年齢的にも。

佐藤:そうねえ~。

津野:そうなって、青春を振り返ったりした時に、また考え方が違ったりとかして。今はとにかく作るのが楽しいです。

――楽しみです。このあと、2月、4月、6月と、シングル連続リリースということがすでに発表されているわけですけど。ぶっちゃけ、どこまでできてるんですか。

津野:4月のA面(「恋と嘘」)までできてます。超可愛いっす。

佐藤:いいよね~。

津野:全然違うものができてきてます。でもそれも、女臭でつながっていて。

赤い公園・佐藤千明 撮影=西槇太一

赤い公園・佐藤千明 撮影=西槇太一

――そうそう、最後に、色のことを聞いておかなきゃ。衣装が今までの白から、一気にカラフルに変身したことは、一大決心なのか。それとも、もっと軽やかな感じなのか。

津野:自分たちの中では、軽やかな感じでした。でも現象としては、白を大事にしてきてくれたお客さんが少なからずいらっしゃいますので、その人たちに対して思うところはありましたけど。でも赤い公園を7年やってきて、20代半ばにさしかかって、自分たちで自分たちを守るとか、そういうことをもうやめてもいい頃かな?と思いましたね。もう何を着たって大丈夫。(これまでは)白で守ってたんだと思う。

――はい。なるほど。

津野:で、今回こんな派手な感じになりましたけど。白縛りをやめて、その時々、曲によって服を変えていったり、よりニュートラルな形で音楽が届くといいなと思ってます。

佐藤:前々からね、お話はちらほらとあったんで、少しずつ覚悟を決めてたのかもしれない。

津野:何回か、タイミングがあったんですよ。

佐藤:でも、まだ白がいいなって。

津野:それが今回は、“イエーイ!”みたいな感じだったよね。

佐藤:白って、汚しちゃうし。

津野:カレーうどんこぼすから。千明、ゴミ袋をかぶらされてたし。

佐藤:ゴミ袋に首と両手を通す穴をあけて、お弁当食べてました。

津野:それなのに、馬鹿じゃないの?っていうぐらいこぼすんですよ(笑)。でも今回は全然目立たないの、こぼしても。色ってすごいんだなーと思った。

――それがカラフルにしてよかったところ?(笑)

佐藤:あと、さっき撮影していただいた時にも、寒くないという。

津野:白で、布が薄いものを好んで着ていたので。どんどん私服っぽくしていこうというテーマがあって、私なんかジャージなんですけど。みんな長袖になったから、冬は冬の服を着れるという。

佐藤:あったかいよ~。うれしいね。

――あったかいとか、汚れが目立たないとか。しょうがないなあ(笑)。

津野:大事です!

佐藤:白じゃなくなって淋しいなと思っているお客さまには、このおかげで、冬に赤い公園が風邪をひかないぞ!と思っていただければ。

――わかりました。2017年、赤い公園は、今までとは違うモードで走り出すぞということで。

津野:何も私たちを止めるものはないよね。もう一回言いますけど、“イエーイ!”って感じです。いろんな女を用意してますんで、お楽しみに。レンタルとは言わず、お買い求めください。
 

取材・文=宮本英夫 撮影=西槇太一

赤い公園・津野米咲、佐藤千明 撮影=西槇太一

赤い公園津野米咲、佐藤千明 撮影=西槇太一

リリース情報
シングル「闇夜に提灯」
2017年2月15日発売
■初回限定盤(CD+DVD)
初回盤

初回盤

UPCH-7221 ¥1,890(税込)/¥1,750(税抜)
■通常盤
通常盤

通常盤

UPCH-5896 ¥1,260(税込)/¥1,167(税抜)
【CD収録曲】
M1.闇夜に提灯 TBS テッペン!水ドラ!!『レンタルの恋』主題歌
M2.放蕩
【初回限定盤DVD】
●「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016 Live映像」
・サイダー ・14 ・NOW ON AIR ・西東京
●赤い公園ドキュメンタリー映像「情熱公園」(10分~15分程度)

シングル「恋と嘘」
4月19日発売 
・初回限定盤(CD+DVD):UPCH-7247 ¥1,922(税込)/¥1,780(税抜)
・通常盤:UPCH-5903 ¥1,260(税込)/¥1,167(税抜)
【CD収録曲】
M1.恋と嘘
M2.スーパーハッピーソング

 

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