オレリー・デュポン パリ・オペラ座バレエ団芸術監督が語る、未来の黄金時代を担う期待のダンサー達

レポート
クラシック
舞台
2017.2.22
パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)

パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)


パリ・オペラ座バレエ団オレリー・デュポン芸術監督が2月22日から開催される『オレリー・デュポンの「ボレロ」東京バレエ団〈ウィンター・ガラ〉』に出演するため来日。3月2日から始まる日本公演の見どころ、自身の芸術監督としての考えや昨年12月に新たにエトワールに任命されたレオノール・ボラックやジェルマン・ルーヴェをはじめ、新たな時代を担う新世代のダンサーなどについて語った。

パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)

パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)

■芸術監督として重要視する「古典・質・コンテンポラリー」

昨年パリ・オペラ座バレエ団の芸術監督に任命されてから1年が経ちました。このたび芸術監督として日本に戻ってこられることをとても幸せに思っています。この東京ツアーは、私が芸術監督に就任してから初めてのものとなります。

芸術監督就任にあたり、私が考えたことは作品に敬意を払うこと、バエレ団の質を上げること、コンテンポラリーを踊れるダンサーであること、です。今日のダンサーにとって、コンテンポラリー・ダンスを踊ることは非常に重要です。ダンサーは複数の言語を操るように、古典とコンテンポラリーを踊れるようにならなければなりません。コンテンポラリー作品を通し、様々な国際的な振付家と仕事をする機会を得、観客にも現代のダンスに対する視点を与え、ダンサー自身も成長するものと思っています。また私自身、パリ・オペラ座バレエ団の芸術監督ではありますが、ダンサーとしての活動も続けています。今でも毎日バレエ団のダンサー達と一緒にクラスレッスンを受けています。これはダンサー達の長所を発見する機会でもあり、プログラムを組む際、ダンサーを選ぶことにも役立っています。

さらに私の仕事のひとつにエトワールの任命があります。選ぶ際に重要なのはまず舞台の上での踊り。才能のあるダンサーは舞台上で踊らせればすぐその力を発揮します。その見極めには3時間とかからないでしょう。加えて人間的な資質も大切です。学ぶ態度、才能、そして知的であることです。今現在良い踊りを見せるだけではなく、それを15年経った後でも見せることができるような知性――自らのキャリアを進歩させていくことができる力を持ったダンサーであることが重要だと思います。

パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)

パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)

■オペラ座の未来を担う新世代のダンサーのお披露目

この公演は新しい世代のダンサーを皆様にご紹介できる機会となりました。これからしばらくエトワールの引退が続くことが予想されており、その後の世代を選ぶことも人選を誤ってはならない、責任ある大切な仕事です。新しい世代のダンサーにチャンスを与えていけることを、嬉しく思っています。

今回の公演はエルヴェ・モローがケガで降板となりましたが、新しいエトワールをお披露目できる機会となりました。昨年12月に任命したエレオノール・ポラックとジェルマン・ルーヴェです。この2人は日本の皆さんの前で、初めてエトワールとしての舞台を踏むこととなります。2人ともオペラ座バレエ学校の出身。熱心で、ケガをしたときも負けない強いパーソナリティや、アドバイスにも真摯に耳を傾ける姿勢を持っています。身体的にも美しく、2人で踊ることで良いパートナーになっていくことと思います。オペラ座を代表するダンサーと言えるでしょう。

エルヴェ・モローの降板でジェルマン・ルーヴェは私と共に「ダフニスとクロエ」を踊ります。彼にとって芸術監督と踊るということが最初はプレッシャーのようでしたが、次第に伸びてきています。

またマチュー・ガニオもケガで降板となりました。「白鳥の湖」の稽古中にふくらはぎにケガをしたという次第です。彼は日本に来ることをいつも楽しみにしていたため、今回は非常にがっかりし、寂しそうにしています。

マチュー・ガニオの降板に伴い、ユーゴ・マルシャンがアマンディーヌ・アルビッソンと踊ります。これは私の人選です。ユーゴ・マルシャンはジェルマン・ルーヴェと同世代で、2人とも23歳。共に将来を非常に有望視されています。私は彼らが、ヌレエフが選んだエトワールたちが築いた黄金時代に匹敵する、新しい時代を担うダンサーになってほしいと期待しています。

パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)

パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)

■古典とコンテンポラリー。それぞれ音楽性に富んだプログラム

今回の日本公演のプログラムは、私の前任者であるバンジャマン・ミルピエが準備していたもので、私自身が選んだプログラムの上演は2017年9月からになります。しかしプログラムを作ったのはミルピエですが、私がキャスティングし、稽古も行いました。

今回上演するプログラムの共通点を挙げれば、それは音楽性と言えるでしょう。

ラコット版「ラ・シルフィード」。そして「グラン・ガラ」として、ジョージ・バランシン振付の「テーマとヴァリエーション」、バンジャマン・ミルピエ振付「ダフニスとクロエ」、ジェローム・ロビンス振付の「アザーダンス」を上演します。

「ラ・シルフィード」は古典のロマンチックバレエで、ダンサーたちも踊るのが好きな作品です。パが多く、身体の使い方もほかの古典とは違い覚えることが多いのですが、稽古を積んで皆様の前で披露するのを楽しみにしております。

「グラン・ガラ」で上演される「ダフニスとクロエ」は私とエルヴェ・モローのために振り付けられた作品で、ミルピエと共につくりました。私はパリ・オペラ座バレエ団では芸術監督ですので舞台には立ちませんが、今回のツアーでは私自身もダンサーとして出演します。ミルピエは良いエネルギーに満ちている人で、制作は楽しく明るく、とても良い雰囲気の中で行われました。舞台からその暖かな雰囲気があふれているのではないかと思います。素晴らしい作品なのでどうぞお楽しみに。

「アザーダンス」はロビンスらしい精密な振り付け作品で、非常に難易度の高いものです。「テーマとヴァリエーション」ですが、実は私はキューバに行く機会があり、その際にアリシア・アロンソにお会いしました。この作品が彼女のために振り付けられたというのはそれまで知らなかったのですが、彼女にはいろいろ質問しましたので、それが活かされていると思います。

パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)

パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)

■ダンサーを育てる作品「ボレロ」

2月の東京バレエ団との公演でモーリス・ベジャールの「ボレロ」を踊ります。この作品は私にとってプレゼントだと思っています。なぜなら踊るためにはベジャールやジル・ロマンの許可が必要という、踊ること自体が難しいものだからです。

そしてこの作品はダンサーにとって、踊ることでそれまでのダンスが変わってしまうようなインパクトがあります。最初は小さな音の音楽が、次第に大きくなり、それとともにダンサーも最後はトランス状態になり、身体のコントロールが効かないような感覚に陥るのです。普段ダンサーは身体をコントロールするために稽古を積み重ねて舞台に立つのですが、まったく逆のことをしなければならない。アーティストに大きな経験を与え、育てる作品です。この独特の感覚を味わうため、すべてのダンサーが一生に一度はこのボレロを踊れればいいのにと思いますが。

いよいよ公演が迫っております。パリでダンサー達は今、非常に熱心に稽古をしています。皆熱意を持って、日本で踊ることを楽しみにしています。どうぞご期待ください。

パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)

パリ・オペラ座バレエ団芸術監督 オレリー・デュポン(撮影:西原朋未)

公演情報
オレリー・デュポンの「ボレロ」東京バレエ団〈ウィンター・ガラ〉

日時:2月22日(水)19:00/23日(木)19:00
会場:Bunkamuraオーチャードホール
出演:
東京バレエ団
「ボレロ」/オレリー・デュポン
「中国の不思議な役人」/木村和夫(中国の役人)
「イン・ザ・ナイト」(東京バレエ団初演)
公演サイト:http://www.nbs.or.jp/stages/2016/winter/index.html
パリ・オペラ座バレエ団

■演目・日程:
<グラン・ガラ>2017/3/9(木)~3/12(日)
「ラ・シルフィード」2017/3/2(木)~5(日)
■会場:東京文化会館大ホール
■問合せ:NBS/公益財団法人日本舞台芸術振興会 03-3791-8888
■公式サイト:http://www.nbs.or.jp/stages/2016/parisopera/index.html

 
■出演者変更内容

「ラ・シルフィード」
●3月3日(金)18:30
ジェイムズ:マチュー・ガニオ → ユーゴ・マルシャン
パ・ド・ドゥ:マリーヌ・ガニオ、マルク・モロー → マリーヌ・ガニオ、アルチュ・ラヴォー
●3月4日(土)13:30
パ・ド・ドゥ:ジェニファー・ヴィソッチ、パブロ・レガサ → ジェニファー・ヴィソッチ、マルク・モロー
●3月5日(日)15:00
ジェイムズ:マチュー・ガニオ → ユーゴ・マルシャン
パ・ド・ドゥ:マリーヌ・ガニオ、マルク・モロー → マリーヌ・ガニオ、アルチュ・ラヴォー

 
〈グラン・ガラ〉
●3月9日(木)18:30
「テーマとヴァリエーション」ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ → ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン
「ダフニスとクロエ」ダフニス:エルヴェ・モロー → ジェルマン・ルーヴェ
「アザー・ダンス」マチアス・エイマン → ジョシュア・オファルト
●3月
10日(金)18:30
「ダフニスとクロエ」ダフニス:ジェルマン・ルーヴェ → マルク・モロー
●3月11日(土)13:30
「テーマとヴァリエーション」ヴァランティーヌ・コラサント、ジョシュア・オファルト → ヴァランティーヌ・コラサント、フランソワ・アリュー
「ダフニスとクロエ」ダフニス:エルヴェ・モロー → ジェルマン・ルーヴェ
●3月11日(土)18:30
「テーマとヴァリエーション」ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ → ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト
「ダフニスとクロエ」ダフニス:エルヴェ・モロー → ジェルマン・ルーヴェ ドルコン:マルク・モロー → ジェレミー=ルー・ケール
●3月12日(日)15:00
「ダフニスとクロエ」ダフニス:ジェルマン・ルーヴェ → マルク・モロー

 
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