日本初の大回顧展『シャセリオー展』が開幕 知られざるフランス・ロマン主義の異才

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上野・国立西洋美術館『シャセリオー展』入り口の様子

上野・国立西洋美術館『シャセリオー展』入り口の様子

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19世紀のフランスに、16歳という若さでサロンで認められ、37歳で早逝したロマン主義の異才の画家がいたことを、日本人の私たちはあまり知らない。テオドール・シャセリオーの日本初となる大回顧展『シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才』(2017年2月27日~5月28日)が東京・上野の国立西洋美術館で始まった。シャセリオーとは、一体どんな画家なのだろうか。

テオドール・シャセリオー <カバリュス嬢の肖像> 1848年 カンペール美術館

テオドール・シャセリオー <カバリュス嬢の肖像> 1848年 カンペール美術館

 

日本初の大回顧展で知る“早熟の天才”

師であった新古典主義の巨匠ドミニク・アングルには「この子はやがて絵画界のナポレオンになる」と、さらにドラクロワには「あれこそが画家であった」と言わしめたシャセリオー。16歳でサロンデビューしその画才が認められ、その後はロマン主義に傾倒し、アングルと決別。独自の作風を極めギュスターヴ・モローやピュヴィス・ド・シャヴァンヌら、世紀末の象徴主義にも多大な影響を与えるが、37歳で病死した。

テオドール・シャセリオー <放蕩息子の帰還> 1836年 ラ・ロシェル美術館

テオドール・シャセリオー <放蕩息子の帰還> 1836年 ラ・ロシェル美術館

テオドール・シャセリオー <アポロンとダフネ> 1845年 パリ、ルーヴル美術館

テオドール・シャセリオー <アポロンとダフネ> 1845年 パリ、ルーヴル美術館

その短い人生の中で残されたとされる作品数は、約260点あまり。本展では、フランス・ルーブル美術館の所蔵品を中心に、絵画約40点、水彩・素描約30点、版画約10点、写真や資料などによってシャセリオーの画業全体を紹介する。さらに、モローやシャヴァンヌら関連の深い作家の作品を含め、約110点から19世紀・フランス絵画の世界を展覧する。

テオドール・シャセリオー <気絶したマゼッパを見つけるコサックの娘> 1851年 パリ、ルーヴル美術館(ストラスブール美術館に寄託)

テオドール・シャセリオー <気絶したマゼッパを見つけるコサックの娘> 1851年 パリ、ルーヴル美術館(ストラスブール美術館に寄託)


ギュスターヴ・モロー <牢獄のサロメ> 1873-76年 東京、国立西洋美術館(松方コレクション)

ギュスターヴ・モロー <牢獄のサロメ> 1873-76年 東京、国立西洋美術館(松方コレクション)

ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ <海辺の娘たち> 1879 年頃 パリ、オルセー美術館

ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ <海辺の娘たち> 1879 年頃 パリ、オルセー美術館

 

香り立つエキゾチシズムの魅力

シャセリオー芸術の魅力は、独特のエキゾチシズムにある。それは、画家自身の生い立ちにも秘密があるようだ。

1819年、カリブ海のイスパニョーラ島のエル・リモン (現ドミニカ共和国) でフランス人の父と地主の娘である母のもとに生まれる。その容姿には少々複雑な思いがあったようで、写真は残されていない。しかし、16歳で描いた自画像には、聡明な眼差しの気品漂う姿が描かれ、観る者を惹きつける。

テオドール・シャセリオー <自画像> 1835年 パリ、ルーヴル美術館

テオドール・シャセリオー <自画像> 1835年 パリ、ルーヴル美術館

実際、その優雅な振る舞いや思慮深い話ぶりで、女性からもモテたようだ。当時のパリ一番の美女と言われた女優アリス・オジーに恋人に選ばれたというエピソードからも、画家の魅力的な人柄がうかがえる。

テオドール・シャセリオー <泉のほとりで眠るニンフ> 1850年 フランス国立造形芸術センター (アヴィニョン、カルヴェ美術館に寄託)

テオドール・シャセリオー <泉のほとりで眠るニンフ> 1850年 フランス国立造形芸術センター (アヴィニョン、カルヴェ美術館に寄託)

新古典主義から学んだ確かな描写力と、ロマン主義のドラマチックな表現を併せ持った画家に、さらなる独自性を持たせたのはアルジェリアへの旅だった。オリエントの地で出会った人々や風景を描いた作品からは、異質な他者へのエキゾチシズムではない、ある種の共感を持ったノスタルジーが感じられる。

テオドール・シャセリオー <コンスタンティーヌのユダヤ人女性> 1846-56年 パリ、エティエンヌ・ブレトン・コレクション

テオドール・シャセリオー <コンスタンティーヌのユダヤ人女性> 1846-56年 パリ、エティエンヌ・ブレトン・コレクション

テオドール・シャセリオー <コンスタンティーヌのユダヤ人街の情景> 1851年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館

テオドール・シャセリオー <コンスタンティーヌのユダヤ人街の情景> 1851年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館

 

失われた傑作、大壁画の全貌が蘇る

シャセリオーは油彩画などの他にも、数々の公共建築物の天井や壁の装飾にも若くして取り組んだ。その代表作と言われるのが、会計検査院の吹き抜けの階段を飾った大壁画だ。しかし、1871年のパリ・コミューンでこの建物は破壊され、長い間パリの廃墟と化す。やがて親族やゆかりの画家たちが中心となって、この壁画の救出がなされ、再びシャセリオー芸術が注目された。

本展では、残された貴重な資料や写真、素描などから、この大壁画の全貌に迫る。また、他の教会壁画も実物大のイメージ画像を用いるなど、臨場感ある展示となっている。

ブラウン・クレマン社 <会計検査院の建物のためのシャセリオーの装飾壁画の断片> 1890年 パリ、オルセー美術館

ブラウン・クレマン社 <会計検査院の建物のためのシャセリオーの装飾壁画の断片> 1890年 パリ、オルセー美術館

テオドール・シャセリオー <東方三博士の礼拝> 1856年 パリ、プティ・パレ美術館 他

テオドール・シャセリオー <東方三博士の礼拝> 1856年 パリ、プティ・パレ美術館 他

国立西洋美術館とルーヴル美術館が学術交流を通じて長年温めてきた本展。シャセリオーの描くメランコリックな世界が、じわじわと不思議な魅力を残すだろう。

資料から壁画のための習作を再現

資料から壁画のための習作を再現

 
イベント情報
シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才

会期:2017年2月28日(火)~2017年5月28日(日)
会場:国立西洋美術館
時間:9:30~17:30(最終入場時間 17:00)
毎週金曜日:午前9時30分~午後8時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 ※ただし、3月20日、3月27日、5月1日は開館 3月21日(火) 
観覧料:一般 1,600円(1,400円) 、大学生 1,200円(1,000円) 、高校生 800円(600円)
※( )内は前売・団体料金 ※団体料金は20名以上 ※中学生以下は無料 
※心身に障害のある方とその付添者1名は無料

展覧会特設サイト:http://www.tbs.co.jp/chasseriau-ten/
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