自己最長ツアー『LIVE STYLE 2016-2017』に見た、安室奈美恵というパフォーマーの矜持

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naamie amuro LIVE STYLE 2016-2017

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naamie amuro LIVE STYLE 2016-2017
2017.3.30 国際フォーラム・ホールA

デビュー25周年を迎えるアーティストが、過去最長かつ最多本数のツアーに臨むということがかつてあっただろうか。しかも、昨年(2016年)8月にスタートし、当初88公演だったツアーに追加公演が発表され、全100本という驚異的なロングツアーと相成った。そこには安室奈美恵の徹底した“歌とダンスというパフォーマンスのみで勝負する”、アーティストとしての覚悟と矜持が示されている。

ここでは、3月30日の東京国際フォーラムAでの模様をレポートする。会場には90年代からの生粋のファンが親子で参加していたり、直近の衣装のコスプレをしたモデルばりのスタイルの女性、おしゃれなOLもいれば、特攻服姿の男性、サラリーマン風の男性もいる。いわばここは普通の社会。安室奈美恵のファンベースの厚さを改めて思い知る。

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オープニングは銀河系を思わせる映像がスクリーンに投影され、そこに幾何学模様のマッピングも重なり、モダンなテクノロジーがソリッドなイメージを増幅させる中、ステージ上の最も高い位置のセンターから本人が登場。会場は悲鳴の嵐だ。実際、未来の扉から登場したような彼女が背筋を伸ばして立っているだけで何か神々しい。アップにしたヘアスタイル、ブラックのビスチェとパンツにシルバーのスパンコールをあしらった衣装もどこか戦士のよう。スピーディな照明のスイッチングでステージ上の人物が突如現れたり消えたりする演出もドラマティックだ。そしてオープナーはハードでソリッドな「Stranger」。USのR&Bやトップトレンドとシンクロする音楽性を独自に昇華する彼女の現在のモードは、当然、エレクトロニック・ダンス・チューンがメイン。BPMも速い。こんなテンポで踊り続けるアーティストは、世界広しと言えどもなかなか存在しないだろう。スリリングなスピードで展開するステージを見ていて、ふと昨年のジャネット・ジャクソンの復活来日公演を思い出した。ジャネットらが生み出したボーカルとダンス・パフォーマンスのスタイルを安室奈美恵も踏襲しているのは確かだと思う。しかしもう随分前から彼女のステージは、ゼロコンマ何秒のズレも許されないクオリティにある。これはやはりアジアのエンタテイナーならではのストイックさだと感じた。

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一気にアッパーなナンバーのブロックを駆け抜け、衣装替えの転換。二段構えの垂直のセット、6面の縦長のビジョン、プロジェクションマッピングを最大限、効果的に使った演出も非常にクールで大人っぽい。マジックを見ているように、すでにブラックに原色を配したミニドレスの安室奈美恵、そしてダンサーがポジションについて、軽快なガールポップ「Show Me What You’ve Got」に会場中がクラップで応える。それにしても高さのあるシンプルなセットの左右・上下の移動とステップは、ハードなダンスと同じぐらいスリリング。ダンサーとの息の合った“演技”に近いそれは、ポップで明るい曲調でありながら、実はとても難易度の高いものだと思う。もちろん、そんなことは微塵も感じさせず、「Contrail」や「Hands On Me」といった多様なビートを持つナンバーを披露していく。世界の音楽的なトレンドと呼応したトラックは音数が少なく、ビートと選ばれた音色のミニマルな世界観。当然、コレオグラフの精度や新しさも更新されている。改めてアルバム『FEEL』(2013年)、『_genic』(2015年)のアプローチがいかに“早いもの”だったのかも、ライブで痛感した。

naamie amuro LIVE STYLE 2016-2017

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3度目の転換後は迷彩柄のミニドレスに、アルバム『PLAY』のジャケット写真を思い起こさせるポリス帽。曲ももちろん「Hide & Seek」! 思えばもう10年前にリリースされたナンバーで、しかもトレンドに左右されそうなハードな曲調だが、彼女のパフォーマンスの中でもむしろ普遍的なシーンになっていたことに感動した。そこからゲームオーバーの効果音を思わせるイントロを持つ「Time Has Come」へ。Aメロの高度な展開からサビへの跳躍、会場の「Say What, say what, say what?」のコールもさらにお互いを鼓舞する。そこから女性ダンサーのソロパートに突入し、彼女たちの人気の高さも改めて安室奈美恵のライブならではの温かさを感じる部分だ。そしてダンサーが一旦はけると、なんと懐かしい「Baby Don’t Cry」が披露された。歌手として客席と向き合うこの曲は、ストイックなライブの中ではある種、人間・安室奈美恵と触れ合える貴重な時間。会場を見渡し、手を振る彼女の笑顔が言葉より多くのものを語るのだから。

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4度目の転換後は赤いラメのアシメトリーなオフショルダーのトップスをウエストマークした着こなしがスタイリッシュ。自然の景観を映すビジョンを背景にNHKのリオ五輪テーマソングとして2016年の夏を彩った「Hero」を伸びやかに歌い上げる。かと思えば、一転して90’sフレーバーのあるコケティッシュな「Mint」では、一瞬エアロビを思わせるアクションも盛り込みつつ、複雑なダンスが展開。また、映画『デスノート Light up the NEW world』のキャラクターや映画の場面が大写しになり、禍々しいムードが漂う中、劇中歌でもある「Fighter」を披露。そして本編ラストはフレンチ・エレクトロなテイストもある「Scream」が、“ワーオ!”のシンガロングとともにピークを作り上げていった。「Mint」以降、「Fashionista」なども含むこのブロックは現在進行形のダンスチューンが居並ぶのだが、どこか世界規模のロックバンドがもたらすカタルシスとも同質のダイナミズムを感じ取ったのも確か。それはやはりどこまでも安室奈美恵というパフォーマーが自らのフィジカルパワーを第一義に表現活動をしているからなのだと思う。

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アンコールで登場した彼女はツアーTシャツにデニムのミニスカートで、よりキュートに見える。ティーンポップ的な「Chit Chat」の演出で、ダンサーから集めたパワーをかめはめ波(!?)風に客席に放ち、巨大なバルーンが場内に投入、それが弾けて中から小さなバルーンが飛び出す演出も大いに会場を沸かせた。大団円は彼女自身の誕生日に贈る「Birthday」。ホールライブという物理的な距離の近さをさらに親密なナンバーで縮め、アットホームですらある空間を作り上げたのは彼女とファンの信頼感を表していた。手は届かないけれど、現実に存在する憧れの存在であり続ける安室奈美恵。全曲を歌い終え、大きな声で「今日はどうもありがとうございました! また遊びにきてね! バイバイ!」とだけ言い残して、笑顔でステージを後にする。彼女のステージに触れると、背筋が伸びる。そしてその全身全霊を注ぐ姿にまた会いたくなるのだ。

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作品について特にプロモーションを行なうこともない最近の彼女だが、確実に現在のトップトレンドとリンクした楽曲を提示し、Queen of Popとして最前線を走ることをライブという現場で証明する。いやー、個人的にはカルヴィン・ハリスが登場する今年のサマソニに出演して、洋楽好き、EDM好きをぶっ飛ばす様を妄想したりしてしまうのだが……そんな日が来ることを願わずにいられない。


取材・文=石角友香

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