『オワリカラ・タカハシヒョウリのサブカル風来坊!!』 瑳川竜が語る『ウルトラマン超闘士激伝』に込められた“灯をつなぐ気持ち”
なぜ、ウルトラマンエースがギャグキャラになった?
撮影=大塚正明
タカハシ: 当時『激伝』で怪獣を覚えたところも少なからずあって、知らない怪獣をそこで覚えるんですよね。だからねじれた知識もあるんです。「ウルトラマンエースはギャグキャラ」という(笑)。どっちかというと本編はシリアスなのに、『激伝』では凄い明るいやんちゃなキャラ。だから今でもエースを見ると「こいつ本当はひょうきんなんだな……」って思っちゃうんですよ。
瑳川:キャラクター的にエースがああなのは、まあコメディリリーフが欲しかったってのがあるんですけど、サンプルにしたのは『ウルトラマンタロウ』の、テンペラー星人の回の変身前なんですよね。
タカハシ:ウルトラ兄弟でバーベキューやってる?
瑳川:そうそう。あの時の5人のキャラクターが、兄弟にするためにそれまでよりキャラ立てを若干オーバーにしてるんですよ。あそこのエースが、凄い短気でトンパチでね(笑)。あの並びがいいかなって感じてて。あの短気ですぐ突っかかるエースがいいなって思ったから『激伝』のエースはああなったんですよ。テンペラー星人の回に合わせてるんですよね。
タカハシ:それ、すごい話ですね……!
瑳川:そういう風に原作を持っていったら、マンガ担当の栗原先生が「ギャグ漫画とかを描いていたので、顔を崩したりできるヒーローがいると凄い書きやすいんですけど、ウルトラマンは崩せないですよね……?」っておっしゃって。さすがに初代マンやセブンは崩せないけど、「エースだったら良いんじゃないですか」って(笑)。そうしたらああなったんです。
タカハシ:あれも、他の人は絶対やらないデフォルメの仕方ですよね。マカロニほうれん荘みたいな。ところで、僕、実は今日持ってきたんですよ。子供の頃に集めた『超闘士激伝』のカードダスと人形。コレとか凄いですよね! 女ヤプールが歯医者とか、ユニタングの女子大生軍団とか!こういうのも瑳川先生が考えてるんですか?
瑳川:そうですね、基本的にラフ画は全部僕が描いているので。
撮影=大塚正明
撮影=大塚正明
撮影=大塚正明
撮影=大塚正明
タカハシ:なんと! 凄いなぁ……。あと、人形ではこのジャンボキングとマザロンが合体するやつがお気に入りでした。あとアリブンタにギロン人が乗るやつとか。
瑳川:やっぱり子供からしたら鎧がないとハズレ、っていう印象があると思ったんです。だからゴムだけのやつでも遊べるようにしましょうと。合体できたり乗ったり出来るようにしてね。
タカハシ:これは、子供の頃めちゃくちゃ嬉しかったですね。合体したり、バラバの武器を他の超獣が持ったりとか。
瑳川:コレも鎧と同じ考えですね。武器を持たなければ本編の本物と同じ人形になる、っていうね。
タカハシ:あと闘士ゼットンもお気に入りです。今回の原画展でも原画が展示されてますけど、ゼットンが助っ人として出て来るシーンは、最高ですよね。あそこで1つのピークを迎えます。「闘士怪獣」じゃなくて、「闘士宇宙恐竜」だって、バルタン星人Jr.に突っ込まれるのも良いんですよ!あそこでゼットンが強くなってるっていうのがいいですよね。
瑳川:アレはジャンプ流ですよね、ライバルがパワーアップして帰ってくるっていうのは。
タカハシ:しかも、実はメフィラス大魔王が協力を頼んでいたっていうのが、もうね……。衝撃的だったのは、メフィラス大魔王っていうのは凄い人気が出たキャラクターだと思うんですけど、それを殺すっていうのが……アレはどういう流れだったんですか?
瑳川:ちょうどOVAを一本作れるって話になったんですけど、ただ商品もたくさん出てるから、漫画の話を1からやってもしょうがないので、オリジナルの新作をやろうとなったんですよ。だったら『劇場版ドラゴンボール』のように一つ大きなトピックがあったほうがいいな、と。
タカハシ:なるほど。でも、『ドラゴンボール』とは死の重みが違うじゃないですか、向こうは復活できるけど、メフィラスは劇中では復活できなかった。
瑳川:それとあれですよ、無印の『トランスフォーマー』の映画版でコンボイが死ぬじゃないですか。
タカハシ:司令官移り変わりのやつですね?
瑳川:そうそう、ああいう「ミッシングリンクを埋めるためにはOVA版が必要なんだよ」というものにしたかったんですね。
タカハシ:やっぱり少し引いた目線から作品世界を見つめているんですね。
瑳川:最初の設計図は俯瞰でやって、書くとなったら中に入りこんでやりますけどね。
タカハシ:企画は担当さんやおもちゃ会社とかみんなで話し合って地図を作るんですか?
瑳川:そうですね、二~三ヶ月に一回新作が出るので、それに合わせてどういう話にするか、何のおもちゃを出すか。
タカハシ:おもちゃのラインナップとストーリーは同時進行ですか?
瑳川:同時進行ですね。ただ、やってるうちにマンガとのスピード感がずれてくるんですよ。二ヶ月に一回おもちゃが出ると、月刊だと書ききれないんですよね。だから飛ばしたストーリーもありますしね。
撮影=大塚正明
頑張ってウルトラマンの灯をつないだんだって気持ち
タカハシ:ちょっとここで、マンガ原作の話として『ダイの大冒険』のお話も少し聞かせてもらえたらと思うんですけど。最近思ったんですよ。小学生の時はダイが好きなんです。中学に入るとヒュンケルが好きになって、高校生大学生になるとポップに共感して好きになって。そして、大人になるとクロコダインが好きになるという(笑)。あれは完璧ですよね。あらゆる年代で「こいつだよ!」って思うキャラが居るっていう。
瑳川:あははは!
タカハシ:昨日読み返したらクロコダインが本当に良くてね……。
瑳川:年をとるとザボエラの気持ちがわかってきたりね。
タカハシ:『ダイ』は伏線の回収、完璧だと思うんですよ。ミストバーンが大魔王バーンの体を守ってるっていうのは始まった段階で考えていたんですか?
瑳川:そうですね、始まった段階でバーンのあの設定は考えていました。
タカハシ:じゃあ、頭っから最後の決戦までの何となくの流れはあったと。
瑳川:うん、最後にああいう決着を迎えるのは考えていましたね。
タカハシ:すげえ!僕、『ダイの大冒険』と『スラムダンク』と『デビルマン』は完璧だと思えますね。
瑳川:凄いところと並べられた!(笑)
タカハシ:流れの中に余分なところがないんですよね。それは最初から地図を作ってたってことですよね。
瑳川:連載が伸びていく中でかわっていくこともありますけどね、でも基本的に最後の部分を決めておいて、こいつはこうなるんだって決めておけばそういう流れになっていくから。
撮影=大塚正明
タカハシ:『激伝』もラストはある程度見えていたんですか?
瑳川:そうですね、ヤプールなんかはフリーザを意識してるから。フリーザって最終形態でスッキリしたフォルムになるじゃないですか、そう考えるとヤプールもスッキリしていって、ウルトラマン的なものになってタロウとガチ勝負をすると。そういうラストは決めておくってことですね。
タカハシ:じゃあその後のゴーデス編は、はじめの想定にはなかったと。
瑳川:うん、でも『ドラゴンボール』もフリーザ編のあとにセル編があって、魔人ブウが出てきて、じゃないですか。
タカハシ:結構、赤裸々に『ドラゴンボール』をなぞっていってたんですね。
瑳川:そう、でも赤裸々になぞっていたのに先に『ドラゴンボール』が終わっちゃうんですよ(笑)。
タカハシ:そうですよね(笑)。
瑳川: だからエンペラ星人編は、言っちゃえばベースになってるパーツは『ダイの大冒険』なんですよ(笑)。
タカハシ:ああ!ちょうど終わるくらいのタイミングなのか。たしかにエンペラ星人はバーンっぽいかもしれない。
瑳川:そうそう。
タカハシ:そして今『新章』がやっているわけですが、ガチャの方はまだ第3弾出てないじゃないですか、今後出すなら出したいウルトラ戦士はありますか?
瑳川:いま出てきているコスモスとかかな。
タカハシ:たとえば、最新作から闘士オーブとかどうですか?
瑳川:オーブとかは今出てくるキャラじゃないなと。まだゼロも出てきてないですからね(笑)。
タカハシ:そして4月24日(月)まで、中野ブロードウェイ3F 墓場の画廊にて、「激伝祭」が開催されてます。
瑳川:びっくりですよね、コレだけ応援してくれる人が居て。まず漫画版のイラストのグッズがここまで展開されるのが初めてなんで、コレは嬉しいですよ。漫画版は漫画版の面白さがあるのでそこも知ってもらえたら嬉しいですね。
タカハシ:本当にあのとき、瑳川先生は、神だったんです。ウルトラマンもSDガンダムも『ドラゴンボール』も好きな「僕」のために作ってくれてるんじゃないかって(笑)。
瑳川:あのときは丁度、テレビで通年のウルトラマンが作れなかった時期なんですよね。『G(グレート)』や『パワード』も1クールしか製作されなかったわけだし、年間通してウルトラマンと一緒に居ることができなかった。そんな中おもちゃとマンガって展開で何年間もやれたっていうのは、良かった。「俺達のウルトラマン」って思ってもらえる世代の人がいるのはありがたいですよね。だから丁度『ウルトラマンティガ』が出てきたと同時に『激伝』って終わってるんですよ。役目を終えたというかね。新しい一年もののウルトラマンが出てきたんだから、もう一安心だよねって思ってましたね。頑張って灯をつないだんだって気持ちは、今でもありますよ。
君は思い出したか!『超闘士激伝』の熱さを!
というわけで、少年期の創造神との邂逅に興奮を抑えられない対談取材が無事終了。「灯をつないだんだ」という瑳川先生の一言が、あの時代に『激伝』があったことの重要さを物語っている。
そして今はファンが、『激伝』の灯をつないでいく番だ。なんたって、いま秋田書店で『新章』をスタートさせ、完全版刊行という大仕事をなしとげた担当Tさんは、当時の激伝ファン! 『激伝』が好きすぎて瑳川先生や栗原先生に連絡し、激伝サーガを復活させたというんだから、その功績はスターマーク勲章(ゾフィーの胸の突起)贈呈クラスだ。
ウルトラマンがそうであるように、作品が人から人へのリレーでつながっていく、それが「灯」だ。
この原稿も、『激伝』が未来につながる「灯のリレー」の一助になれば幸いだし、少年期の自分にちょっと自慢できるかな。
瑳川先生ありがとうございました!今度は、実写特撮作品のお話もぜひ。
さぁ、風来坊、次はどこにまろび出るか、乞うご期待。
撮影=大塚正明
撮影=大塚正明
会期:2017年4月1日(土)~4月24日(月)
会場:中野ブロードウェイ3F 墓場の画廊
営業時間:12:00~20:00
http://hakaba-gallery.jp/
http://gashapon.jp/choutoushi/
ウルトラマン超闘士激伝 完全版 第1巻
http://www.akitashoten.co.jp/comics/4253131654
ウルトラマン超闘士激伝 新章 第1巻
http://www.akitashoten.co.jp/comics/4253131263