「白雪姫」「シンデレラ」「眠れる森の美女」がひとつの物語『バレエ・プリンセス』として新たに誕生

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2017.4.26
 写真=瀬戸秀美

写真=瀬戸秀美

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近ごろバレエ関連のニュースがメディアをにぎわせている。ローザンヌをはじめとする国際バレエコンクールにおいて日本の若いダンサーが相次いで受賞し、“バレエ界のアカデミー賞”と称されるブノワ賞を2014年と2016年 に日本出身者が獲得した快挙も話題になった。昨年、英国ロイヤル・バレエ団に吉田都以来となる2人の日本人プリンシパル(最高位のダンサー)が誕生した際に大きく報じられたのも記憶に新しい。

日本のバレエ界は卓越した踊り手を続々輩出し、その点に関しては世界レベルにあろう。しかし公演となると――。来日公演や日本を代表するバレエ団である新国立劇場バレエ団の公演に通う熱心な観客もいるが、本格的な舞台に接したことのある方はまだまだ少ないはず。バレエと聞けばチュチュを付けたバレリーナがキラキラと舞い踊るおとぎ話を想像される方が多いかもしれない。でも、それは表面的なこと。人間の身体が珠玉の音楽とともに奏でる夢の世界は奥深く、見る人の心を潤す。だからこそ五輪を目指すフィギュアスケーターたちもバレエの門を叩き、そのエッセンスを吸収しようとするのだろう。そうしたバレエ芸術の豊かな魅力をあらためて感じたのが昨年(2016年)3月、東京で初演された『バレエ・プリンセス~バレエの世界のお姫様たち~』(主催:チャコット株式会社)。

エピローグ 写真=瀬戸秀美

エピローグ 写真=瀬戸秀美

古典バレエのヒロインであり、女性の永遠の憧れであるプリンセス=お姫様に焦点をあて、『白雪姫』(音楽:チェレプニン)に始まり、『シンデレラ』(音楽:プロコフィエフ)、そして古典バレエの代名詞『眠れる森の美女』(音楽:チャイコフスキー)という誰もが知る物語で構成されていた。とはいえ単なるダイジェストや子供向けではない。バレエを習う愛らしい少女アンが登場し、悪役のヴィランにほんろうされたり、善の精に優しく導かれたりしながら3つのプリンセスの物語を旅する。良質のアニメーション映画に接しているかのような目くるめく展開とバレエならではの華やかな踊りを楽しめる快作で、好評を受けて今年は金沢・東京で上演される運びとなった。

演出・振付は伊藤範子。名門・谷桃子バレエ団のプリマバレリーナとして名をはせたが振付にも並々ならぬ才能を発揮し、先ごろミラノ・スカラ座での研修を終えて技量を一層磨き上げている。おとぎ話を楽しく感動的に盛り上げ、センスあふれる秀作に仕上げた腕前は非凡だ。宣伝画を少女漫画の巨匠・萩尾望都が担当しているのも注目点である。

3人のプリンセスをはじめとして出演者も豪華だ。『眠れる森の美女』のオーロラ姫を踊る米沢唯、『シンデレラ』、『白雪姫』それぞれのタイトル・ロールの池田理沙子木村優里新国立劇場バレエ団の公演で主役を務める。

『眠れる森の美女』浅田良和、米沢唯 写真=瀬戸秀美

『眠れる森の美女』浅田良和米沢唯 写真=瀬戸秀美


『シンデレラ』池田理沙子 写真=瀬戸秀美

『シンデレラ』池田理沙子 写真=瀬戸秀美


『白雪姫』木村優里 写真=瀬戸秀美

『白雪姫』木村優里 写真=瀬戸秀美

なかでも米沢は平成28年度(第67回)芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞したばかりで、現在最も見るべきバレリーナのひとり。

善の精の西田佑子、悪役ヴィランの逸見智彦牧阿佐美バレヱ団)も日本バレエ界の至宝である。

少女アン/善の精/ヴィラン 写真=瀬戸秀美

少女アン/善の精/ヴィラン 写真=瀬戸秀美

王子役の橋本直樹(『シンデレラ』)、浅田良和(『眠れる森の美女』)も、日本バレエ界を束ねる日本バレエ協会の公演でも主役を務める実力者である。

ソリスト、アンサンブルも精鋭がそろい(前述した世界的コンクール受賞経験者も多数出演)、2014年のローザンヌ国際バレエコンクール第1位に輝き、世界最高峰のパリ・オペラ座バレエ団と短期契約も交わした二山治雄が『眠れる森の美女』でブルーバードを踊るのも見逃せない。

『眠れる森の美女』二山治雄 写真=瀬戸秀美

『眠れる森の美女』二山治雄 写真=瀬戸秀美

所属の垣根を越え第一線で活躍する、いま旬のスターたちが集結し、1つの作品のなかで一丸となって共演するのは極めてまれだ。それが実現したのは「バレエファンを1人でも多く増やしたい」という強い想いがあるからに違いない。

今回の公演はバレエ鑑賞普及啓発公演と銘打たれた特別公演だが、バレエ好きも必見の濃い内容である。美の極みであるプリンセスの世界に誘われ、そのきらめくオーラを全身に浴び、生き返ったような清々しい気分で帰路につけるだろう。ぜひ劇場へ足を運ばれてはいかがだろうか。


文=舞踊評論家・高橋森彦 写真=瀬戸秀美

公演情報
バレエ・プリンセス ~ バレエの世界のお姫様たち ~
 
【金沢公演】
本多の森ホール(石川・金沢)
2017年6月4日(日) 開場14:45 開演15:30
主催:北國新聞文化センター/チャコット
共催:北國新聞社
お問合わせ:北國新聞文化センター 076-260-3535

【東京公演】
新宿文化センター 大ホール(東京・新宿)
2017年7月20日(木) 開場17:45 開演18:30
主催 :チャコット
お問合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00~18:00)
 
協力:株式会社ビデオ/企画・制作:チャコット

プログラム:プロローグ/「白雪姫」より/「シンデレラ」より/
「眠れる森の美女」(原振付:マリウス・プティパ)より/エピローグ
※ 上演時間:約2時間(休憩含む)/音楽:録音音源

演出・振付:伊藤範子(谷桃子バレエ団シニアプリンシパル・コレオグラファー)

<出演(予定)>
・「オーロラ姫(眠)」米沢唯(新国立劇場バレエ団プリンシパル)
・「シンデレラ」池田理沙子(新国立劇場バレエ団ソリスト)
・「白雪姫」木村優里(新国立劇場バレエ団ソリスト)
 
・「王子(シ)」橋本直樹
・「王子(眠)」浅田良和
 
・「善の精」西田佑子
・「ヴィラン」逸見智彦(牧阿佐美バレヱ団)
 
・「義姉(シ)」樋口みのり(谷桃子バレエ団)
・「義姉(シ)」樋口ゆり
・「宝石(眠)」竹内菜那子(谷桃子バレエ団)
・「宝石(眠)」山口緋奈子(谷桃子バレエ団)
・「白い猫(眠)」松本佳織(東京シティ・バレエ団)
・「フロリナ姫(眠)」五十嵐愛梨(山本禮子バレエ団)
・「赤ずきん(眠)」堀沢悠子/(登場順)
 
・「道化(シ)」田村幸弘(牧阿佐美バレヱ団)
・「宝石(眠)」酒井大(谷桃子バレエ団)
・「長靴をはいた猫(眠)金沢」荒井成也(井上バレエ団)
・「長靴をはいた猫(眠)東京」玉浦誠(東京シティ・バレエ団)
・「ブルーバード(眠)」二山治雄(ワシントン・バレエ/パリ・オペラ座バレエ団)
・「狼(眠)」中島駿野(新国立劇場バレエ団)/(登場順) ほか

発売情報(一般発売:3月22日より)>
●金沢公演
:S席7,950円/A席6,450円/B席4,950円(税込)
お問合わせ:北國新聞文化センター
tel 076-260-3535
 
 

●東京公演
:S席8,600円/A席6,900円/B席5,400円(税込)
お問合わせ:サンライズプロモーション東京
tel 0570-00-3337(10:00-18:00)

 
 
※ 4歳以上からご入場いただけます。但し、お席が必要です。
※ 車椅子をご利用のお客様は、事前にお問い合わせ先までご連絡ください。※ 出演者・配役は2017年2月末日現在の予定です。出演者の怪我や病気その他やむを得ない事情により変更になる場合がございます。最終的な出演者は当日発表とさせていただきます。
※ 公演中止の場合を除き、キャンセルや変更及び払い戻し等はいたしかねます。また、公演中止の場合の旅費等の補償はいたしかねます。
※ ネットオークション等での営利目的によるの転売はお断りいたします。
※ 開演後の入場は制限させて頂く場合がございます。以上を予めご了承の上、お買い求めください。尚、公演直前を理由とする割引販売の予定はございません。
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