BSプレミアムシアターでオシポワ主演『アナスタシア』と、ケースマイケル×ライヒの『レイン』

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2017.5.19
『アナスタシア』人気のナターリア・オシポワ(一番右)がアナスタシアとアナの二役を見事に演じる  (c) ROH, 2016. Photographed by Tristram Kenton

『アナスタシア』人気のナターリア・オシポワ(一番右)がアナスタシアとアナの二役を見事に演じる (c) ROH, 2016. Photographed by Tristram Kenton


NHKのBSプレミアム「プレミアムシアター」では、5月21日(日)深夜の24時20分~26時00分(5月22日午前0時20分~4時00分)に、趣の異なる興味深い作品、英国ロイヤル・バレエ団の『アナスタシア』とパリ・オペラ座バレエ団の「レイン」を2本一挙にオンエアする。

英国ロイヤル・バレエ団 『アナスタシア』

英国ロイヤル・バレエ団の『アナスタシア』は、ロシア皇女生存事件を元にした創作バレエ。タイトルのアナスタシア(1901~18)は、ロシアのロマノフ朝最後の皇帝・ニコライ2世の第4皇女。1917年のロシア革命で帝政が崩壊したため、翌年に家族もろとも惨殺される。ところが、死んだハズのアナスタシアを名乗る女=アナ・アンダーソンが現れて……。20世紀終盤に偽者だったとされるまで、さまざまな憶測が飛んでいた事件がモチーフだ。

1967年に、イギリスの振付家ケネス・マクミラン(1929~92)が、まず1幕作品として発表。後にこれを第3幕とし、第1~2幕を作って完成させた。アナスタシアとアナの二役を演じるのは、ボリショイ・バレエ時代から人気のナターリア・オシポワ。自殺未遂で精神病院に送られた記憶喪失者のアナが、アナスタシアの過去を知って変化していく、なりきりパフォーマンスは必見。

音楽を2人の作曲家の交響曲で構成しているのも特徴だ。アナスタシアの幸せな少女時代から社交界デビューに至る第1・2幕は、ロシアのピョートル・チャイコフスキー(1840~93)の交響曲「第1番」「第3番」を、アナが薄暗い精神病院で記憶回復を図ろうとするうちにアナスタシアだと思い込む第3幕は、チェコのボフスラフ・マルティヌー(1890~1959)の交響曲第6番「交響的幻想曲」を使っている。

想像を絶する人生の変化やアイデンティティーの喪失といった深く重いテーマ、舞踏会などのクラシカル・バレエから、劇的シーンでのパフォーマンスまで、ステージのダンサーはもとより、音楽を生かした場面転換や対比など、お聞き逃しなく。さらに鬼才ボブ・クロウリーが手掛ける美術も注目。

パリ・オペラ座バレエ団 『レイン』

『レイン』10人のダンサーとライヒの音楽が一体化し、雨、雨、雨…… (c)Agathe Poupeney OnP

『レイン』10人のダンサーとライヒの音楽が一体化し、雨、雨、雨…… (c)Agathe Poupeney OnP

続いて、パリ・オペラ座バレエ団の『レイン』は、ベルギーの気鋭の振付家、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルが、ミニマル音楽で知られるアメリカの現代作曲家、スティーヴ・ライヒ(1936~)の70年代半の作品「18人の音楽家のための音楽」に振り付けした意欲作。彼女が率いるコンテンポラリー・ダンスカンパニーのローザスが2001年に初演し、後にパリ・オペラ座バレエのレパートリーに。

ミニマル音楽は繰り返される小単位の音型やリズムが微妙に変化しながら進展するが、ライヒの音楽から、降り続く「雨」を連想して舞台化したのはサスガ! そもそも「18人の~」は、楽器の編成がユニークで、ピアノ、ヴァイオリン、女声、ヴィブラフォン、マリンバ、クラリネットなどから成る。18人の演奏家がパートの組み合わせの絶妙な推移をものともせず、小さな変化の積み重ねが延々と続く、ある種マラソンみたいな演奏を、約1時間も続けなければならない。

そんな、まるで音のグラデーションのような音楽とともに、ダンサーたちが「雨」のパフォーマンスをする。背景に雨すだれが垂れ下がる程度のシンプルな空間に、3人の男性ダンサーと7人の女性ダンサーが登場。ソリストらしき役割の人はおらず、それぞれが雨粒となって、個々のダンスはいうまでもなく、組み合わせやフォーメーションなど数多のバリエーションを繰り広げ、変化し続ける雨模様を表現する。

時の経過につれ、ダンサーが着替えて出てくるたびに、衣装の色が微妙に変わるのも面白い。照明も加わって、まるで紫陽花の七変化のよう。日頃見過ごしがちな自然の移ろいや、そこで生きるたくさんの命の存在、営みが伝わってくるようなパフォーマンスにご注目。

音楽演奏は3月のスティーヴ・ライヒ演奏会で「テヒリーム」を披露したことも記憶に新しいシナジー・ボーカルズ、そして、5月のローザス来日公演にも登場したばかりのアンサンブル・イクトゥス。ライヒ好き・ローザス好き双方にとって見逃せないプログラムである。

文=原納暢子

放送情報
「プレミアムシアター」
NHK BSプレミアム
5月22日(月)【5月21日(日)深夜】午前0時20分~4時00分
◇本日の番組紹介
◇英国ロイヤル・バレエ『アナスタシア』【5.1サラウンド】
◇パリ・オペラ座バレエ『レイン』【5.1サラウンド】

◇本日の番組紹介(0:20:00~0:22:30)
ナレーション: 水落幸子(みずおち ゆきこ)

◇英国ロイヤル・バレエ「アナスタシア」(0:22:30~2:14:30)
<演 目>
バレエ「アナスタシア」(全3幕)
振付:ケネス・マクミラン
音楽:チャイコフスキー、ボフスラフ・マルティヌー
<出 演>
皇帝ニコライ2世:クリストファー・サウンダース
皇后アレクサンドラ:クリスティーナ・アレスティス
皇女アナスタシア/アナ・アンダーソン:ナターリア・オシポワ
ラスプーチン:ティアゴ・ソアレス
マチルダ・クシェシンスカヤ:マリアネラ・ヌニェス
クシェシンスカヤのパートナー:フェデリコ・ボネッリ
アナの夫:エドワード・ワトソン 
4人の将校:平野亮一
ヴァレリー・フリストフ
アレグザンダー・キャンベル
エドワード・ワトソン
ほか
<舞台美術>ボブ・クロウリー
<照 明>ジョン・B・リード
<管弦楽>コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団
<指 揮>サイモン・ヒューイット
収録:2016年11月2日 コヴェントガーデン王立歌劇場(ロンドン)

◇パリ・オペラ座バレエ「レイン」(2:17:00~3:31:30)
<演 目>
「レイン」
振付:アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル
音楽:「18人の音楽家のための音楽」  スティーブ・ライヒ 作曲
<出 演>
ヴァレンティーヌ・コラサンテ
ミュリエル・ズスペルギー
クリステル・グラニエ
パク・セウン
レオノール・ボーラック
アメリ・ラムルー
ローラ・バッハマン
ヴァンサン・シャイエ
ニコラ・ポール
ダニエル・ストークス
<歌>シナジー・ボーカルズ
<アンサンブル>アンサンブル・イクトゥス
<指 揮>ジョルジュ・エリー・オクトール
収録:2014年10月18日、21日 パリ・オペラ座 ガルニエ宮(フランス)

■公式サイト:http://www4.nhk.or.jp/premium
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