Chara 女として、母としての顔も見せながらくったくなく語る、25年積み重ねてきたからこそ辿り着いた新境地

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2017.7.20
Chara

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デビュー25周年を迎えているCharaが7月19日、アニバーサリーイヤーの締めくくりとも言えるニューアルバム『Sympathy』をリリース。オリジナルアルバムとしては2年4ヶ月ぶりとなる本作には、岸田繁(くるり)、ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、BASI(韻シスト)、TAKU(韻シスト)をはじめ、Charaに共感・共鳴するゲストが多数参加。Charaらしくジャンルレスな広がりと、25年積み重ねてきたからこそ辿り着いた新境地が豊かに示された充実作となっている。9月1日スタートのフルバンド構成で廻る全国ツアー『Chara Live Tour 2017“Sympathy”』にも期待は高まる一方だ。今までで一番歌詞を書くのが楽しかったという今作の制作秘話について聞いたインタビュー。Charaが部長を務める「寿司部」の話から来年迎える50歳(!)の話まで、女として、母としての顔も見せながら、くったくなく語る彼女はやはり、シンパシーを抱かずにはいられないほどチャーミングだった。

言葉に対しては、子供を産んでから、責任があるなと思ってたんです。一度発したら引っ込められないものだから。

――昨年9月から突入した25周年イヤー。このアニバーサリーイヤーで何か改めて気づいたことはありますか?

振り返ることが多かったかなと思います。私は元々、進化したいタイプだから、普段はあんまり振り返ったりしないんですけど。去年、リマスター版とか、3枚組のオールタイムベストを出すってことで、昔の作品とかも見つめ直す機会を与えてもらって。そうしたら、昔の曲がすごく新鮮だったり、ずっと歌い続けてる歌も(オリジナルを聴いて)“この曲の歌い方、進化しすぎちゃったかな”って思ったり。自分の作品に改めてインスパイアされるみたいな、面白い体験ができたので、それは良かったなと思います。

――今“歌い方”という言葉が出ましたけど、Charaさんの歌い方っていうのは、日本の音楽シーン、特に女性シンガーに大きな影響を与えたと思うんです。ご自身ではどう思われますか?

どうなんですかね? 歌はあんまり上手くないんですけどね。まぁ影響ってことで言うなら、子育てをしながら歌う、みたいなね。当時、そういうことは意外とタブーだったというか、若めだと許されない的な感じがあったんだよね。それで私、爆発してしまって、武道館ライブがまぁまぁブチ壊しになったっていう(笑)。

――ステージにしゃがみ込んで涙を流して、浅野忠信さんが迎えに来たという、伝説のシーンですね(笑)。

「バカヤロー!」とかひどい言葉を言ちゃって、その後、立ち直って歌うっていうね、ほんと恐ろしい(笑)。今(映像を)見ると笑っちゃう。でも娘には見せたくないですね。娘はあの時お腹にいたから、聞こえてたかもしれないけど(笑)。

――ライブといえば、去年は『Junior Sweet』のリマスター版をリリース後、全6公演のツアーを、今年に入ってからはオールタイムベスト『Naked & Sweet』の世界観を主軸にした1日限定のスペシャルライブを人見記念講堂で、そしてその後、全国7カ所を廻るツアーも行ないました。

ツアーはね、ライブハウスってやっぱり好きだなって思ったり。あと、人見記念講堂でやったスペシャルライブは独特の雰囲気があって、そこでのメンバー紹介とかも最高に面白かった。だから今回、『Sympathy』の初回版のディスク2にライブの模様が7曲入ってるんだけど、そこにその日のメンバー紹介も入れちゃいました。あのライブに来れなかった方もいるだろうし、それを聴いてニヤッとしてもらいたいなと思って。

――ファンの人達はすごく嬉しいと思いますそれ! さて、そのオリジナル・ニューアルバム『Sympathy』ですが、多彩な顔ぶれのゲストが参加しています。これは元々、Charaさんに共感・共鳴する人に色々参加してもらおうというコンセプトがあったんですか?

そういうことではないけど、Chara愛を持ってくれてる人の方が、やっぱり音に反映するからね。だから、今回参加してくれた野村陽一郎くんなんかもChara愛がすごく強い人で。私は寿司部の部活動をやってて、部長なのね。で、野村陽一郎くんは2回ぐらい仮入部してるの。

――寿司部って何人ぐらいメンバーがいるんですか?

いやそんなには。メンバーがたくさんだと、高くなっちゃうから。

――あ、Charaさんが部員全員分のお寿司代を払うんですか?

部長だからね(笑)。まぁ女一人だとお店とかなかなか行けないからさ。大人が行けるそこそこ安くてもいいお店を探して行く、みたいな。

――野村陽一郎さんもその寿司部の部員なんですか?

まだ仮入部(笑)。でも前から“一緒にやりたい”って言ってくれてて。今回「Love pop」という可愛い曲を書いてくれたんだけど。元々ね、今回のアルバムは9曲目のタイトルにもなっている“Intimacy”(インティマシー)をテーマにしてたんですよ。“Intimacy”っていうのは、日本語にすると“真の親密さ”。心って通じ合うものだよね、みたいなことをすごく考えていて。それが最初の出だしのイメージ。だから、今回はいつもよりも言葉を前に出したいなっていうのがあったの。心で思ってて言えてないこととか絶対言いたかったし、言葉重視でやりたいと思ってたんです。メロディ重視でやると、歌詞が多い場合、言葉が入り切らなくなっちゃったりもするし。で、ラップはたくさんの言葉を入れ込めるから、今まであんまりやってなかったんだけど、いいなと思って。韻シストのMCであるBASIと一緒にやったりとか。

――これまで以上に今、言葉を伝えたいという想いが強くなっているんですか?

なんだろうね? 若い頃は誰でも使ってるような言葉には興味ない、みたいなのがあったんだよね。でも歳を重ねて色々経験してくると、昔は全然いいと思わなかった普通の言葉も素敵だな、使いたいなって思ったりするし、日本語って奥ゆかしい美しさがあるなって思ったりもして。言葉を使うプロの一人として、それを使うのがだんだん楽しくなってきたというか。だから今回、夢の一つであった“歌詞から曲を作る作業”っていうのも初めてやったんですよね。

――くるりの岸田繁さんと共作した「Tiny Dancer」ですね?

そう。これは男の人にはちょっとわからない“女あるある”的な、強がる可愛さ、みたいなガーリーな歌詞で。この歌詞をそのまま岸田くんにラインで送って。

――岸田さんとは元々、どういう関係なんですか?

前に大阪でやったイベントで一緒になった時に、岸田くんがギターのいい音出してて、歌もMCも良かったので、興味持って。その打ち上げの席で、彼が“歌詞から曲を作ったことがある”って言ってるのを小耳に挟んで、へぇ~そうなんだ?と。それで、東京に戻ってきてからラインを送ったの。その時はもうラインを交換してたから。でも私のラインは名前が“Chara”ってなってないから、最初に送ったメッセージを彼は見てなくて。もう一度事務所を通して送ったら、“いい歌詞だからやりたいです”って言ってくれて、4パターンぐらい曲を作ってくれたのかな。その中のAパターンを使わせてもらいました(笑)。

――一緒にレコーディングしてる動画も観ましたけど、和気藹々といい雰囲気でしたね。

そうですね。本当はあれ、私の歌も岸田くんのギターも、家で録った仮テイクを使ったんだけどね。そっちの方が本チャンのやつより、力みすぎてなくていいテイクだったから。でもほんとに全体的にいい感じになって、曲の中で景色が変わっていく感じもあるし、岸田天才の本領発揮だなと思います。

 

“音楽と結婚したChara”っていうコンセプトを離婚した時に作っちゃったんですけど、最近、それってちょっと切ないなと思い始めてて(笑)。だから50歳を機にやめようかなって。

――かと思えば、「Funk」はCharaさんの息子さんであるHIMIくんとの共作です。

「Funk」は私の“プリンス愛”が表れた曲なんだけど、これは英語の歌詞がいいなと思って、息子は英語が得意なのでお願いしました。で、息子もプリンスが好きなのね。だから、2人でリビングのダイニングテーブルに並んで座って、プリンス愛みたいなのを形にしていった、と。

――そうやってお母さんの制作に携わるHIMIくんは、“アーティストChara”をリスペクトしてるんでしょうね?

う~ん、彼は父親をめっちゃリスペクトしてる。浅野忠信リスペクトボーイなの(笑)。まぁでも“親をリスペクトするのは当たり前”とか言ってたから。その“親”には母ちゃんも含まれてるのかなって思ってます(笑)。でね、アルバムタイトルの“Sympathy”も、実は息子が言ってくれた言葉なんです。本当はアルバムタイトルは“Intimacy”にしたかったんだけど、残念ながら“Intimacy”って日本人にはパッとイメージできる言葉じゃないじゃない? 辞書を引かなきゃ意味が分からない、みたいな。それで息子に「“Intimacy”にフィーリングが似てて、もっと簡単に意味が分かる言葉ってないかな?」って聞いたら、「“Sympathy”は?」って言ってくれて、「あ、確かに~!」って。

――タイトルチューンもそこから?

そうですね。その時ちょうど曲を作ってたので、「Sympathy」にしようって決めて。

――なるほど。“Sympathy”はHIMIくん提案の言葉だったんですね?

そうね。だから、ギャラを請求されたらどうしようかと(笑)。

――それから、「Herbie」は水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミさんと共作しています。

私は打ち込みの音もすごい好きで。打ち込みのちょっとグルーヴィーなやつを、今までやったことのない人とやりたいなと思って。ケンモチくんはラジオ局で1回しか会ったことがなかったんだけど、お声掛けしたらスケジュールも合いそうだったので、(共作が)実現したって感じです。

――ケンモチさん自身、「Herbie」に関して“大人の夏ソング”とコメントされてましたけど、水の中を思わせる透明感が気持ちのいい曲ですね。

最初ケンモチくんが書いてきてくれた歌詞は、私にはロマンチックすぎて、ケンモチくん誠実なんだね~みたいな(笑)。でも、その初々しい感情をどう活かそうかなって考えながら私も歌詞を書いていって。そういう作業も共作ならではというか、楽しかったです。

――他にも皆川真人さん、mabanuaさん、Kan Sanoさん、韻シストのTAKUさん、kensukeushio(agraph)さんなどが参加されてます。

みんなChara愛のある人達。で、mabanuaとTAKUと私で作った「Darling Tree」っていう曲があって、自分でもこのタイトル、気に入ってるんだよね。

――可愛いタイトルですよね。

そう。なんかそういう、使ってそうで使ってない言葉を発見するのがすごい好きなの。

――曲全体の世界観も肩の力が抜けてて、ふんわりと可愛いし。

うん。歌詞も可愛いしね。可愛い歌詞なのに“いつだって盗まれる準備はできてるわ”っていう。失恋したのね? みたいな。これは面白おかしく失恋を書いてますけども、リアルな話です、はい(笑)。強いなぁ、私。曲にしちゃうんですよねぇ、切ない思いを(笑)。

――でもそれがアーティストですよね。

かもねぇ。別にそのために恋してるわけじゃないんだけどね(笑)。

――今回、言葉重視でやってみて、いかがでしたか?

言葉に対してはね、子供を産んでから、責任があるなと思ってたんです。一度発したら引っ込められないものだから。でも子供ももう、上が22歳、下が17歳で大人みたいな感じだし。さっき“肩の力が抜けて”って言ってくれましたけど、分かりやすく言うとそういう感じがあるんですよね。すごく素直に歌詞が書けた。このアルバムの中ではロマンチックになることもできたし、歌詞を書くことがすごくすごく楽しかった。今までで一番楽しく書けたと思う。もちろん今までも素直にいたとは思うんだけど、素直な自分と想いが同一してきたというか。大人になって、何か折り返しを超えた力の抜け方というのかな? 今までは白黒ハッキリさせてショートカットで行きがちだったけど、グレーな部分にも何かあるなと思って。

――懐が広がったというか。

うん。グレーもあり、みたいな。そういうのってまたちょっと優しくなれるじゃない?

――そんなCharaさんの新しい部分、進化した部分も出せた。

そうですね。そういうところもあると思います、このアルバムは。で、最後の1曲がB面の私、みたいな感じかな。他の曲は言葉で伝えたいと思ってるけど、最後の1曲だけは言葉が意味を持たなかったっていう歌詞なので。

――25周年にまた新しい部分を出して、ここから30周年に向けてはどんなふうに進んできたいですか?

ちょっと待って? いきなり30周年って(笑)。私は来年50歳だから、50に向けてにしようよ(笑)。

――(笑)わかりました。じゃあ50歳に向けて(笑)。

私、50でお祝いしたいんですよ。何かそういう区切りを意識するのも悪くないなぁと思ってて。

――でもCharaさん、絶対50歳には見えないですよね。

髪の毛ピンクにしたらだいたいちょっと若く見えるよ(笑)。

――いやそういう問題じゃなく(笑)。例えば恋することを忘れないっていうのも若さや色っぽさに繋がるのかな。

私ね、“音楽と結婚したChara”っていうコンセプトがあって。それ、離婚した時に作っちゃったんですよ(笑)。ライブが結婚式っていう。でも最近、それってちょっと切ないなと思い始めてて(笑)。だから50歳を機にやめようかなって。でもね、この歳になると、いいオバチャン感も利用できて、わかる? 可愛いものを好きって言っても、昔だったらブリッ子って言われてたのが、今は大丈夫な年齢で。それでいてちょっとぐらい態度デカくしても歳いってるから怒られないし(笑)。「体力がない」って言っても優しくしてもらえるし、色々いいね(笑)。

――じゃあここからまたいろんな花を咲かせられそうですね。

うん。私はいい曲を作りたくて、まだメジャーでやっていきたいので。まぁ、スタイルは変えていくと思うんですよ。もっと歳いったら“膝がもう無理!”みたいになっていくと思うから(笑)。この靴、悪いけどペタンコに換えさせていただきます!とか(笑)。でも歳を重ねても、初めてのことって色々あるじゃないですか? だからその都度いろんなことを楽しみながら、体力の続く限り、頑張っていきたいなって。


取材・文=赤木まみ

 
リリース情報
アルバム『Sympathy』
Chara

Chara

2017年7月19日発売
[通常盤初回仕様](CD)KSCL-2926
[初回生産限定盤](2CD)KSCL-2924~5 
■DISC1収録曲(初回・通常共通)
1. Tiny Dancer
2. Stars☆☆☆
※江崎グリコ「ビスコ」CMソング
3. Sympathy
※大塚製薬「ファイブミニ」CMソング
4. Mellow Pink
5. Funk
6. Love pop
7. Herbie
8. Symphony feat. mabanua
9. Intimacy
10. Darling Tree
11. KILIG
12. Sweet Sunshine
13. 小さなお家
■DISC2収録曲(初回のみ)
Chara ALL TIME BEST LIVE
“Tremolo Sparks” 2017.1.22 at 昭和女子大学 人見記念講堂
1. 世界
2. Break These Chain
3. 大切をきずくもの
4. 月と甘い涙
5. あたしなんで抱きしめたいんだろう?
6. やさしい気持ち
7. Happy Toy
Bonus Track
8. メンバー紹介
<参加ゲスト>
Kan Sano、岸田 繁(くるり)、kensuke ushio(agraph)、
ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、mabanua、
BASI(韻シスト)、TAKU(韻シスト)

 

ライブ情報
Chara Live Tour 2017 “Sympathy”
09.01(fri) 恵比寿 LIQUIDROOM    open 18:45 / start 19:30
09.03(sun) 福岡 DRUM LOGOS    open 17:30 / start 18:00
09.08(fri) 名古屋 ZEPP NAGOYA    open 18:30 / start 19:00
09.17(sun) 大阪 ZEPP NAMBA    open 17:00 / start 17:30
09.24(sun) 東京 昭和女子大学人見記念講堂    open 17:00 / start 17:30

 
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