踊り重ねたからこそ表現できる境地――ルグリ・ガラ初日 大阪公演レポート

レポート
クラシック
舞台
2017.8.21
ルグリ・ガラ 撮影=滝澤志野

ルグリ・ガラ 撮影=滝澤志野

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パリ・オペラ座の元エトワールの中でも、特に名演の数々が記憶に残る大スター、マニュエル・ルグリ。そんな彼がオペラ座引退後、ウィーン国立歌劇場の芸術監督に就任して早くも8年、その間にウィーンは、彼の手腕で格段に良いバレエカンパニーに成長したように見える。芸術監督としても素晴らしい彼が、信頼を置くダンサーたちをセレクトし、彼自身も新作を含め踊ってくれるというこのガラ、期待に胸を膨らませながらフェスティバルホールに向かった。

まず実感したのは、美しい脚のダンサー達ばかり、ということ。ベテランから新人まで男女ともに脚の甲が美しい、小さなパでもポーズでも惚れ惚れするライン。そこにそれぞれの魅力、表現が加わる。ルグリが選ぶダンサーは、まず、そうでないと、ということなのだろう。

撮影=森口ミツル

撮影=森口ミツル

演目は、クラシックから現代作品までバランスの取れた構成。大阪で上演されたのはAプロで、幕開けは、昨年ルグリが全幕振付を手掛けた『海賊』よりオダリスク。ウィーンの若手、ニキーシャ・フォゴ、ナターシャ・マイヤー、芝本梨花子の3人が踊った。肌の色が違う3人がメソッドに正確に、揃った魅力を伸びやかに見せたのに、世界の平和を願うヨーロッパの知性を感じるような気がしたのは私だけだろうか。

同じルグリの『海賊』から第2幕のアダージョを英国ロイヤル・バレエのマリアネラ・ヌニェスワディム・ムンタギロフが。恋人たちの幸せが劇場じゅうにフワーッと広がるようだった。『グラン・パ・クラシック』は、ボリショイ・バレエのオルガ・スミルノワとセミョーン・チュージン。余裕を持った高テクニックに、優雅なたたずまい。今回、出演者達は早めに大阪入りしてルグリとともにリハーサルを重ねたと聞くが、パリ・オペラ座の香りが伝えられているように感じられた。

撮影=滝澤志野

撮影=滝澤志野

そして、ルグリ。イザベル・ゲランとの『フェアウェル・ワルツ』は、終わりを意識した男女の切ない感情を深みを持って。また、ローラン・プティの『アルルの女』より、もゲランと。心を病んだ男性と献身的に寄り添う女性──言葉がないからこその、静かな感情の起伏がじみじみと客席に伝わった。最後は、世界初演のルグリのソロ『Moment』。J.S.バッハの曲(F.ブゾーニ編曲のものも)に、ナタリア・ホレツナが振り付け、滝澤志野の生ピアノ演奏で。まるで、今の彼そのものを踊るような……確かなバレエのメソッドで作られた身体だからこその動き、それが途中、それを捨てて自由に、そしてまた……。身につけたものは、脱ぎ捨てても、また着ることができる衣服のよう。

撮影=森口ミツル

撮影=森口ミツル

踊り重ねたからこそ表現できる境地、そんな風に思えるルグリの踊った3演目だった。東京だけのBプロでは、ルグリはローラン・プティの『アルルの女』にかわって『ランデヴー』を、豪華ゲスト達の演目も変わり、そちらも期待出来る。

東京公演は、8月22日(火)~25日(金) 東京文化会館大ホールにて。チケットは発売中。当日券は各開演1時間前から会場にて販売。

撮影=滝澤志野

撮影=滝澤志野


取材・文=菘(すずな)あつこ(舞踊評論家)

公演情報
『ルグリ・ガラ ~運命のバレエダンサー~』
 
<東京公演>
【会期】
8月22日(火)18:30  Aプログラム
8月23日(水)18:30  Bプログラム
8月24日(木)18:30  Bプログラム
8月25日(金)18:30  Aプログラム
【会場】東京文化会館 大ホール

 
<大阪公演>
【会期】 8月19日(土) 14:00 Aプログラム
【会場】フェスティバルホール

 
<名古屋公演>
【会期】 8月20日(日) 17:00 Aプログラム
【会場】愛知県芸術劇場  大ホール

 
 
■出演:マニュエル・ルグリ、イザベル・ゲラン(元パリ・オペラ座バレエ団エトワール)
マリアネラ・ヌニェス、ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)オルガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン(ボリショイ・バレエプリンシパル)
エレナ・マルティン、パトリック・ド・バナ、
ニーナ・ポラコワ、デニス・チュリェヴィチコ(ウィーン国立バレエ団プリンシパル)
ナターシャ・マイヤー、ニーナ・トノリ、ニキーシャ・フォゴ、ヤコブ・フェイフェルリック、ジェームズ・ステファン、ジェロー・ウィリック、芝本梨花子(ウィーン国立バレエ団)
滝澤志野(ウィーン国立バレエ団専属ピアニスト)
 
■演目:
<Aプログラム>『アルルの女』より、『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』、ルグリ版『海賊』第2幕よりアダージョ、『フェアウェル・ワルツ』、『グラン・パ・クラシック』ほか
<Bプログラム>マニュエル・ルグリ ソロ(世界初演)、『ジゼル』、『ドン・キホーテ』、『ランデヴー』、『ジュエルズ』より“ダイヤモンド”ほか
※全演目詳細は公式サイトよりご確認ください

■公式サイト:http://www.legris-gala.jp/


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