愛知が誇る短編演劇の祭典『劇王』が、海外3チームを招き〈アジア大会〉と銘打って4年ぶりに復活!
『劇王Ⅺ 〜アジア大会〜』チラシ表
栄えある【劇王】の座とチャンピオンベルト、国外流出を全国精鋭の雄は無事攻防できるか!?
2003年に日本劇作家協会東海支部と「長久手市文化の家」が立ち上げた演劇イベント『劇王』。これは、「上演時間20分以内」「役者3名以内」「数分間で転換可能な舞台」というルールのもと各チームが上演を行い、観客とゲスト審査員の投票によって優勝者【劇王】を決める短編演劇コンテストだ。名古屋のお隣「長久手市文化の家」を舞台に、年に一度の恒例イベントとして10回に渡って開催され(詳細は公式サイトを参照)、徐々に盛り上がりを見せながらその存在を全国に知らしめ、今や各地でも独自開催されるまでになっている。
東海支部での開催は、2013年に行われた10回目の記念大会『劇王X 天下統一大会』を最後に一旦終了していたが、この度、北海道、東北、関東、甲信越、東海、関西、中国、四国、九州地区の予選を突破した全国各地の【劇王】が集結し、海外3チーム(韓国、シンガポール、香港)を招いての『劇王Ⅺ ~アジア大会~』として復活。9月15日(金)から3日間に渡って、アジアのトップに君臨する【第11代劇王】の座とチャンピオンベルトを懸けて、熾烈な闘いを繰り広げることとなったのだ。
この大復活を前に去る7月末に記者発表が行われ、「長久手市文化の家」事務局長の籾山勝人、『劇王』の発案者で前東海支部長の佃典彦(劇団B級遊撃隊主宰)、第5代~第8代劇王まで4連覇し「劇帝」の称号を持つ東海支部事務局長の鹿目由紀(劇団あおきりみかん主宰)、前事務局長の刈馬カオス(刈馬演劇設計社主宰)の4名が出席。これまでの経緯や今大会への思い、見どころなどについて下記の通りコメントを述べた。
記者発表の様子
◆籾山勝人
『劇王』は、2003年に始まり2013年まで続きました。第10回を機に一旦休演をしまして、4年後の今回『劇王Ⅺ』という形で復活し、さらには〈アジア大会〉ということで海外3カ国から招聘したチームが国内の【劇王】と闘うという、かなり幅を広げた大会になったと思います。劇王発祥の長久手の場で面白い闘いが見られるのかなと期待できるところであります。今回は12チームも参加して舞台転換の時にある程度間ができてしまうものですから、その間つなぎや全体の進行を佃典彦さんが“合戦くん”(「小牧・長久手の戦い」の合戦の地にちなんで生まれた劇王公式キャラクター)の格好をして司会者として出ますので、その辺も見どころだと思います。今回来ていただく3カ国の作家さんが『劇王』に刺激されて、自国に戻った時にこういったイベントを発展してくれるといいのかなぁと。また逆に、日本がそちらの方に呼ばれて競い合うとか、そういったところまで発展できると面白いかなと思います。
◆佃典彦
2013年に『劇王』が一旦終わりを迎える時に、全国大会ということで北は北海道、南は九州までの各地のチャンピオンを結集してやりました。で、「その次、どうしよう」って僕と籾山さんとでいろいろ話をしたんですが、ちょうど『劇王X』を終えた後、神奈川県で『かもめ短編演劇祭』という似たような大会が開かれて、韓国から2チームほど呼んでやられていました。その時に神奈川の人たちが〈アジア大会〉と名乗ろうとしていたので、「ちょっと待ってくれ」とストップをかけ、やはりここは本家本元の僕たち『劇王』が先に〈アジア大会〉と名乗ってやるべきだろうということで、今回は韓国、シンガポール、香港から招聘して闘います。まあ経緯といえば、僕らの見栄と意地がそうさせたという形で、それに籾山さんが乗っかってくれて大祭ができることになったという運びです。こういうコンペをやると、優勝者に例えば賞金が出たり劇場をタダで使えますとか、そういったメリットがあるんですけど、この『劇王』に関しては、僕が3日間徹夜で作ったチャンピオンベルトが与えられるだけの何のメリットもない壮大な闘いである、ということに触れていただけると作った甲斐が(笑)。東海支部はライオンの顔のチャンピオンベルトですが、各地それぞれ工夫を凝らしたチャンピオンの証を持ち寄って登場するので、それも見ものだと思います。
◆鹿目由紀
始まった時はまだ全然定着していなくて、本当にうまく続いていくのかという不安もあったんですけど、これまで10回やってきた結果だんだんと輪が広がっていきまして、各地の戯曲賞の受賞者が集まってきて闘うような大会に変わっていきました。ターニングポイントとしては、「日本劇作家大会2005長久手大会」のイベントの中で開催した『劇王Ⅲ』の時に初めて海外からも団体を呼びまして、ちょっと大きな大会になりました。その後、2007年の『劇王Ⅳ』で柴幸男さん(第4代劇王、その後『劇王X 天下統一大会』でも優勝し「劇天」となる)がいらっしゃった時にカルチャーショックを受けたり、『劇王X』の時は各地に『劇王』が勃発して、そこから優勝者が集まって長久手に集うという素晴らしい大会になっていったと思うんです。私は自分のことを勝手ながら、『劇王』で育ったと思っていて、『劇王』のおかげで今やっていることがだんだん発展してきたと思っています。今回は出られないことを悔しく思っている次第です。
◆刈馬カオス
今回の〈アジア大会〉は全国各地から猛者が集うということで、短編演劇に関して長久手はいわゆる高校野球の甲子園のような場所になっていると思いますので、すごく気合の入った作品が集う、緊張感のある現場になるんじゃないかなと思います。僕は性懲りもなく何度も出場しては負けを繰り返していて【劇王】にはなっていないですけども、とはいえ、この東海支部から僕と鹿目由紀さんと平塚直隆さんの3人が〈劇作家協会新人戯曲賞〉を受賞しまして、それは鹿目さんも言っていたように『劇王』によって悔しさを味わったり、いろんな方のお話を聞いたり、そういったことで自分の劇作家としての力が磨かれていったと思いますので、この中からまた次の世代の新しい劇作家が登場してくるんじゃないかな、ということも期待しています。
今大会の全体の流れとしては、初日の夜と2日目の昼・夜で3ブロック(各4チーム)に分かれて予選を行い、それぞれ勝者を決定。3日目にその勝者3チームと第9代劇王・平塚直隆(東海支部長・オイスターズ主宰)による決勝戦が行われ、【第11代劇王】が決まる。また、2日目の16日(土)には、北海道から沖縄まで劇作家協会各地区の支部長が集結する座談会や、ゲスト審査員の天野天街、坂手洋二、西田シャトナーによるトークイベントが行われるほか、全日にわたって「戯曲見本市」(多数の劇作家の台本、公演DVD、掲載雑誌などを販売)も開催されるなど盛りだくさんな内容だ。
全国各地の精鋭たちが勢揃いするだけでなく、なかなか観る機会のない海外招聘3チームの上演が観られるのも大きな目玉の今回。韓国、シンガポール、香港から参加するそれぞれの劇作家について尋ねると、「韓国のイムさんは、韓国演劇ネットワークの代表をやられていて、作家であり演出家であるんですけど、いわゆるソウルの小劇場を束ねている方です。シンガポールのゼルダさんは、現地で一番人気があって国からも予算をいっぱい取れるような位置にいる人で、影絵だったり人形劇みたいなことやいろんな表現の媒体を使いながらやられる方なので非常に楽しみにしてます。香港のマンさんは、僕の台本『ぬけがら』(第50回岸田戯曲賞受賞作)が香港で上演された時に、今回出演するアンソン・ラムという俳優さんが翻訳してくれて。その時、アンソンに「誰かいない?」って声掛けしたら、「香港は新劇みたいな芝居やミュージカルが主流で小劇場演劇はあまり無い中、異色な感じでやってるすごく面白い人がいるんだ」と聞いて。実際にマンさんとはお会いしたんですけど、非常に鋭そうな感じの人で楽しみです」と、佃。
強者揃いの海外の刺客から、我が国の雄たちは【第11代劇王】の座を無事守れるか否か。3予選から決勝まで、勝者を決めるのはいずれも観客とゲスト審査員の投票であるだけに、合戦の地・長久手に足を運んで自らの目でジャッジしつつ、勝者を見届けてみては?
左から・籾山勝人、鹿目由紀、佃典彦
【出場チーム】
《予選Aプログラム》
韓国代表◆作・演出:イム・ジョンヒョク(劇団トンスン舞台)『視線』
東北代表◆作・演出:遠藤雄史(トラブルカフェシアター)『アツモリ』
関西代表◆作・演出:福谷圭祐(匿名劇壇)『コミュニケットボール』
関東代表◆作・演出:中山朋文(theater 045 syndicate)『サマータイム』
《予選Bプログラム》
シンガポール代表◆作・演出:ゼルダ・タティアナ・ン(GroundZ-0(原・空間))『いつも側にいるよ』
九州代表◆作・演出:荒木宏志(劇団ヒロシ軍)『まみれまみれ』
中国地区代表◆作・演出:亀尾佳宏(亀二藤)『前兆とか』
東海代表◆作・演出:渡山博崇(星の女子さん)『怪盗パン』
《予選Cプログラム》
香港代表◆作・演出:マン・チャン(陳志樺)『高野山で僕のアイドルに出会う』
甲信越代表◆作・演出:石川直幸(劇団@nDANTE)『記憶より記録』
四国代表◆作・演出:行正忠義(シャカ力)『オオカミ少年』
北海道代表◆作・演出:上田龍成(星くずロンリネス)『言いにくいコトは、、』
《決勝戦》
予選各プログラム勝者3チーム
第9代劇王◆作・演出:平塚直隆(オイスターズ)『救急車を呼びました』
【ゲスト審査員】
安住恭子(演劇評論家)
天野天街(劇作家・演出家)
鴻上尚史(劇作家・演出家)※9月17日のみ
坂手洋二(劇作家・演出家)
西田シャトナー(劇作家・演出家)
【タイムテーブル】
◆9月15日(金)
19:00~21:00 《予選Aプログラム》/風のホール
◆9月16日(土)
12:30~13:30 日本劇作家協会・支部長座談会/光のホール
14:00~16:00 《予選Bプログラム》/風のホール
16:00~16:30 スペシャルイベント「三賢者に訊け!~劇作家お悩み相談室~」/風のホール
参加/天野天街、坂手洋二、西田シャトナー
18:00~20:00 《予選Cプログラム》/風のホール
◆9月17日(日)
12:30~13:30 全体講評/風のホール
14:00~16:30 《決勝戦》/風のホール
◆大会中常時開催
戯曲見本市/展示室
Jr.ライト級チャンピオンタイトルマッチ『劇王Ⅺ 〜アジア大会〜』
■開催日程:2017年9月15日(金)~17日(日)
■会場:長久手市文化の家 風のホール(愛知県長久手市野田農201)
■料金:1公演券/一般2,500円、学生1,500円 2公演券/一般4,500円 3公演券/6,000円 全公演通し券/一般7,000円、学生4,000円
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「藤が丘」駅下車、リニモに乗り換え「はなみずき」駅下車、徒歩7分
■問い合わせ:長久手市文化の家 0561-61-3411(予約は0561-61-2888)
■公式サイト:
日本劇作家協会東海支部 http://jpatokai.php.xdomain.jp/gekioh/
劇王特設サイト http://gekioh.web.fc2.com/top.html