異形のピエロだけじゃない“恐怖”に立ち向かう子どもたちの冒険譚 『IT “それ”が見えたら、終わり。』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第三十九回

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2017.11.7
 (C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
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ホラーが大好きな私にも、子どもの頃は怖いものがたくさんあった。スティーブン・キング原作のテレビ映画『IT/イット』(90)に登場する人食いピエロ、ペニー・ワイズがその一つ。下水道に潜み、子どもを狙うその姿に恐怖したのは、私だけではないはず。今年公開されたリメイク版『IT “それ”が見えたら、終わり。』も、旧作とは一味違ったピエロの恐ろしさを植え付けるだろう作品だ。

米・メイン州の平和な田舎町・デリーでは、子どもの失踪事件が多発していた。そんな中、吃音症の少年・ビルの幼い弟ジョージーも、ある大雨の日に外出したまま消息を絶ってしまう。そして、行方不明の弟を探し続けるビルの前に、ある日突然“それ”は現れた。“それ”は相手が恐怖を感じるものに姿を変え、どこにでも出没する。ビルだけでなく、彼の友人たちも“それ”に苦しめられていたのだ。大人には見えない“それ”に立ち向かうことを決意したビルたち。はたして、町の子どもたちが消えたのは“それ”のせいなのか……?
 

オリジナルに負けない、ペニー・ワイズ俳優の異形ぶり

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本作でメガホンをとったのは、ギレルモ・デル・トロ製作のホラー『MAMA』(13)で監督を務めた、アンディ・ムスキエティ。『MAMA』はストーリーもゴーストの美しさも私の好みだったので、同じ監督が本作を手がけると知った時には、思わずガッツポーズをした。

そしてペニー・ワイズを演じるのは、若手俳優のビル・スカルスガルド。実を言うとこちらは、ビジュアルが出るまでとても不安だった。オリジナル版ではティム・カリーが演じていたペニー・ワイズは、とぼけた眉毛にかっぴらいた目、大きな口がまさに異形のものという雰囲気を醸し出し、かえって恐怖を感じさせた。

ビル・スカルスガルドのようなイケメン俳優に、あの“異形のもの”を演じられるのか?と不安だったのだ。実際、スカルスガルド版ペニー・ワイズは、ツンと上を向いた赤鼻の、愛嬌のある顔をしている。しかし、そんな可愛さとは真逆に、鋭い眼光を放ち、時折片方の目だけ別の方向を見ているのだ。そのうえ、よく見るとダラダラとよだれまで垂らしている。それまでの不安はどこへやら、スカルスガルド版にはオリジナルのような狂気こそ備えていないものの、狙った獲物を逃がさないような、“強さ”がある!

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ムスキエティ監督は、子どもが大好物なペニー・ワイズに、ベビーフェイス的なイメージを抱いたという。可愛いさの反面、恐ろしいことができるというギャップで、よりペニー・ワイズを不気味に見せることができるのではないか、と感じたそうだ。そういう意味では、童顔のスカルスガルドは適役だったのかもしれない。また、監督は、ペニー・ワイズに外斜視という特徴も持たせたかったのだが、スカルスガルドは「外斜視なら出来るよ!」と、CGや特殊効果を使うことなく、自分でやってみせたので、監督も驚いたそうだ。

同じような「クリーチャーの中の人」として、私が大好きなダグ・ジョーンズ(『ヘルボーイ』シリーズの魚人エイブ役など)のような存在になっていくことを、私はスカルスガルドに密かに期待している!


青春と恐怖の心地よいバランス

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“それ”に立ち向かう、ビルやその仲間たちは、皆不良たちにいじめられている“ルーザーズ・クラブ”=負け犬クラブのメンバーだ。不良グループに殴られるどころか、ナイフで切りつけられることもあるのだが、見ている大人たちは何もしてくれない。それどころか、“大人”という権力で子どもをねじ伏せようとするものまで登場する。子どもからすると、これほど恐ろしいことはないのではないか。本来なら助けてくれるはずの大人たちは、魔法にかけられてしまったかのように、子どもの世界と完全に分断されている。

本作で子どもたちの敵となるのは、ペニー・ワイズだけではない。学校では不良に追われ、家に帰れば大人に詰められ、独りになれば“それ”がやってくる。子どもたちに逃げ場は無く、ルーザーズ・クラブのメンバーは、団結して戦うことを余儀なくされる。そんな辛い状況とは裏腹に、子どもたちが絆を育んでいくプロセスは実に青春らしく、爽やかだ。中でも、ロックなBGMをバックに不良たちと対決するシーンは、画も子どもたちもイキイキと輝いていて最高!ルーザーズ・クラブ紅一点のベバリーのように、私もクラスの男の子たちと廃屋を探検していた子ども時代を思い出し、冒険心がくすぐられた。

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そんな、青春真っ只中のルーザーズ・クラブを、再び心理的・物理的に脅かすのが、様々な姿でビルたちの前に現れる“それ”である。本作の時代設定は原作の1950年代から80年代へと変更されているため、オリジナル版に登場したクリーチャーたちもリニューアル。子どもたちの抱える“恐怖”に対応した、個性豊かなビジュアルに注目してほしい(ちなみに私のお気に入りは、ホラー漫画家・伊藤潤二先生の漫画に出てきそうな顔の絵画の女だ!)

本作は、主人公の子ども時代と大人になった現在を織り交ぜて描いたオリジナル版とは異なり、子ども時代のみで完結する。ペニー・ワイズとの攻防に一息ついた後は、予定されている大人編の公開を待とう。

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『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』は公開中。

作品情報
映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』

 
(2017年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/135分)
原題:IT
監督・脚本:アンディ・ムスキエティ 
出演:ジェイデン・リーバハー、ビル・スカルスガルド、フィン・ウルフハード、ソフィア・リリスほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
【ストーリー】
“それ”は、ある日突然現れる。一見、平和で静かな田舎町を突如、恐怖が覆い尽くす。相次ぐ児童失踪事件。内気な少年ビルの弟も、ある大雨の日に外出し、通りにおびただしい血痕を残して消息を絶った。悲しみに暮れ、自分を責めるビルの前に、突如“それ”は現れる。“それ”を目撃して以来、恐怖にとり憑かれるビル。しかし、得体の知れない恐怖を抱えることになったのは、彼だけではなかった。不良少年たちにイジメの標的にされている子どもたちも“それ”に遭遇していた。自分の部屋、地下室、バスルーム、学校、図書館、そして町の中……何かに恐怖を感じる度に“それ”は、どこへでも姿を現す。ビルとその秘密を共有することになった仲間たちは“それ”に立ち向かうことを決意するのだが。

公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/itthemovie/    
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