伝説を作ろうとも変わらない、初の武道館ライブで見せたサンボマスターの生き方

レポート
音楽
2017.12.7
サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

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サンボマスター【1st日本武道館2017】~そのたてものに用がある~
2017.12.3 日本武道館

「今度、日本のロックの聖地、日本武道館でコンサートをやります!! だから、みんな絶対に来てください!!!!」なんて言うんじゃなく、「ええ、そうなんですよ。その日、たまたまその建物に用があってですね」みたいな、すかしていると言うか、平静を装っているようなライブのタイトルとは裏腹に、山口隆(Vo, G)はこの日ずっと、曲が終わるたび、「伝説! 伝説! 伝説!」と叫び続けた。タイトルでは『そのたてものに用がある』なんて取り澄ましながら、サンボマスターがこのライブを伝説の一夜にするため、並々ならぬ熱い想いとともに武道館のステージに立っていることは、誰が見ても明らかだった。

サンボマスター初の日本武道館公演。

因みにこの日、12月3日は彼らがメジャー1stアルバム『新しき日本語ロックの道と光』をリリースした記念日にあたる。それから丸14年目を迎えるこの日、ちょうど武道館が空いている。じゃあ、武道館でやってみよう。今年4月16日、日比谷野外大音楽堂でライブをやったとき、それを発表したらファンが大喜びしてくれた。ロックの聖地に立つことよりも何よりも、それが一番うれしかったと以前、インタビューでメンバーたちは口々に語った。

「#$&%@※!!(聴き取り不能)この野郎!!!!」

ステージに現れ、いきなり雄叫びを上げた山口が「ふぁい! ふぁい! ふぁい!」と客席を煽ってから2階席のてっぺんまで客席を埋めた8000人の観客に披露したのが「愛しき日々」、そして「そのぬくもりに用がある」――前述のメジャー1stアルバムの1曲目と2曲目だった。この日がどういう日なのか意識したバンドの粋な計らいに観客達が早速、シンガロングで応える。

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

「おめえら、そんなものか!?」と山口が煽ると、観客たちが今度は「オイ! オイ!」と拳を振り上げる。しかし、今日はここにいる全員で伝説を作るのだ。「そんなもんじゃねえだろ!」と山口はさらに煽り続ける。その意味では、ステージに立っている3人はもちろんだが、客席でバンドの演奏を受け止めている観客たちにもこの日は、この建物に大事な用があった。そして、筆者にも伝説の一夜を見届け、それをレポートするという大事な用があった。

観客の顔を見て、そして、お互いに目と目を合わせて演奏したかったのか、序盤はほぼ客電がつきっぱなしだった。演奏が終わって、いったん消えても、次の曲が始まってサビに差し掛かると、また、ぱーっと会場全体が眩い光に包まれる。バンドと熱演とそれに応える観客が作り出す熱気にそんな照明の熱が加わって、場内の温度はぐんぐんと上がっていった。

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

「武道館始まって以来、最強のライブにしようぜ! できる人!? ビートルズがやったからできねえのか? RCサクセションがやったからできねえと思ってんのか? できんだろ、できんだろ。だからやっていいすか。できっこないをやらなくちゃ! 伝説を作りましょう! 伝説! 伝説!」

曲に込めた想いを、山口が切々と語りながら、アンコールも含め、2時間40分にわたって、代表曲の数々をたたみかけるように演奏していった。ふと気づいてみれば、伝説を作ることに挑みながら、やっていることはいつもと変わらない。ステージには大小さまざまな照明が30機ほど並んでいるだけで、ドでかいアンプがずらっと並んでいるわけでもないし、左右に伸びる花道もない。ステージの3人を映し出す特大ビジョンもないし、ゲストもいない。演出と言えば、最後の最後に伝説の成就を祝福するように、客席を埋め尽くすほどの紙吹雪が舞っただけだ。照明だって、途中、サイケな映像をステージに映し出しはしたけれど、ムービングライトがビカビカ、グルグルと回ったりするようなド派手なものではなかった。

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

この日、サンボマスターはいつもライブハウスでやっているそのまま、ロックの聖地、武道館に乗り込んできた。筆者がそれを確信したのは、9曲目の「愛してる愛して欲しい」でツアータイトルと武道館のイラストが描かれたバックドロップが落とされ、ステージの後ろの客席が剥き出しになった時だった。敢えて、それを見せることにはきっといろいろなメッセージが込められていたに違いない。もっとも、それは深読みかもしれない。しかし、筆者はそこにライブハウスを主戦場に、楽曲と演奏だけで勝負しつづけてきたロックバンドの矜持だとか何だとか、いろいろなことを読み取ってみたい。「普通のかっこうで、普通にやっているだけなのに売り切れた」と山口も言った。

もちろん、パンクな勢いのロックンロールだけがサンボマスターの持ち味ではない。「2011年3月11日以来、やっていなかったこの曲を、武道館でできる幸せはある」と山口が語ってから演奏した「手紙」は、もう会えない人に会えない気持ちを歌い上げるバラードだが、この日は「一番愛する人を思い浮かべてほしい。めっちゃ幸せになれるように歌うから」とつけ加えることで、たとえそれが記憶の中だけだとしても、会いたい人、愛する人がいる幸せを歌い上げる曲に変え、曲が持つ可能性をアピールした。また、「踊りましょう」と声を掛けてから演奏したファンキーな「Stand by me & You」では、8000人が体を揺らしながら一緒に歌い、大きな一体感を作り出した。

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

そして、一気にラストスパートをかけるように「ミラクルをキミとおこしたいんです」から、バンドを代表するアンセミックなロックンロールナンバーの数々をたたみかけた終盤の選曲に文句のあった観客は一人もいなかったはず。さらなる客席の盛り上がりにピースサインを高々と掲げた山口をはじめ、メンバーたちは思わず破顔一笑。レパートリーにこれだけアンセムが多いのは、ファンと一緒に歌いたいという気持ちがあるからだ。伝えたいメッセージがあるからだ。

そこにいる全員の生き方を全肯定する本編最後の「YES」を演奏する前、山口はこう言いながら、これからもまた、これまで通り全国のライブハウスを回り続けることを誓った。

「(今日、俺達は)めちゃめちゃ呼吸を合わせたよな。そのたび、俺達、あんたとミラクル起こせたと思ったよ。また会う日までクソみたいな毎日が始まるけど、でも、忘れんな。また来っからね、今度はおめえの町だ。おめえの住んでいる町の狭いライブハウスだ。やることは変わんねえぞ。また、呼吸を合わせて、おめえの不安、孤独をぶっ潰しに行くからな。またミラクルを起こそうじゃねえか。すげえミラクルを起こしたことを忘れるな。ミラクルの起こし方は、また、生きて、ここ(俺達のライブ)に来ることだ」

武道館で伝説を作ったからって、サンボマスターの生き方は変わらない。そして、この日、武道館に集まった8000人にとって、また新たな戦いの日々が始まる。でも、大丈夫。僕らには伝説を作ろうとその身一つで武道館に乗り込んでくるサンボマスターがいる。なんだか、それだけで愉快な気持ちになるじゃないか。

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

日頃、彼らの音楽が精神論や情緒的な部分で語られることが多いことを物足りなく思いながら、いざレポートを書きだしたら、多分に情緒的な文章になってしまったが、しかたない。だって、実際そういうライブだったんだもの。最後に、ガッツある山口のギタープレイはもちろん、音数を抜いたり詰めたりしながら多彩なフレーズをプレイする木内泰史(Dr, Cho)と、ベースをぶんぶん唸らせながら音数を詰め込んで、演奏の推進力を担う近藤洋一(B, Cho)によるアンサブルの妙を、もみくちゃにされずにちゃんと見ることができたのも、この日の見どころだったことをつけ加えておきたい。

取材・文=山口智男 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

サンボマスター 2017.12.3 日本武道館 撮影=浜野カズシ

 
セットリスト
サンボマスター 【1st日本武道館2017】~そのたてものに用がある~
2017年12月3日(日)日本武道館
01. 愛しき日々
02. そのぬくもりに用がある
03. 歌声よおこれ
04. でっきこないを やらなくちゃ
05. このラブソングはパンクナンバー
06. 可能性
07. 光のロック
08. ロックンロール イズ ノットデット
09. 愛してる愛して欲しい
10. Sad Town, Hot Love 
11. 美しき人間の日々
12. 青春狂騒曲
13. 世界をかえさせておくれよ
14. 全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ
15. 手紙
16. ラブソング
17. Stand by me & you 
18. ミラクルをキミとおこしたいんです
19. オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで
20. 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
21. YES 
<ENCORE>
22. 朝
23. あなたといきたい
 
ライブ情報
男どアホウ サンボマスター 2018〜春の選抜〜
2018年03月03日(土)大阪 Zepp Osaka Bayside 
16:00開場/17:00プレイボール 

男どアホウ サンボマスター 2018〜夏の選手権〜
2018年09月08日(土)新木場 STUDIO COAST
16:00開場/17:00プレイボール 
※12月3日(日)20:00~12月10日(日)23:00までチケット先行予約受付中
http://www.sambomaster.com/doahou2018/
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