新国立劇場が2018/2019シーズン オペラ ラインアップを発表

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2018.1.12
『魔笛』

『魔笛』


新国立劇場が2018年1月11日、2018/2019シーズン オペラ ラインアップを次の通り発表した。

<2018/2019シーズン オペラ ラインアップ>
『魔笛』[新制作]
『カルメン』
『ファルスタッフ』
『タンホイザー』
『紫苑物語』[新制作・創作委嘱作品・世界初演]
『ウェルテル』
『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』
『ドン・ジョヴァンニ』
『蝶々夫人』
オペラ夏の祭典 2019-20 Japan↔Tokyo↔World『トゥーランドット』[新制作]


オペラ次期芸術監督 大野和士からのメッセージ

2017/2018シーズンに開場20周年を迎えるこの劇場に素晴らしい歴史を積み上げてくださった先人の先生方の跡を継ぐことに、この上ない責任を感じると共に、今後新たな創造に向かって限りなく邁進する覚悟でおります。この度は、新国立劇場を応援してくださるすべての皆様に、来る新シーズンのラインアップをご紹介できることを大変な喜びと感じております。

就任に先立ちまして、私が今後目指す大きな目標として、皆様に次の5つの点をお伝えしたいと思います。

第1に、レパートリーの拡充。新国立劇場はこれまで年間3演目の新制作を行ってきましたが、それを4演目に増やすことを計画しています。この枠の中で、新国立劇場の公演が世界初演出になるようなプロダクションを制作する他、現在まさに世界のオペラ界を席巻している旬の演出家の評判のプロダクションを積極的にご紹介していきたいと思います。新国立劇場はこれまでにも、20世紀の優れた作品などを果敢に上演して参りましたが、海外の劇場からのレンタルの関係で、一度限りの上演の後、元の劇場に帰ってしまう場合も多く、新国立劇場の誇る多彩なパレットに、その全てを加えることができませんでした。そこで海外のプロダクションを導入するにあたっては、繰り返し再演できるようにするシステム作りを目指します。

第2は、日本人作曲家委嘱作品シリーズの開始です。これは1シーズンおきに、日本を代表する作曲家に新作オペラを委嘱するものですが、その作品の創造過程では、これまでにないような、作曲家、台本作家、演出家、芸術監督との間での綿密な協議が重ねられ、最終的に音楽的にも、演劇的にも、日本オペラの歴史に新機軸を打ち出すことを目指します。その中から海外の劇場に引き継がれる日本オペラが生まれてくることを頭に描きながら。

第3は、2つの1幕物オペラ(通称ダブルビル)の新制作と、バロック・オペラの新制作を1年おきに行うこと。ダブルビルでは、例えば1年目は、プッチーニ作曲『ジャンニ・スキッキ』とツェムリンスキー作曲の『フィレンツェの悲劇』がカップリングされますが、その次には、例えば『ジャンニ・スキッキ』と他の1幕ものとを組み合わせることによって、一晩の公演とし、結果、一挙に演目を増やしていく意図に基づいています。"まさに一粒で二度おいしい"企画と言えます。また、今まで新国立劇場では、まだバロック・オペラが舞台上演されていないということですので、2019/2020シーズン以降に登場するこの新しいオペラジャンルにも是非ご期待いただけたらと思います。

第4は、旬の演出家、歌手をリアルタイムで皆様にお届けすることです。新制作で招聘する3人の演出家は、私自身共演の機会もあり、新時代の創造者として、また、オペラの舞台にそれぞれに独特な美しい視覚的体験をもたらす巨匠として、長らく皆様にご紹介いたしたいと思っていた方々です。歌手については、国際的な歌手に加え、重要な役にも優秀な日本人歌手を起用。これまで新国立劇場を支えてきた日本人歌手のみならず、海外で活躍する才能ある日本人歌手のニューフェイスもご紹介させていただければと思っています。

第5は、積極的な他の劇場とのコラボレーションです。今後、新国立劇場で、著名な演出家によって創造されるワールド・プレミエの機会を積極的に作って参りますので、それが海外の歌劇場との共同制作を通して、日本発のオペラ新演出が世界に広まるという新しい時代を切り開きたいと思います。既に、私と幾つかの劇場の総監督との間では、具体的な共同制作の話が始まっており、実現の暁には、古典的なオペラのレパートリーが東京から海外へと発信される大変名誉な例となることでしょう。同時に、国内の劇場や新国立劇場の他部門(演劇、舞踊、研修所)との連携も強化していきたいと思います。

具体的に、このシーズンで取り上げる新制作4演目についてご紹介させていただきます。

『魔笛』は、南アフリカ出身の現代美術の巨匠、オペラ演出におけるプロジェクションの魔術師として知られるウィリアム・ケントリッジによるプロダクションです。2005年にモネ劇場で初演されたのち、十数か所の劇場で上演されヨーロッパで大評判となりました。

続いて、日本人作曲家委嘱作品シリーズの第1弾である、西村朗作曲『紫苑物語』(石川淳原作)。演出は日本人オペラ演出家で唯一無二の世界的名声を誇る、笈田ヨシです。物語は、歌人の家に生まれた才能ある若者が、自分の存在意義を求めてさまよう、'ある芸術家の人生'。ある意味でオペラによる日本の『ジャン・クリストフ』とでもいえばよろしいでしょうか。石川淳の耽美的で情熱的な世界を、西村、笈田のコンビがどのようにオペラに移し替えるか興味がつきません。

次に、1幕ものを二つ合わせて一晩に上演するツェムリンスキー作曲『フィレンツェの悲劇』とプッチーニ作曲『ジャンニ・スキッキ』のダブルビル。両作品ともフィレンツェを舞台とする、片や男女の三角関係を描いたオスカー・ワイルド原作に基づく悲劇、もう一方は、ダンテの『神曲』'地獄篇'に題を得た、遺産相続をめぐる、てんやわんやの喜劇です。ダブルビル第一回目の演出は、イタリア語を自由に操り、日本オペラ界に新しい指針をもたらした粟國淳です。

最後は、『トゥーランドット』。オペラ・演劇制作集団であるスペインの"ラ・フーラ・デルス・バウス"の芸術監督であり、現在世界のオペラ界で引っ張りだこのアレックス・オリエが東京で初めてオペラを演出、プッチーニの新制作を世界へ発信します。彼が世界初演出を東京で行うことは、オペラ界の大きな話題となることでしょう。

再演6演目には、新国立劇場の誇るレパートリーから、イタリア、ドイツ、フランスのプロダクションをバランスよく取り上げました。

指揮者陣については、スカラ座での"ケントリッジの魔笛"を指揮したローラント・ベーア、ヴェローナ野外音楽祭でもおなじみの『カルメン』の指揮者ジャン=リュック・タンゴー、ドレスデンやナポリでデビューが続いている、『ドン・ジョヴァンニ』の指揮者、若いイタリアの俊英フランチェスコ・ランツィロッタといったフレッシュな顔ぶれに、オペラ指揮者として確固たるキャリアを築いているカルロ・リッツィ(『ファルスタッフ』)、ポール・ダニエル(『ウェルテル』)、アッシャー・フィッシュ(『タンホイザー』)という布陣です。

歌手陣は、タミーノ役でヨーロッパを飛び回っているスティーヴ・ダヴィスリム、パミーナ役、日本の名花、林正子。カルメン役、メトロポリタン歌劇場にもデビューの"カルメン歌い"ジンジャー・コスタ=ジャクソン、ファルスタッフ役、イタリアの大御所ロベルト・デ・カンディア、タンホイザー役、ワーグナーのオペラのタイトルロールで飛ぶ鳥を落とす勢いのトルステン・ケール、ドン・ジョヴァンニ役、洒脱で芳醇なワインの香りのようなニコラ・ウリヴィエーリ、『トゥーランドット』は、イレーネ・テオリン、リッカルド・ザネッラートに二人の輝ける日本人ソプラノ中村恵理、砂川涼子らの夢の共演。また、我が国の誇り、藤村実穂子が満を持して『ウェルテル』のシャルロットで登場するのも大きな見どころです。

オペラパレスで皆様とご一緒に、夢を追いかけることができたらどんなに素晴らしいことでしょう。


なお、大野和士 次期オペラ芸術監督による2018/2019シーズン演目説明会が、2018年1月19日(金)14:00に、新国立劇場オペラパレス客席で開催される。入場無料/自由席、誰でも参加可。事前申込みは不要、当日、直接会場に行けば聞くことができる。

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