英国ロイヤルシネマシーズン2017/18 ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』~何度でも見たくなる大スクリーンならではの華麗な舞台

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2018.1.19
Sarah Lamb as The Sugar Plum Fairy in The Nutcracker. © ROH, 2017. Photographed by Karolina Kuras

Sarah Lamb as The Sugar Plum Fairy in The Nutcracker. © ROH, 2017. Photographed by Karolina Kuras


英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18、年明けの最初は名作『くるみ割り人形』だ。ピーター・ライトによる英国ロイヤルバレエ団(ROH)の、クリスマスの日ひとときは描いたこのバレエは、ストーリーや魅力的な登場人物たちに、英国らしい演劇性たっぷりのダンサーたちによる踊りとともに、夢いっぱいの幸せあふれるひとときを約束してくれる。初見の人はもちろん、2度目、3度目でも十分に満足できる、クオリティの高い内容だ。

■ROH総力を挙げての夢いっぱいのストーリー

年末恒例の『くるみ割り人形』はプリンシパルからスクールの子供たちに至るまで、さらにはダンサーを指導するOB、OG、もちろんバックヤードのスタッフに至るまで、総力を結集して作り上げるクリスマスのための夢舞台だ。

今回は本編に入る前に子役で出演する子供たちが舞台裏のインタビューに登場。「2カ月かけて作り上げてきた」という晴れ舞台への期待を語る姿が実に微笑ましく、同時にこうした経験が次代のダンサー達を育てていくのだなぁと感じる。

Meaghan Grace Hinkis as Clara in The Nutcracker, The Royal Ballet © ROH. TRISTRAM KENTON

Meaghan Grace Hinkis as Clara in The Nutcracker, The Royal Ballet © ROH. TRISTRAM KENTON

さて、ROHの看板作品のひとつといえるピーター・ライト振り付けの「くるみ割り人形」の魅力は数々あるが、とくに秀逸なのは明確で筋の通ったストーリーだ。

舞台はドロッセルマイヤー(ギャリー・エイヴィス)の工房から。甥のハンス・ピーター(アレクサンダー・キャンベル)はネズミの王様によってくるみ割り人形の姿に変えられてしまっている。その呪いを解こうと、ドロッセルマイヤーはくるみ割り人形を少女クララ(フランチェスカ・ヘイワード)に託す。

夜、時計の音とともに人形たちが動きし、くるみ割り人形を先頭にネズミの王様たちとの戦いが始まる。クララの投げたスリッパでネズミの王様たちは退散し、くるみ割り人形はハンス・ピーターの姿に。ドロッセルマイヤーは2人をお菓子の国へと誘う。金平糖の精(サラ・ラム)と王子(スティーヴン・マックレー)に迎えられた2人は夢のようなひと時を過ごすのだ。そしてラストの余韻は……ぜひ劇場でご覧いただきたい。

Artists of The Royal Ballet in The Nutcracker. © ROH, 2017. Photographed by Karolina Kuras

Artists of The Royal Ballet in The Nutcracker. © ROH, 2017. Photographed by Karolina Kuras

■「演劇の国」の面目躍如。踊りと演技が一体となったダンサー達にも注目

ROHの魅力の一つは演技力。それは今作にも素晴らしい踊りとともに、いかんなく発揮され、見応え十分だ。なかでもストーリーを引っ張るドロッセルマイヤー役のエイヴィスが見事。名ドロッセルマイヤーとしてすでに評判の高いエイヴィスだが、見飽きるということはない。見るたびにその立ち居振る舞いや表情の一つひとつに唸らされる。大スクリーンではその細かな仕草、眼力に一層の迫力がある。これは映画ならではの楽しみだ。

Francesca Hayward as Clara in The Nutcracker © ROH. TRISTRAM KENTON

Francesca Hayward as Clara in The Nutcracker © ROH. TRISTRAM KENTON

クララ役のヘイワード、ハンス・ピーターのキャンベルももはやお馴染みのキャストだが、常に初々しく、愛らしい。そして金平糖のラム、王子のマックレーは堂々たる、プリンシパルならではの貫禄を見せてくれる。

無論舞台上に、無駄なものは何一つない。プリンシパルからコールドバレエ、子役に至るまで、全てがそれぞれの輝きを放ち、そこに立ち、物語をつくりあげていく。

またこのシネマシーズンならではの目玉とも言える、幕間のインタビューも注目だ。今回は指揮者のワーズワースが、チャイコフスキーの音楽の魅力を語るほか、初演で金平糖の精を踊ったレスリー・コリアとラムとのリハーサルにも注目したい。「経験を引き継ぐ」という言葉には、単なる踊りの指導ではなく、ROHの伝統がまさに作られている姿だ。

The Corps de ballet in The Royal Ballet's Nutcracker © ROH. TRISTRAM KENTON

The Corps de ballet in The Royal Ballet's Nutcracker © ROH. TRISTRAM KENTON

練り込まれたストーリーと、ブラッシュアップを重ねられる振り付け、一流のダンサー達と彼らを目指すスクールの子ども達による「くるみ割り人形」。華麗な衣装や重厚感あふれる豪華なセットともども、ぜひ大スクリーンで楽しんでいただきたい。何度でも見たくなる、多幸感あふれる舞台だ。

上映情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18
『くるみ割り人形』
 
振付:ピーター・ライト
音楽ピョートル・チャイコフスキー
指揮バリー・ワーズワース
出演フランチェスカ・ヘイワード(クララ)/サラ・ラム(こんぺいとうの精)/ギャリー・エイヴィス(ドロッセルマイヤー)/スティーヴン・マックレー(王子)/アレクサンダー・キャンベル(ハンス・ピーター/くるみ割り人形)/英国ロイヤルバレエ団
上演時間2時間40分
 
■上映会場・日程:
北海道 ディノスシネマズ札幌 2018/2/17(土)~2018/2/23(金)
宮城 フォーラム仙台 2018/1/20(土)~2018/1/26(金)
東京 TOHOシネマズ日本橋 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
東京 イオンシネマ シアタス調布 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
千葉 TOHOシネマズ流山おおたかの森 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
神奈川 TOHOシネマズららぽーと横浜 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
愛知 TOHOシネマズ名古屋ベイシティ 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
京都 イオンシネマ京都桂川 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
大阪 大阪ステーションシティシネマ 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
神戸 TOHOシネマズ西宮OS 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
福岡 中洲大洋映画劇場 2018/1/20(土)~2018/1/26(金)
 
■公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh
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