京都の劇団・烏丸ストロークロック、『まほろばの景』を京都&東京で上演
烏丸ストロークロック 短編『まほろばの景』(2017年)より [撮影]相沢由介
原始的な「山」の世界から、これからの「人間らしさ」を照らし出す。
『新・内山』で「第60回岸田國士戯曲賞」にノミネートされた、作・演出家の柳沼昭徳が率いる劇団「烏丸ストロークロック」。現代社会にはびこる様々な闇や、そこで生きざるを得ない人間たちの焦燥や孤独を描いた作品を、綿密なフィールドワークや小作品の試演を重ねて長編にしていくという、ロングスパンの創作スタイルで異彩を放っている。そんな彼らが、やはり1年近い月日をかけて制作した新作『まほろばの景』を、地元の京都で上演。さらに同作で、4年ぶりの東京公演も行う。
烏丸ストロークロック『まほろばの景』公演フライヤー。
『まほろばの景』は、昨年夏に「東日本大震災」の被災地・仙台での取材&滞在制作を元に作られた短編がベース。そこから生演奏との融合を目指した朗読劇、柳沼自身が久々に役者として出演した三人芝居の上演から得たものをプラスして、今回の長編に結実させた。作品の舞台となるのは「山」。山の中に迷い込んだ男が、人知を超えた自然現象や不可思議な人々と対峙する姿を通して、日本人が本来持つ身体感覚や、現代における「人間らしさ」を考えさせる作品になったそうだ。
作・演出の柳沼昭徳からは、以下のようなコメントが届いた。
時代がうつろうにつれ、人の思想とかは変化していくけど、「我々人間とは一体何だろうか?」という、その根っこの部分をもう少し探りたい。取材してきた東北の山岳信仰など、日本の古来からある死生観も反映させながら、その根っこを探す旅をお見せしたいと思います。
『新・内山』でも大きくフューチャーした東北の神楽の動きや、烏丸の世界に欠かせない音楽家・中川裕貴のチェロの生演奏を効果的に取り入れた舞台は、物語のみならず、ビジュアルや聴覚の面でも刺激的なものになるはず。現代社会を冷徹に、しかし同時に大きな慈しみも持って俯瞰的に眺める烏丸の作品は、3.11以降ますます行き先がわからなくなっている現代日本を生き抜く上での、一つの道標になるかもしれない。
烏丸ストロークロック『まほろばの景』PV第2弾
■日時:2018年2月9日(金)~11日(日・祝)
■会場:ロームシアター京都 ノースホール
■日時:2018年3月1日(木)~4日(日)
■会場:東京芸術劇場 シアターイースト
■音楽・演奏:中川裕貴
■出演:阪本麻紀、澤雅展、角谷明子、小菅紘史(第七劇場)、小濱昭博(劇団 短距離男道ミサイル)、松尾恵美
■公式サイト:http://www.karasuma69.org/pages/736580/next